SPring-8 / SACLA Research Report

ISSN 2187-6886

Volume7 No.2

SPring-8 Section B: Industrial Application Report

XAFS測定による雰囲気変動下での貴金属(Rh,Pd)担持状態解析
Analysis of Precious Metals (Rh,Pd) States under Atmosphere Switching Conditions by EXAFS Measurement

DOI:10.18957/rr.7.2.257
2015A3622, 2015B3624 / BL14B1

松枝 悟司, 松久 悠司, 平尾 哲大

Satoshi Matsueda, Yuji Matsuhisa, Tetsuhiro Hirao

株式会社キャタラー

CATALER CORPORATION

Abstract

 自動車用排ガス浄化触媒の課題として、貴金属凝集抑制による性能向上及び貴金属使用量低減が要求されている。現在研究中の新規 Rh 担持法触媒(以下、新規法)は、従来 Rh 担持法触媒(以下、従来法)に対し、Rh 凝集の抑制とより低温からの活性向上効果を見出した。

 今回、この要因を探るため、EXAFSによる Rh 状態解析を行った結果、新規法では還元雰囲気下において低温から速やかに Rh-O が Rh-Rh に変化する事が確認された。一方、劣化抑制では、酸化雰囲気中に生成する「Rh-O-Nd」の影響が大きい事が推定された。また、XANESの結果では、従来法の Rh 吸収端に対して高エネルギー側にシフトしていることから、新規担持方法を適応する事で Nd2O3 の再配分が促進され、Rh に対して Nd2O3 の接触頻度が適度に高まり劣化抑制と低温活性が高いレベルで両立したものと推察した。


Keywords: XANES、EXAFS、Rh状態解析、雰囲気変動下、Rh担持法


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背景と研究目的:

 自動車用排ガス浄化触媒の開発にあたり、活性種である貴金属の振る舞いを理解することは極めて重要と考える。当該触媒は種々の環境下、例えば自動車始動時の室温から高速走行時の 1000℃ に至る高温条件や加速時の還元雰囲気から減速時の燃料カット時の酸化雰囲気条件など、各環境下での貴金属状態を把握する事が必要である。貴金属はこのような使用環境下で凝集し、活性表面積の減少による性能低下を引き起こす問題があり、貴金属凝集抑制方法は多岐に渡り日々研究されている[1]。

 上述の研究対象の一つとして貴金属の担持法がある。貴金属の担持法を変えると貴金属の状態も変化する事が一般的に知られており、担持法と貴金属状態及び各環境下の状態を関連づけて整理できれば、貴金属凝集抑制による高性能触媒を導出でき、貴金属使用量低減に貢献できると考える。

 現在研究中の新規Rh担持法触媒は、従来Rh担持法触媒に対し、使用環境を模擬した処理後(1000℃×10時間、酸化/還元雰囲気変動下)において Rh 凝集が抑制されている事を STEM-EDS 観察や XRD の Rh 結晶子径で確認した(Fig. 1-a,b、Fig. 2)。また、低温からの活性向上をモデルガス温度特性にて確認した(Fig. 3)。

 今回、Rh 凝集抑制と低温からの速やかな浄化活性が得られる要因を探るため、触媒が晒される雰囲気での Rh-担体粉末における界面結合状態や Rh 状態を in-situ XAFS 測定によって調査した。

Fig. 1-a STEM-EDS(Conventional) Fig. 1-b STEM-EDS(Developed)

  Fig. 2 Rh crystallite diameter calculated from XRD

  Fig. 3 50% purification temperature

 

実験:

 測定試料は、従来及び新規担持法で調製した Rh 担持粉末2種。仕様は、Rh(0.5wt%)/CeZrNd 系複合酸化物。

調製方法及び測定方法:

