SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume8 No.1

SPring-8 Section A: Scientific Research Report

非鉛圧電体薄膜における電界印加中の結晶構造変化の解析
Clarification of Field-induced Phase Transition in Ferroelectric-Antiferroelectric Morphotropic Phase Boundary

DOI:10.18957/rr.8.1.10
2012A1064, 2013A1529, 2013B1452 / BL13XU

安井 伸太郎a, 竹内 一郎b , 坂田 修身c

Shintaro Yasuia, Ichiro Takeuchib, Osami Sakatac

a東京工業大学, bメリーランド大学, c(国研)物質・材料研究機構/SPring-8

aTokyo Institute of Technology, bUniversity of Maryland, cNIMS/SPring-8

Abstract

 本研究は、電界印加下時間分解放射光X線回折法を用いて、反強誘電体エッジ組成が示す巨大な圧電性について調査を行った。その結果、電界を印加することで反強誘電相は強誘電相へ相転移を起こし、それらは可逆的に動作することが理解できた。しかしながら、全てのドメインが相転移を起こしている訳ではなく、一部にとどまった。相転移が引き起こす歪みから計算した圧電定数は最大で 240 pm/V になることが分かった。


Keywords:圧電特性、強誘電体、反強誘電体、電界誘起相転移


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背景と研究目的:

 Pb(Zr,Ti)O3 に替わる非鉛圧電体の開発が活発に研究されている。我々は Pb 系同様の構造と強誘電体の起源を有する Bi 系ペロブスカイト型構造に着目し研究を行ってきた。その中でも (Bi,Sm)FeO3 はペロブスカイト構造のAサイトの組成比を変化させることで結晶相が変化する材料であることを発見し、Sm 含有量が増加するにしたがって、結晶構造は室温において Rhombohedral 強誘電体相(R3c)から PbZrO3 型に類似した反強誘電体相の混相を経て Orthorhombic 常誘電体相(Pnma)に変化する[1-3]。PFM による圧電 d33 測定の結果より、その圧電性は組成相境界において最大値を示すが、その圧電性の振る舞いの起源は未だ不明である。本研究では、放射光X線回折を用いて、電界印加時における結晶の変化を観察した。

 

実験:

 10 mm x 5 mm の (100)SrRuO3//(100)SrTiO3 単結晶基板に (Bi,Sm)FeO3 コンポジションスプレッドを有するエピタキシャル薄膜を作製し、測定に用いた。上部電極には 50 mm x 50 mm の Pd パットを成膜し、各組成において電場印加可能にした。また電場はタングステンプローブにて印加した。BL13XU の薄膜多軸回折用ゴニオメータを用いて電場印加下の回折実験を行った。電極上のみにX線を照射するために、2D レンズで集光したサブミクロンビームを使用した。X線のエネルギーは 12.4 keV を用いた。電場印加は APD ディテクタの時計と同期し、電場を印加する前後の回折状態を可視化できるようにした。測定装置の写真を図1に示した[4]。

 

   

    図1. 本実験のセットアップとゴニオメータ周りの写真

 

結果および考察:

 図2に各組成におけるX線回折パターンについて2次元マッピングを示した。加えて各組成における分極-電場曲線を示した。作製したコンポジションスプレッドサンプルは各組成において連続的に変化していることが理解できる。また Sm が 14% 付近では強誘電性から反強誘電性に特性変化を起こすことが理解できる。これらは Gd や Dy についても同様の結果を示すことが分かっている[2]。 反強誘電性を示すエッジ組成は Sm15% であり、その組成における時間分解能 XRD の結果を図3に示す。

 

   

      図2. X線回折の組成依存と各組成における分極-電場曲線

 

   

  図3. 反強誘電体相端組成(Sm:15%)における、375 kV/cm 印加の時間分解X線回折パターン

 

 反強誘電体相端組成 (Sm:15%) における、375 kV/cm 印加の時間分解X線回折パターンを示した。その結果、電界印加下において、 2theta が約 59.8° 付近に強誘電相で観測されるピークが出現し、電界印加を除することでそのピークは消滅した。この結果は電界印加によって反強誘電-強誘電相転移を引き起こすことが理解できる。電界印加している状態でも反強誘電体に起因する-ピークが残留していることより、全ての相が相転移を起こすのではなく、反強誘電体相のいくつかのドメインのみが電界印加下において強誘電体相に電界誘起相転移することが分かった。その際に下部電極である SRO のピークは低角側に若干のシフトをすることを確認した。相転移によって巨大な歪みを伴うことから、下部電極にもその歪みの影響があると考えられる。この電界誘起相転移によって引き起こされた格子変化から見積もられる圧電定数は最大で約 240 pm/V であった。非鉛エピタキシャル薄膜が示す圧電定数では非常に大きな値であることが分かった。

 

今後の課題:

 モルフォトロピック相境界を用いた巨大圧電性は PZT などの材料にて発現することが知られていたが、その理由の一つとして強誘電相から強誘電相への電界誘起相転移で説明されていた。強誘電体-反強誘電体におけるモルフォトロピック相境界においても同様に、反強誘電相から強誘電相への電場誘起相転移が起こることを実験的に証明した。今後は全てのドメインが可逆的に動作するような材料設計を行う事で、強誘電体-反強誘電体材料においても PZT に匹敵するような圧電材料を作製できる可能性が出てきた。

 

参考文献:

[1] S. Fujino et al., Appl. Phys. Lett. 92, 202904 (2008).

[2] D. Kan et al., Adv. Funct. Mater. 20, 1108 (2010).

[3] C. -J. Cheng et al., Phys. Rev. B 80, 014109 (2009).

[4] O. Sakata et al., AIP conf. proc. 1234, 151 (2010).

 

 

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(Received: September 29, 2019; Early edition: November 28, 2019; Accepted: December 16, 2019; Published: January 22, 2020)