Volume8(2020)
SPring-8 Section A: Scientific Research Report
a中央大学, bESRF, cお茶の水女子大学, d広島県立大学, e (公財)高輝度光科学研究センター
aChuo University, bESRF, cOchanomizu University, dPrefectural University of Hiroshima, eJASRI
- Abstract
-
SAXS signals from the DNA of salmon spermatozoa in an aqueous solution were analyzed using a rheometer-device, which controlled the rate of shearing during SAXS observations. When shearing rate > 1000 s−1 was applied to the DNA suspension, DNA strands were not aligned as observed with other biological filaments, but a stable diffraction peak approximately ranging 1.7–1.8 [nm−1] of Q-values were observed. We compared our observation with simulated SAXS signals.
Keywords:DNA, solution structure, scattering, SAXS simulation
aMonash University, bNational Cerebral and Cardiovascular Center Research Institute, cJASRI/SPring-8
- Abstract
-
We investigated in female rats the coronary response to infusion of angiotensin-II type 2 receptor agonist compound 21 (C21) utilizing high resolution SR microangiography. We found that in non-diabetic rats acute C21 infusion evoked dilation in the coronary microvessels that most likely involved endothelium derived hyperpolarization factors, while C21 evoked mild constriction in prediabetic rats.
Keywords:angiotensin-II receptors, vasodilation, endothelium, diabetes
aラトックシステムエンジニアリング株式会社, b東北大学多元物質科学研究所, c慶應義塾大学医学部細胞組織学研究室
aRatoc System Engineering Co., Ltd., bInstitute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University, cLaboratory of Cell and Tissue Biology, Keio University School of Medicine
- Abstract
-
骨粗鬆症治療薬である副甲状腺ホルモン PTH は、骨吸収や骨形成を促進することが知られている。しかし、連続投与すると骨吸収促進作用があるとされている。本実験では、成長板直下における軟骨小腔や一次海綿骨の石灰化を反映した3次元画像を取得して解析し、その機序の解析を試みた。PTH 非投与群では、肥大軟骨小腔の横中隔基質と縦中隔基質が吸収され、血管と骨髄が軟骨小腔に侵入し、石灰化肥大軟骨は吸収され、一次海綿骨が形成された。この経過は軟骨内骨化における不可欠の過程である。一方、PTH 連続投与群では、横中隔基質が石灰化し、肥大軟骨小腔が残存し、内部は低石灰化骨で満たされた。横中隔基質の石灰化により血管が侵入できず、破骨細胞が形成されない結果、骨吸収が抑制された。石灰化軟骨が一部残存し肥大軟骨小腔に低石灰化骨が形成され、石灰化骨への置換に障害をきたした。
Keywords:骨粗鬆症治療薬、副甲状腺ホルモン PTH、肥大軟骨小腔、骨吸収、骨形成、マルチスキャンX線顕微鏡、微分位相コントラスト法、デフォーカス位相コントラスト法
(国研)物質・材料研究機構
National Institute for Materials Science
- Abstract
-
プロトン伝導性固体電解質から供給されるプロトンが誘起する酸化還元反応を利用して酸化グラフェンの酸素官能基を制御する固体イオニクスデバイスの動作機構の調査のため、硬X線回折を利用して電圧印加状態での in-situ 観察を行った。印加電圧の極性に対応して還元反応では酸素官能基の減少およびそれに伴う吸着水の脱離による層間距離の減少、逆に酸化反応では層間距離の増加が予想されたものの、印加電圧に依存しない回折ピーク強度の低下が認められた。硬X線 XPS の測定結果と考え合せると、X線照射のダメージに起因する酸化グラフェンのアモルファス化が進行したものと考えられる。
Keywords:酸化グラフェン、酸化還元反応、固体イオニクス
a兵庫県立大学, b総合科学研究機構, c大阪大学, d(公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bCROSS, cOsaka University, dJASRI
- Abstract
-
ダイヤモンドアンビルセル(DAC)中の高圧試料に対するX線三次元イメージングについて検討するため、モデル試料を用いた完全 CT と、試料回転軸を大きく傾けたラミノグラフィ測定を実施した。得られたデータを加工することにより、撮像に角度制限のある不完全 CT 像をシミュレートした。DAC 内試料に対する不完全 CT イメージングおよび不完全 CT のラミノグラフィによる逆空間での情報補完について検討した。ラミノグラフィを用いた逆空間補完法は、75% 程度欠落のある不完全 CT の画質を改善した一方で、13% 程度の欠落の像に対してはむしろ悪影響となった。
Keywords:X線イメージング、ダイヤモンドアンビルセル、逆空間補完
a京都大学複合原子力科学研究所, b京都大学工学研究科
a Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University, b Graduate School of Engineering, Kyoto University
- Abstract
-
新しい Na イオン伝導体である Na3AlS3 ガラスをメカニカルアロイング法によって合成した。高エネルギーX線回折実験によって測定された構造因子 S(Q) にはわずかに結晶成分の残存が見られたが、ほぼガラス化された試料が得られた。全相関関数 T(r) を pair function 法によって解析した結果、ガラスの短距離構造ユニットとして AlS4 四面体が存在し、それらが形成するネットワーク構造はほぼ寸断されていることが明らかになった。さらに、Na イオンは他の硫化物系ガラスと同様に S 原子に4配位もしくは5配位されており、本系のイオン伝導性と関連していることが示唆された。
Keywords:イオン伝導体、高エネルギーX線回折、二体分布関数解析、メカニカルアロイング法
a九州大学, b(公財)高輝度光科学研究センター
aKyushu University, bSPring-8/JASRI
- Abstract
-
本研究では、Fe50Pd50-xNix(x=6, 12, 25, 38, 44)の混合粉末を 6 GPa の高圧下で高圧ねじり(HPT)加工を行い、巨大ひずみを導入して固溶体状態のバルク状に固化した。続く熱処理で L10 構造の規則化を図った。X線回折(XRD)で規則相生成を確認し、振動試料型磁気力計(VSM)で保持力や飽和磁化を測定した。また、光電子顕微鏡 (PEEM) を用いて試料表面の組成分布、磁区構造を調べた。これより Fe50Pd50 における Pd の Ni による置換がどの程度可能かについて検討した。
Keywords:巨大ひずみ加工、X線回折、磁化曲線、L10 規則相、磁気異方性
京都大学
Kyoto University
- Abstract
-
ヒトにおいて mRNA の核外輸送に働く mRNA 輸送因子 UAP56 と相同性の高いパラログ URH49 は、Apo-TREX および Apo-AREX 複合体の形成と、ATP 結合による ATP-TREX 複合体の形成を介して選択的 mRNA 輸送に働く。両者の複合体形成基盤の解明を目的として、UAP56、URH49 ならびに複合体形成制御領域を置換した変異体について ATP 非存在 / 存在下の SAXS 解析を行った。結果、ATP 非存在化において UAP56 と URH49 の溶液中構造に差異が存在し、ATP 存在化では両者の構造が相同になるというユニークな複合体形成の制御機構の可能性が示唆された。
Keywords:UAP56、URH49、ATP、複合体形成機構
京都大学 化学研究所
Institute for Chemical Research, Kyoto University
- Abstract
-
架橋密度の低い天然ゴムを高速で伸長し、結晶化により準安定状態となる過程について、BL40XU ビームラインの強力なビームを用いた高速時分割広角X線回折(WAXD)解析を行った。一般に高分子結晶の熱的安定性は分子鎖方向の結晶サイズに影響されるが、今回の測定では準安定状態の発現と無関係にほぼ一定の値となった。一方、結晶化度については準安定状態となる試料が有意に高い値を示したことから、新しい熱力学的モデルの構築が必要性だと考えられた。
Keywords:形状記憶天然ゴム、伸長結晶化、広角X線回折
a京都大学生存圏研究所, b東アジア文化研究所, フランス, c奈良文化財研究所, d 京都大学, e南京林業大学, 中華人民共和国
a Research Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University, b East Asian Civilizations Research Centre CRCAO, c Nara National Research Institute for Cultural Properties, d Kyoto University, e Nanjing Forestry University
- Abstract
-
東アジアの木彫像は歴史的背景等により国外にて保管されているものが少なからずあり、現在欧米の様々な美術館・博物館などに保管されている木彫像の樹種調査を進めている。本研究では、アメリカ合衆国のボストン美術館での木彫像群の調査のうち、日本の木彫像3体から採取された非常に小さな試料に、SPring-8 の BL20XU でのシンクロトロン放射光X線トモグラフィーを適用して樹種識別調査を行った。その結果、Chamaecyparis obtusa が使用されていることを明らかにした。
Keywords:Wood identification, Micro-CT, Anatomical structure
a Kyoto University, b Japan Synchrotron Radiation Research Institute
- Abstract
-
In this report, we have investigated the local coordination of strontium and calcium in Sr1-xCaxFeO2 (x = 0, 0.8 and 1) via extended x-ray absorption fine structure at room temperature. We observe the different local coordinations in the infinite layer phases (x = 0, 0.8) and distorted infinite layer structure CaFeO2.
Keywords:Infinite Layer, Square-Planar Coordination, Perovskite
a 日本大学, b東京大学, c (公財)高輝度光科学研究センター
a Nihon University, b The University of Tokyo, c JASRI
- Abstract
-
本研究の目的は、X線1分子計測法(DXT)を用いることで生きている細胞内で GPCR (G 蛋白共役型受容体)1分子の回転・偏心運動を捉え、GPCR が3量体 G 蛋白質分子を活性化する過程を明らかにすることである。本研究は、DXT を生きている細胞に適用する世界で初めての試みである。
Keywords: GPCR、生きた細胞内計測、X線1分子追跡法
aUniversity of Warwick, bUniversity of Cardiff
- Abstract
-
The aim of this experiment was to investigate the temperature dependence of the spin density of the Invar system Fe65Ni35 via measurements on a single crystal using magnetic Compton scattering. We made measurements of the spin density resolved along the [100] and [110] crystallographic directions. The temperature dependence exhibited a subtle change in the momentum density. Interestingly, the momentum distribution of the spin moment was different for the two crystallographic directions. It would appear that increasing temperature has a complicated effect on the contributions of the electrons from different orbitals, rather than just causing a change in the amount of delocalisation. This change requires further investigation, particularly with further compositions being studied in order to determine whether the change in electronic structure can be correlated with the existence of the Invar effect.
Keywords: Invar effect; spin density; temperature
aAIST, bJAEA, cQST, dToyota Central R&D Labs., Inc., eJMC
- Abstract
-
The degradation of reversible hydrogen storage capacity of V-Ti-Cr alloys can be greatly reduced by dissolving a small amount of Nb, yet the exact role of Nb in improving cyclic stability is not known. In this study, we have investigated local structural changes in V0.25Ti0.25Cr0.5H2 and V0.25Ti0.25Cr0.45Nb0.05H2 during hydrogen cycling using the X-ray atomic pair distribution function and the extended X-ray absorption fine structure spectra to understand the effect of Nb. Our study suggests that during hydrogen cycling large Ti atoms are dragged to dislocation cores to reduce strain induced by dislocations. This leaves Ti-poor regions near dislocations for which higher hydrogen gas pressure is required for hydrogen uptake. It is most probable that Nb prevents the segregation of Ti.