1. 硝酸 Rh 溶液と CeZrNd 系複合酸化物粉末を混合後、大気中 500℃ で1時間熱処理を行い、Rh 担持粉末(従来法)を得た。また、シュウ酸等の有機カルボン酸を添加し、粉末から酸溶解した Nd イオンとのカルボン酸Nd塩結晶生成を施したこと以外は、前記と同様の方法にて、Rh 担持粉末(新規法)を得た。加えて従来法と同様の方法で、CeO2、ZrO2 及び Nd2O3 にそれぞれ Rh 担持した参照を調製した。

2. 上記試料について in-situ での測定が可能な測定セルを用いて、触媒調製後及び還元前処理(120℃、150℃、300℃×5分、5%H2/95%He)中の Rh の K 吸収端 XAFS測定(透過法)をBL14B1にて行った。前処理及び測定フローをFig. 4に示す。

  Fig. 4 Preprocessing and measurement flow

 

 また、触媒調製後の Rh の K 吸収端XANES測定(透過法)をBL14B1にて行った。

 

結果および考察:

 従来法及び新規法の動径分布関数をFig. 5-a,bに示す。

 

   Fig. 5-a Fourier transformed Rh K-edge        Fig. 5-b Fourier transformed Rh K-edge

       EXAFS(Conventional)                EXAFS(Developed)

 

 調製後の配位構造は、酸化 Rh(Rh-O-Rh)であることが確認された。還元処理後の配位構造において、新規法は 120℃ から Rh メタル(Rh-Rh)の生成を確認できた。一方、従来法では 150℃ まで Rh メタルは確認されず、300℃ で Rh メタルの生成が確認できた。これらのことから、新規法は還元雰囲気下で速やかにRh-OがRh-Rhに変化する事が分かった。 また、従来法では 150℃ 還元処理後に、約 3.0 Å 位置に第二近接ピークが確認された。このピークは Rh-O-Rh とは異なり、Rh-O-X(CeZrNd 系複合酸化物成分)と推定される。ところで、室温時に Rh-O-X に由来するピークが観察されなかったのは、X線の吸収が強い本材料系では第二近接ピークの詳細な EXAFS 解析が困難であったためと予想されるが、その一方、適度な還元処理により Rh-O-X が Rh-担体付近の結合として観察されたことから、従来法・新規法いずれのサンプルにおいても、初期(室温)においてはこの結合は生成していると推定される。このことは、耐久後の SEM-EDX 観察にて Nd 付近から多くの Rh 粒子が観察(Fig. 6)された事や過去の知見[1]とも一致している事から、この Rh-O-Nd 結合が、劣化抑制効果に寄与しているものと考えられる。

 なお、新規法では Rh-O-X が観察されなかったが、これは還元前処理 120℃ で既に Rh-Rh に変化した為であり、より低温では存在する可能性があると考える。

  Fig. 6 SEM-EDX(Developed after aging)

 

 次に、従来法及び新規法のXANESスペクトルをFig. 7に示す。

  Fig. 7 Rh K-edge XANES

 

 従来法の Rh のスペクトルは Rh2O3 に近い形状を示すが、新規法の Rh のスペクトルは Nd2O3 に Rh を担持した形状に近い事が確認できた。通常 Rh と Nd2O3 の強い相互作用は、低温からのメタル化促進に対して阻害要因となるが、新規担持法を適応する事で、Rh に対しての Nd の接触頻度を高めつつも、Rh 一粒子に対して、適切な量[2]の Nd が担体から再配置されたため、低温からのメタル化に対しても阻害されず、Rh 粒成長抑制に効果をしたものと考えられる。

 

今後の課題:

 高温雰囲気変動の過渡を模擬した条件下での XAFS 測定を通して、Rh 凝集抑制メカニズムの検証及び Pd 系での検討を行う。

 

参考文献:

[1] N. Nagai , 触媒 52(2), 149, (2010)

[2] T. Tanabe , 触媒 52(6), 465-467, (2010)

 

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(Received: August 2, 2018; Early edition: April 10, 2019; Accepted: July 16, 2019; Published: August 29, 2019)