Volume7(2019)
SPring-8 Section A: Scientific Research Report
aKyoto Institute of Technology, bRIKEN SPring-8 Center,
cJapan Synchrotron Radiation Research Institute, dTohoku University
- Abstract
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Isothermal crystallization behaviors from the melt have been investigated for poly (3-hydroxybutyrate) (P3HB) thin films by time-resolved measurements of grazing-incidence X-ray scattering using synchrotron radiation. P3HB films with thicknesses of ca. 25 nm ~ 3.2 μm prepared on silicon substrates were cooled rapidly from the melt to a crystallization temperature, Tc, of 373 K by using a temperature-jump (T-jump) apparatus. Isothermal crystallization behaviors of P3HB in thin films were traced by simultaneous measurements of grazing-incidence wide-angle X-ray scattering (GIWAXS) and small-angle X-ray scattering (GISAXS). It was experimentally found for the first time that the induction time of crystallization became longer with reducing the film thickness. This indicated that the chain mobility necessary for nucleation at 373 K was reduced in thin films. It was also indicated that lamellar crystals having the edge-on type orientation to the substrate surface were preferentially formed at the beginning of crystallization. Those lamellae in the thin films might be stacked one another with amorphous chains in a disordered manner.
キーワード: crystallization kinetics, poly(3-hydroxybuthyrate) thin film, grazing-incidence small-angle and wide-angle X-ray scattering measurement using synchrotron radiation, induction time of crystallization, film-thickness effect
a広島大学、b(公財)高輝度光科学研究センター
aHiroshima University, bJASRI
- Abstract
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液体 Se-Te 混合系は温度や組成の変化により、連続的な構造転移を示すことが古くから知られている。転移に伴い密度がメゾスコピックに不均質になることが1980年代には提唱されていたが、永らくその実験的な証拠は得られていなかった。この問題に対して我々は、SPring-8/BL04B2を利用した小角X線散乱測定により、その微小な密度ゆらぎの変化を検知することに初めて成功し、2012年の論文で発表した。ただこの実験には不備な点が一つあった。BL04B2は分光結晶が一枚ふりであるため入射光への高調波の混入を避けらないが、検出器にエネルギー分解能のないイメージングプレートを使用したため、完全な単色X線の散乱スペクトル測定ではなかった。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーから成る測定システムを用いることで、散乱光をエネルギー選別した測定を行い、前回の実験結果の妥当性の検証を行った。
Keywords: 液体-液体相転移、密度ゆらぎ、小角散乱
名古屋大学
Nagoya University
- Abstract
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Ge(110) 基板上に形成した GeSn 混晶エピタキシャル層における局所ひずみ構造をマイクロ回折法によって分析した。[001]方向からマイクロビームを入射してサブミクロンスケールの走査を行った ω ロッキングカーブにおいては特徴的な揺らぎが観測されたのに対し、[10]方向からの観察に対してはこのような揺らぎは現れなかった。これは GeSn/Ge(110) 界面の異方的な転位伝播やひずみ緩和構造に関連すると推測される。
Keywords: エピタキシャル成長、局所ひずみ、マイクロ回折、ゲルマニウム錫
a(国研)量子科学技術研究開発機構, bロシア科学アカデミー高圧物理学研究所
a National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology,
b Institute for High Pressure Physics, Russian Academy of Sciences
- Abstract
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水の構造の温度変化を調べるため、高温高圧下での水のX線回折実験を行った。温度 1273 K で、常温常圧の水とほぼ同じとなる条件での測定に成功した。温度 1273 K での水の構造は、常温常圧とは大きく異なるが、673 K での構造からの変化は小さいことが明らかになった。
Keywords: Water、Liquid、Structure
a東京慈恵会医科大学, b女子栄養大学, c高輝度光科学研究センター
aThe Jikei University School of Medicine, bKagawa Nutrition University, cJASRI/SPring-8
- Abstract
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トロポニンT処理法は、除膜筋線維(スキンドファイバー)内の内因性トロポニンTIC複合体を外来性トロポニンTと交換することにより筋線維がカルシウム非依存的に収縮反応を起こすことを可能にする。ラット左心室壁より調製したスキンドファイバーにこの処理を施すと、処理していない場合に比べてATP添加によりトロポニン 38/nm 子午反射が顕著に減少することがわかった。トロポニンT処理後の心筋線維はATPにより収縮状態となっていると考えられることから、心筋トロポニンTは硬直状態から収縮状態への変化に伴い構造変化を起こすことが示唆された。
Keywords: 心筋、トロポニン、収縮
Alagappa University
- Abstract
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The enzyme orotate phosphoribosyl transferase (OPRTase) is involved in the de novo pyrimidine nucleotide biosynthesis; it is a good target for antimicrobial agents. Also, some of the cancerous cells are known to depend on de novo pathway, this enzyme could be a potential drug target for cancer therapy. Orotate phosphoribosyl transferase is an important enzyme, which converts orotate to orotate monophosphate in the fifth step of pyrimidine biosynthesis. As the enzyme is from a hyperthermophile it is known to be stable at high temperatures and can be used as a model organism. Based on the importance of the enzyme, OPRTase from the extreme thermophile, Thermus thermophilus HB8 has been cloned, purified by ion exchange and size exclusion chromatography (SEC). Very tiny crystals appeared in the condition 0.2 M calcium acetate hydrate, 0.1 M sodium cacodylate trihydrate pH 6.5 and 18% w/v polyethylene glycol 8,000.
キーワード: Orotate phosphoribosyl transferase; cancer therapy; de novo pathway
a Oak Ridge National Laboratory, b University of Tennessee
- Abstract
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The rheology of suspensions of colloidal particles plays a critical role in many technological applications where it is essential to control the flow properties by tuning the shear viscosity. Theoretical calculations showed that introducing porosity into colloids gives an additional degree of freedom to tune their hydrodynamic properties. The goal of this project is to carry out an x-ray photon correlation spectroscopy (XPCS) study on such nano-particles to verify these theories, using nanoparticles of precisely controlled size and porosity which became available recently. To distinguish between prevailing theories we need to reach the high q plateau of the hydrodynamic function, where q denotes the momentum transfer in scattering.
Keywords: Nano-particles, colloids, XPCS
(公財)元興寺文化財研究所
Gangoji Institute for Research of Cultural Property
- Abstract
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これまで赤外分光分析では難しかった劣化により一部分子構造が変化した琥珀の産地推定について、加熱しながら放射光顕微赤外分析を実施することで産地推定が可能となることがわかった。方法は室温から 400℃ まで加熱した時の出土琥珀のスペクトルの変化を、主産地として知られている久慈市やいわき市、銚子市から産出する地質学的標準試料のそれと比較することで判別する試みを行った。さらにこれまで分析に使用できる試料がわずかしか無く分析が実施できなかった出土琥珀の産地を推定する方法として利用できる可能性も見出した。
Keywords: 出土琥珀、放射光顕微赤外分析、産地推定
a(公財) 高輝度光科学研究センター 、b(株) 豊田中央研究所
aJASRI, bTOYOTA CENTRAL R&D LABORATORIES, INC.
