Published 25-January 2018 / SPring-8 Document D2018-004
SPring-8 Section A: Scientific Research Report
2011B1256 / BL04B1
DOI:10.18957/rr.6.1.1
山本 順司a, 芳野 極b, 山崎 大輔b, 下宿 彰b, Sun Weib
Junji Yamamotoa, Takashi Yoshinob, Daisuke Yamazakib, Akira Shimojukub, Sun Weib
a北海道大学,b岡山大学
aHokkaido University, bOkayama University
- Abstract
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本研究では、天然スピネルの熱膨張率をSPring-8におけるその場粉末X線回折によって推定することを試みた。3 GPa におけるセル体積の温度依存性を見ると、300 K から 1500 K までの温度変化においてセル体積は約 11 Å3 増加している。300 K におけるセル体積を 538 Å3 とすると熱膨張率は 1.7 × 10-5 K-1 となる。この値は MgAl2O4 スピネルで報告されている値より低く、化学組成依存性の可能性が考えられる。
しかし、本研究では加圧初期段階にセル体積の不規則な変化が見られており、また、本研究で見られたセル体積の圧力依存性は、スピネルの体積弾性率から推察される体積膨張率より小さい。これは加圧中に生じたセル内部の圧力不均質に因るかもしれず、今後、推定された熱膨張率の精確度を検証する作業が必要である。
キーワード: スピネル、熱膨張率、その場粉末X線回折
2012A1392 / BL38B1
DOI:10.18957/rr.6.1.6
藤橋 雅宏a, 三登 一八a, 岩田 有希b, 廣瀬 加奈b, 渡辺 文太c, 邊見 久b, 三木 邦夫a
Masahiro Fujihashia, Kazuya Mitoa, Yuki Iwatab, Kana Hiroseb, Bunta Watanabec, Hisashi Hemmib, Kunio Mikia
a京都大学大学院理学研究科,b名古屋大学大学院生命農学研究科, c京都大学化学研究所
aGraduate School of Science, Kyoto University, bGraduate Schoolo of Bioagricultural Sciences, Nagoya University, cInstitute for Chemical Research, Kyoto University
- Abstract
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ゲラニルゲラニル基還元酵素(GGR)は、イソプレノイドに存在する二重結合を還元する酵素である。本研究では古細菌Sulfolobus acidocaldarius 由来GGRを対象に、基質であるゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)との複合体構造を決定し、その反応機構を明らかにすることを目指した。BL38B1において、Sa-GGRとGGPPの混合溶液から得た結晶より1.85 Å 分解能のデータを取得したが、基質に相当する電子密度はGGPPとは断定できないものであった。
キーワード: 結晶構造解析、酵素
2012A3703 / BL22XU
DOI:10.18957/rr.6.1.9
町田 晃彦a, 綿貫 徹a, 木村 通b,†, 市川 貴之b, 小島 由継b
Akihiko Machidaa, Tetsu Watanukia, Toru Kimurab, Takayuki Ichikawab, Yoshitsugu Kojimab
a(国)量子科学技術研究開発機構,b広島大学
aQST, bHiroshima University
- Abstract
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テルビウム3重水素化物 TbD3 の高圧力下における長周期積層構造の形成をX線回折により調べた。常圧相の六方格子構造から高圧相の面心立方構造への変化する間、8.6 GP aから 17.3 GPa の広い圧力領域で中間状態の形成を示すX線回折パターンが観測された。しかしながら以前に YH3 で決定した構造モデルではパターンが再現できない。これは異なる積層シーケンスの長周期構造が形成されている可能性を示唆している。
キーワード: 金属水素化物、高圧力、X線回折
2013A1698, 2013B1774 / BL27SU
DOI:10.18957/rr.6.1.13
野平 博司a, 岡田 葉月a, 高嶋 明人b, 室 隆桂之b
Hiroshi Nohiraa, Hazuki Okadaa, Akito Takashimab, Takayuki Murob
a東京都市大学,b(公財)高輝度光科学研究センター
aTokyo City University, bJASRI
- Abstract
