Volume5 No.1
Published 31-January 2017 / SPring-8 Document D2017-002
SPring-8 Section A: Scientific Research Report
a九州大学 薬学研究院, b日本原子力研究開発機構
aGraduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyushu University, bJapan Atomic Energy Agency
- Abstract
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抗パクリタキセルモノクローナル抗体のパクリタキセル認識メカニズムの解明を目的として、抗パクリタキセルFab (Fragment antigen-binding:断片抗原結合)とパクリタキセルとの複合体の結晶を調製し、続いてX線回折実験を行った。SPring-8 BL38B1にてX線回折実験を行った結果、9 Åの分解能までの低角域に数点の回折点を得ることができたものの、結晶構造を解析することはできなかった。
キーワード: パクリタキセル、モノクローナル抗体
京都大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Kyoto University
- Abstract
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NADH-cytochrome b5 reductase(b5R)はNADHからcytochrome b5(b5)へ電子を受け渡すタンパク質であり、その電子伝達機構を解明するためには活性中心に結合したFADの酸化還元状態の変化による分子構造の変化を明らかにする必要がある。本研究では、酸化型b5R結晶を還元剤ジチオナイトによって還元した結晶についてX線回折実験を行い、構造変化を検証した。
キーワード: FAD、酸化還元酵素、X線結晶構造解析
a東北大学金属材料研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aIMR, Tohoku University, bJASRI
- Abstract
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磁性体の異方性を研究するための方法として用いられるESR: Electron Spin ResonanceをX線磁気円二色性分光(XMCD)と組み合わせて、表面の磁気状態を研究するための手法の開発を行った。周波数掃引方式と磁場掃引方式の2つの方法で比較実験を行い、磁場掃引方式において、磁性体表面のESR信号を35 GHzの周波数で測定出来ることを実証した。
キーワード: Electron Spin Resonance、XMCD、磁化検出ESR、表面磁性
a静岡大学大学院総合科学技術研究科, b奈良先端科学技術大学院大学
aGraduate School of Integrated Science and Technology, Shizuoka Univ.,
bGraduate School of Materials Science, Nara Institute of Science and Technology (NAIST)
- Abstract
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色素増感太陽電池の陰極に使用される酸化チタン表面にPDTC (pyrrolidinedithiocarbamate)分子を吸着させ、空気中でアニールすると光電変換効率が上昇する。本研究では、ルチル型TiO2単結晶基板をPDTC湿式処理し、硫黄原子がどのように表面に取り込まれているかを評価することで、この原因究明を試みた。硫黄原子の環境については、終状態固定X線光電子分光(CFS-XPS)及びX線光電子回折(XPD)によって評価した。CFS-XPSによる深さ方向の硫黄原子の分布を調べたところ、酸化された硫黄原子は酸化チタン表面に偏析していることが判明した。この結果により、酸化チタン表面に吸着したPDTC分子中の硫黄原子がTi欠陥に入り、電荷移動を引き起こすことで増感色素の吸着量が増加すると考えられる。また、S 2p XPDの結果には、明瞭な異方性が見られなかった。
キーワード: 酸化チタン、XPS、XPD
aRespiratory & Sleep Medicine, Women’s and Children’s Hospital, North Adelaide, South Australia
bRobinson Research Institute, University of Adelaide, South Australia
cSchool of Medicine, University of Adelaide, South Australia
dSchool of Physics, Monash University, Victoria, Australia
eMechanical and Aerospace Engineering, Monash University, Clayton, Vic, 3800, Australia
- Abstract
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Cystic fibrosis (CF) is a genetic disorder that compromises the ability of the mucociliary transit (MCT) system to clear debris and pathogens from the airways. To directly assess airway health and the effects of treatments we have developed a synchrotron X-ray microscopy method that non-invasively measures the local rate and patterns of MCT behaviour. The aim of this experiment was to determine if our non-invasive local airway health assessment method could identify changes in nasal MCT rate following clinical treatments known to alter MCT.
Experiments were performed on the BL20XU beamline at the SPring-8 Synchrotron in Japan. Mice were anaesthetized, a small quantity of lead sulphide particles were delivered to the nose, and images of the nasal airways were acquired. The nasal airways were treated with hypertonic saline or mannitol to increase surface hydration and change MCT. Custom software was used to locate and track the motion of the lead particles throughout the image sequences, and to calculate individual and bulk MCT rates.