Keywords:hydrogen storage materials, metal alloys, EXAFS
奈良女子大学
Nara Women’s University
- Abstract
-
本研究では、末端にアルキル鎖を有し、糖のモノマーを重合した単鎖型多糖オリゴマー(C12-mGEMA、m は重合度で 3.0~7.1)の単鎖型両親媒性オリゴマーを保護剤として用いて、金ナノ粒子を調製し、その構造を TEM および SAXS により評価した。金ナノ粒子は、保護剤の濃度や重合度に関係なく粒径 10 nm 以下のサイズで得ることができた。さらに、金属ナノ粒子を用いた p‐ニトロフェノールの還元反応における触媒活性は、金ナノ粒子の粒径に依存し、粒径が小さいほど高い活性を示すことがわかった。
Keywords: 両親媒性オリゴマー、金ナノ粒子、X線小角散乱
aUniversity of Saskatchewan, bUniversity of Ottawa, c Japan Synchrotron Radiation Research Institute (SPring-8/JASRI)
- Abstract
-
The low-temperature high-pressure structures of elemental selenium (Se) have been characterized by in-situ x-ray diffraction in a diamond anvil cell. A phase diagram appropriate for the P-T conditions is constructed from the results. Unlike the closely related elemental barium (Ba), no new structure was found by first cooling the sample to 10 K and then compressed to 34 GPa. The results confirmed the structure of the superconducting phase observed at 13 GPa,
Keywords: High-pressure, Low-temperature, X-ray powder diffraction, Phase diagram
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
隕石中に含まれるコンドリュールの特徴的な結晶組織を再現し、その物理化学条件から形成環境の制約条件を得るために、加熱/溶融・結晶化過程の4次元観察によるその場観察を行った。Ca を含む輝石の 0.5 mm 程度の液滴で、樹枝状結晶が形成される様子が、2D、3D いずれのその場観察でも観察する事が出来た。結晶成長は試料がホルダと接している部分からだけでなく、試料上面からも結晶化が起こっている様子が確認された。試料上面の結晶成長と試料下部の結晶成長はその形態が異なり、温度条件によって複数の結晶成長形態が共存することがわかった。しかし、実際に隕石に含まれる Ca や Fe を含まない輝石の組成では結晶化が全く起こらなかった。これは非常に小さい試料を観察しているため、結晶化過程において、無容器実験と同じ条件になっていることが示唆される。
Keywords:コンドリュール、その場観察、4D-CT
XAFS Analysis of Oxide Films Depend on Dissolved Hydrogen
国立大学法人 東北大学
Tohoku University
- Abstract
-
加圧水型原子力発電プラント(Pressurized Water Reactor: PWR)の高経年化とともに、重要機器に使用されている Ni 基合金の応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking: SCC)が国内外で見られており、その要因の一つとして、一次系冷却水中の溶存水素(Dissolved Hydrogen: DH)の濃度が影響している可能性がある。DH 濃度が異なる高温水中に浸漬すると Ni 基合金表面には異なる性状の酸化物の層(酸化皮膜)が形成される。本実験は、これら酸化皮膜の結晶構造を調査し、DH 濃度と酸化皮膜の相関を考察することを目的とした。測定に供した試験片上の酸化皮膜は 100 nm 未満と薄いものであり、Lytle 検出器を利用した蛍光 XAFS 測定では合金素地の情報に支配されてしまうが、転換電子収量法による XAFS 測定は、酸化皮膜部分の性状の違いを考察することが可能であった。
Keywords:Ni基合金、酸化皮膜、溶存水素
a(一財)電力中央研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aCRIEPI, bJASRI
- Abstract
-
イオンを利用した新規有機発光デバイスである電気化学発光セルの発光メカニズムを明らかにするため、オペランド軟X線光電子顕微鏡により、電圧印加によって発光した状態での電気化学発光セル中の構成イオンの分布の可視化を試みた。この手法が成功すれば、電極間に生成される電気二重層の構造が明らかとなり、電気化学発光セルの高効率化・長寿命化に結び付くものと期待される。
Keywords: 電気化学発光セル、イオンダイナミクス、光電子顕微鏡
a新日本非破壊検査(株), b九州大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
a Shin-Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd., b Kyushu University, cJASRI
- Abstract
-
高温高圧下で変形している試料の放射光X線分析と AE 計測を目的として、D-DIA 型高圧変形装置に MA6-6 型 AE 測定装置を組み込んだシステムを新たに開発した。それを用いて antigorite 多結晶体と forsterite 多結晶体の変形実験を行った。本システムにより、高温高圧下で変形する試料の反応カイネティクス、応力-歪み曲線、AE 活動のその場同時観察が可能となり、それは反応誘起のせん断不安定化プロセスと深発地震の実験研究に必要不可欠なものである。
Keywords:Acoustic Emission 計測、高圧変形実験、相転移、せん断不安定化、深発地震
a東京大学物性研究所, b東京大学放射光連携研究機構, c東芝燃料電池システム(株), d(独)日本原子力研究開発機構
ISSP, The University of Tokyoa, SRRO, The University of Tokyob, Toshiba Fuel Cell Power System Corporationc, Japan Atomic Energy Agencyd
- Abstract
-
固体高分子形燃料電池の正極触媒として高い性能を有するコアシェル型の白金合金ナノ粒子触媒に対し、共鳴非弾性X線散乱を用いて電位サイクルを繰り返した電池セルのその場測定を行い、Pt の電子状態密度分布を取得した。1.2 V までの電位走査を伴う初期化処理によって、Pt-O 結合エネルギーは 2.3 eV から 2.9 eV まで増加した。次に 1.0 V 印加の加速劣化試験を行った後の状態では、Pt は酸化されたものの、Pt-O 結合エネルギーに大きな変化は見られず、初期化操作の結果として得られた触媒構造では、Pt は溶出することが無く安定であることがわかった。
Keywords:固体高分子型燃料電池、コアシェル型白金ナノ粒子触媒、共鳴非弾性X線散乱
a(公財)高輝度光科学研究センター, bESICMM/(国研)物質・材料研究機構
aJASRI, bESICMM/NIMS
- Abstract
-
硬X線光電子分光(HAXPES)を用いて、1 T 以上の残留磁化を有する着磁済み Nd-Fe-B 焼結磁石の破断面からの光電子信号の取得に成功した。バルク強磁性体の光電子計測は、残留磁化が発する漏洩磁場により光電子の飛行軌道が偏向を受け計測自体が困難であることから、積極的に行われてこなかった。我々はリング型の純鉄ヨークを用いることにより、磁石試料からの漏洩磁場を大幅に抑制した。本研究で得られた計測技術は HAXPES 計測における対象試料を拡大する。特に、HAXPES スペクトルの磁気円二色性(MCD-HAXPES)を利用した研究の利用拡大に寄与し、スピントロニクス材料の埋もれた界面の磁化状態解析への適用など、幅広い波及効果を生むことが期待される。
Keywords:硬X線光電子分光、バルク強磁性体
a東北大学、b東京大学、c宇宙航空研究開発機構
aTohoku University, bThe University of Tokyo, cJapan Aerospace Exploration Agency
- Abstract
-
構造因子 S(q) は物質の基本的な情報の一つである。近年、高輝度放射光を用いて様々な融体の S(q) が求められているが、高温融体に関しては、液体と保持容器の反応の問題が障害となり、測定が行われていない物質が多い。本研究では、静電浮遊溶解装置を用いて Rh 融体(融点 1966℃)のX線散乱測定を行い S(q) を測定した。
Keywords:液体構造、X線回折、ロジウム、静電浮遊法
aUniversity of Copenhagen, bTechnical University of Denmark, cJASRI
- Abstract
-
Biomineralization is utilised by animals to form durable yet lightweight structures, e.g. bones, teeth and shells. Here we focus on the microstructure of the exoskeleton of the heart urchin because of its unusual strength. This species shares many features with sea urchins but deviates in appearance because it has adapted to withstand high pressures because it is buried in the sand.
Keywords: Sea urchin, materials properties, biomineralization
a長崎大学, bラトックシステムエンジニアリング株式会社
aNagasaki University, bRatoc System Engineering Co., Ltd.
- Abstract
-
大腿骨頭壊死症に対して放射光吸収X線CTを用いて骨微細構造の解析を行った。当院で手術を行った6例を対象とし、手術で摘出した大腿骨頭から標本を抽出した。撮影した画像から関心領域を壊死層、修復反応層、健常層に設置し、骨密度、骨梁体積密度、骨梁幅、骨梁数、骨梁間距離を解析した。各層での比較を行ったところ、修復反応層では骨密度、骨梁体積密度、骨梁幅において壊死層、健常層よりも有意に高値であった。大腿骨頭壊死症では修復反応層で骨梁構造が肥厚していることが明らかとなった。
Keywords:大腿骨頭壊死症、骨微細構造、修復反応層、放射光吸収X線CT
a兵庫県立大学, b(国研)日本原子力研究開発機構, c(公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bJAEA, cJASRI
- Abstract
-
5 f 電子系の重い電子化合物である URu2Si2 は隠れた秩序相を示すが、これと競合すると考えられている反強磁性秩序相の電子構造を調べるために、高分解能コンプトン散乱の二次元再構成実験を行い、2次元電子占有数密度を求めた。隠れた秩序相と反強磁性相の2次元占有数密度を比較すると、構造的特徴が似ており電子構造に大きな違いがないと考えられる。
Keywords:Rh 置換 URu2Si2、コンプトン散乱、2次元電子占有数密度
a Kyoto University, b Japan Synchrotron Radiation Research Institute, SPring-8
- Abstract
-
In this report, we present the characterization of CaCoIVO3 perovskite thin films prepared from the oxidation of CaCoIIIO2.5 brownmillerite films using a NaClO solution. The oxidation state and octahedral coordination of cobalt in CaCoO3 is confirmed by comparing with that of SrCoO3 via Co-L2,3 edge soft X-ray absorption spectroscopy.
Keywords: Perovskite, Topochemistry, Cobalt
(公財) 高輝度光科学研究センター
Japan Synchrotron Radiation Institute
- Abstract
-
BL43IR では高輝度赤外放射光を光源として利用する赤外近接場分光装置の開発を行っている。空間分解能評価のためのテスト試料として Si 基板上の金薄膜を利用した測定では、波長 10.6 〜11.0 µm の領域で空間分解能200 nmを達成していた[1]。本研究では、装置の光学系改造を行い、スペクトル領域の拡大を達成し、さらに、Si-O、Si-C に由来するピーク構造の観測も可能になったので報告する。
Keywords:赤外放射光、赤外近接場分光
a 東京都市大学, b (公財)高輝度光科学研究センター
a Tokyo City University, b JASRI
- Abstract
-
SiO2/SiC に及ぼすプラズマ窒化処理の影響を角度分解X線光電子法により調べた。まず、SiC 表面がプラズマ窒化されるかを調べ、4H-SiC の Si 面および C 面とも窒化されることを確認した。その後、熱酸化により酸化膜を形成した SiO2/SiC をプラズマ処理したところ、表面がわずかに窒化されるものの SiO2/SiC 界面までは窒素が拡散しないことを明らかにした。
Keywords:プラズマ窒化処理、SiC、角度分解光電子分光法
(国研)理化学研究所
RIKEN
- Abstract
-
我々はタンパク質の結晶構造解析においてエネルギーバンド幅の異なるX線を利用した回折実験をSACLAで行った。その結果、得られた回折データをうまく処理するためにはエネルギーバンド幅が回折データに与える影響を調査する必要があると考え、BL40XU において凍結タンパク質結晶のデータ収集とその評価を行った。
Keywords: タンパク質結晶構造解析、ピンクビーム、シリアル結晶構造解析
兵庫医療大学薬学部
School of Pharmacy, Hyogo University of Health Sciences
- Abstract
-
新たに開発した蛍光 DNA センサーの DNA 検出メカニズムを原子レベルで解明することを目的として、センサー分子- DNA 複合体の単結晶作成およびX線結晶構造解析を試みた。種々の短鎖 DNA を用いて、センサー分子共存下で結晶化を行ったところ、2種の単結晶が得られたため、それらを放射光を利用したX線結晶構造解析に供した。
Keywords:DNA、蛍光 DNA センサー、X線結晶構造解析
a京都大学原子炉実験所, b京都大学工学研究科
a Research Reactor Institute, Kyoto University, b Graduate School of Engineering, Kyoto University
- Abstract
-
新しい Na イオン伝導体として Na10GeP2S12 ガラスをメカニカルアロイング法によって合成した。高エネルギーX線回折実験から得られた全相関関数 T(r) には P-S 相関と Ge-S 相関が重なり合った第1ピーク、Na-S 相関に帰属される第2ピークが観測され、pair function 法による配位数解析の結果から、ガラスの短距離構造ユニットとして PS4 四面体と GeS4 四面体が存在し、Na イオンは4配位だけではなく5配位の配位形態も取り得ることが明らかになった。
Keywords: イオン伝導体、高エネルギーX線回折、二体分布関数解析、メカニカルアロイング法
日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター
Japan Atomic Energy Agency
- Abstract
-
水、有機溶媒に続く第3の溶媒として注目されているイオン液体について、イオン液体/電極界面の構造をX線反射率測定により検討することを試みた。X線反射率プロファイルの測定および反射率強度の電極電位依存性を測定した。しかしながら得られた結果は、今回の実験方法では、界面の構造よりも、入射X線の位置の変化に起因する入射光強度の変化を反映したものであることがわかり、今後測定方法について再検討する必要があることがわかった。
Keywords: イオン液体、電極/電解液界面、X線反射率
aUniversity of Saskatchewan, bUniversity of Ottawa, cCanadian Light Source
- Abstract
-
In-situ powder X-ray diffraction patterns of a dense mixture of elemental Li and molecular nitrogen in a diamond anvil cell were recorded using synchrotron radiation. From the changes in the X-ray diffraction features, the formation of molecular complexes was observed at very low pressure. Upon a compression to above 4 GPa in conjunction with annealing by laser heating, an almost uniformly distributed single phase was observed. The X-ray diffraction patterns cannot be explained by any known phases of Li-2 system. The X-ray diffraction pattern, however, bears similarities with that of the theoretically predicted hexagonal LiN3 structure, composed of unusual “N6” rings.