- Abstract
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シリコンナノシートの作成は、液晶ディスプレイや薄膜太陽電池など様々なデバイスへの応用が期待されており、多くの精力的な研究が報告されている。本研究では、紫外線照射により電導性が発現するフェニル基で修飾したシリコンナノシートを測定対象とした。この試料に電解質中で電圧を印加し、紫外線照射下で電流が流れる状態で、赤外スペクトル測定を行うことができるセルの開発を行った。また、電導機構の解明を目指して、赤外スペクトル測定を行った。
Keywords: 赤外放射光、顕微分光、試料環境制御
a(公財)高輝度光科学研究センター, b情報通信研究機構未来ICT研究所
aJASRI, bNICT
- Abstract
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X線回折散乱を利用し、生体分子の高空間分解能実空間イメージングを行う手段として、DNA 折り紙を利用する技術の開発を行なってきた。これは DNA 折り紙の特定部位に金ナノ粒子を結合させ、生体分子との干渉を記録することでイメージングを行う試みである。これは本来フーリエ変換ホログラフィー法(FTH)でイメージングを行うプロジェクトであったが、差し当たり CDI 法(Coherent Diffractive Imaging)でサンプルの実空間イメージングに成功したので報告する
Keywords: CDI、X線実空間イメージング、DNA 折り紙
(国研)量子科学技術研究開発機構
National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology
- Abstract
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高圧下X線吸収分光実験の低エネルギー領域への拡張に向けた環境整備を行った。従来の Yb-L3 吸収端(8.94 keV)近傍のエネルギーの入射X線を用いた Yb 系の計測に加えて、Eu-L3 吸収端(6.97 keV)近傍のエネルギーでの Eu 系の計測が可能となった。フィジビリティテストとして、ナノ多結晶ダイアモンドを用いたダイアモンドアンビルセル(DAC)に封入した Au–Sn–Eu 合金近似結晶試料を用いて計測を行った結果、通常条件下と遜色のない高品質のスペクトルを得ることができた。これにより、今後、価数揺らぎを持つ Eu 系の準結晶・近似結晶合金などについて圧力下で Eu 価数の評価の実施が可能となった。
Keywords: X線吸収分光、高圧、価数揺らぎ、準結晶
a京都大学, b東京大学
aKyoto University, bThe University of Tokyo
- Abstract
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Pt/Ge(001) 表面おいて形成される一次元原子鎖構造、p(4×2) 超構造の原子構造を明らかにするためBL13XUの (2+2) 型超高真空X線回折計を用いて微小角入射回折実験を行った。本装置内で Ge 基板結晶の清浄化およびPtの蒸着を行い、10.5 keV のX線を用いて面内回折点および逆格子ロッドを得た。低速電子回折による試料表面の評価から p(4×2) 構造以外の超構造の共存の可能性が判明したため、1/4次の超格子回折点を抽出し、構造モデルの検証を行った。現在までに本測定の結果を再現する構造モデルは見つかっていない。
Keywords: 一次元原子鎖、表面超構造、表面X線回折
1 Oak Ridge National Laboratory, 2 University of Tennessee
- Abstract
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Rheology of colloidal suspensions is of considerable interest for scientific as well as technological reasons. The nature of interparticle interactions determines the colloidal structure and hence the flow behavior of suspensions. There has been much interest in controlling the colloidal rheology through altering the interparticle forces. By introducing smaller particles into a suspension of large colloidal particles, the pressure of the small particles produces an additional attractive force between the colloids. This is referred to as the depletion force. [1] Existing experimental studies have demonstrated the profound influence of depletion forces on the deformation behavior of colloidal suspensions. [2] The goal of this project is to carry out an x-ray photon correlation spectroscopy (XPCS) study to understand the dynamical perspective of this phenomenon.
キーワード: Short-range attraction, colloids, XPCS
a北海道大学, b技術研究組合FC−Cubic, c日本原子力研究開発機構
aHokkaido University, bFC-Cubic TRA, cJAEA
- Abstract
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固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒層内には触媒粒子のバインダであるとともに、プロトン伝導パスとしてもはたらくアイオノマーと呼ばれる高分子が混練されている。その側鎖末端にはスルホ基が存在し、プロトン伝導を担っているが、同時に Pt 合金系電極触媒の表面を被毒していると考えられている。本研究では、炭素鎖長の異なるペルフルオロカーボン鎖の末端にスルホン酸があるアイオノマーモデル電解質の吸脱着が金属表面に及ぼす影響を、表面X線散乱(SXS)法により計測することを試みた。
Keywords: アイオノマー、金属単結晶、電極触媒モデル
量子科学技術研究開発機構
National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology
- Abstract
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高圧力を利用して Eu 系合金近似結晶における中間価数状態の形成を試みた。これまで我々は Yb 系準結晶を加圧することにより Yb 系の中間価数準結晶・近似結晶の創出を行ってきたが、本研究では新たに Eu 系への展開を目指した。Au–Sn–Eu 合金近似結晶を加圧しながら、X線吸収分光実験で Eu 価数を評価したところ、常圧では整数価数の2価であったが、最高圧力 11.3 GPa では 2.1 価と価数増加が観測された。本実験の圧力範囲においては、中間価数状態の形成は実現されたものの、Eu 系に期待されたような顕著な圧力効果は見られなかった。
Keywords: X線吸収分光、高圧、価数揺らぎ、準結晶
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
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強度変調型シングルビーム光トラップを利用した非接触式試料保持機構を開発し、X線マイクロビームと組合せることにより、非接触に保持したナノ粒子1粒のX線回折像の測定技術を確立した。開発した装置を用い、粒径 380 nm の酸化セリウム1粒のX線回折測定において、測定時間の短縮と S/N の向上を同時に達成した。また、レーザー照射の有無が電子励起や結晶構造に影響を与えないことを確認した。
Keywords: 光トラップ、サブミクロン粒子、単粒子、X線回折
大阪府立大学
Osaka Prefecture University
- Abstract
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還元型酸化グラフェン(rGO)に固定化したマンガン置換スピネルフェライトナノ粒子((Mn,Fe)3O4/rGO)を調製し、電極触媒として酸素還元反応へと応用した。本電極は未置換の Fe3O4/rGO 電極と比較して優れたオンセット電位と高い電流値を示した。XAFSおよびXRD測定の結果、合成した(Mn,Fe)3O4/rGO 電極では、Fe3O4 をベースに酸素の吸着過程に対して優れた特性を持つ Mn2+ がドープされた複合状態を形成したことが電極の高い活性に寄与していることが示唆された。
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
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文書類から記載に用いられた筆記具のメーカー名、製品名を推定する試みについては、一部を切り取ってインク等を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)、液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)、顕微フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、ラマン分光等で分析する手法が研究されてきたが、2000年以降は破壊を伴わない分光的分析手法が主流となってきている[1]。 今回は、通常のグローバー光源を用いる顕微FTIR分析に比較して輝度が二桁程度高い赤外放射光を用い、アパーチャにより 2 μm に絞っての透過法による顕微FTIR分析を試みた。
Keywords: 科学捜査、法科学、微細証拠物件、赤外放射光、顕微FTIR、ボールペンインク
大阪大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Osaka University
- Abstract
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酸化還元酵素の中でもその活性中心に金属を持つものは、その配位幾何構造ならびに触媒反応場を最適なものへと形作っていると考えられている。本実験では、その概念を実験的に証明するべく異種金属原子で置換を試み、その配位幾何構造がどのように変わるかをX線結晶構造解析から確認し、その剛直性ならびに多様性について機能的側面から考察した。