MCT rates increased following both treatments, but due to high variability there were no statistically significant differences in MCT rate between treatments. However, in future studies we hope that the improved sensitivity provided by this technique will allow us to identify useful CF lung disease-modifying therapies.
Keywords: Phase contrast, synchrotron, X-ray imaging, mouse, nose, cystic fibrosis, mucociliary transit
a Department of Future Industry-Oriented Basic Science and Materials, Toyota Technological Institute, Tempaku, Nagoya 468-8511, Japan
b Japan Synchrotron Radiation Research Institute, SPring-8, Kouto, Hyogo 679-5198, Japan
- Abstract
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Simultaneous measurement of SAXS, WAXD and FTIR spectra has been performed to clarify the hierarchical evolution in the melt-isothermal crystallization of polyoxymethylene. The derived structural change process was found to be almost common to the various kinds of polymers, suggesting a universality of the proposed crystallization mechanism.
Keywords: Simultaneous Measurement System, Wide-angle X-ray Diffraction, Small-angle X-ray Scattering, FTIR Spectra, Isothermal Crystallization, Polyoxymethylene
a群馬大学大学院理工学府, b室蘭工業大学
aGraduate School of Science and Technology, Gunma Univ., bMuroran Institute of Technology
- Abstract
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タンパク質などの生体物質の機能発現・反応は、水溶媒中で行われる。そのため、様々な溶液環境下での“その場”観測が可能なX線溶液散乱法は、大変有効な手法である。我々は、第3世代放射光光源であるSPring-8のビーム特性を生かして、空間分解能250 nmから0.3 nm程度の広範囲の散乱データを測定し、タンパク質の4・3次構造からドメイン間の相関,ドメイン内部構造,2次構造領域までの構造階層に依存した構造転移などの解析が可能であることを既に報告している。本研究は、第3世代放射光光源のビーム特性と共鳴X線散乱を活用して、タンパク質分子内の特定部位間の距離相関を選択的に抽出するための新たな手法を開発する目的で実施された。本研究の推進により、希薄なタンパク質溶液においても、定性的には観測が可能であることが分かった。定量的な解析のために、さらに統計精度をあげた実験を予定している。
キーワード: タンパク質,広角散乱,共鳴散乱
a九州大学 先導物質化学研究所, b九州大学 大学院工学府
aInstitute for Materials Chemistry and Engineering, Kyushu Univ, bGraduate School of Engineering, Kyushu Univ.
- Abstract
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液晶配向を誘起する光架橋配向性アクリレート薄膜と液晶(5CB)からなる積層膜を調製し、放射光顕微赤外分光法により、配向性基板上に塗布した液晶の配向状態評価を試みた。5CBのCN伸縮振動およびフェニル基C=C伸縮振動に由来する吸収の強度比より、光架橋配向性アクリレート薄膜の硬化による液晶積層膜の配向度の変化が観測された。パターン化基板の面内配向異方性評価に必要な、局所領域における赤外吸収スペクトルの計測は、光架橋配向性薄膜や5CB積層膜の面内不均一性により困難であった。光照射時間や光架橋配向性アクリレート組成物の組成など、硬化条件の最適化による面内不均一性の低減が課題である。
キーワード: 液晶、薄膜、光パターニング
Cuドープしたトポロジカル絶縁体Bi2Se3表面構造の研究
Study of Surface Structure of the Cu-doped Topological Insulator Bi2Se3
東京大学 物性研究所
Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
- Abstract
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代表的なトポロジカル絶縁体であるBi2Se3単結晶の(111)清浄表面とCuを室温で蒸着した表面の構造を、X線Crystal Truncation Rod(CTR)散乱法を用いて調べた。Cu蒸着の前後でCTR散乱プロファイルに変化は見られず、先行報告されていたCuの蒸着による表面近傍のドーピングが本研究では見られなかった。表面構造を解析した結果、表面終端層はSe原子層であり、低エネルギーイオン散乱実験により報告されていたBiの二重層ではないことが分かった。表面格子緩和は非常に小さく、Bi2Se3表面層において0.04 Å以下であることが分かった。
キーワード: X線CTR散乱法、トポロジカル絶縁体、表面構造
a National Institute for Material Science, b SPring-8 Service Co., Ltd
- Abstract
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Hard X-ray Photoemission Spectroscopy was employed to investigate the elemental composition and chemical state of core-shell bimetallic nanoparticles deposited on a solid substrate. A shift in Au 4f7/2 and Ag 3d5/2 binding energies together with the change in surface elemental composition of the nanoparticles suggests that a low-temperature alloying occurs for bimetallic nanoparticles.