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放射光を用いた角度分解光電子分光法により、クリプトン窒素プラズマ(Kr : N2 = 97 : 3)を用いたラジカル窒化処理で形成した SiON/4H-SiC の化学構造と窒素の深さ方向分布を調べた。N 1s 光電子スペクトルは、C面では、結合エネルギー 397 eV (LBE)、399 eV (MBE)および 401 eV (HBE)の3つの成分からなり、一方、Si面では、MBEとHBEの2つの成分のみであった。また、C面のMBEに関連する窒素原子は、SiO2 中に分布して存在するのに対し、C面のHBEとLBE、Si面のHBEとMBEに関係する窒素原子は、SiON/SiC界面に存在することを明らかにした。
キーワード: AR-XPS、SiON/SiC、化学結合状態
2013B1316 / BL01B1
DOI:10.18957/rr.6.1.17
佐藤 充孝a,中平 敦b
Mitsutaka Satoa, Atsushi Nakahirab
a東北大学 金属材料研究所, b大阪府立大学
aInstitute for Materials Research, Tohoku University, bOsaka Prefecture University
- Abstract
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高い抗菌性を有する高組織代替材料の開発を目指し、ハイドロキシアパタイト(HAp)合成時にAgおよびCuを添加した試料に対して、Ca、AgおよびCu K吸収端XAFS測定を行った。その結果、Agは添加した量の大部分が金属Agとして存在しており、HAp構造中に固溶し難いことがわかった。また、いずれの元素添加試料においてもリン酸化合物と類似した局所構造を有しており、HAp構造中への固溶の可能性が示唆された。
キーワード: ハイドロキシアパタイト、抗菌、XAFS
2013B1351, 2016B1942 / BL43IR
DOI:10.18957/rr.6.1.22
橋本 敬,本多 定男, 森脇 太郎, 池本 夕佳, 木下 豊彦
Takashi Hashimoto, Sadao Honda, Taro Moriwaki, Yuka Ikemoto, Toyohiko Kinoshita
- Abstract
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覚醒剤メタンフェタミン塩酸塩を赤外顕微鏡で非破壊透過測定した。測定光源は赤外放射光とグローバー光源(熱輻射光源)について測定し、結果を比較したところ5 µm以下の微小な試料では赤外放射光が優位であることが確認できた。
キーワード: 赤外放射光、覚醒剤、非破壊顕微鏡透過測定
2013B1356 / BL02B2
DOI:10.18957/rr.6.1.27
橋本 敬,本多 定男
Takashi Hashimoto, Sadao Honda
- Abstract
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放射光を用いた非破壊的な高感度X線回折法によって、乱用薬物の覚醒剤メタンフェタミン塩酸塩の結晶構造解析を行った。測定は結晶をメノウ乳鉢で粉砕しリンデマン製ガラスキャピラリー(内径0.3 mmΦ)に入れ粉末X線回折測定を行った。測定データの解析はEXPOを用いた直接法により初期構造を決定し、精密化を行うことができた。
キーワード: 科学捜査、合成覚せい剤類、粉末X線回折
2014A1159 / BL38B1
DOI:10.18957/rr.6.1.31
東京医科歯科大学難治疾患研究所
Medical Research Institute, Tokyo Medical and Dental University (TMDU)
- Abstract
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ヘモグロビンの酸素結合と解離に伴う構造変化の中間体を構造解析した例はこれまでにない。本研究では、無脊椎動物由来巨大ヘモグロビンの酸素結合型結晶を浸漬法により酸素非結合型へと結晶を破壊することなく移行させ、その中間状態のX線結晶構造解析を行った。得られた結晶構造から酸素の部分的な解離を確認し、本手法の有効性を実証した。また、巨大ヘモグロビンの四次構造変化は、大部分の酸素が解離しない限り生じないことが示唆された。
キーワード: アロステリックタンパク質、構造変化、中間体
2014A1288, 2014B1123 / BL43IR
DOI:10.18957/rr.6.1.35
加道 雅孝a, 江島 丈雄b, 刀祢 重信c, 篠原 邦夫d
Masataka Kadoa, Takeo Ejimab, Shigenobu Tonec, Kunio Shinoharad
a量子科学技術研究開発機構, b東北大学, c東京電機大学, d東海大学
aQST, bTohoku University, cTokyo Denki University, dTokai University
- Abstract