Keywords: 金属酵素、エンタティック、配位子場
a大阪大学大学院工学研究科、b京都大学大学院工学研究科、c(公財)高輝度光科学研究センター
aOsaka University, bKyoto University, cJASRI
*現所属 大阪大学接合科学研究所 *Current affiliation: Osaka University, JWRI
**現所属 (株)神戸製鋼所 **Current affiliation: Kobe Steel, Ltd.
- Abstract
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Al-Cu合金を対象にX線イメージングを利用して超音波振動下での凝固その観察技術を開発した。超音波印加と同時に固液界面前方や一次アーム間でのマクロスケールの対流と数 10 Hz のデンドライトの縦振動が発生した。その結果、デンドライトの一次、二次アームの顕著な溶断が起きた。液相の濃度分布の評価から、溶断が顕著な固液共存領域の下部では、高濃度の液相が流入していた。音響流によって濃度分布が変化し、凝固組織は著しく影響を受けることが明らかとなった。
Keywords: 超音波振動、凝固組織、音響流、Al合金
a国立研究開発法人物質・材料研究機構, b(公財)高輝度光科学研究センター
aNIMS, bJASRI
- Abstract
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化学気相堆積(CVD)法により成長した Ge/Si コアシェルナノワイヤおよびレーザーアブレーション法で成長した Si ナノワイヤ中の不純物の顕微赤外分光を行った。コアシェルナノワイヤに関しては、Si シェル層に p 型不純物のボロン(B)がドーピングされており、Ge コア領域には不純物がドーピングされていない。B ドープ Si ナノワイヤの場合においては、B の局在振動ピークおよび B の 1s-2p および 1s-3p の電子遷移による吸収を観測できた。通常の赤外分光では観測困難であったが、SPring-8赤外放射光の高輝度性を生かすことで実現できた成果といえる。一方、コアシェルナノワイヤにおいては、ラマン分光により Ge 層へのホールガスの蓄積を観測できていたが、SPring-8の赤外放射光を利用しても観測できなかった。Si シェル層内の B の濃度とコアシェルナノワイヤの密度調整が必要であるといえる。
Keywords: ナノワイヤ、半導体、ヘテロ接合、不純物、赤外吸収分光
a(公財)高輝度光科学研究センター, b高知大学, c広島大学
a JASRI , bKochi University, cHiroshima University
- Abstract
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銃から弾丸を発射する際、主として雷管の成分が熱を受けて飛散し、銃を発射した人の手や袖等に多数付着する。これが銃発射残渣(GSR)である。容疑者の手等から付着物を採取し、Pb、Sb、Ba のすべてを含む 1μm 程度の球形微粒子を多数検出することにより銃発射の客観的な証拠としている。しかし、1990年代から重金属フリーの雷管を使用した弾丸カートリッジが登場し[1]、その場合には上記成分は検出されない。そこで、赤外放射光分光分析により有機化合物を検出することにより、銃発射の証明を目指すものである。
Keywords: 科学捜査、法科学、微細証拠物件、赤外放射光、顕微FTIR、銃発射残渣 GSR
東京大学 大学院新領域創成科学研究科
Division of Transdisciplinary Sciences, The University of Tokyo
- Abstract
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その構造に、起源が不明瞭である極端に少ない個数の Al 原子によって記述されたクラスターを有し、実際の試料と比較して密度等に矛盾点を示す AlCuRu 系 1/1 結晶の構造モデルが、Sugiyama 等によって提案されていた [1]。粉末X線回折スペクトルを利用した Rietveld 解析の手法を用いることにより、この構造モデルの改良を試みた。実験室系データの解析によって、内殻クラスターあたり 8~9 個の原子によって構成される自然に理解される構造単位を有し、実際の試料の密度を再現する実態に近い構造モデルが得られた。その構造の細部には未だ検証すべき部分が残されているが、構築した構造モデルを基として更に洗練することが可能である。更なる構造モデルの洗練、および4元系の AlCuRuMn 系 1/1 立方晶近似結晶の Mn 置換位置を明らかにするために軌道放射光 (SPring-8) での実験を行い、解析を試みたが、意味のある解析はできていない。
キーワード: 熱電変換材料、準結晶、近似結晶、擬ギャップ
a量子科学技術研究開発機構, b総合科学研究機構, c日本原子力研究開発機構, d東北大金研, eマックスプランク固体研究所
aQST, bCROSS, cJAEA, dIMR, Tohoku University, eMax Planck Institute for Solid State Research
- Abstract
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強相関遷移金属化合物に現れる電荷秩序に関連した電荷励起を探索するため、La1.875Ba0.125CuO4、および、CuIr2S4 の共鳴非弾性X線散乱実験を行った。La1.875Ba0.125CuO4 では電荷秩序の伝搬ベクトルに対応した運動量で励起が観測されたが、秩序のない La1.70Sr0.30CuO4 でも同様に観測されたため、電荷秩序に直接関わる励起ではないと結論した。CuIr2S4 では金属絶縁体転移に対応する強度変化が 0.5 eV 以下の領域で観測されたものの、それと同時に起こる電荷秩序に関わると考えられる励起は観測されなかった。得られた実験結果からこれらの物質での電荷秩序・相転移を引き起こす相互作用のエネルギースケールについて議論を行う。
Keywords: 電荷励起、共鳴非弾性X線散乱、強相関電子系
大阪大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Osaka University
- Abstract
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窒素は地球上の生命にとって必須元素であり、その自然界での循環を分子レベルで理解することは意義深い。最近の全ゲノム解析により、新たな高度好熱菌のゲノム上に新奇な銅含有亜硝酸酸還元酵素が見つかった。本実験では、その構造遺伝子に着目し、そのタンパク質について結晶構造解析と簡単な生化学的解析を行い、その機能について考察した。
Keywords: 金属酵素、銅蛋白質、マルチドメイン、酸化還元
奈良県立医科大学化学教室
Department of Chemistry, Nara Medical University
- Abstract
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CTX-M型β-ラクタマーゼ(cefotaxime分解酵素)で高度に保存されている Ala219 の 役割を解明するために、野生型CTX-M-2、及び変異型酵素 A219V の構造解析を行った。野生型に対して A219V の主鎖の root mean square deviations (RMSD)は 0.135 Å であり、構造にほとんど差がなかった。また、酵素学的パラメータも差が見られなかった。従って、このアミノ酸置換によりセフォタキシムに対する活性が大きく低下する現象は、CTX-M-1 に特異的であることが示唆された。
Keywords: β-ラクタマーゼ、基質特異性、結晶構造解析
a大阪府立大学, b東京大学
aOsaka Prefecture University, bUniversity of Tokyo
- Abstract
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温度上昇とともに非磁性から常磁性状態へと連続的に変化し、100 K 付近で帯磁率の極大を示す LaCoO3 の Co 3d 電子状態を調べるため、40 K と 300 K において Co 2p3/2 吸収領域でX線非弾性散乱を偏光保存および偏光非保存配置で観測した。Co 3d 状態の変化にともない、dd 遷移による電子ラマンスペクトルと Co 3d→2p 蛍光成分に温度変化が観測された。
Keywords: 一次元原子鎖、表面超構造、表面X線回折
a名城大学理工学部, b(公財)高輝度光科学研究センター
aMeijo University, bJASRI
- Abstract
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窒化物系面発光レーザの導電性分布ブラック反射鏡材料として期待されている窒化物系混晶半導体 Al0.82In0.18N 中の In 原子近傍の局所構造を、X線吸収微細構造法により解析した。その結果、Al0.82In0.18N を構成する In-N と Al-N のボンド長が 14% も異なることで相分離を起こし易いにもかかわらず、In 原子は理想的な窒化物半導体における III 族 Ga 原子を置換していることが分かった。
Keywords: 窒化物系半導体、面発光レーザ、導電性分布ブラック反射鏡、相分離
名古屋大学
Nagoya University
- Abstract
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不純物誘起強磁性を示す CaRu1-xFexO3 (x = 0.10, 0.20)における Fe イオン周りの結晶構造・磁気構造を調べるために、Fe K-吸収端でのX線吸収微細構造(XAFS)測定およびX線磁気円二色性(XMCD)測定を行った。XAFS スペクトルの形状および温度・磁場依存性から、強磁性相関の発現に関連した RuO6 八面体の持つ結晶場の対称性の変化はないと示唆される。強磁性状態にある 2 K において XMCD スペクトルが観測されたが、信号強度が非常に弱く、磁気構造解析に耐えうる実験データを得るには至らなかった。
Keywords: 4d 電子系、不純物誘起強磁性、局所歪み、スピン-軌道相関
a京都大学生存圏研究所, b CRCAO-CNRS, c奈良文化財研究所, d南京林業大学
a Research Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University, b East Asian Civilizations Research Centre, Paris, cNara National Research Institute for Cultural Properties, d Nanjing Forestry University
- Abstract
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東アジア地域における木彫像の樹種情報の獲得は、我々日本のみならず東アジア地域の宗教上の繋がりや文化の伝播などを知る上で貴重な情報であり特に注目されてきている。本研究では、フィラデルフィア美術館に所蔵される日本の神像から採取された非常に小さな試料に、SPring-8の BL20XU でのシンクロトロン放射光X線トモグラフィーを適用し樹種識別調査を行った結果、Magnolia sp. が使用されていることを明らかにした。
キーワード: Wood identification, Micro-CT, Wood anatomy
a熊本大学、b東京医科歯科大学
a Kumamoto University, b Tokyo Medical and Dental University
- Abstract
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CD200は幅広い種類の細胞上で発現しており、骨髄細胞上の阻害型受容体CD200R(マウスではCD200R1)との結合を介して骨髄細胞を抑制的に制御する。この抑制機構の構造生物学的解明を目的として、マウスのCD200-CD200R1複合体の結晶構造解析を 2.7 Å 分解能で行った。解析の結果、正に荷電したCD200のドメイン1と負に荷電したCD200R1のドメイン1が静電相互作用により複合体を形成することが明らかになった。
Keywords: CD200-CD200R複合体、分子認識、結晶構造
aCNR-IOM, bNIMS
- Abstract
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The influence of magnetic dopants on the electronic structures of topological insulators (TIs) is a key factor for magnetic TIs-based spintronic application. Here we measured core level and valence band hard x-ray photoemission (HAXPES) spectra for (BiMn)2Te3 single crystals as a function of Mn doping to investigate the modification of the bulk band structures of Bi2Te3 by the dopants.