Keywords: metallic nanoparticles, core shell nanoparticle, plasmonics, photoemission spectroscopy
a国立研究開発法人理化学研究所, b(公財)高輝度光科学研究センター
aRIKEN, Institute of Physical and Chemical Research
bJASRI, Japan Synchrotron Radiation Research Institute
- Abstract
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シグナル伝達に関わるタンパク質の構造決定を目的として、X線結晶構造解析を進めている。現状6⁃6.5 Å分解能データは得られているが、以降の解析が進展していない。そこでHAG法を結晶マウント法として用い、室温で調湿等の条件探索で結晶の質を改善できるかを検討した。次いで最適条件での凍結が結晶に与える影響を評価した。結晶の質の改善が見られなかった試料もあったが、今回は2種類の試料について結晶の質の改善が見られたので報告する。
キーワード: X線結晶構造解析、HAG法、BL38B1
SPring-8 Section B: Industrial Application Report
東北大学 未来科学技術共同研究センター
New Industry Creation Hatchery Center, Tohoku University
- Abstract
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軽水炉の構造材料である非鋭敏化低炭素Type 316Lオーステナイト系ステンレス鋼冷間加工材について「鋭敏化によらない応力腐食割れ」の発生メカニズムを探る研究の一環として、酸化皮膜直下および酸化皮膜内の残留応力測定をBL19B2において課題番号2012A1019として実施した。結果を前回の課題番号2011B1024の結果と併せて総合的に比較検討することにより、非鋭敏化低炭素Type 316Lオーステナイト系ステンレス鋼冷間加工材の粒界応力腐食割れ発生のプロセスについて新たなモデルを提案した。
キーワード: 応力腐食割れ、X線回折、表面近傍残留応力、侵入深さ一定法
a兵庫県立大学, b兵庫県立工業技術センター, c冨士色素(株), d(公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bHyogo Prefectural Institute of Technology, cFuji-Pigment. Co. Ltd., dJASRI
- Abstract
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La過剰型LSO(組成La9.333+xSi6O26+1.5x, LSO)は燃料電池用電解質として非常に有望な次世代材料であるが、La組成を過剰とした場合、化学安定性が低下し、試料が自己崩壊することが問題である。本課題では、我々が研究を進めている極微量の鉄を添加して安定化を達成したLSOについて、鉄による安定化機構を解明することを目指して核共鳴散乱(核共鳴前方散乱)による検討を行った。
キーワード: 固体酸化物形燃料電池、微量元素、状態解析
a兵庫県立大学, b兵庫県立工業技術センター, c冨士色素(株), d(公財)高輝度光科学研究センター
aUniversity of Hyogo, bHyogo Prefectural Institute of Technology, cFuji-Pigment.Co.Ltd., dJASRI
- Abstract
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燃料電池用電解質の開発を行うなかで我々は、材料の化学的安定性が極微量の遷移金属の添加によって大きく向上することを見出した。本課題では、そのような特性を支配する極微量の遷移金属の状態を明らかとするために、X線吸収微細構造解析(XAFS)を適用した。具体的には、アパタイト型固体電解質に存在する遷移金属元素の状態解析を行った。その結果、意図的に添加した鉄の大部分はアパタイト母相に置換固溶するが、ごく一部は粒界に存在し、材料の化学的安定性向上に寄与するものと推察された。
キーワード: 固体酸化物形燃料電池、微量元素、XAFS
a(株)東芝, b大阪大学, c(公財)高輝度光科学研究センター
aToshiba Corporation, bOsaka University, cJASRI
- Abstract
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レーザーを照射した析出強化型アルミニウム合金のX線散乱強度を、小角散乱(SAXS)および極小角散乱(USAXS)により測定した。その結果、レーザー照射によって機械的な衝撃を与えると、散乱強度が増大することがわかった。パルス幅約8 nsのNd:YAGレーザーの照射では、散乱ベクトルqの広い範囲で散乱強度が増大した。一方、パルス幅約130 fsのTi: Sapphireレーザーの照射では、高q領域で散乱強度の顕著な増大が認められた。
キーワード: アルミニウム合金,レーザー衝撃,微細組織,SAXS,USAXS