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アポトーシスを誘発したHeLa S3細胞の単離核を赤外顕微分光ビームライン(BL43IR)の試料セルに封入し、赤外顕微分光測定を行い、得られたスペクトルを解析することによりDNAの断片化過程を調べた。アポトーシスを起こしていない正常な細胞核および、アポトーシスの進行を制御した細胞核を用い、リング形状、ネックレス形状、崩壊状態のそれぞれの各ステージにある個々の細胞核の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、アポトーシスによる強度の減少が指摘されている 1000 cm-1 付近の PO2- モードのスペクトルにアポトーシスのステージによる特徴的な差異が確認できた。
キーワード: 細胞核、アポトーシス、赤外顕微分光法
2014A1353 / BL40XU
DOI:10.18957/rr.6.1.38
高橋 聡a, 小井川 浩之a, 関口 博史b, 佐々木 裕次c
Satoshi Takahashia, Hiroyuki Oikawaa, Hiroshi Sekiguchib, Yuji Sasakic
a東北大学,b(公財)高輝度光科学研究センター, c東京大学
aTohoku University, bJASRI, cThe University of Tokyo
- Abstract
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タンパク質が変性状態から天然状態にフォールディングする過程の解明を目指し、プロテインAのBドメイン(BdpA)のゆらぎ運動をX線1分子追跡法(DXT法)を用いて観察することを試みた。金基板にBdpAと金ナノ結晶を滴下した試料についてDXT測定を行い、多数の回折点を検出した。変性剤濃度が低い条件では回折点の揺らぎ運動は制限されており、金ナノ粒子と基板の間の相互作用が示唆された。一方で、変性剤濃度が高い条件では比較的速い運動が検出される場合があった。この条件では、変性したBdpAの鎖の揺らぎ運動を観察できた可能性がある。
キーワード: タンパク質のフォールディング、プロテインAのBドメイン、X線1分子追跡法
2014A1832 / BL26B2
DOI:10.18957/rr.6.1.42
田中 るみかa, 慶澤 景子b, 渡邉 朋信b, 川口 辰也a, 今田 勝巳a
Rumika Tanakaa, Keiko Yoshizawab, Tomonobu Watanabeb, Tatsuya Kawaguchia, Katsumi Imadaa
a大阪大学大学院理学研究科, b理化学研究所 QBiC
aGraduate School of Science, Osaka University, bRIKEN QBiC
- Abstract
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YFPは発色団近傍の7番目のβ鎖にアミノ酸を挿入すると、蛍光の圧力応答性が著しく向上した変異蛍光タンパク質が得られるが圧力応答性が生じる原因は不明である。本研究では、系統的に挿入変異を行ったYFPについて様々な圧力下での構造解析を行い、蛍光圧力応答の構造基盤を明らかにすることを目的として、加圧セル材のテストとYFP1残基挿入変異体YFP-Qの構造解析を行った。
キーワード: YFP、圧力応答、結晶構造解析
2014A3712, 2014B3712 / BL22XU
DOI:10.18957/rr.6.1.46
石井 賢司a, 佐藤 研太朗b, 浅野 駿b, 藤田 全基b, 中尾 裕則c
Kenji Ishiia, Kentaro Satob, Shun Asanob, Masaki Fujitab, Hironori Nakaoc
a(国研)量子科学技術研究開発機構放射光科学研究センター,b東北大学金属材料研究所, c(共)高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
aQST, bTohoku University, cKEK
- Abstract
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CuO2面が三層重なったBi系銅酸化物高温超伝導体 Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ(Bi2223)における電荷密度波を探索するため、高エネルギーX線回折実験を行った。低温で出現し、温度上昇により消失する超格子反射は観測されたが、銅 L3 吸収端では等価な波数位置には観測されないため、電荷密度の変調に由来した超格子反射ではないと結論づけた。結晶中のCuO2面間でホール濃度が不均一である三層系における電荷密度波の特徴とその超伝導との関係について議論を行う。
キーワード: 銅酸化物高温超伝導体、電荷密度波、X線回折
2014A6907, 2014B6907, 2015B6504, 2016A6605, 2016B6605 / BL44XU
DOI:10.18957/rr.6.1.50
裏出 令子a, 伊中 浩治b, 古林 直樹b, 東野 ゆうきa, 松﨑 元紀a, 奥田 綾a, 加茂 昌之b
Reiko Uradea, Koji Inakab, Naoki Furubayashib, Yuki Higashinoa, Motonori Matsusakia, Aya Okudaa, Masayuki Kamoa
a京都大学,b丸和栄養食品株式会社
aKyoto University, bMaruwa Foods and Biosciences, Inc.