Keywords: Topological insulators, Magnetic dopants, HAXPES
a (大学)東北大学金属材料研究所, b (公財)高輝度光科学研究センター, c(大学共同利用機関)高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
aIMR Tohoku University, bJASRI, cIMSS, KEK
- Abstract
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T’ 構造銅酸化物の超伝導化に必要不可欠である還元アニールの役割を解明するために、Pr1.4La0.6CuO4-δ の as-grown 試料とアニールした試料に対してコンプトン散乱X線実験を行った。両試料に対して得られた電子の運動量分布関数の比較から、アニールより Cu サイトの電子状態が主に変化する事が示唆された。このことは、アニール処理が電子ドープ効果としての役割を主として持つことを示している。
Keywords: 電子ドープ高温超伝導、還元アニール効果、コンプトン散乱
a大阪市立大学, b熊本大学
aOsaka City University, bKumamoto University
- Abstract
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補酵素FADの8位のメチル基を NHCH3 に置換したHM-FADをD-アミノ酸酸化酵素(DAO)に再構成させた酵素は、酸化力が低下し反応が進行しないため、DAOの基質D-アミノ酸と安定な複合体を形成することができる。そこでHM-FADを再構成したDAOと基質D-アミノ酸との複合体結晶構造を得ようと試みたが、基質が活性部位に固定された構造を得ることが出来なかった。
Keywords: D-アミノ酸酸化酵素、ES複合体
a理化学研究所 SPring-8、b(公財)高輝度光科学研究センター
aRIKEN, SPring-8 Center, bJASRI
- Abstract
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一酸化窒素(NO)は、反応性に富んだラジカル分子であり高い細胞毒性を示す。細菌が持つ膜結合型一酸化窒素還元酵素(NOR)は、ヘム鉄と非ヘム鉄からなる複核活性中心をにおいて、細胞毒である NO を電子とプロトンを利用して、亜酸化窒素(N2O)へと還元・無毒化する。本研究では、NOR による NO 還元反応の分子機構解明のために、鉄を含む活性部位の構造解析に有効な核共鳴非弾性散乱(NRVS)に着目した。活性部位に基質の類似体である一酸化炭素(CO)を結合させた試料の測定を行った。共鳴ラマン分光測定の結果と比較し、得られた NRVS スペクトルについて考察した。
Keywords: 核共鳴非弾性散乱、金属タンパク質、ヘム鉄、非ヘム鉄、共鳴ラマン分光
Westlake Institute for Advanced Study
- Abstract
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Recent developments point to a common, broken chiral symmetry nature of the charge orders in high-Tc cuprate superconductors. We have performed a temperature- and angle-dependent x-ray circular dichroism study on the charge-ordered prototype system La1.875Ba0.125CuO4 near the Cu K-edge. We found preliminary evidence for a broken chiral symmetry of the charge order in this system.
Keywords: cuprate superconductor, charge ordering, x-ray circular dichroism
a九州大学, b(公財)高輝度光科学研究センター
aKyushu University, bJASRI
- Abstract
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数 nm のダイヤモンド結晶がアモルファスカーボン中に凝集した構造を持つ超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボン混相膜の成膜中に in-situ で Cr ドーピングを試みた。成長膜のVSM測定を行ったところ強磁性の発現が見られた。強磁性発現の起源を調べるために硬X線光電子分光により膜の内部を調べた結果、膜内部に Cr–C 結合が存在していることが明らかとなった。強磁性発現の起源としては、Cr–C 結合を形成している Cr が膜内部のナノ結晶ダイヤモンドの結晶格子内に存在して成長膜の強磁性発現に寄与した可能性が考えられる。
Keywords: 超ナノ微結晶ダイヤモンド、HAXPES、同軸型アークプラズマ堆積法
a神戸大学, b(公財)高輝度光科学研究センター
aKobe University, bJASRI
- Abstract
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本研究では、通常X線照射(Broad beam irradiation)とすだれ状照射(Slit beam irradiation)の肺転移の抑制および呼吸性移動がある部位への照射精度を検討した。ビーム幅 25 μm、ビーム間隔 200 μm のすだれ状ビームを用いて、肺転移モデルマウスへの照射実験を行い、照射による肺転移の抑制を組織学的評価から行い、マウスの生存率に関しても検討した。
Keywords: 多発肺転移モデル、マイクロビーム放射線治療、すだれ状照射
a国立研究開発法人物質・材料研究機構, b(公財)高輝度光科学研究センター
aNIMS, bJASRI
- Abstract
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レーザーアブレーション法により成長したSiナノワイヤ中の不純物の顕微赤外分光を行った。B ドープSiナノワイヤの場合において、約 624 cm-1の位置にBの局在振動ピークを検出することに成功した。更に、約 468、806、1085、1200 cm-1 の位置には、Siナノワイヤの表面酸化膜中の酸素に関する振動を観測できた。通常の赤外分光ではナノ構造体中の不純物分光は困難であるが、SPring-8赤外放射光の高輝度性を生かすことで実現できた成果といえる。
Keywords: ナノワイヤ、半導体、不純物、赤外吸収分光
a東北大学, b(公財)高輝度光科学研究センター, c東京理科大学
aTohoku Univ., bJASRI/SPring-8, cTokyo Univ. of Science
- Abstract
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N-H…N水素結合で結ばれたダイマーを基本単位とする混合原子価レニウム錯体単結晶試料について、顕微遠赤外分光実験を行い、吸光度スペクトルの温度変化を測定した。各種分子振動を観測し、DFT計算により帰属した。X線・中性子線結晶構造解析から、プロトンはN-N間の中心付近に分布することが分かり、プロトントンネルを期待したが、吸光度スペクトルには、トンネル等に起因した異常な吸収バンドは見出せず、局在したプロトンの振動状態のみを捉えた。
Keywords:遠赤外分光、顕微分光、電子プロトン連動、レニウム錯体
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama University
- Abstract
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T1r1/T1r3ヘテロ二量体は、味覚受容において、アミノ酸などを感知するうま味受容体として機能する。T1r1/T1r3受容体の主要な味物質結合部位であるリガンド結合ドメインについて、組換え発現・精製・結晶化を行い、得られた結晶のX線回折実験を行った。その結果、結晶から確認された回折は、異方性が高く、構造決定に十分な分解能の回折強度データを得ることができなかった。
Keywords: 味覚受容体、クラスC型GPCR
SPring-8 Section B: Industrial Application Report
a京都大学, b高輝度光科学研究センター
aKyoto University, bJASRI
- Abstract
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Sm 系コーテッド超伝導複合線材の引張応力負荷下での Sm123 超伝導層の結晶格子歪の変化を調べるため、Sm LIII 吸収端近傍の異常分散効果を利用した In-situ 面内回折測定をおこなった。今回の測定では配分ビームタイム内で測定がほぼ完了できることを念頭に、試料としては吸収による減衰が大きな影響を与えないように、安定化の Cu めっき層を溶解除去した試料のみを用い、また、測定は申請分のうちビームタイムが認められた面内回折のみをおこなった。外部負荷応力の増加に伴い Sm123 層の引張歪は増加した。一方、前回課題で検討した Dy 系の材料[1]と比較すると高荷重領域での多重破断に伴う歪の停留が明確でないまま破壊剥離に至り、ピークシフトからは多重破断領域を認められなかった。このように Sm123 材料の場合には前回の Dy 系の結果から期待された系統的歪評価については十分な精度のデータが得られておらず、現在その原因を検討中である。一方、超伝導層の破壊進展の最終段階である剥離挙動について、Sm123 材料でこれまでの応力歪曲線の解析から期待されていた剥離進展と異なる挙動を示している事が今回の In-situ 測定中に見出された。超伝導層の破壊-剥離機構への Cu 除去の影響については今後の検討課題である。
Keywords: その場歪測定、コーテッド超伝導複合線材、異常分散効果、Sm123 超伝導膜
a日本原子力研究開発機構, b東京大学, c物質・材料研究機構, d京都大学, eダイハツ工業(株)
aJAEA, bTokyo Univ., cNIMS, dKyoto Univ., eDaihatsu Motor Co., Ltd.