a昭和電工株式会社, b物質・材料研究機構
aSHOWA DENKO K.K., bNational Institute for Materials Science
- Abstract
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リチウムイオン電池(LIB)の充放電に伴う活物質の構造変化をその場観察するために、アルミラミネート型LIBに放射光を貫通入射させるその場XRD測定系を構築した。半導体検出器を用いることにより10秒程度の露光で十分な回折データが得られることが分かった。黒鉛ハーフセルの充放電その場測定では、天然黒鉛と人造黒鉛の違いが明確に観察された。黒鉛/3元系MNC正極のフルセルでは、2 C-rateの高速充電時においても黒鉛の構造相転移が明瞭に観察できることを示した。
キーワード: リチウムイオン電池、黒鉛負極、その場XRD、3元系正極
a(株)豊田中央研究所, bトヨタ自動車(株)(当時)
aToyota Central R&D Labs., Inc., bToyota Motor Corp.
- Abstract
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Liイオン電池の負極材料として利用可能なTi系化合物の局所構造をXAFSで調べた。その結果、試料中のLi量に対応してTiの吸収端エネルギーが低エネルギー側にシフトし、Tiの価数が減少したことを示した。また、EXAFSスペクトルをフーリエ変換した結果から、Ti周りの局所構造はほとんど変化していないことがわかった。
キーワード: リチウム、負極、二次電池、XAFS
a(公財)高輝度光科学研究センター, b(株)スプリングエイトサービス, cボン大学
aJASRI, bSPring-8 Service Co., Ltd., cUniversity of Bonn
- Abstract
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産業利用ビームラインに導入を検討しているオンライン1次元検出器MYTHENを利用した新しい粉末回折装置の設計上、最も重要な要素のひとつである「X線検出感度」に関して、SPring-8の偏向電磁石ビームラインで粉末回折実験に利用するX線エネルギーに対する依存性を検証した。
キーワード: 粉末回折、新装置開発、自動化、高効率化、高度化
秋田県立大学システム科学技術学部機械知能システム学科
Akita Prefectural University
- Abstract
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氷点下環境における固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電性能低下改善、および耐久性の向上に関連して、PFECを構成する基材の一つであるガス拡散層(GDL)およびマイクロポーラス層(MPL)に着目し、燃料電池の反応で生成される液水の凍結挙動とその凍結による機械的衝撃がGDLに及ぼす特性について調査した。GDLは一般的に直径8 μm程度のカーボン繊維からなる微細な多孔体であるため、実際の発電状態において、十分な時間および空間分解能を有して、内部の構造や含水時における微視的な液水分布および液水挙動を可視化することは一般的に難しい。また、GDLに付加したMPL基材はサブミクロンオーダーであり、凍結による機械的損傷を受けやすい可能性があるが、詳細な状況はこれまで分かっていない。本研究では、含水状態のGDL単体およびMPLを付加したGDLを用いて氷点下環境でのGDL内部の液水挙動と固-液相変化現象のex-situ実験を大型放射光施設SPring-8でX線マイクロCTを行い評価した。
キーワード: 固体高分子形燃料電池(PEFC),ガス拡散層(GDL),マイクロポーラス層(MPL),X線CT,凝固, SPring-8
a北海道大学大学院工学研究院, b北海道大学大学院工学院, c室蘭工業大学材料工学科, d新日鐵住金(株)
a,bHokkaido University, cMuroran Institute of Technology, dNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation
- Abstract
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(Fe, Ni)-Cr-Al合金表面上に生成するAl2O3皮膜の生成・成長挙動に及ぼすCrの影響を構造解析により検討し、Cr添加によるAl2O3皮膜形成に必要なAl濃度の低減機構を検証した。本実験ではFeおよびCrの両者がAl2O3スケールの形成および相変態に及ぼす影響を区別し、Crの影響のみを検討するため三元系Ni-Al-Cr合金を用いた。Ni-14Al-20Cr合金表面には酸化の初期にCr2O3が生成し、その後準安定Al2O3スケールが形成することなくα-Al2O3スケールが生成した。一方、Ni-14Al合金にCrコーティングを施した試料表面には酸化の初期にCr2O3が生成するが、その後スピネル型NiCr2O4スケール→NiOが順に生成し、Al2O3スケールは生成しなかった。
キーワード: Al2O3スケール、相変態、Ni-Al合金、臨界Al濃度、in-situ高温X線回折測定