Keywords: High-pressure, high-temperature, nitrogen, lithium, powder X-ray diffraction
aNational Institute for Materials Science, bThe University of Tokyo, cTohoku University, dOsaka University, eJASRI
- Abstract
-
We have performed the measurements of the sound velocities of fcc-FeHx and fcc-Fe by using a pulse-echo overlap technique at high pressures and high temperatures at BL04B1. The P-wave velocity (VP) of fcc-FeHx (x~0.4) at approximately 12.0 GPa and 900 K was same as that of fcc-Fe, indicating no hydrogen effect on VP of fcc-Fe under that pressure-, temperature-, and hydrogen-conditions.
Keywords:sound velocity, iron hydride, high pressure, ultrasonic method
a京都大学, b東京大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
aKyoto University, bThe University of Tokyo, cJASRI
- Abstract
-
カンラン岩に含まれる 1 µm 大の白金族元素含有硫化物粒子を、マイクロビームX線回折によって鉱物学的に同定することを試みた。X線 CT による三次元撮像で対象粒子の位置を把握しつつ、硫化物粒子にマイクロビームの焦点をあててX線回折パターンを取得した。しかし、得られた回折ピークは、ホストである単斜輝石に由来するもののみであった。実験後、分析箇所を集束イオンビーム装置で切り出し透過型電子顕微鏡で観察したところ、対象粒子が 100 nm 以下の複数種の硫化鉱物の離溶ラメラで構成されていることが判明した。このことが、対象粒子からの回折線を検出できなかった原因であると考えられる。
Keywords:マイクロXRD、マントル、カンラン岩、白金族元素
a東京大学, b京都工芸繊維大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
aThe University of Tokyo, bKyoto Institute of Technology, cJapan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI)
- Abstract
-
配位ナノシートの一つであるビス(ジイミノ)ニッケル錯体ナノシートの Ni K 吸収端について XAFS 測定を行い、金属錯体部位の局所構造の解明を行った。得られた動径構造関数プロットをフィッティングすることで中心金属の Ni と近接する原子(N および C)との距離を算出し、目的の金属錯体構造が形成されていることを明らかにした。
Keywords:配位ナノシート、金属錯体、XAFS
a東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
a Laboratory for Chemistry and Life Science, Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology, bJASRI
- Abstract
-
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のためのホウ素薬剤候補分子であるホウ素化コレステロールの細胞内局在を BL37XU での蛍光X線イメージング(XRF)により明らかにすることを目的とした。Prolene film (厚さ 4 µm)上に HeLa 細胞を接着させ、ヨウ素を標識したホウ素化コレステロールを処理後、固定化することで、測定サンプルを調整した。ヨウ素の細胞内局在を XRF により観測したところ、測定中に細胞固定化フィルムの破断が生じ、ヨウ素の細胞内局在の解明には至らなかった。
Keywords:ヨウ素、ホウ素クラスター、細胞内局在
兵庫県立大学 大学院生命理学研究科
Graduate School of Life Science, University of Hyogo
- Abstract
-
[NiFe]ヒドロゲナーゼの酸素耐性獲得には[4Fe-3S]-6Cys型近位鉄硫黄クラスターが重要だと考えられているが、[4Fe-4S]-4Cys型鉄硫黄クラスターを持つ Citrobacter sp.S-77(S-77) 由来膜結合ヒドロゲナーゼは酸素存在下でも触媒活性を示した。本課題では、構造生物学的観点からヒドロゲナーゼの酸素耐性機構獲得のための普遍則を明らかにすることを目指した。
Keywords:[NiFe] ヒドロゲナーゼ,鉄硫黄クラスター,酸素耐性
a大阪府立大学大学院,b(公財)高輝度光科学研究センター,c(公財)特殊無機材料研究所
aOsaka Prefecture University, bJASRI, cAdvanced Institute of Materials Science
- Abstract
-
1000-1200℃、空気流通環境下で、各種の SiC 系繊維の耐クリープテストを行い、酸化雰囲気下であっても、結晶性の高い繊維はアモルファスに近い繊維よりも耐クリープ性に優れることが示された。赤外透過光による繊維セラミックス化の検討を行ったところ、セラミックス化に伴う屈折率の増加、また余剰炭素の増減による透過率の変化が取得スペクトルの形態に大きな影響を及ぼすことが確認された。
Keywords:セラミックス繊維、焼成、焼結、顕微赤外分光、高輝度光
a大阪大学, bメリーランド大学, c名古屋大学, d愛媛大学
aOsaka University, bUniversity of Maryland, Baltimore County, cNagoya University, dEhime University
- Abstract
-
ほとんど全ての銀河の中心に巨大ブラックホールが存在するが、その成長過程はよくわかっていない。その成長過程を観測的に解明するには、高角度分解能の硬X線観測が重要であり、そのために我々は 15 秒角より優れた高角度分解能で大面積の硬X線望遠鏡の実現を目指している。現在、シリコン結晶薄板を用いたX線反射鏡の開発に取り組んでおり、初めて製作された2回反射型1ペアモジュールの性能を、15 keV と 30 keV のX線を用いて BL20B2 で評価したところ、モジュールのほぼ全面において、目標の 15 秒角より優れた角度分解能が達成されていることがわかった。
Keywords: X線天文学、X線望遠鏡
a(公財)元興寺文化財研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター, c高知大学, d広島大学
aGangoji Institute for Research of Cultural Property, bJASRI, cKochi University, dHiroshima University
- Abstract
-
琥珀の主成分は高分子有機化合物であり、これまでの出土琥珀の産地推定は主成分である有機物の分析により実施されてきた。しかし、有機物の化学変化による劣化などの影響により産地推定が困難な場合が多いことが分かってきた。そのため、琥珀に含まれる微量の無機元素に着目し分析することで産地推定を試みた。元素分析は放射光蛍光X線分析により実施した。その結果、標準試料と出土資料のいずれにも土壌に由来すると見られる微量の無機元素が検出された。
さらに標準琥珀について、産地ごとの検出元素の傾向を調べた。その結果、検出元素に幾分ばらつきはあるものの一定の傾向がみられることがわかった。
Keywords: 出土琥珀、放射光蛍光X線分析、産地推定、微量元素
福井県立恐竜博物館・福井県立大学恐竜学研究所
Fukui Prefectural Dinosaur Museum; Institute of Dinosaur Research, Fukui Prefectural University
- Abstract
-
泥質岩中に交連した状態で保存され、剖出作業が困難な日本産中生代哺乳類化石の解剖学的特徴の解明のため、屈折コントラスト法によるX線CT撮影の実験を行った。得られたエッジ強調コントラスト画像では、通常のX線吸収コントラスト画像では判別し難い骨の接合部や形状の判断、歯冠の微細な構造の明確化、さらに母岩の凝結物と目的の骨化石との区別が容易となる。本標本においては、X線吸収コントラスト画像にこの手法による観察を加えることで、より有意な解剖学的特徴の情報が得られることが確認できた。
Keywords:屈折コントラスト法、位相差、脊椎動物化石、CT
兵庫県立大学 大学院生命理学研究科
Graduate School of Life Science, University of Hyogo
- Abstract
-
[NiFe]ヒドロゲナーゼは一般的に酸素によって失活するが、近年、酸素に対して耐性を持つものが見つかってきている。これまで[NiFe]ヒドロゲナーゼの酸素に対する反応性の違いは、鉄硫黄クラスターの構造変化の違いにのみ注目して説明されることがほとんどであったが、Desulfovibrio vulgaris Miyazaki F 株(DvMF)由来の標準型[NiFe]ヒドロゲナーゼに関して、酵素が酸素に曝された際に、活性部位を構成する Ni 原子の占有率が低下することが報告された。本研究では、酸素と反応した際の[NiFe]ヒドロゲナーゼの活性部位での構造変化についてさらに詳しく調べることを目指した。
Keywords: [NiFe] ヒドロゲナーゼ,Ni-Fe 活性部位
大阪大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Osaka University
- Abstract
-
窒素は地球上の生命にとって必須元素であり、その自然界での循環を分子レベルで理解することは意義深い。最近の全ゲノム解析により、従来の脱窒過程だけでなく嫌気的アンモニア酸化過程においても新たな銅含有亜硝酸酸還元酵素が見つかった。本実験では、その構造遺伝子に着目し、そのタンパク質について結晶化と予備的X線回折実験を行った。
Keywords: 金属酵素、銅蛋白質
京都産業大学
Kyoto Sangyo University
- Abstract
-
真核生物においてタンパク質の誤配送は細胞毒性を引き起こすため、細胞内には誤局在したタンパク質を速やかに除去する機構がある。ミトコンドリア外膜に局在する AAA-ATPase Msp1 は、ミトコンドリア外膜に誤って挿入したテイルアンカー型タンパク質を膜から引き抜く機能を持つ。本研究は、Msp1 のX線結晶構造解析を行い、この基質を膜から引きずり出す仕組みを構造生物学的に解明することを目的とした。これまでに、Msp1 の AAA-ATPase ドメインの結晶を得ることに成功し、3.0 Å 分解能の native データおよび 3.5 Å 分解能の Se-SAD データを取得した。
Keywords: ミトコンドリア、AAA-ATPase、Msp1
a香川高等専門学校,b東洋炭素株式会社,c(公財)高輝度光科学研究センター
aNational Institute of Technology, Kagawa College, bToyo Tanso Co., Ltd., cJASRI/SPring-8
- Abstract
-
O/Nb 比が 2.5, 2.6 および 2.7 を持つ非晶質酸化ニオブ薄膜 (a-NbOx) を用いた光電気化学特性を評価した結果、O/Nb 比が大きい程高い性能を示した。各 a-NbOx の構造モデルを得るために、高エネルギーX線回折 (HEXRD) 測定によって得られる構造因子や、広域X線吸収微細構造 (EXAFS) 振動、Bond valence sum (BVS) を拘束条件とした逆モンテカルロ法 (RMC) シミュレーションを試みた。RMC モデルより、NbOn 多面体のネットワークは O/Nb 比が増加する程、頂点共有から稜共有や面共有へ移行する傾向が確認され、面共有を多く持つ薄膜ほど、光電気化学特性の性能が高いことが示唆された。
Keywords: Photoelectrochemistry, Structural analysis, Amorphous film, Niobium oxide, Synchrotron radiation, High-energy X-ray diffraction, X-ray absorption fine structure, Reverse Monte Carlo simulation, Bond valence sum
a鹿児島大学, b防衛大学校
aKagoshima University, bNational Defense Academy
- Abstract
-
本研究では、アモルファス窒化炭素薄膜でみられる光誘起変形現象の起源の解明を目的とし、BL43IR を用いて可視光照射時の化学結合状態を調べた。その結果、化学結合状態を反映する赤外スペクトルの形状が、試料表面の測定箇所により、可視光照射中と未照射時で異なることが明らかとなった。また、測定温度によっても変化することがわかった。
Keywords:アモルファス、窒化炭素、化学結合状態、光誘起変形、赤外分光
a(株)トーキン, b(公財)高輝度光科学研究センター
aTokin Corporation, bJASRI
- Abstract
-
本研究の目的は、当社の高周波用 MnZn フェライト(B40)の磁区構造を観察することにより、従来品と比較して高周波で優れた低損失特性を示す起源を解明し、さらなる高特性材料開発の指針構築とすることにある。
分光型低エネルギー電子・光電子顕微鏡装置(SPELEEM、BL17SU)[1] を用い、磁区観察を行った。その結果、B40 材は結晶粒径が約 3 μm、磁区サイズも約 3 μm と小さいことがわかった。磁区サイズが小さいことより、磁壁密度は増える。磁壁密度が増えると磁壁は単位磁場当たりの移動距離が短かくなる。それにより、残留損失の一部と思われる、磁壁内で発生する異常渦電流損失の低減が図れ、また、結晶粒径が小さいことより、渦電流損失の低減が図れたものと推察される。
Keywords:磁区構造、損失、高周波、X線・軟X線吸収分光
a岡山大学異分野基礎科学研究所, b大阪市立大学複合先端研究機構
aRIIS, Okayama University, bOCARINA, Osaka City University
- Abstract
-
光合成の水分解反応を行っている光化学系 II 蛋白質の活性中心 Mn4CaO5 クラスターは III と IV 価の混合原子価状態と考えられているが、各 Mn の価数の議論はまだ結論がついていない。本研究は、Mn のX線吸収端が価数に応じてシフトすることに着目し、X線吸収に依存する異常分散項の電子密度差電子密度マップを用いて各Mnの価数を分析した。その結果、K-吸収端波長領域において、各 Mn の価数に応じた変化を明らかにした。