- Abstract
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イオン伝導性やアルカリ耐性の異なる、フッ素系高分子を基材とするグラフト型アニオン伝導電解質膜の超小角X線散乱測定を行い、階層構造解析を行った。イオン交換基が異なる電解質膜すべてにおいて、相関長約 200 nm の凝集体に由来する構造が初めて確認出来た。この構造は、同じ高分子基材からなるプロトン型電解質膜の 300 nm 以上の相関長よりも遥かに短いことから、アニオン型電解質膜の耐久性向上のための設計指針が得られる可能性が示唆された。
Keywords: アニオン交換形燃料電池、高分子電解質膜、超小角X線散乱
a(公財)高輝度光科学研究センター, b新日鐵住金(株)
aJASRI, bNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation
- Abstract
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鉄鋼生産工程の熱処理過程において鋼材表面に生成する酸化スケールの剥離性に影響すると考えられるスケール/地鉄界面に発生する応力の熱処理過程における変化を観察するための in-situ XRD 歪み測定技術開発を目的として、測定能率を向上するために1次元検出器を用いた XRD 応力測定技術の検討を行った。テストサンプルとしてショットピーニング処理を表面に施した低炭素鋼試料を用い、試料に対するX線入射角及び回折X線検出角を制御してX線侵入深さを制御しながら sin2Ψ 法による歪測定を行うX線侵入深さ一定法について技術検討実験を行った結果、従来の0次元検出器の回折角走査による方法とほぼ同等のデータを測定時間を 1/5 に短縮して測定することに成功した。しかしながら、この1次元検出器を用いた方法では回折角の分解能を確保するためにビームサイズを絞る必要があるため、結晶粒からの回折信号の平均化が難しく、不均一な多結晶組織を持つ実際の鉄鋼試料では応用が難しいことも分かった。
Keywords: 鉄鋼、酸化スケール、X線回折、歪測定、X線侵入深さ制御、1次元検出器
(株)住化分析センター 技術開発センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center
- Abstract
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有機薄膜(ペンタセン)の蒸着膜形成過程における、成長初期(基板界面)と後期(有機膜表面)での周期構造や分子配向を解析するため、放射光による高輝度X線を用いた回折測定を行い、ペンタセン薄膜の散乱回折パターンを得た。解析の結果、ペンタセン分子はガラス基板上で垂直配向するが、75 nm以上の薄膜では、表層付近にバルク相に帰属される回折ピークが新たに検出された。
Keywords: 有機薄膜、薄膜X線回折
a宮崎大学, b量子科学技術研究開発機構, c豊田工業大学
aMiyazaki University, bQST, cToyota Technological Institute
- Abstract
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分子線エピタキシー法を用いた GaAs(001) 基板上への InGaAs 薄膜成長中のIn偏析過程の解明を目指し、放射光を用いたX線回折法を用いてリアルタイム測定を行った。回折強度計算と実験結果との比較から、成長中の膜中の In 分布の変化を算出し、各時点での偏析係数を見積もった。成長速度が早い場合は (0.20, 0.27 ML/s)、一つの偏析係数で計算結果と実験結果が一致したが、成長速度が遅い場合 (0.10 ML/s) では一つの偏析係数で説明することが不可能であった。この結果は、特に成長速度が遅い場合において、これまでの偏析モデルを修正する必要を示唆している。
Keywords: ヘテロエピタキシー、表面偏析、InGaAs、リアルタイム測定
三菱ケミカル株式会社
Mitsubishi Chemical Corporation
- Abstract
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有機薄膜太陽電池の金属/有機層界面を調べるため、駆動状態での硬X線光電子分光法(hard X-ray photoelectron spectroscopy, HAXPES)による分析を行った。電圧印加状態での各層の電位を比較した結果、電極/バッファー層の間の界面層は電極に近い電位にあり、界面層とバッファー層の間に電気抵抗が生じていることが分かった。さらに発電中の太陽電池のHAXPES測定にも成功した。
Keywords: 硬X線光電子分光、有機薄膜太陽電池、駆動中測定
aクラシエホームプロダクツ(株), b(公財)名古屋産業科学研究所
aKracie Home Products, Ltd., bNagoya Industrial Science Research Institute
- Abstract
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皮膚を清潔で健やかに保つために、ボディソープなどの皮膚洗浄料が毎日使用されている。アニオン性界面活性剤は皮膚洗浄料の主要な成分であり、汚れを効果的に落とす一方で、角層構造に影響を及ぼす。そこで小角広角X線散乱を測定し角層構造の回復を検討した。その結果、界面活性剤を精製水に置換した時の構造回復は、今回用いた角層では確認できなかった。
Keywords: 皮膚、角層、細胞間脂質、皮膚洗浄料、Sodium Dodecyl Sulfate
a名古屋工業大学, b三菱レイヨン(株)
aNagoya Institute of Technology, bMitsubishi Rayon Co., Ltd.
- Abstract
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樹脂材料物性(ここでは透明性、耐衝撃性、耐熱性)向上の目指すうえでは、二種類以上の高分子からなる材料中の相分離ドメインの界面破壊を抑え、ドメインサイズを微分散させることが求められる。そこで樹脂の性能を高分子のアロイ化に伴う相分離構造の大きさや樹脂の透明性を制御する技術の確立を目指すため、樹脂の硬化過程のその場観察により構造形成機構を理解する。本論文ではメタクリル酸メチル/ポリメタクリル酸メチル/架橋剤混合系の硬化過程を観察したところ重合初期において、大きなスケールの濃度揺らぎが発生した。その後モノマーの硬化が進むにつれ不均一性は解消される方向に進むことが分かった。密度揺らぎは用いた架橋剤の種類にも影響することや、光重合と比較すると熱重合では揺らぎが大きいことが分かった。その詳細なメカニズムについては今後の課題である。
Keywords: ポリメタクリル酸メチル、小角散乱、超小角散乱
住友電気工業株式会社
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
- Abstract
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鉄箔を大気酸化した後に、高温のアセチレンガス雰囲気中で処理すると、熱亀裂の内部にサブミクロンの幅を持つ炭素繊維(チューブやシート)が亀裂の両側をブリッジするように成長する現象を発見した。この現象を利用すれば、直線的なナノカーボンが成長でき、新規デバイス作成手法に応用できる。炭素が引き出されるメカニズムを解明するため、加熱・ガス浸炭工程中に透過X線回折像をその場観察することを試みた。
Keywords: カーボンナノチューブ、高純度鉄箔、透過X線回折法、酸化鉄、ガス浸炭
京都大学 a複合原子力科学研究所, b大学院農学研究科
Kyoto University, a Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, b Graduate School of Agriculture
- Abstract
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純水中に抽出された小麦タンパク質グリアジンの水和凝集体について超小角X線散乱解析を行いナノ–サブマイクロスケールにおける集合構造の変化について調べた。グリアジン濃度増加に伴い、散乱ベクトル q = 0.13 nm-1 に観測される凝集体内部の疎密構造に由来する干渉ピークが減衰すると同時に、q < 0.1 nm-1 の立ち上がりが増大しており、水の減少とともに不均一な集合構造が凝縮する一方で全体として大きな凝集体が成長することが明らかとなった。
Keywords: 超小角X線散乱、小麦タンパク質、グリアジン
株式会社キャタラー
CATALER CORPORATION
- Abstract