a群馬県立群馬産業技術センター, b群馬県東部環境事務所, c横浜国立大学, d豊橋技術科学大学, e九州大学
aGunma Industrial Technology Center, bGunma Tobu Environmental Affairs Office, cYokohama National University, dToyohashi University of Technology, eKyushu University
- Abstract
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原料粒子を超高速に加速し基材に衝突させ、その衝撃により焼結させ成膜する技術(以下「CASP」という。)による最適皮膜特性の確立に関して、最大の研究課題は、耐プラズマ性および熱伝導性・放熱性を向上させることであり、窒化アルミニウム(以下「AlN」という。)皮膜の緻密性を向上させることに他ならない。この膜の緻密性の評価方法として、大型放射光施設であるSPring-8の結像型X線CTによる断面画像から空隙の割合を求め、この値をもとにSEM画像の2値化の閾値をチューニングするという気孔率の評価方法を開発した。
キーワード: 衝撃焼結成膜、半導体製造工程、イメージング
a横浜ゴム株式会社, b山形大学大学院理工学研究科, c京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻
aTHE YOKOHAMA RUBBER CO.,LTD., bGraduate School of Science and Engineering, Yamagata University,
cDept. of Polymer Chemistry, Kyoto University
- Abstract
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LAOS (Large Amplitude Oscillatory Shear)下における時分割超小角X線散乱/小角X線散乱測定および粘弾性の同時測定を行い、シリカ充填量の異なるゴムの内部構造変化を観察した。LAOS下では、周期ひずみに同期して散乱強度が変化した。また、シリカ体積分率の増加やシランカップリング剤未配合により、せん断ひずみ印加による散乱強度の変化に異方性が観測された。
キーワード: シリカ、凝集、分散、粘弾性
a新日鐵住金(株), b(公財)高輝度光科学研究センター
aNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation, bJASRI
- Abstract
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加圧水型原子力発電プラントの一次冷却系構造材として主に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金においては、一次冷却水系へ溶出するNiを低減することが急務となっている。最近、耐Ni溶出低減対策として、いくつかの表面処理法を見出しつつあるが、そのNi溶出抑制メカニズムに関しては不明な点が多い。今回は、表面処理を行っていない初期材において、その初期状態皮膜成分の金属元素の深さ分布や存在状態への理解を深めるため、HAXPESを用いた非破壊分析を実施した。
キーワード: PWR、蒸気発生器用伝熱管、HAXPES
北海道大学
Hokkaido University
- Abstract
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コンクリート構造物が火災や高温加熱を受ける事例が報告されている。加熱温度によってコンクリートの変質状況は異なるが、本研究では400°Cの加熱を8時間施した硬化セメントペーストについてひび割れとセメント水和物の変質を調べた。加熱はセメント硬化体表面へ作用させるので、中心部へ向かって進むと考えられる変質状況を適切に調べるために、著者らが開発を進める非破壊CT-XRD連成法を用いた。その結果、加熱によるひび割れの発生と通水作用によるひび割れの進展を明らかにした。また、水酸化カルシウムの存在が確認された。
キーワード: 非破壊CT-XRD連成法、セメント硬化体、加熱、水酸化カルシウム、ひび割れ
a月島機械株式会社, b千葉大学大学院理学研究科
aTsukishima Kikai Co., Ltd, bChiba University
- Abstract
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貯蔵中のバイオマス燃料の発熱・発火原因を究明するため、バイオマス燃料に含まれる鉄に対してK吸収端XAFS測定を行った。その結果、XAFS測定のための試料調製を大気中で行うと試料に含まれる鉄が酸化されてしまうため、本研究の目的のためには不活性ガス雰囲気下で試料の前処理を行う必要があることがわかった。また、バイオマス燃料製造過程における鉄の酸化状態の変化から、発熱防止に効果的な炭化処理条件を選定することのできる可能性を見いだした。
キーワード: バイオマス、燃料、XAFS、XANES、鉄
住友ベークライト(株)
SUMITOMO BAKELITE CO., LTD.