Keywords:光合成、金属蛋白質、Mn クラスター、価数、異常分散項差電子密度マップ
a広島市立大学, b宇部工業高等専門学校, c(公財)高輝度光科学研究センター, d熊本大学, e名古屋工業大学, f自然科学研究機構分子化学研究所, g奈良先端科学技術大学院大学
a Hiroshima City University, b NITUC, cJASRI, d Kumamoto University, eNagoya Institute of Technology, fUVSOR, gNAIST
- Abstract
-
強磁性半導体 Ge1-xMnxTe の光電子ホログラム測定を行った。948 eV の励起光に対して、運動エネルギーが 900 eV の光電子放出強度の角度分布を測定して、Te 4d 光電子回折パターン(光電子ホログラム)の取得に成功した。得られたホログラムより Te 周辺の原子像を再生したところ、Te のサイトに原子位置の揺らぎがあることが分かった。この結果は蛍光X線ホログラフィーの結果と一致する。
Keywords: 光電子ホログラフィー、強磁性半導体、スピントロニクス材料
a東京工業大学, bメリーランド大学, c(国研)物質・材料研究機構/SPring-8
aTokyo Institute of Technology, bUniversity of Maryland, cNIMS/SPring-8
- Abstract
-
本研究は、電界印加下時間分解放射光X線回折法を用いて、反強誘電体エッジ組成が示す巨大な圧電性について調査を行った。その結果、電界を印加することで反強誘電相は強誘電相へ相転移を起こし、それらは可逆的に動作することが理解できた。しかしながら、全てのドメインが相転移を起こしている訳ではなく、一部にとどまった。相転移が引き起こす歪みから計算した圧電定数は最大で 240 pm/V になることが分かった。
Keywords:圧電特性、強誘電体、反強誘電体、電界誘起相転移
aCROSS 東海事業センター, b熊本大学, c大阪大学, dSPring-8/JASRI
aCROSS, bKumamoto University, cOsaka University, dSPring-8/JASRI
- Abstract
-
コンテナレス・ガス浮遊超高温X線回折法を用いて高融点を持つ ZrO2 の融点までの構造解析を行った。高温での激しい粒成長のため二次元IP検出器による放射光迅速測定を行った。正方晶 ZrO2(空間群 P 42 /nmc, Z = 2)の格子定数、熱膨張および c/a 軸率等を決定した。正方晶相から立方晶相への相転移点は 2430-2540℃ の間である。2200℃ を超えると相転移の前兆現象が観測される。正方晶相から立方晶相への転移点では明確な格子体積変化は観察されない。我々は正方晶相と立方晶相との間の P/T 相境界は負の勾配ではないと提案する。
Keywords: ガス浮遊超高温X線回折法、高融点材料、pure-ZrO2、ジルコニア、正方晶ZrO2、立方晶ZrO2、相転移温度、格子定数、熱膨張、軸率c/a、転移の前兆現象、P/T相境界、クラペイロン勾配
a AIST, b QST, c JAEA, d Kyushu University
- Abstract
-
To understand the hydrogen storage properties of CaLi2-xMgx having a C14 Laves phase structure, changes in its average and local structures by hydrogenation were investigated by using the Rietveld and the atomic pair distribution function analyses of X-ray diffraction data. We found that after hydrogen uptake at 283 K, Mg-containing samples exhibit a C14 phase with reduced volume. This C14 phase readily decomposes into CaH2 at temperatures higher than 300 K. Our study suggests that hydrogen absorption in CaLi2-xMgx at 283 K is multi-step reaction. Lithium that can easily diffuse through C14 crystals reacts with hydrogen forming a Li-rich hydride phase. On the other hand, slow diffusion of large Ca atoms and strong Mg-Mg and Mg-Ca interaction restrain the immediate formation of CaH2. As a result, there is a substantial time lag between the formation of a Li-rich hydride phase and the formation of CaH2 at 283 K. This brings about a C14 phase with reduced volume where a large number of Li vacancies are present immediately after hydrogenation.
Keywords: C14 Laves phase, hydrogen absorbing materials, X-ray diffraction, atomic pair distribution function
兵庫県立大学
University of Hyogo
- Abstract
-
トバモライトを主成分とする吸着材を合成し、セシウムイオンを吸着した吸着材について EXAFS 測定を行った。その結果、セシウムはトバモライトの層間に位置する酸素8員環の中心位置に内圏錯体として捕捉されている可能性が高いことが示唆された。さらに、この測定結果を元に b 軸方向に結晶成長させた吸着材を合成した結果、市販のトバモライトに比べて2倍以上の陽イオン交換容量を示す吸着材を得た。本吸着材を福島県南相馬市の汚染土壌からのセシウム除去に適用した結果、水だけによる洗浄よりも優位な洗浄効果を確認した。
Keywords: セシウム、吸着材、トバモライト、構造解析
a兵庫県立大物質理学研究科, b(公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bJASRI
- Abstract
-
近年、真空中での溶液あるいは液体状態の分光が注目され、水(液体)、アルコール(液体)、溶液の光電子スペクトル、軟X線発光スペクトル、内殻吸収スペクトルなどが測定されてきた。本研究では超音波振動による微少液滴生成技術を利用し、水溶液内のアミノ酸の軟X線吸収スペクトル測定を試みた。その結果、軟X線領域では、液滴の窓への付着、超音波噴霧の不安定性により、十分なS/N測定には、様々な改良が必要なことがわかった。
Keywords: 微少液滴、超音波振動、軟X線、吸収スペクトル
a(国研)海洋研究開発機構, b高知大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
aJAMSTEC, bKochi University, cJASRI
- Abstract
-
本研究では SPring-8 の高空間分解赤外顕微分光装置を利用した非破壊アプローチによる微生物のドメイン情報取得を行うことを目指した。大腸菌、およびメタン生成菌を標準試料とした分析を実施したところ、微生物細胞が複数集積した箇所では安定した測定結果が得られたものの、細胞密度の低いところでは結果のばらつきが大きく、ドメイン判定が困難であった。
Keywords: 赤外顕微分光、海底下生命圏、ドメイン識別
滋賀県立大学
University of Shiga Prefecture
- Abstract
-
トマトに含まれる色素のオール trans 型リコピンの微結晶を作成し、BL02B1 ラインで高エネルギーX線照射による単結晶構造解析を行った。ディスオーダーした分子構造が見られ、R 値は 13% 台になった。分子中の11個の連続するポリエン鎖は、メチル基の立体反発を示すように湾曲しており、また完全な平面でなくねじれた構造をしていることが明らかになった。結晶構造において、分子はポリエン鎖が π-スタッキング相互作用を行うように配置しており、固体状態において光分解しやすい実験事実が裏付けられた。
Keywords: リコピン、分子構造、結晶構造
a帝京大学,b東京慈恵会医科大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
aTeikyo University, bThe Jikei University, cJASRI/SPring-8
- Abstract
-
ウサギ骨格筋から作成した skinned fiber の high-Ca rigor 状態での ramp-shaped release に対する力学的反応時の構造変化を X-ray diffraction の技法によって調べたところ、EDTA(10mM)の有無に関わらず、(1)赤道反射強度比[I(1,1)/I(1,0)]と 1,0 反射の間隔(spacing)は release 後では有意に増大した。(2)actin 由来 5.9 nm 層線は赤道線方向の lateral spacing が 0.05/nm より内側では強度変化は殆ど見られないのに対して 0.05/nm より外側では強度が低下した。Actin 由来層線の強度分布は、子午線から遠ざかるにつれて、アクチンフィラメントのらせん軸により近い部分の構造を反映する。したがって、ramp-shaped release により変化するのは、アクチンに結合するミオシン頭部のアクチン結合部位付近の微細構造と考えられた。
Keywords:骨格筋、high-Ca 硬直状態、low-Ca 硬直状態
a名城大学理工学部, b(公財)高輝度光科学研究センター
aMeijo University, bJASRI
- Abstract
-
低抵抗 p 型伝導性制御を期待される高品質の窒化物系混晶半導体 GaN1-xSbx を実現する目的で、有機金属気相成長法で成長した Sb 添加 GaN 中の Sb 原子近傍の局所構造をX線吸収微細構造法で評価した。その結果、Sb 原子近傍の動径分布関数が、GaSb 基板のものとは異なり、第一近接原子である Ga の信号も一致しなかったことから、Sb 添加 GaN 中のほとんどの Sb は GaN 中の V 族元素の N 原子を置換していないと考えられる。
Keywords: 窒化物系混晶半導体、Sb、相分離、X線吸収微細構造法
a三重県警察本部科学捜査研究所, b京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻
a Forensic Science Laboratory, Mie Prefectural Police H. Q., b Department of Environmental Engineering, Graduate School of Engineering, Kyoto University
- Abstract
-
自動車タイヤゴム試料について、XAFS によるイオウの存在状態分析によって走行距離の推定が可能か検討した。実車で 2700 – 20000 km走行したタイヤのゴムを試料とし、そのイオウの存在状態を分析した。試料は蛍光収量法で測定した。XAFS の結果から、走行距離が大きくなるほど酸化がすすむ傾向がやや見られたものの、各走行距離内で大きくばらついていた。そのため、20000 km 程度以内の走行距離では蛍光収量法によるイオウの存在状態から走行距離を推定することは困難であると考えられた。
Keywords: 科学捜査、XAFS、交通事故、イオウ
a東北大学多元物質科学研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aIMRAM, Tohoku University, bJASRI
- Abstract
-
単一の結像素子のみで定量的な微分干渉像が得られるX線顕微鏡を構築するため、対物フレネルゾーンプレートにヒルベルト位相フィルターを作用させる光学系での実現可能性を調べた。位相反転による集光ビームのスプリットを確認し、結像光学系に適用した。部分コヒーレント照明、インコヒーレント照明系に於いて像特性を調べたところ、位相敏感効果は観測できたものの、定量的な微分位相像を得るまでには至らなかった。
Keywords: X線顕微鏡、位相イメージングCT
東京大学 物性研究所
Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
- Abstract
-
層状オキシセレナイド La2Fe2Se2O3 および LaCuSeO を交互に積層した新物質 La4Fe2+xCu2–xSe4O5 (x = 0.5、1.0、1.5)の合成に成功した。ヘテロ構造の形成に伴う物性の変化が期待されたが、同物質の磁性は La2Fe2Se2O3 と比べてほぼ変化がなかった。この起源を探るべく粉末X線構造解析を行った結果、x の増大に伴い Cu サイトの欠損が生じ占有率が低下することが明らかとなった。また Fe サイト周囲の結合距離や結合角は x に依らず La2Fe2Se2O3 とほぼ同等であったことから、積層化によっても磁気相互作用がほぼ変化せず同様の磁性を示すと考えられる。
Keywords: オキシセレナイド、結晶構造解析、Intergrowth 化合物
a兵庫県立大学, b (公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bJASRI
- Abstract
-
発光色の異なる同形の Cu(I) と Ag(I) の六核金属錯体の組み合わせについて、Cu(I) 錯体の基板結晶表面に Ag(I) 錯体をクロロホルム溶液から結晶粒として成長させた試料に、X線マイクロビームを照射して回折像を測定し、表面結晶粒と基板結晶の方位測定と単結晶構造解析を行った。その結果、それぞれ既知構造と一致し、測定した4つの表面結晶粒と基板結晶の結晶方位が、1つの結晶粒を除いて、4.4˚ 以内で一致することを明らかにした。
Keywords: 放表面結晶、界面構造、エピタキシャル成長、単結晶X線構造解析、X線マイクロビーム、発光性多核金属錯体
aUniversity of Copenhagen, bTechnical University of Denmark
- Abstract
-
We have used X-ray nanotomography to image spines of three different sea urchin species to complement previously acquired microtomography data and study the hierachical structure of the spines.