- Abstract
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脳神経細胞の小胞体に高発現する分子シャペロンER-60はアルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβペプチドの線維化を阻害する。生化学的な解析から、ER-60のbb’ 領域がアミロイドβペプチドと結合することで線維化を阻害することが明らかとなっている。本研究では、結晶構造解析によりbb’ の境界領域にアミロイドβペプチドが一定の決まった配位ではなくフレキシブルな結合様式で結合することを明らかにした。
キーワード: アミロイドβペプチド、小胞体、分子シャペロン、X線結晶構造解析
2014B1324, 2015B1287, 2017A1392 / BL43IR
DOI:10.18957/rr.6.1.55
岡田 真a, 池本 夕佳b, 森脇 太郎b
Makoto Okadaa, Yuka Ikemotob, Taro Moriwakib
a兵庫県立大学高度産業科学技術研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aLASTI, University of Hyogo, bJASRI
- Abstract
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ナノインプリントグラフォエピタキシーによって作製した分子配向を有する液晶微細構造物の分子配向を評価するため、BL43IRによる局所領域における偏光IR測定を行った。測定の結果、ラインアンドスペースパターン内の分子が配向していることが分かった。
キーワード:ナノインプリントグラフォエピタキシー、分子配向、偏光IR測定
2014B1518 / BL29XU
DOI:10.18957/rr.6.1.60
吉田 力矢a, 後藤 遼平a, 松浦 徹b, 丹田 聡b, 香村 芳樹c, 田中 良和c, 西野 吉則a
Rikiya Yoshidaa, Ryohei Gotoa, Toru Matsuurab, Satoshi Tandab, Yoshiki Komurac, Yoshikazu Tanakac, Yoshinori Nishinoa
a北海道大学電子科学研究所,b北海道大学工学部,c(国)理化学研究所
aResearch Institute for Electronic Science, Hokkaido University, bDepartment of Engineering, Hokkaido University, cRIKEN
- Abstract
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本実験課題では、コヒーレントX線回折による電荷密度波物質の研究に向けた事前検討を目的として、X線光学系・測定装置系の設置と、1T-TaS2 をテスト試料に用いた評価をBL29XUにおいて行った。室温における評価では、1T-TaS2 の衛星反射におけるスペックルパターンを測定できることを確認した。試料に電流を印加して行った測定では、コヒーレントX線回折パターンに有意な変化は観測されなかったが、電流印可方法に問題があった可能性があり、断定的な結論は得られなかった。温度依存性の測定に向けた検討では、低温測定用クライオスタットのベリリウム窓材がコヒーレントX線回折パターンに影響を与えることが確認された。更に、ヒーターを使用して試料を 〜370 K まで加熱した測定では、ブラッグピークの強度分布に揺らぎが観測され、高温では測定系が十分に安定していないことが示された。
キーワード: コヒーレントX線回折、電荷密度波