- Abstract
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半導体パッケージ基板用樹脂/銅箔界面の残留応力について、基板用樹脂の熱硬化過程におけるその場観察を行い低温短時間硬化の影響を確認した。加熱試料台を用い、Cu(331)面のX線回折プロフィール変化を側傾法により測定、sin2ψ法により熱時の残留応力を算出した。その結果、硬化条件によって応力が異なることが分かり、半導体パッケージ基板用樹脂の低温短時間硬化の可能性を見出した。
キーワード: 残留応力解析、sin2ψ法、その場観察、半導体パッケージ、基板材料、長期信頼性、熱プロセス検討
住友ベークライト(株)
SUMITOMO BAKELITE CO., LTD.
- Abstract
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X線回折法による熱硬化性樹脂/銅箔界面の残留応力解析手法を用いて半導体パッケージ大型基板における面内応力分布を測定した。残留応力は、Cu(331)面のX線回折プロフィール変化を側傾法で測定し、sin2ψ法により算出した。得られた面内応力分布の標準偏差は、今後大型基板の面内応力分布を評価する指標となると考えられる。
キーワード: 残留応力解析、sin2ψ法、半導体パッケージ、基板材料、長期信頼性、面内分布
a京都大学化学研究所, b滋賀大学教育学部, c京都大学生存圏研究所, d(株)クレハトレーディング
aInstitute for Chemical Research, Kyoto University, bFaculty of Education, Shiga University, cResearch Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University, dKureha Trading, Co., Ltd.
- Abstract
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我々は非界面活性剤系洗浄剤により、不織布や土壌などからセシウムを効率的に除去できることを見いだしている。セシウムの吸着状態を明らかにし、どのようなセシウムが除去されやすいかを明らかにすれば、より高効率な洗浄剤を考案することが可能となる。そのため、土壌に吸着したセシウムのEXAFS解析を目指した。
解析に先立って、CsのK吸収端とLIII吸収端のいずれが好ましいか検討したところ、多重電子励起の影響は両者に現れるため、LIII吸収端を用いたとしても改善しないことがわかった。また、セシウムを吸着させた後にイオン交換した土壌についての検討を行ったところ、洗浄度に応じて動径構造関数が変化することを見いだした。これはイオン交換されやすいセシウムには何らかの特徴的な構造があることを示唆した結果となった。
キーワード: セシウム,除染,構造解析
住友ベークライト(株)
SUMITOMO BAKELITE CO., LTD.
- Abstract
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X線回折法を用いた半導体パッケージ用樹脂/銅箔界面の熱時残留応力その場観察において、樹脂の熱硬化反応過程におけるより詳細な応力変化挙動を明らかとするため、2次元検出器PILATUS 300Kを用いた熱時残留応力その場観察を検討した。2次元回折像に対してsin2ψ法を適用することで、半導体パッケージ封止用熱硬化性樹脂/銅界面の残留応力変化の観察に成功した。ビームサイズおよび露光時間の最適化による評価時間を短縮することは今後の検討課題である。
キーワード: 半導体パッケージ、長期信頼性、熱硬化過程、残留応力測定、2次元検出器
a住友理工株式会社, b名古屋工業大学
aSumitomo Riko Co. Ltd, bNagoya Institute of Technology
- Abstract
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カーボンブラック(CB)で補強されたゴムの粘弾性特性に対するCBの分散構造の影響を調査した。CBと混錬した架橋ゴム(以下ゴムと省略)において、ブタジエンゴム(BR)末端に官能基を導入した変性BR(XBR)をブレンドすることで歪振幅増大に伴う貯蔵弾性率の低下が抑制されていることが確認されている。このメカニズムを解明するため、CB補強ゴムに微振幅加振(0.05–1.3%)を与え、加振状態でのCB分散状態でBL19B2において超小角X線散乱(USAXS)測定を行った。得られたデータの解析では、加振方向(θ //)と加振に対して垂直方向(θ⊥)に分けて、静的な状態の散乱プロファイルとの比較を行った。その結果、XBRを配合したゴムのθ //方向におけるq = 0.005–0.01 nm−1において、散乱強度が上昇し、q = 0.01 nm−1より大きい領域では、散乱強度が減少した。一方、θ⊥方向では全体的に散乱強度の低下が確認された。XBRを配合していないものは、θ//、θ⊥方向ともに散乱強度の上昇が認められなかった。以上の結果より、歪振幅増大による貯蔵弾性率の低下抑制に対してq = 0.005–0.01 nm−1における加振方向でのCB分散構造変化に着目することが重要であることがわかった。