Keywords: X-ray nanotomography, sea urchins, biotemplating
a京都大学大学院理学研究科化学専攻, b(公財)高輝度光科学研究センター
aDivision of Chemistry, Graduate School of Science, Kyoto University, bJASRI
- Abstract
-
一次元ハロゲン架橋遷移金属錯体 (MX-chain) は金属イオンとハロゲン化物イオンが直線状に交互に並んだ理想的な一次元構造を持つ錯体であるが、近年、一次元鎖を有機配位子で連結して次元性を拡張したMX錯体の研究が注目を集めている。本研究では、あみだくじ状の構造を持つ二次元シート型 MX 錯体について、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下での粉末X線回折測定を行い、その構造及び電子状態の変化を検証した。
キーワード: MX錯体、低次元化合物、高圧、X線結晶構造解析
a京都大学, b中部学院大学
aKyoto University, bChubugakuin University
- Abstract
-
二次象牙質の蓄積量やセメント質の層構造などの、歯牙内部の微細構造は、霊長類を含めた哺乳類の年齢推定に用いられる。しかし、現在のところ破壊的な観察方法しか存在しないため、CT 撮影によりこれが非破壊的に観察可能かどうかを調べた。二次象牙質はその境界を明瞭には観察できなかったが、セメント質の層構造は、個体によっては、観察することができた。実験後の被写体を従来方法で観察し、今回の結果と比較することにより、従来から観察されてきた層構造と同一のものを、非破壊的に観察できていることが確認された。
Keywords: 象牙質、セメント質、年齢推定、CT
兵庫県立大学 大学院生命理学研究科
Graduate School of Life Science, University of Hyogo
- Abstract
-
ヒドロゲナーゼは水素の分解・合成反応を触媒する金属酵素である。本実験では、硫酸還元菌 Desulfovibrio vulgaris Miyazaki F 株由来の[NiFe]ヒドロゲナーゼを対象として、還元型、空気酸化型および強制酸化型の3つの酸化還元状態について、水素原子の位置決定も含めたそれぞれの反応中間体の高精度結晶構造解析を目指した。
Keywords: [NiFe] ヒドロゲナーゼ、 金属酵素、酸化還元
a大阪大学産業科学研究所, b近畿大学, c岡山大学, d株式会社微生物化学研究所
aISIR, Osaka University, bKindai University, cOkayama University, dInstitute of Microbial Chemistry
- Abstract
-
Angucycline 抗菌化合物 aquayamycin の結合部位を決定するため、大腸菌センサーヒスチジンキナーゼ EnvZ DHp ドメインの結晶を調製し、同化合物でソーキングした。Aquayamycin の結合によって茶褐色に変色した結晶について、X線結晶構造解析を行った。しかしながら、電子密度マップ上で、aquayamycin に対応する電子密度は認められなかった。また、Angucycline 抗菌化合物 waldiomycin に対して親和性が低下する S242A 変異型 EnvZ の DHp ドメインに関しても、X線結晶構造解析により構造決定した。
Keywords: ヒスチジンキナーゼ、X線結晶構造解析、新規抗菌薬
大阪大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Osaka University
- Abstract
-
C1 資化性脱窒菌 Hyphomicrobium denitrificans の亜硝酸還元酵素(HdNIR)は、一次構造上、一般的な銅含有亜硝酸還元酵素と相同なカルボキシ末端側ドメイン(C ドメイン、分子量 ~35 kDa)とブルー銅蛋白質に相同なアミノ末端側ドメイン(N ドメイン、~12 kDa)を併せ持ち、C ドメイン単独でも生理的電子供与体シトクロム c から電子を受け取って十分な酵素活性を示すことがわかっている。本研究では、まだ機能が未知な N ドメインとそこに存在するタイプ1銅(T1CuN)の役割を解明することを目的に、T1CuN 配位アミノ酸残基に変異を入れ銅の酸化状態を固定した試料を用い、その構造や機能について簡単な調査を行った。
Keywords: 金属酵素、銅蛋白質、マルチドメイン、酸化還元
a東北大学金属材料研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aIMR Tohoku University, bJASRI/SPring-8
- Abstract
-
BL43IR に既設の無冷媒超伝導マグネットを活用し、磁場中赤外顕微分光測定系を改良することで、信号強度の大幅な増大と測定可能エネルギーの遠赤外光領域への拡張に成功した。また、クライオスタットを新造更新し、冷媒の消費量を大幅に抑えることができた。これらの結果により、本ステーションは、低温(~ 4 K)、強磁場(~ 14 T)の環境下で、200-10000 cm-1 程度の幅広い赤外光学スペクトルを再現性よく安定的に得ることができる貴重な測定系となった。
Keywords: 強磁場、低温、赤外、顕微分光
SPring-8 Section B: Industrial Application Report
a宇都宮大学, b(公財)高輝度光科学研究センター, cライオン(株)
aUtsunomiya University, bJASRI, cLion Corporation
- Abstract
-
固/水界面に対する微小角入射X線回折(GIXD)測定システムを構築し、毛髪表面に存在する官能基を疎水鎖末端に持つ有機シラン化合物で表面修飾したシリコンウエハと界面活性剤水溶液の界面に形成される吸着膜の構造を評価した。本研究で用いた界面活性剤分子は、固/水界面で緻密に充填した結晶状態で吸着膜を形成しており、その充填構造は、試料セル内水溶液の超純水による置換(すすぎ洗いに相当)によっても、今回の置換量の範囲内では維持されることがわかった。
Keywords:固/液界面、微小角入射X線回折法、界面活性剤、毛髪コンディショナー、 吸着膜
a南洋理工大学, b京都大学
aNanyang Technological University, bKyoto University
- Abstract
-
芳香族炭素−水素(C–H)結合の活性化に触媒活性を有する低原子価コバルト化学種の酸化状態,配位構造等に関する知見を得るべくXAFS解析を行った。コバルト(II) 塩、配位子、有機マグネシウム反応剤から調製される触媒溶液について Co K-edge の XANES および EXAFS 測定を行ったところ、有機マグネシウム反応剤の添加に伴ってコバルトの還元が起こり、最終的に Co(0) または Co(−I) まで還元されることが示唆された。
Keywords:コバルト錯体,均一系触媒反応,XAFS
a宇都宮大学, b(公財)高輝度光科学研究センター, cライオン(株)
aUtsunomiya University, bJASRI, cLion Corporation
- Abstract
-
毛髪コンディショナー成分(界面活性剤)の水溶液に浸漬したシリコンウエハとの界面に形成される吸着膜の構造について、X線反射率法により検討した。界面活性剤としては、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを基本成分とし、ベヘニルアルコールおよびステアリルアルコールを添加物として用いた。塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム水溶液ならびにそれぞれの長鎖アルコールを添加した水溶液から形成される吸着膜に対して、超純水による洗浄の程度に依存した膜構造の変化に着目した。長鎖アルコールの添加は、吸着膜の構造を変化させ安定化の向上に寄与することが示唆された。
Keywords:固/液界面、X線反射率法、毛髪コンディショナー、界面活性剤、吸着膜
(株)豊田中央研究所
Toyota Central R&D Labs., Inc.
- Abstract
-
広域X線吸収微細構造(EXAFS)解析で得られる平均配位数に基づいて、バイメタリックナノ微粒子(BNP)の表面元素比率を評価することを試みた。BNP を構成する2元素が金属状態であることが求められるため、Pd、Pt ともに金属状態で存在する Pd–Pt BNP の実測データを用いて表面 Pd/Pt 比を見積もった。透過電子顕微鏡観察・エネルギー分散型X線分光分析の結果と無矛盾な結果(即ち Pt が BNP 表層に濃化していることを示す結果)が得られた。
Keywords:バイメタリックナノ微粒子,EXAFS解析,原子分布
(株)住化分析センター 技術開発センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center
- Abstract
-
リチウムイオン電池(LiB)電極は、その構造が複雑であるが、放射光X線 CT を活用することで合剤内部構造の解析が期待できる。すなわち、放射光の特徴である細く絞られ拡がりにくい光による高空間分解能ならびに単色X線による高コントラスト化の両立による微細空隙部分の可視化である。しかし、一般的な活物質である黒鉛を使用した負極を解析する場合、試料が非常に脆く、高分解能観察用に短冊化する事が難しい。そこで、我々は、シリコーン樹脂で電極空隙部を包埋する事で、合剤部分を強化し、かつ活物質と空隙部分のシリコーン樹脂との線吸収係数の差から空隙解析も容易になるのではないかと考えた。しかしながら、本法では、合剤部分を固定化する以外に画像解析上の利点を見出せなかった。
Keywords:リチウムイオン電池、負極、CT、シリコーン樹脂
ソニー株式会社
Sony Corporation
- Abstract
-
レーザダイオードの発光特性には、チップに加わる応力による格子ひずみが影響を及ぼしていると考えられる。そこで、レーザダイオードチップに対してマイクロビームを用いたX線回折測定を行い、試料上の異なる位置で格子ひずみの差異を捉えることが可能なことを確認した。
Keywords:レーザダイオード、逆格子マップ、マイクロビーム
(株)住化分析センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd.
- Abstract
-
本研究ではガラスを最高 1100℃ で加熱し、溶融したガラスに対して XAFS 測定を行った。基板に表面処理を施したことで、溶融したガラスが流れずに基板上に留まった。この基板を用いて2種類のガラスについて XAFS 測定を行ったところ、リン酸系ガラスでは脱泡剤として添加した鉄が3価未満から3価への変化が確認され、ソーダ石灰ガラスでは3価のままであった。ガラス溶融時の価数変化を XAFS 測定により評価することが可能となった。
Keywords:XAFS、ガラス、高温測定
(国研) 物質・材料研究機構
National Institute for Material Science
- Abstract
-
リチウム(Li)金属負極の電析時の樹上成長の抑制を主目的とし、シリコン(Si)を代表とした Zintl 元素を微量に Li 金属に添加することができないか検討してきた。本報告では、過剰な Li と少量の Si の単純な接合を可能な限り清浄な環境で形成した場合に、室温で起こる界面反応について報告する。Li/Si 接合では、室温で合金化(ここでは化合物化)が急速に進み、膜厚 100 nm の Si すべてが Li:Si(モル比)が約 4:1 の最も Li リッチな化合物相に変換され、余剰 Li は金属 Li としてその表面に堆積する現象が確認された。界面における相互拡散をより詳細に調べるためには冷却可能で、かつ Li や Si の蒸着源を備えた硬X線光電子分光(HAXPES)は有用であると考えられる。
Keywords: リチウム金属負極、Zintl元素、シリコン、硬X線光電子分光
リンテック株式会社
LINTEC Corporation
- Abstract
-
アクリル共重合体/エポキシ混合系材料はエポキシ成分の熱硬化による反応誘起型の相分離構造を形成し、アクリル成分のモノマー組成を変えることにより、これが大きく変化する。高輝度放射光を利用して小角X線散乱(SAXS)測定を行い、相分離状態の観察を試み、走査型プローブ顕微鏡(SPM)観察像の画像解析結果と併せて考察した。SAXS 測定結果より一次元相関関数を算出し、相間厚みを求めたところ、SPM より観測される構造を再現する情報を得るに至らなかった。これは分離した相間での電子密度差が小さく、X 線の散乱強度が小さいためと考えられ、特にサブミクロンオーダーの長周期の構造情報が得られなかったものと考えられる。つまりスピノーダル分解による相分離構造が、成分濃度の差の小さい2相により形成されていることが示唆される。
Keywords:相分離、スピノーダル分解、相関長、1次元相関関数、SPM、粒径分布解析
aグローバルウェーハズ・ジャパン(株), b兵庫県立大学
aGlobalWafers Japan Co., Ltd., bUniversity of Hyogo
- Abstract
-
半導体基板である Czochralski Silicon(CZ-Si)ウェーハにおいて金属不純物のゲッタリング効果が知られる酸素析出物の制御が重要である。一般的な析出形成手法の anneal treatment(AT)は表層の格子間酸素が外方拡散し格子歪みが生じる。熱酸化する rapid thermal oxidation(RTO)は格子間酸素の濃度勾配の抑制に期待されている。そこで、高平行度X線回折によりウェーハ表層の結晶性評価を実施した。サンプルのドリフト現象により格子定数の決定精度が得られなかった。
Keywords: 高平行度X線回折、シリコンウェーハ、格子間酸素
a住友ゴム工業株式会社, b(公財)高輝度光科学研究センター
aSumitomo Rubber Industries, Ltd., bJASRI/SPring-8
- Abstract
-
ソフトマテリアル中の硫黄構造解析のために S K-edge XAFS 法、特に EXAFS に着目し測定技術開発を行ってきた。その結果 S K-edge でも EXAFS 振動の測定ができるようになったが、解析を行うには S/N が十分ではなかった。そこで、試料冷却時の温度変化の安定化および測定方法について種々検討を行ったところ、EXAFS 測定の精度を向上させることができた。
Keywords: XAFS, ポリマー、架橋
a大阪電気通信大学, b 三菱商事ライフサイエンス株式会社
aOsaka Electro-Communication University, bMitsubishi Corporation Life Sciences Limited
- Abstract
-
多糖類カードランはグルコースが β-1,3 結合によってつながった直鎖構造をとっており、3重らせん構造をとっていると考えられている。カードランは水に不溶であるが、その懸濁液を加熱することにより熱ゲル化挙動を起こす。食品のゲル化剤として応用されている。この系に対してグルコースを添加するとゲル強度が減少した。ナノ構造を小角X線散乱法により調べた。ナノスケールでの凝集構造および規則的な構造由来の散乱が検出され、グルコースの添加の影響について考察できた。
Keywords: カードラン、小角X線散乱、ゲル、ゲル化
(株)住化分析センター 技術開発センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center
- Abstract
-
代表的な有機薄膜太陽電池材料である P3HT ∙ PCBM バルクヘテロ接合薄膜を作製し、その構造を調べるため、放射光による高輝度のX線回折測定を利用して、混合薄膜の回折情報を得た。その結果、製膜後の加熱処理によって P3HT の結晶化が進行することが示唆され、一部の混合薄膜では d ≈ 20 nm 程度の凝集体が存在していることも示唆された。ただし、この凝集体は熱処理前後でその凝集傾向に差は確認できなかった。
Keywords: バルクヘテロ接合薄膜、斜入射X線回折法
三菱ケミカル(株)
Mitsubishi Chemical Corporation
- Abstract
-
アイソタクティックポリプロピレンの昇温過程(50 °C~200 °C)における WAXS/SAXS 同時測定を行い、結晶の融解過程における詳細な解析を実施した。その結果、ラメラ間周期長の逆数プロットから 142 °C 付近が結晶融解の開始点となっていることを示した。
また、ラメラ晶の融解が進むにつれて、融点よりも低い温度領域からラメラの融解に起因した Guinier 関数で記述されるドメイン構造が発達してくることを示した。そして、このドメイン構造は、結晶融解に関わる DSC の吸熱反応が検出できないレベルの温度(172.5 °C)を超える 180 °C においても、なおも未融解の微結晶や強固な 31 螺旋の凝集体を中心にしたと思われる長周期を有する秩序的ドメイン構造の多くが残存していること、さらに高温域の 190 °C においても、このドメイン構造は明確に存在するが、長周期的相関の無い秩序を失ったドメイン構造へと変化することを明らかにした。
Keywords:アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、SAXS、メソフェイズ、ドメイン構造
三菱ケミカル(株)
Mitsubishi Chemical Corporation
- Abstract
-
200 °C から 300 °C におけるアイソタクティックポリプロピレンの高温溶融状態について、SPring-8 放射光を用いた SAXS 測定を行い、Ornstein-Zernike Plot による凝集構造に関する解析を試みた。その結果、相関距離(ξ)にして 0.5–0.8 nm 程度の構造が観測され、260 °C を超えた付近から、そのサイズの減少傾向が確認された。通常温度上昇に伴い、熱的密度揺らぎにおける ξ は増大することが予想されるが、260 °C 以上での温度上昇に伴う ξ は、むしろ減少傾向が観測され、実際には逆の結果が得られた。故に、この温度領域に残存する構造を熱的密度揺らぎから説明することは困難であり、何らかの微視的凝集構造が高温溶融状態で残存していることが示された。
いまだ断定はできないが、上記微視的凝集構造が結晶化過程に重大な影響を及ぼす構造体(オリジン)の可能性が示唆され、この構造は結晶融解過程からの履歴を背負い、高温領域まで、その形態や大きさを変えながら引き継がれたものと思われる。
Keywords: アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、 SAXS、オリジン、メソフェイズ、ドメイン構造
(株)ミルボン
Milbon Co., Ltd.