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自動車用排ガス浄化触媒の課題として、貴金属凝集抑制による性能向上及び貴金属使用量低減が要求されている。現在研究中の新規 Rh 担持法触媒(以下、新規法)は、従来 Rh 担持法触媒(以下、従来法)に対し、Rh 凝集の抑制とより低温からの活性向上効果を見出した。
今回、この要因を探るため、EXAFSによる Rh 状態解析を行った結果、新規法では還元雰囲気下において低温から速やかに Rh-O が Rh-Rh に変化する事が確認された。一方、劣化抑制では、酸化雰囲気中に生成する「Rh-O-Nd」の影響が大きい事が推定された。また、XANESの結果では、従来法の Rh 吸収端に対して高エネルギー側にシフトしていることから、新規担持方法を適応する事で Nd2O3 の再配分が促進され、Rh に対して Nd2O3 の接触頻度が適度に高まり劣化抑制と低温活性が高いレベルで両立したものと推察した。
Keywords: XANES、EXAFS、Rh状態解析、雰囲気変動下、Rh担持法
a北海道大学, b北海道総合研究機構, c室蘭工業大学, d東京工業大学, e(株)新日鐵住金
aHokkaido University, bHokkaido Research Organization, cMuroran Institute of Technology, dTokyo Institute of Technology, eNippon Steel & Sumitomo Metal Corporation
- Abstract
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アルミナスケール形成オーステナイト系耐熱ステンレス鋼のアルミナスケール形成能におよぼす Cu 濃度の影響を調査するため、Cu 濃度の異なる Fe-Ni-Cr-Al、Ni-Cr-Al、Ni-Al 合金を用いて、初期酸化スケールの形成とその後のアルミナスケールの形成・遷移に及ぼす Cu の影響を in-situ 高温X線回折を用いた構造解析により検討した。Cu 添加合金では、酸化初期に内部アルミナからアルミナスケール形成への遷移挙動が観察された。しかしながら、今回の実験では Fe や Ni、Cr を主体とする遷移酸化物が長時間残存し、連続的な保護性アルミナスケールの形成に至らなかったため、Cu のアルミナスケール形成促進効果について明確な知見を得ることはできなかった。
Keywords: In-situ測定、高温X線回折、高温初期酸化、アルミナスケール、Cu添加オーステナイトステンレス鋼
a兵庫県立大学, b(株)UACJ
aUniversity of Hyogo, bUACJ Corporation
- Abstract
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純アルミニウム系合金の変形中の転位密度変化に及ぼす Fe、Si、Mg 微量添加の影響と、その焼鈍による影響を In-situ XRD 測定により調べた。Mg、Si 添加材は従来材と同様に、圧延材の焼鈍によって焼鈍軟化、延性の向上が見られたのに対し、Fe 添加材では焼鈍硬化し、A1200 合金と同様に延性が低下した。Mg、Si 添加材では塑性変形中の転位密度は焼鈍によって大きく減少したが、Fe 添加材では焼鈍によって初期転位密度が大幅に低下したにも関わらず、塑性変形中の転位密度は圧延まま材と比較してほとんど変化しなかった。
Keywords: 純アルミニウム系合金、転位密度、焼鈍、In-situ XRD測定
a(株)豊田中央研究所, b(株)デンソー
aToyota Central Research & Development Labs., Inc., bDENSO Co., Ltd.
- Abstract
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X線磁気円二色性測定により、Pt/Y3Fe5O12(YIG) 薄膜の磁性を解析した。その結果、試料へのX線入射角が深くなるにつれて、Fe の XMCD 信号強度が増大した。これは、Pt/YIG 界面付近において、YIG 中の Fe の磁気モーメントが小さくなっていることを示唆する。
キーワード: X線磁気円二色性、熱電材料、YIG
a積水化学工業株式会社, b京都工芸繊維大学
aSEKISUI CHEMICAL CO., LTD, bKyoto Institute of Technology
- Abstract
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本実験では、新規な異方性材料の開発に向けたブロックコポリマーの構造解析を行った。ブロックコポリマー中ではミクロ相分離と呼ばれるナノスケールの規則構造から、グレインと呼ばれる配向の方位が揃った領域が無数に形成される。しかし、学術的にもグレインサイズの定量評価法が未確立のため、産業応用が進んでいないのが現状である。そこで、極小角X線散乱(USAXS)および小角X線散乱(SAXS)測定による定量評価法の確立と、それを用いたグレインサイズの追跡によるグレイン成長のメカニズム解明を目指した。得られた USAXS パターンには、薄膜試料からの全反射によるストリークが生じた。このストリーク強度の散乱ベクトルの大きさ q 依存性を調べたところ、q = 6.41 μm-1 に明確なピークが観察され、そのピーク位置から球状領域の半径を求めたところ 0.90 μm となり、USAXS 測定によってグレインが捉えられたものと結論された。
Keywords: グレイン、ブロックコポリマー、ミクロ相分離、極小角X線散乱
a阪本薬品工業(株), b(公財)名古屋産業科学研究所
aSakamoto Yakuhin Kogyo Co., Ltd., bNISRI
- Abstract
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保湿剤として汎用される多価アルコールのヒト角層に対する保湿機構を解明するため、多価アルコールにグリセリンと1,3-ブチレングリコール (以下BG) を用い、角層構造に及ぼす影響を評価した。水あるいは 10 wt% 多価アルコール水溶液を1時間作用した角層の乾燥時における角層構造の経時的な変化を小角・広角X線回折測定し、細胞間脂質より形成される短周期ラメラ構造とソフトケラチン構造に由来するピーク位置の経時的な変化の速さや変化率が異なることを観測した。
Keywords: ヒト角層、細胞間脂質、多価アルコール、小角広角X線回折
a花王株式会社, b(公財)高輝度光科学研究センター, c(公財)名古屋産業科学研究所
aKao Corporation, bJASRI, cNISRI
- Abstract
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以前のX線散乱法を用いた皮膚角層の構造解析では、最外層である角層のみのシートを用いて、角層の集合体からの平均情報を取り扱っていた。我々は in situ に近い条件での角層の深さ方向の構造解析法として、角層以下の表皮、真皮等も含むヒト皮膚シートを用いてマイクロビームX線をスキャンしていく方法で皮膚上の角層からの小角・広角散乱像を得ることに成功した。これにより角層内部の深さ方向の構造変化を解析することで、皮膚への剤の作用、浸透効果等の詳細な知見が得られることが期待される。
Keywords: Human stratum corneum, Surfactant, microbeam X-ray scattering, Keratin fibril structure, Intercellular lipid lamella structure
a群馬大学, b(株)アルケア, c(公財)高輝度光科学研究センター
aGunma University, bALCARE Co., Ltd., cSPring-8/JASRI
- Abstract
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ポリイソブチレン(PIB)とスチレンーイソプレン共重合体(SIS)を主体とするゴムにセラミド、また、セラミドと添加剤としてモノグリセリドを混合したものを加えて、粘着性ゴムシートを作製した。このシート内におけるセラミド分子の分布をシンクロトロン顕微赤外分光法で調べた。融解混合圧延法で作製したサンプルを温度 60°C で1日間保持しても、保持なしのサンプルと比較すると、セラミドのみを含む場合、シート内のセラミドの分布の均一さはあまり向上しなかった。添加剤としてモノグリセリドが存在する場合、温度 60°C にて1日間の保持は、セラミドの分布を均一にする方向に働いたが、保持なしの場合の分布がセラミド単独系より不均一であり、モノグリセリドの均一化の効果は低いものであった。
Keywords: メディカルシート、粘着性ゴム、セラミド、モノグリセリド、シンクロトロン顕微赤外分光
a川崎重工業(株), b川重テクノロジー(株)
aKawasaki Heavy Industries, Ltd., bKawasaki Technology Co., Ltd.