キーワード: ゴム(rubber),補強材(reinforcing material),静的ばね定数(static spring constant),動的弾性率(dynamic modulus),ペイン効果(Payne effect)
a新日鐵住金株式会社, b(公財)高輝度光科学研究センター
aNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation, bJASRI
- Abstract
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汎用電気炉を用いて作製した強度の異なるコークスについて、単色X線CT測定を行った結果、白色X線CT測定で確認された気孔、鉱物や灰分などに加えて、密度差が小さく、骨格となる炭素組織構造の分布に起因する吸収コントラストが確認された。乾留処理時に軟化溶融しにくい石炭組織や脈石成分と共に、コークスの強度による明瞭な違いが観察された。
キーワード: 石炭、コークス、X線イメージング、X線CT、非破壊/3次元内部構造解析
a京都大学, b(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構, c石油資源開発(株), d(公財)深田地質研究所, e(公財)高輝度光科学研究センター
aKyoto University, bJOGMEC, cJAPEX, dFGI, eJASRI
- Abstract
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石油増進回収技術の一つである低濃度塩水攻法の油回収機構の解明を目的として、白雲母とオレイン酸の油-鉱物二相界面に対して、塩水(1.0 wt%のNaCl水溶液)の注入前後において20 keVの入射X線エネルギーでX線CTR散乱法の測定を行い、同界面における塩水の注入に伴う吸着構造の変化を調べた。その結果、塩水注入前には低角領域でCTR信号の振動が観測され、オレイン酸の吸着層の存在が示唆された。一方、塩水注入後にはその振動が不明瞭になり、塩水の注入によってオレイン酸の吸着が緩和されたことが示唆された。今後、このデータを元に界面近傍の電子密度分布の解析を行い、液相分子の界面近傍への集積と吸着について詳細な検討を行う。
キーワード: 油-鉱物界面,石油増進回収,X線CTR散乱法,白雲母,オレイン酸
住友ベークライト(株)
SUMITOMO BAKELITE CO., LTD.
- Abstract
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X線回折法を用いた半導体パッケージ用樹脂/銅箔界面残留応力のその場観察において、樹脂の熱硬化反応過程におけるより詳細な応力変化挙動を明らかとするため、2次元検出器PILATUSを用いた熱時残留応力その場観察を検討した。sin2ψ法を適用しビームサイズを最適化した残留応力評価により従来の測定時間を1/4に短縮化することに成功した。また、高信頼性樹脂と低信頼性樹脂の間で熱時応力変化挙動が異なることを明らかにした。
キーワード: 半導体パッケージ、長期信頼性、熱硬化過程、残留応力測定、2次元検出器
aテイカ(株), b山形大学
aTAYCA CORPORATION, bYamagata University
- Abstract
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硫酸法による二酸化チタン製造過程で生成する硫酸-チタン水溶液中のTi(IV)イオンの溶液構造を調査するため、硫酸濃度を変更した硫酸-チタン水溶液を作製し、XAFS(X-ray absorption fine structure)測定を行った。XANESの結果から、硫酸濃度を変更することでTi(IV)イオンの配位構造が変化していることを示唆する結果を得た。Ti-K吸収端のEXAFS振動の結果も同様に硫酸濃度の変更に伴うスペクトルの変化が確認された。EXAFS振動k3χ(k)のFourier変換(k=3.0-7.0 Å-1)により求めた動径構造関数より、硫酸濃度の増加に伴い、最近接Ti-Oピーク強度の増加と結合距離が短くなっており、錯体種の変化や配位子の変換、Ti-O配位結合距離の変化が起きていると推察される。
キーワード: 硫酸-チタン水溶液、XAFS、溶液構造解析、配位構造