- Abstract
-
本研究では、BL27SU に構築されている軟X線走査型顕微分光測定系を用いて、黒髪に対するジスルフィド結合やその酸化構造(システイン酸)の測定プロトコルを確立し、マッピング測定によって毛髪内分布を評価することを目指した。その結果、毛髪内におけるジスルフィド結合およびシステイン酸分布を可視化することができた。また、ブリーチ処理に用いられる過酸化水素によって、ジスルフィド結合が酸化されてシステイン酸に変換されるという、よく知られた知見が本実験結果からも再現され、軟X線マッピングによる毛髪内硫黄分布の測定が可能であることが示された。
Keywords:毛髪、ブリーチ処理、ジスルフィド結合、システイン酸、軟X線走査型顕微分光マッピング法
aパナソニック株式会社先端研究本部, b名古屋大学
aPanasonic Corporation, bNagoya University
- Abstract
-
ペロブスカイト型結晶構造を有する Ba(Zr,Y)O3-δ (以後、BZY)は、500~700°C の温度領域において 10-3 S・cm 程度のプロトン(H+)伝導性を示すことが知られている[1]。我々は結晶粒界が存在しない BZY エピタキシャル薄膜を作製し、水素雰囲気中で熱処理を施すことで、高いプロトン伝導特性を見出した (0.1 S/cm@600°C, 0.01 S/cm@20 °C, Ea = 0.01 eV)。本特性は、従来の酸素サイト間をプロトンがホッピングする伝導機構では説明出来ない。またバルクの BaZrO3 単結晶も同処理によって高伝導状態になることが確認できた。本研究では Ba-Zr-Y-O 薄膜および BaZrO3 単結晶について伝導特性の異なる試料間での結晶構造の差異を明らかにすることで、新しいプロトン伝導特性と結晶構造の因果関係を明らかにすることを目的とした。
Keywords:プロトン伝導体、ペロブスカイト、BaZr1-xYxO3-δ、X線回折、単結晶構造解析
(株)ミルボン
Milbon Co., Ltd.
- Abstract
-
走査型軟X線顕微測定によって、加齢に伴う硫黄元素の毛髪内分布や化学状態変化の評価を試みた。20代と50代の女性毛髪を比較したところ、20代毛髪に比べて50代毛髪ではジスルフィド結合分布の偏りが見出されたことから、加齢に伴って毛髪内におけるジスルフィド結合分布の不均質化が進行することが示唆された。毛髪内構造の不均質性は若年層でもくせ毛において知られているが、加齢に伴うジスルフィド結合分布の不均質化の程度はくせ毛と同等もしくはそれ以上である可能性が示唆された
Keywords:毛髪、ジスルフィド結合、軟X線、マッピング
住友電気工業(株)
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
-
タングステンめっき用の溶融塩浴の1つである Na2WO4-WO3 系に対し、高温におけるタングステンの状態を、X線吸収分光法(XAFS)で分析した。測定はタングステンの K 端を用いた透過法を用いて実施し、高温での測定を実現するために赤外線イメージ加熱炉を用いた実験システムを構築した。Na2WO4:WO3=3:1 の組成での 800°C(液体)と冷却後(固体)を比較した結果、XANES 領域及び EXAFS 領域のいずれも変化が小さいことが明らかになった。実使用環境である 900°C に対して低いために違いが見えない可能性も存在するため、今後さらなる高温化に向け改善を行う。
Keywords:溶融塩、タングステン、XAFS
住友電気工業(株)
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
-
タングステンめっき用の Na2WO4-WO3 系溶融塩浴に関し、めっきプロセス温度である 800°C~900°C での融体構造の理解のため、X線広角散乱測定を試行した。試料は嵩密度向上のための予備溶解の後、石英キャピラリに入れ、雰囲気制御した電気炉で加熱しながら、61.4 keV の高エネルギーX線を利用して測定した。試料のX線透過率変化から、相変化及び融解点を決定するのに成功した。一方で、散乱スペクトルの測定では、試料の昇華由来で散乱スペクトルに不連続が生じ、構造因子 S(Q) の算出が困難という課題が明らかになった。
Keywords: 溶融塩、タングステン、X線散乱
(株) 豊田中央研究所
Toyota Central R&D Labs., Inc.
- Abstract
-
固体高分子形燃料電池は、空気極の触媒に用いられる Pt の資源的な制約に加え、Pt 上での酸素還元反応が遅いため発電効率が低い課題がある。これらのPt触媒に関わる課題を回避できる空気極 Pt フリーの燃料電池としてレドックスフロー燃料電池が提案されている。この燃料電池に用いられるポリオキソメタレートについてその発電中の挙動をX線吸収分光と核磁気共鳴分光とで解析し、その結果から本材料の課題について考察した。
Keywords: 固体高分子形燃料電池,ポリオキソメタレート,X線吸収分光,NMR
a (株)日清製粉グループ本社, b(公財)高輝度光科学研究センター
a Nisshin Seifun Group Inc., bJASRI
- Abstract
-
一定期間保管し老化した品種の異なる生米を用いた米飯および配合の異なる冷凍パスタについて、老化による澱粉の再結晶化挙動を SPring-8 のX線回折法により非破壊で評価し、同じ試料の物性測定をテンシプレッサーで行った。それにより、老化による米飯及び冷凍パスタの物性変化と澱粉の再結晶化挙動との相関を検討した。その結果、米飯では品種間で物性の変化の度合いに違いが見られ、この変化が大きいほど澱粉の再結晶化に起因する回折ピークが顕著に現れた。一方、冷凍パスタではいずれの試料でも2ヶ月保管後も大きな物性の変化は認められず、澱粉の再結晶化に起因する回折ピークも顕著には認められなかった。
Keywords: X線回折、ピーク、米飯、冷凍パスタ、再結晶化、老化、非破壊、物性
株式会社村田製作所
Murata Manufacturing Co., Ltd.
- Abstract
-
(K,Na)NbO3[KNN] 系無鉛圧電セラミックスは還元焼成すると低抵抗化や部品寿命低下が起こるが、実験的に Mn を添加することでその不具合を改善することができる。そこでセラミックス中での Mn の化学状態が重要と考え、マイクロビーム XAFS による評価を試みた。その結果、Mn は平均価数が 2.6 価で Nb サイトに固溶していることが示唆された。今後、検討を進めることで抵抗や部品寿命との関連を明確化できれば、特性向上のための設計指針が得られるものと期待される。
Keywords: (K,Na)NbO3、無鉛圧電セラミックス、X線吸収分光、マイクロビーム、Mn 価数
エヌ・イー ケムキャット(株)
N. E. Chemcat Corporation
- Abstract
-
銅ゼオライトは、ディーゼルエンジン排ガス中の窒素酸化物浄化に適した触媒材料であるが、使用環境が過酷であり、既存材料の水熱耐久性が充分ではないことから一層の性能向上が求められている。細孔径が比較的大きいゼオライトの水熱耐久性向上にリン酸処理は有効であるが、チャバサイトのように細孔径の小さいゼオライトではその効果は期待できないとされてきた。今回、シリカアルミナ比が約15の銅チャバサイトにリン酸処理することで、水熱耐久後の浄化性能が向上した材料を得ることができた。構造解析の結果、リン酸処理の効果は、P と Cu の直接の協奏効果で活性点構造が変化して性能向上しているのではなく、水熱耐久時に P と Al によって SAPO 類似構造が生成して O 原子平面4配位 Cu2+ 種のチャバサイト骨格からの離脱を抑制しているためと推定された。
Keywords:選択触媒還元、窒素酸化物、銅、チャバサイト、XANES、EXAFS、リン酸
JXTGエネルギー株式会社
JXTG Nippon Oil & Energy Corporation
- Abstract
-
自動車用潤滑油の省燃費性等の特性は、潤滑油添加剤が金属表面に作用して形成される反応膜の組成、構造に大きく依存する。そこで本研究では、アルキル鎖の異なる摩耗防止剤 ZnDTP (Zinc Dialkyldithiophosphate)のみ基油に添加した潤滑油を使用して時間を変えて摩擦試験を行い、金属試験片表面に反応膜を形成させ、HAXPES により反応膜成分の化学結合状態の推定を試みた。その結果、ZnDTP のアルキル基の長さが異なると主に反応膜を構成しているポリリン酸の分子鎖長の長さが、反応膜の表層部および内部のどちらにおいても異なると推定された。また、摩擦試験時間と反応膜の表層部、内部におけるポリリン酸の分子鎖長との関係は ZnDTP のアルキル基の長さにより異なると推定された。
Keywords:反応膜、ZnDTP、HAXPES
a三菱電機(株), bメルコセミコンダクタエンジニアリング(株)
aMitsubishi Electric Co., Ltd., bMelco Semiconductor Engineering Co., Ltd.