- Abstract
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ガスタービンエンジンに用いられる遮熱コーティングの剥離挙動の解明のため、高エネルギー放射光X線を用いたボンドコート内部応力測定を実施した。高温in-situ応力測定により、ボンドコートは室温では高い引張応力を示すが、高温環境では引張応力が減少することが分かった。また、運用中の劣化を模擬した種々の熱処理をおこなった試験片に対しても応力測定を実施し、ボンドコートの酸化劣化が内部応力に与える影響について検討した。
キーワード: X線回折、応力測定、遮熱コーティング
a花王株式会社, b(公財)名古屋産業科学研究所
aKao Corporation, bNISRI
- Abstract
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皮膚上に塗布して使用する化粧品や外皮用医薬品において、機能に関わる重要な要素である皮膚上の製剤の塗膜構造を解明することは、より優れた製品の設計指針提案に繋がる重要な研究課題である。我々が検討を進めてきたマイクロビームX線散乱法による皮膚角層構造の深さ方向解析法の発展・応用により、従来は観察が困難であった、前処理無しで自然の状態での皮膚上のミクロスケールの塗膜構造観測に成功した。
Keywords: 皮膚, 塗膜, マイクロビームX線散乱法, ラメラ構造
a東北大学多元物質科学研究所, b(株)村田製作所, c(公財)高輝度光科学研究センター
aIMRAM, Tohoku Univ., bMurata Manufacturing Co., Ltd., cJASRI
- Abstract
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積層セラミックキャパシタ(MLCC)の実材料について、サブマイクロX線回折を用いて電極/誘電体界面と誘電体素子部分の構造を調べた。サブマイクロ領域の粉末回折パターンのマッピングに成功した。その結果、界面近傍で、格子定数の変化、あるいは BaTiO3 正方晶ドメイン分布に系統的な変化があることを発見した。Ni 電極からの応力を受けて、誘電体素子が歪んでいることを示す結果である。
Keywords: 積層セラミックキャパシタ,マイクロ領域X線回折
ソニー株式会社
Sony Corporation
- Abstract
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発光デバイスに用いられる GaN/GaInN 薄膜では、In 組成むらや格子ひずみ分布が発光特性に影響を及ぼすと考えられている。このことを実験的に検証することを目的として、マイクロビームを用いたX線回折測定による格子ひずみ解析と蛍光X線測定による In 組成解析を行った。その結果、場所による In 組成および格子ひずみの変化が明らかになった。
Keywords: 窒化ガリウム、逆格子マップ、マイクロビーム、蛍光X線分析
a(独)産業技術総合研究所 グリーン・ナノエレクトロニクスセンター, b(株)富士通研究所
aGNC, AIST, bFujitsu Labotarories, Ltd.
- Abstract
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我々はグラフェンのチャネル材料としての高いポテンシャルに着目し、次世代CMOSチャネル候補として大面積基板上での成長技術やFETトランジスタ作製プロセス開発を行ってきた。今回は、原子層堆積法や蒸着法などの異なる方式で作製した絶縁膜とグラフェンの界面電子状態を硬X線光電子分光により調べることで、現在想定し得るゲート絶縁膜候補材料とグラフェン界面での電子状態から絶縁膜としての適性の検討を行い、グラフェン直上には SiO2 を絶縁膜として堆積することが望ましく、その上に別途High-k等の絶縁膜を堆積すれば良いことが判明した。今後さらなる検討を行いグラフェンFET作製プロセスの最適化を推し進める予定である。
Keywords: 硬X線光電子分光、グラフェン、CMOS
a筑波大学, b千葉大学, c国立歴史民俗博物館
a University of Tsukuba, b Chiba University, c National Museum of Japanese History
- Abstract
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テル・エル・ケルク遺跡から出土した青色ビーズを対象に、その青の発色機構を明らかにすることを試みている。先行研究により、ビーズの基材は生物由来のフルオロアパタイトであり、青色の発色には Mn が関与している報告があった。マトリクスの状態がやや異なる青色ビーズと、ミタータル遺跡(インド)出土の青色の骨について非破壊で Mn K-XAFS スペクトルを蛍光モードで測定し、さまざまな価数の Mn 標準試料と比較したところ、これら青色の考古試料が共通して5価から6価のマンガンを含むことがわかった。また Mn と P の置換が進んでいると考えられるマストドンの牙化石を加熱して Mn の価数を高めようと試みたがこちらは成功しなかったこともわかった。
Keywords: 土器新石器、ビーズ、青色、Mn5+、アパタイト、XAFS
株式会社コベルコ科研
Kobelco Research Institute, Inc.
- Abstract
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Liイオン二次電池に用いられる3元系正極材 LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 の結晶構造解析を行うため、異常分散X線回折法を検討した。電池劣化の一因とされるカチオンミキシングと遷移金属元素種の関係を調べるため、NiとCoの挙動に着目し、CoとNiの K 吸収端近傍の異常分散を利用した。充放電サイクル試験前後においてNiの異常分散X線回折強度に違いがみられ、CoよりもNiの方がカチオンミキシングに影響することが示唆された。
Keywords:異常分散X線回折、二次電池正極材料、層状岩塩構造、カチオンミキシング
(株)住化分析センター 技術開発センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center
- Abstract
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Pd/CeZrO2 に代表される環境浄化触媒は、XAFSによる in situ 分析が近年盛んに行われており、価数や局所構造による評価事例が多数報告されている。近年当社は、ラボでガス流通・加熱試験が可能な in situ XRD を導入し、ビームタイムを待つことなく in situ 実験が提供できる環境を整備した。本課題ではSPring-8 BL08B2における in situ XAFS とラボで実施可能な in situ XRD を併用・比較して Pd/CeZrO2 の劣化解析を行うことで、触媒の挙動および in situ XRD の有用性を考察した。
Keywords: 環境浄化触媒,in situ分析
(株)住化分析センター 技術開発センター
Sumika Chemical Analysis Service, Ltd. Technology Innovation Center
- Abstract
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リチウムイオン電池の充放電に対する作動環境温度の影響を解析するため、温調機能を有する in situ 測定系を構築し、高温(80°C)・低温(-10°C)における in situ XRD測定を実施した。各条件で室温(25°C)とは異なった活物質の構造変化が観測され、本分析法により新しい知見が得られることが示唆された。
Keywords: リチウムイオン電池,in situ 分析
a山梨大学, bレンゴー株式会社中央研究所
a University of Yamanashi, b Rengo Co., Ltd.
- Abstract
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Ag+ 交換した種々のゼオライトの、蛍光を示す調製条件と示さないものの Ag K 吸収端EXAFSを測定した。それらのうち、水中でも蛍光を発する Ag+ 交換したX型ゼオライトについて、水中での Ag の局所構造を解析した。Ag の含有量や交換後の処理温度を変化させると蛍光スペクトルの高さは変化したが、ピークの形や位置はほとんど変化しなかった。一方、EXAFSの解析によるフーリエ変換について、強度はいくらか変化するが形はほぼ変わらず、カーブフィッティング解析した局所構造も処理温度の違いによる変化がまったくなかった。
Keywords:Ag 交換ゼオライト、蛍光体、EXAFS
(株)日立製作所
Hitachi, Ltd.
- Abstract
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リチウムイオン二次電池の放電曲線解析による正負極利用率の減少と実際の劣化現象との対応を検証することを目的として、充放電サイクル試験後の18650型電池の充電中におけるX線回折を測定した。その結果、オペランドX線回折により、内周部ほど劣化が進行していることが明らかとなった。さらに、オペランドX線回折線の積分強度比から算出した導電ネットワークからの活物質粒子の孤立化率が、放電曲線解析による正負極利用率の減少に相当することを検証した。
Keywords: リチウムイオン電池、オペランド計測、放電曲線解析、劣化、孤立化
a (公財)高輝度光科学研究センター, bスプリングエイトサービス
aJASRI, bSPring-8 Service Co., Ltd.
- Abstract
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BL14B2において開発を進めている遠隔XAFSシステムを統括制御するプログラム「Auto-XAFS」の開発を行った。光学調整、試料交換等を含む完全自動測定は概ね良好な動作結果を得た。
Keywords: 遠隔実験、XAFS
a日立造船株式会社, b京都大学
aHitachi Zosen Corporation, bKyoto University
- Abstract
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放射性物質を含む廃棄物の焼却炉内の耐火物への放射性Csの浸透、蓄積を防止する塗膜の選定と、Csの選択的捕捉とその機構について調査した。耐火物のブロックに複数種の塗装を施し、都市ごみ焼却炉のボイラ付着灰に安定性Csを添加した模擬汚染灰を加熱処理により浸透させた結果、雲母を含有する塗膜では 850°Ϲ または 1000°Ϲ においてCsを捕捉していることが確認され、またその形態は概ねPolluciteに類似していた。さらにCs溶液中で雲母に吸着させた形態と比較した結果、XANES領域の比較においては熱間で捕捉された形態と類似していることがわかった。。
Keywords: セシウム、雲母、熱間、XAFS
株式会社村田製作所
Murata Manufacturing Co., Ltd.