- Abstract
-
光デバイス表面の反射率、透過率等の光学特性制御のために用いる光学薄膜は、積層膜であることが多いが、膜のバルク層や界面層が設計と異なる状態となっている場合、その層で意図せぬ光散乱や光吸収が生じるため、設計した光学特性が得られない悪影響が生じる。今回、設計と異なる光学特性を示した積層膜に対し、硬X線光電子分光(HAXPES)を用いた化学結合状態分析を行った結果、界面層が設計と異なる状態となっていることが明らかとなった。
Keywords:光学薄膜、界面層、硬X線光電子分光S
a東北大学多元物質科学研究所, b(株)村田製作所, c(公財)高輝度光科学研究センター
aIMRAM, Tohoku University, bMurata Manufacturing Co., Ltd., cJASRI
- Abstract
-
積層セラミックキャパシタ(MLCC)の実材料について、サブマイクロX線回折を用いて電極/誘電体界面と誘電体素子部分の構造を調べた。前回の実験時(2018A1545)よりも試料位置での集光を最適化し、更に高散乱角領域での測定を行うことにより、試料位置でのビームサイズを、前回課題実験時と比較して、縦方向で 1/4、横方向で 1/10 以下の、375 x 387 nm2 の微小領域での粉末回折パターンのマッピングに成功した。その結果、界面近傍で、格子定数の減少及び、BaTiO3 正方晶ドメイン分布の広がりをを発見した。見出された変化は Ni 電極からの応力を受けて、誘電体素子が歪んでいることを示す結果である。
Keywords:積層セラミックキャパシタ,マイクロ領域X線回折
住友電気工業(株)
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
-
銅及び銅合金は電気特性と強度特性のバランスに優れ、電線用導体や端子材として最適な材料である。その更なる高強度化のためには、加工変形における原子レベルの構造変化の理解が不可欠となる。その分析手段としては、近年提唱されている引張その場X線回折(以下、XRD)が有望であるが、実用的な厚みの銅材を測定するには高い透過能を有する高エネルギーX線が必要であり、従来型の Si 素子の二次元検出器では感度不足であった。そこで本研究では高エネルギーでも十分な感度を有する CdTe 素子の二次元検出器を用いて 300 µm 厚の銅板の引張その場測定を試行し、比較的短い露光時間でも銅結晶の配向や歪の変化を観測できることを確認した。一方、今回の測定条件では粗大粒の影響を排除できておらず、定量解析には試料揺動などの対策が必要なことも明らかになった。
Keywords: 銅、引張その場 XRD、CdTe
(株)東芝
Toshiba Corporation
- Abstract
-
HAXPES 定量解析において問題となる、光電子強度が大きいほど実際よりも大きな光電子強度が観測される「数え増し現象」の原因を探るため、電子分光器のリニアリティを詳細に評価した。強い光電子ピークが得られる SiO2 と GaN を試料としてX線強度依存を測定し、電子分光器の2次元検出器におけるハレーションが数え増しの一因である可能性を示した。さらに、2次元検出器の設定電圧の最適化によるリニアリティ改善を検討した。
Keywords: 硬X線光電子分光法、HAXPES、定量分析、リニアリティ、数え増し
a三洋エナジー南淡(株), bパナソニック(株)
a Sanyo Energy Nandan Co., Ltd., b Panasonic Co., Ltd.
- Abstract
-
リチウムイオン二次電池の充電時の熱安定性は、正極に起因するところが大きい。そのため、高温環境下における正極活物質の変化を正確に捉えることは、リチウムイオン二次電池の安全性向上を図る上で非常に重要な技術である。高温環境下での正極活物質は複数の結晶構造をもち、また結晶構造内を異なる元素が同じサイトを占有しているため、構造選択的かつ元素選択的な評価が求められている。今回 X-ray Absorption Fine Structure(XAFS) 測定を行い Cauchy-Wavelet 変換を用いて隣接元素種を迅速に推定できることを確認し、Diffraction Anomalous Fine Structure(DAFS) 測定の検討を行い、構造選択的に各元素の化学状態を推定できる可能性を確認した。今回の結果から、同じサイトを Ni、Co、Mn で共有している正極活物質において、高温環境下での結晶構造変化に伴う遷移金属元素の還元は、主に Ni の層状岩塩型からスピネル型への構造変化により担われているという結論が得られた。
Keywords:リチウムイオン電池、XAFS、DAFS、Cauchy-Wavelet変換
a立命館大学, b東北学院大学
aRitsumeikan University, bTohoku Gakuin University
- Abstract
-
Nd-Fe-B 系薄膜の元素選択的磁気ヒステリシス測定を軟X線磁気円二色性測定(XMCD)で行った際のキャップ層の影響を硬X線光電子分光(HAXPES)と組み合わせることで検証した。キャップ層が Mo 層 3 nm であるとき、その下の Nd-Cu 層および Nd-Fe-B 層は酸化されておらず、保護膜としての機能を果たしていることがHAXPES測定より分かった。しかしながら、XMCD 測定において、キャップ層によるシグナルの抑制のために、特に磁場中で発生するノイズがシグナルを超えて大きくなり、ヒステリシス測定が十分な精度で行えないことが分かった。
Keywords: 元素選択的磁気ヒステリシス測定, XMCD, HAXPES, Nd-Fe-B 永久磁石薄膜
a東京大学物性研究所, b東芝燃料電池システム(株), c(国研)日本原子力研究開発機構
aISSP, The University of Tokyo, bToshiba Fuel Cell Power Systems, cJapan Atomic Energy Agency
- Abstract
-
固体高分子形燃料電池の正極触媒として高い性能を有する白金ナノ粒子触媒に対し、発電環境下において、共鳴非弾性X線散乱を用いて元素選択的に Pt のみの電子状態密度分布を取得した。正極に 1.0 V かけた状態で 3.75 eV 付近にラマン散乱ピークが見られ、同じピークが自然電位でも弱いながら観測された。その原因として、蒸気を導入したことにより水分中の OH 基が吸着し、Pt との間に結合・反結合状態を形成したことが示唆された。
Keywords: 固体高分子型燃料電池、白金ナノ粒子触媒、共鳴非弾性X線散乱
株式会社日本触媒
Nippon Shokubai Co., Ltd.
- Abstract
-
HAXPES を用いて、有機無機ハイブリッド LED における光電子スペクトルの放射光照射依存性を検討した。また、素子特性変化に伴う素子の物質的変化は微小であることが明らかであることから、解析精度をあげる目的で、今回は複数の同素子における駆動前後の観察を試みた。経時変化からは、Mo の動きが特異であること、駆動前後の観察からは僅かながら Mo とは連動しない特異なSの変化を観測した。
Keywords:有機 EL、酸化モリブデン、有機/無機界面、放射光照射依存性
a東京大学物性研究所, b東京大学放射光連携研究機構, c東芝燃料電池システム(株), d(国研)日本原子力研究開発機構
ISSP, The University of Tokyoa, SRRO, The University of Tokyob, Toshiba Fuel Cell Power Systemsc, Japan Atomic Energy Agencyd
- Abstract
-
固体高分子型燃料電池正極触媒の Pt‐O 結合エネルギーに及ぼす Pt 粒径効果を Pt L 端 RIXS を用いて評価した。Pt‐O 結合エネルギーは、Pt の平均粒径の減少と共に急激に増加した。得られた結果から、触媒活性および耐久性を両立する適度な Pt-O 結合エネルギーを持つ Pt 粒径が存在することが明らかとなった。
Keywords: 固体高分子型燃料電池、白金ナノ粒子触媒、共鳴非弾性X線散乱、粒径依存性
株式会社 本田技術研究所
Honda R&D Co., Ltd.
- Abstract
-
自動車排ガス浄化触媒における貴金属(Pd)の有効活用の為の基礎研究として、αAl2O3 に担持された Pd の状態変化を大気雰囲気中の in-situ 昇温測定にて観測した。担持された Pd の初期状態は酸化物(PdO)構造であり 900°C まで酸化物相を保つが、900~1000°C において金属(Pd)構造に変化することが明らかになった。
Keywords: Pd-K吸収端,in-situ XAFS
住友電気工業株式会社
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
-
鉄箔を大気酸化した後に、高温のアセチレンガス雰囲気中で処理すると、熱亀裂の内部にサブミクロンの幅を持つ炭素繊維(チューブやシート)が亀裂の両側をブリッジするように成長する新しい現象を発見した。この現象を利用すれば、直線的なナノカーボンが成長でき、新規デバイス作成手法に応用できる。炭素が引き出されるメカニズムを解明するため、雰囲気制御可能な XAFS 装置により浸炭工程毎での Fe の状態変化を測定した。
Keywords: カーボンナノチューブ、高純度鉄箔、XAFS、酸化鉄、ガス浸炭
三菱ケミカル(株)
Mitsubishi Chemical Corporation
- Abstract
-
アイソタクティックポリプロピレン(iPP)の昇温過程(50℃~200℃)における SAXS/WAXS 同時測定を行い、iPP のα晶の融解過程について詳細に調べた。その結果、結晶融解過程に関しては、昇温に伴うWAXSピークの消失挙動から、iPPのα晶は、DSCの吸熱反応が検出できないレベルの温度領域(174℃~190℃)においても残存していることを明らかにした。
また、SAXS プロファイルの変化より、昇温に伴うラメラ周期長の増大と、並びに、ドメイン構造の出現が明らかとなり、かつその構造は融点よりやや低い温度領域から 190℃ 付近まで明確に観測されることを示した。
Keywords: アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、SAXS、オリジン、メソフェイズ、SPring-8
首都大学東京(現所属:日本原子力研究開発機構)
Tokyo Metropolitan University (present affiliation: JAEA)
- Abstract
-
鉄鋼材料の微量なチタン添加は溶接熱影響部の切欠靭性改善に有効である。本研究は、放射光X線による小角散乱法を用いて入熱量を制御した再現熱サイクル試験鋼材中の析出粒子を定量評価することを目的とする。本実験は、産業利用Iビームライン BL19B2 を使用して放射光X線小角−極小角散乱測定を実施した。その結果、低 q 側の Guinier(ギニエ)領域が観察できない散乱プロファイルに対して、Porod(ポロド)則に従い、散乱プロファイルを解析することで、析出粒子の総界面積を定量評価することに成功した。本手法は微視組織解析の一つとして有効的である。
Keywords: 放射光X線小角散乱法、溶接熱影響部、窒化チタン粒子、Gunier 領域、Porod 則
a奈良先端科学技術大学院大学, b岩手大学, c (公財)高輝度光科学研究センター, d日本化薬株式会社
aNAIST, bIwate University, cJASRI, dNippon Kayaku Co., Ltd.
- Abstract
-
有機低分子半導体薄膜について、温度可変試料ステージを用いて2次元斜入射X線回折(2D-GIXD)測定を行い、2次元回折画像を得た。この画像から格子パラメータの温度依存性を求め、アルキル基が導入された有機低分子に関して大きな体積熱膨張、ヘテロ原子が導入された有機低分子の負の体積熱膨張など、分子構造に特徴的な熱膨張の関係性が得られた。今後、格子パラメータからパッキング構造を予測推定し、分子間相互作用と熱膨張、トランスファー積分の温度依存性などの解析に発展させる予定である。
Keywords: 有機半導体材料、熱電材料、構造相転移、熱膨張
株式会社ノリタケカンパニーリミテド
Noritake Co., Ltd.
- Abstract
-
セリアジルコニア酸化物は酸化還元により酸素を吸放出する機能性粉体であり、貴金属とともに、排ガス浄化用触媒として利用されている。排ガス浄化に大きく寄与する Pd または Pt 還元メカニズム解明のため、既存のセリアジルコニアと開発中のセリアジルコニアに Pd または Pt を担持し、室温から 150°Ϲ までの昇温過程において in-situ XAFS 測定を実施した。開発したセリアジルコニアに担持した Pd と既存のセリアジルコニアに担持した Pd の還元温度に差はみられなかったが、Pt については開発したセリアジルコニアに担持したもののほうが低温で還元されていることがわかった。この結果は昇温還元測定(TPR 測定)による酸素放出挙動と定性的に一致した。
Keywords:排ガス浄化用触媒, セリアジルコニア, in-situ XAFS 測定
a株式会社ダイセル, b大阪大学大学院基礎工学研究科, c(公財)高輝度光科学研究センター
aDaicel Corporation, bOsaka University, cJASRI
- Abstract
-
酢酸の高選択的水素化によるアセトアルデヒドへの変換反応を目的として、高活性を示す PdFe 合金触媒の開発を実施した。酢酸の水素化によるアセトアルデヒドへの変換反応において高活性を示す Pd-Fe2O3 触媒は Fe 前駆体種、組成により同 Pd 量でも活性が大きく変化する。Fe 前駆体種、組み合わせ比率の異なる各触媒を Pd K 殻及び Fe K 殻 XAFS 測定することにより PdFe 合金の生成を確認、比較した。Fe 前駆体の組み合わせにより PdFe 合金生成量が変化しており、触媒活性に影響していることが示された。
Keywords: XAFS、合金粒子、水素化反応、還元反応
三菱ケミカル(株)
Mitsubishi Chemical Corporation
- Abstract
-
アイソタクティックポリプロピレン(iPP)の溶融紡糸による未延伸糸の急速冷却過程において、280 °C よりも高い溶融状態から得られた未延伸糸では、α 晶は形成されず準安定相であるメソフェイズが形成され、逆に 280 °C より低温での紡糸では α 晶が形成されることを示した。このように、融点より非常に高い温度での溶融状態が、急速冷却後の結晶化の有無や状態を決定づけていることを明らかにした。この理由としては、高温溶融状態にて、iPP の結晶化に重要な影響を与える何らかの凝集構造(オリジン)が存在し、これがメモリー効果として融点より 100 °C 以上も高い高温領域まで残存しているためと考察した。
また、未延伸糸の構造はその後の延伸過程での伸び切り鎖の構造形成において決定的因子となり、メソフェイズを有する未延伸糸から延伸を開始することが、高延伸倍率で高強度な iPP 繊維を得るのに圧倒的に有利であることを明らかにした。
Keywords: アイソタクティックポリプロピレン、メモリー効果、α晶、放射光X線散乱、 SAXS、オリジン、メソフェイズ
日本メナード化粧品(株)総合研究所
Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.
- Abstract
-
化粧品の有効性を評価することを目的として、現在様々な試験が行われているが、真皮における「コラーゲンの質」を評価する方法は十分に確立されていない。我々はこれまでに、線維芽細胞の広角・小角X線散乱を測定し、コラーゲンの三重らせん構造、分子間距離、長周期構造に由来する回折について観察してきた。本研究では、線維芽細胞の小角・極小角X線散乱の測定を行い、より大きな構造に由来するX線散乱の観察が可能か検討した。その結果、長周期構造の回折に加え、由来不明の肩ピークが観察された。また、試料の固定、乾燥状態によって、観察されるピークの有無や大小に変化が見られた。
Keywords: コラーゲン、長周期構造、線維芽細胞
(株)東芝
Toshiba Corporation
- Abstract
-
省電力化および高速動作が可能な次世代磁気抵抗メモリ、VoCSM (電圧制御型スピントロニクスメモリ、Voltage-Control Spintronics Memory) の開発が行なわれている。VoCSM は電圧によって磁気異方性が変化する VCMA (Voltage Control Magnetic Anisotropy) 効果を書き込み手段に用いている。この効果の発現メカニズムとして、理論上では、絶縁層と磁性層の界面に存在する電荷が寄与すると考えられている。これを確認するため、電圧印加硬X線光電子分光法 (HAXPES; Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy) による非破壊での深さ方向電位解析を試みた。
Keywords:硬X線光電子分光法、HAXPES、電圧印加、オペランド、深さ方向分析
SPring-8 Section C: Technical Report
(公財)高輝度光科学研究センター
Japan Synchrotron Radiation Research Institute
- Abstract
-
回転楕円面状に配置した高結晶性平面グラファイトによるブラッグ反射を利用し、目的とするX線の波長域をバンドパスする蛍光X線分光フィルタを試作した。Pt 試料に 12 keV のX線を照射し、作製した分光フィルタを通した後に SDD (Silicon drift detector)でスペクトルを評価した結果、目的とする Pt Lα1 9.44 keV が、Pt Ll 8.27 keV や Pt Lβ2 11.25 keV と分光でき、検出効率が 1.6 倍に向上した。さらに、蛍光X線分光フィルタと強度検出器を用いて、蛍光法による Pt L3 吸収端でのX線吸収スペクトルの取得に成功した。
Keywords:高結晶性グラファイト、ブラッグ反射、分光、蛍光X線分光フィルタ
aJASRI, bNara Women’s University
- Abstract
-
In the grazing incidence X-ray scattering system, it is necessary to align the in-plane rotation axis of the sample stage and the normal of the substrate. Since the thin film structure such as polymers is formed on the substrate, it is necessary to complete the alignment while keeping low X-ray dose. We examined an alignment method using the arrival time mode of the timepix.
Keywords: grazing incidence X-ray scattering, alignment, timepix
(公財) 高輝度光科学研究センター
Japan Synchrotron Radiation Research Institute
- Abstract
-
硬X線光電子分光(HAXPES)計測による局所電子状態解析を、より効率化するための高速ポジショニングシステムを開発した。具体的には、本システムは光電子アナライザーの印加電圧を固定した状態で特定の光電子強度を計測しステップスキャンすることで、高速元素/形状マッピングを実現するものである。永久磁石など不均一性の大きい試料に対して硬X線マイクロビームを用いた HAXPES 計測を行う際に、特定の内殻ピークを用いて高速に目標測定位置を探索できるシステムの開発が望まれていた。本研究で開発された二次元スキャンシステムは、従来のものに比べ約 1/40 の時間でスキャンできるため、ビームタイムの有効活用に繋がる。本システムは元素戦略プロジェクトで研究されている Nd-Fe-B 永久磁石だけでなく、物質中のドーパントの局所化学結合状態分析など、集光ビームを用いた光電子分光実験に対し広く役立つものである。
Keywords: 硬X線光電子分光、複合材料
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
可視域の磁気カー効果では、磁性体試料の表面での光反射にともなう偏光状態の変化を検出している。X線磁気円二色性 (XMCD) 測定では、透過法と蛍光法での測定が主であり、反射光を用いた測定はこれまでにほとんど行われていない。反射光を利用した XMCD 測定は、スピントロニクス材料等の薄膜試料の元素選択的な磁性評価に役立つと期待される。本研究では、硬X線領域での斜入射・全反射配置の XMCD 法を開発した。Pt/Co 二層膜に対して全反射 XMCD 法を適用し、厚さ 1 nm の Pt 薄膜に対して良好な統計精度の XMCD スペクトル、および元素選択的磁化曲線を得ることができた。
Keywords:X線磁気円二色性、XMCD、磁性薄膜、スピントロニクス
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
BL39XU ナノ分光ステーションでの 100 nm 集光ビーム利用に関して、試料位置の連続走査とそれに同期したデータ収集を行う On the Fly 法の開発と導入を行った。ダイヤモンド移相子による偏光スイッチングを測定シーケンスに組み込むことで、On the Fly 走査型の XMCD イメージングが可能となった。従来のステップスキャンによる方法と比べ、得られた XAFS 像および XMCD 磁区像の統計精度は同程度であり、一方で測定時間は XAFS 像では数十分の1、XMCD 像では数分の1に短縮された。
Keywords:X線ナノビーム、走査型イメージング、顕微XAFS、顕微XMCD、蛍光X線イメージング
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
硬X線ナノビームによる顕微 XAFS/XMCD 測定の効率向上のため、BL39XU に二段階集光光学系を構築し、高フラックスの集光ビームを得るための開発を行った。X線屈折レンズと KB ミラーによる二段階集光光学系の概要、レイトレーシングによる光学系の評価、屈折レンズ素子の特性および実験で得られた集光ビーム性能について報告する。二段階ナノ集光光学系により、ビームサイズ 109(垂直)×136(水平) nm2 (半値幅)、光子フラックス 6×1010 photons/s の集光X線ビームが得られた。集光サイズは KB ミラーのみによる既存の光学系と同等であり、フラックスは10倍の向上がみられた。ただし、垂直方向の集光ビーム形状は非対称であり、全幅で 600 nm 程度の裾野が重畳している。屈折レンズの収差評価等による原因解明と、集光ビーム形状の改善が今後の課題である。
Keywords: X線ナノビーム、集光素子、顕微XAFS、顕微XMCD
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
高温でのin-situ X線回折は、相転移、固溶反応、結晶化等の反応過程の知見を得るうえで非常に有用な手法である。そこでグラファイトヒーターを用いて、キャピラリー内に封入された試料を非接触で加熱する装置の開発を行い、試料を回転させながらビーム照射位置で 1000℃ を超える温度を達成した。
Keywords: 高温X線回折, グラファイトヒーター
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
-
低融点合金を利用し、高エネルギーX線用のピンホール光学素子を安価に作成する方法を考案し、また作成のための装置を試作した。この装置を用いて実際にピンホール光学素子を作成し、BL40XU ビームラインにて試用したが、市販のものと同様に問題なく使用できた。
Keywords: 低融点合金、ピンホール、高エネルギーX線
(公財)高輝度光科学研究センター
Japan Synchrotron Radiation Research Institute
- Abstract
-
従来と比較して 100 nm × 100 nm あたり20倍の集光フォトン数が期待できる KB 配置型ミラー集光光学系を構築した。本光学系は垂直方向に関して光源の直接縮小投影を用いるため、不安定性の原因となりえる光路中の液体窒素冷却シリコン二結晶分光器について、熱的安定性に寄与する機器を改良した。高真空型集光ミラー姿勢調整装置を BL39XU 第2実験ハッチに導入し、集光性能を評価した。結果、2.5×1011 photon/s の集光ビーム:115 ~ 140 nm(垂直)× 93 nm(水平)(半値幅)を確認した。
Keywords: 液体窒素冷却シリコン二結晶分光器、集光ミラー、ナノ集光
a(公財)高輝度光科学研究センター, b京都大学
aJASRI, bKyoto University
- Abstract
-
土砂の法科学での異同識別では一次鉱物成分組成の比較によって行うことが多い。このために用いられる実体顕微鏡や偏光顕微鏡での観察による方法では土壌の粒子一つ一つの成分同定を目視観察で行うことは経験と熟練を要し、各成分の組成比を算出するための計数作業は時間を要する。そこで鉱物粒子の塊についてX線 CT 測定を行い異同識別の可能性を検討した。その結果、線吸収係数の違いから CT 画像の解析で個々の粒子の定性を行うことで、異同識別のための鉱物組成を見積もることができた。
Keywords:土砂、X線 CT、異同識別
Section SACLA
a大阪大学蛋白質研究所, b広島大学大学院医系科学研究科
aInstitute for Protein Research, Osaka University, bGraduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University
- Abstract
-
X線自由電子レーザーを用いた巨大ウイルスの単粒子構造解析を目指した研究に取り組んだ。直径約 160~200 nm の巨大ウイルスを用い、単粒子構造解析のための試料調製法の最適化とその評価方法の開発を行った。最適化した試料を SACLA BL3A における XFEL 回折実験に供し、単粒子由来の回折像を得ることに成功した。
Keywords:X線自由電子レーザー、単粒子構造解析、ウイルス
a大阪大学蛋白質研究所, b広島大学大学院医系科学研究科
aInstitute for Protein Research, Osaka University, bGraduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University
- Abstract
-
X線自由電子レーザーを用いた単粒子構造解析の手法開発を目指した研究に取り組んだ。直径約 160~200 nm のウイルスを用い、単粒子構造解析のための試料調製法の最適化を実施した。試料調製法の評価のために SACLA BL3A において、XFEL 回折実験を実施した。
Keywords:X線自由電子レーザー、単粒子構造解析、ウイルス
a Bar Ilan University, bRIKEN SPring-8 Center, cSLAC National Accelerator Laboratory, dStanford University
- Abstract
-
The purpose of this beamtime was to observe difference-frequency generation of optical radiation from two-color x-ray pulses and to explore the possibility to use it as a method for the study of light matter interactions at atomic scale resolution. The experiment followed a detailed theoretical analysis of the effect [1]. We did not measure difference frequency generation during that beamtime due to technical challenges.
Keywords:Nonlinear Optics, Nonlinear Spectroscopy, Ultrafast effects, X-ray Optics
a(国研)理化学研究所, bキール大学, c Università degli Roma Tre, d佐賀大学, e兵庫県立大学
aRIKEN SPring-8 Center, b Univ. of Kiel, c Univ. degli Studi Roma Tre, d Saga Univ., e Univ. of Hyogo
- Abstract
-
軟X線領域の自由電子レーザー光を用いた時間分解光電子分光実験を行ない、GaAs 標的の As 3d 光電子スペクトルの観察を通じて、超短パルス・超高輝度光に由来する空間電荷効果の観察を行った。プローブ光強度依存性、ポンプ光強度依存性、ポンプ・プローブ間遅延時間依存性の観察の結果、空間電荷効果による As 3d 光電子ピークのエネルギーのシフトを観測した。シフトは励起光起因の低速電子群によるクーロン相互作用に依るものである。
Keywords:光電子分光、SXFEL、空間電荷効果、ポンプ・プローブ、時間分解