- Abstract
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積層セラミックコンデンサのチタン酸バリウム誘電体層中には酸素空孔が存在し、この酸素空孔の偏析が絶縁性の使用時経年劣化を引き起こすと考えられている。そこで絶縁抵抗が劣化した積層セラミックコンデンサを用いてPEEM観察を行い酸素空孔分布の評価を試みた。誘電体層中のPEEM像から抽出したXASスペクトルより、Tiの化学状態が正極と負極の間で段階的にわずかに変化していることが示唆された。今後、この変化が酸素空孔由来か否かを検討していく。
Keywords: チタン酸バリウム、積層セラミックコンデンサ、酸素空孔、光電子顕微鏡
a(株)イムラ材料開発研究所, b岐阜大学
aIMURA Material Co., Ltd., bGifu University
- Abstract
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本課題では炭化イットリウムの一種の Y2C3 の圧力下における構造と物性の確認を目的としている。今回、レーザー加熱システムを用いた試料合成によりDiamond Anvil Cell(= DAC)の試料室内に Y2C3 と他の炭化イットリウム化合物を含む混相試料を合成し、Y2C3 と炭化イットリウムの結晶構造の加圧による影響を調べた。その検証の結果、Y2C3 の Pu2C3 型構造の圧力印加に対する安定性や他の炭化イットリウム化合物の構造変化の兆候を確認した。
Keywords: 炭化イットリウム、高圧下X線回折実験、結晶構造解析
SPring-8 Section C: Technical Report
(公財)高輝度光科学研究センター, *現所属:株式会社 日産アーク, **現所属:関西学院大学
JASRI, *Present affiliation: Nissan Arc, Ltd. **Present affiliation: Kwanisei Gakuin University
- Abstract
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2層の自発分極差で界面に高移動度2次元電子ガスが形成される MgxZn1-xO/ZnO ヘテロ接合の構造を明らかにするために放射光X線結晶トランケーションロッド散乱実験を行った。Mg 濃度 x = 0.015、0.064、0.189 の3種類の試料に対して 000L 方向の散乱プロファイルを測定し、Mg 濃度の異なる MgxZn1-xO 層の構造を解析した。3種類の試料に対して、格子定数 c は精密に求めることができた。また、散乱プロファイルに見られる振動の周期は MgxZn1-xO の膜厚をよく説明できたが、振動振幅について一致しない点が見られ、構造モデルのより詳細な検討が必要であることがわかった。
Keywords: MgxZn1-xO/ZnOヘテロ構造、X線結晶トランケーションロッド
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
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BL25SUビームラインにおいて、低濃度の希土類磁性体試料に対する軟X線磁気円二色性 (MCD) 測定の検出感度評価を行った。Au 基板上に展開した Tb 単分子磁石の単原子膜について全電子収量法によるX線吸収分光 (XAS) およびMCDスペクトルの測定を行い、バックグラウンドと信号の比率および統計精度を評価した。1原子層の単分子磁石に対して解析に十分な精度のスペクトルが数10分の測定時間で得られ、さらに濃度の薄い試料にも対応できることがわかった。
Keywords: 軟X線MCD、希土類単分子磁石、全電子収量法
a(公財)高輝度光科学研究センター, b高知大学, c広島大学
aJASRI, bKochi University, cHiroshima University
- Abstract
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文書類から記載に用いられた筆記具のメーカー名、製品名を推定する試みについては、一部を切り取ってインク等を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)、液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)、顕微フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、ラマン分光等で分析する手法が研究されてきたが、2000年以降は破壊を伴わない分光的分析手法が主流となってきている[1]。
既報[2]のとおり、ボールペンインクのメーカー名、製品名を推定するためのデータベース作製を目的として赤外放射光分光分析を実施したが、今回は同じ試料について放射光蛍光X線(XRF)分析を実施した。
Keywords: 科学捜査、法科学、微細証拠物件、放射光蛍光X線分析、ボールペンインク
(公財)高輝度光科学研究センター
JASRI
- Abstract
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蛍光X線の検出角度依存性を利用した深さ分解X線磁気円二色性 (XMCD) 測定法を開発した。表面研磨したネオジム焼結磁石試料に適用し、試料の減磁過程において Nd L2 吸収端での元素選択的磁化曲線を取得した。その結果、異なる蛍光X線検出角度、すなわち試料表面から検出深さに対して保磁力の値が変化することを見出した。得られた磁化曲線をモデルフィッティングで解析し、表面から 3.2 µm までの深さでは保磁力が試料内部の1/2に低下していることを明らかにした。本手法は、ネオジム永久磁石やサマリウムコバルト磁石等、微細組織を有する永久磁石の深さ分解磁化解析に応用が可能である。
Keywords: 深さ分解、バルク敏感、保磁力、焼結磁石
Section SACLA
a大阪大学 蛋白質研究所, b広島大学大学院 医系科学研究科
aInstitute for Protein Research, Osaka University,
bGraduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University
- Abstract
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X線自由電子レーザーを用いた単粒子構造解析の手法開発を目指した研究に取り組んだ。結晶化することなく蛋白質の立体構造を coherent X-ray diffraction imaging の手法により決定することを目指したものであり、モデルとして2種類のウイルスを選択した。それぞれのウイルスをサンプルグリッド上に展開、急速凍結し、XFEL 回折実験に供した。XFEL 回折実験は SACLA BL3A において実施した。
Keywords: X線自由電子レーザー、単粒子構造解析、ウイルス
a理化学研究所, b高輝度光科学研究センター
aRIKEN, bJASRI
- Abstract
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X線ラマン過程を観測するための最初のステップとして、蛍光X線の誘導放出の観測を試みた。このためにSACLAの2色発振を利用した。また、ポンプX線とコントロールX線のパルスエネルギーをそれぞれショットごとに決定するために、インラインスペクトロメーターを開発した。しかし、インラインスペクトロメーターを含めた光学系設計に問題があり、パルスエネルギーの正確な見積りができなかった。一方で、現在研究している共鳴2光子吸収につながる知見が得られた。
Keywords: X線非線形ラマン過程、誘導発光
a京都大学, b東京農工大学, c高輝度光科学研究センター, d理化学研究所
aKyoto University, bTokyo University of Agriculture and Technology, cJASRI, dRIKEN
- Abstract
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水溶液中におけるヨウ化物イオンから水への電子移動反応による水和電子の生成と、電子−ヨウ素原子間の再結合過程を解明する目的で、深紫外レーザーと自由電子レーザーを同期したヨウ化ナトリウム水溶液の時間分解光電子分光を行った。装置のエネルギー分解能は概ね計算通りであることが確認された。深紫外光の照射によって、ヨウ素 2p 軌道由来の光電子運動エネルギーがシフトし、遅延時間 150 ps まで回復しない様子が観測された。これは水和電子とヨウ素原子の再結合が 150 ps まで起こらないことを意味し、我々の予想に反する結果であった。
Keywords: 時間分解光電子分光、溶液、ヨウ化ナトリウム
a京都大学大学院理学研究科, b(公財)高輝度光科学研究センター, c東京農工大工学府, d(国研)理化学研究所
aKyoto University, bJASRI, cTokyo University of Agriculture and Technology, dRIKEN
- Abstract
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時間分解X線発光分光(TRXES)の立ち上げ、さらに将来の時間分解共鳴インパルシブX線散乱(TRRIXS)への発展を目論み、無機化合物水溶液の TRXES を試みた。試料は、シュウ酸鉄錯体(Fe(III)Ox3)である。この錯体に関しては、既にSACLAにおいて時間分解X線吸収分光(TRXAS)に成功している。紫外同期レーザー(268 nm)を用いて、Fe(III)Ox3 の配位子から金属への電荷移動(LMCT)を誘起し、その後の化学反応をリアルタイム追跡することを目的とした。試料はシュウ酸鉄錯体アンモニウム塩の 0.2 M 水溶液で、液体は直径 25 µm の層流である。X線の発光分光には、von Hamos 型の分光器を用いた。
Keywords: 時間分解発光分光、溶液、シュウ酸鉄錯体
a京都大学, b東北大学
aKyoto University, bTohoku University
- Abstract
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フェムト秒可視光レーザーを Ge2Sb2Te5 多結晶ナノ薄膜に照射した際に発現する格子膨張の時間変化を、SACLAの高強度、フェムト秒パルスX線によるフェムト秒パルスX線回折法を用いて、回折ピークの散乱角の時間変化から精密に測定し解析することで、Ge2Sb2Te5 ナノ薄膜の弾性特性の情報を得られることを明らかにした。
Keywords: