Volume 27, No.3
Summer issue 2022
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
Department of Materials Science and Engineering, University of Maryland
- Abstract
- 細胞膜の基本構造である脂質二重膜の運動性は様々な生物学的機能の発現に重要である。多様な膜の運動性のうち膜内での輸送係数は脂質やタンパク質などの膜構成成分の再配置に直接関係する。これら輸送係数のうち運動量輸送に関わる粘性係数の研究はまだあまり多くない。脂質二重膜は僅か二分子が形成する5 nm程度の厚みを有する二次元膜であり、膜の粘性係数を測定することはそれ自体が本質的に難しい。本研究では放射光によって誘起された共鳴ガンマ線を利用したメスバウアー時間領域干渉計法と中性子スピンエコー法を相補利用することにより脂質分子の構造緩和運動を観測し、その緩和時間と膜の粘性係数を実験的に直接関連づけた。
東京大学大学院 理学系研究科 Graduate School of Science, The University of Tokyo
- Abstract
- 原核生物のもつCRISPR-Cas機構に由来する様々なCasタンパク質は、ガイドRNAと相補的な核酸を特異的に切断する。この性質を利用したものとしてCas9の2本鎖DNA切断によるゲノム編集が挙げられるが、近年ではCas13によるコロナウイルスの高感度・高速検出技術が開発されるなど[1][1] H. Shinoda et al.: Commun. Biol. 4 (2021) 476.、その応用範囲を拡大している。本長期課題では応用的に重要視されているCRISPR-Cas酵素の結晶構造を決定し、そのRNA依存性核酸切断機構を明らかにすることに成功した。
[1]立命館大学 総合科学技術研究機構 Research Organization of Science and Technology, Ritsumeikan University、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[3]東北大学 高度教養教育・学生支援機構 Institute for Excellence in Higher Education, Tohoku University
- Abstract
- 本課題では、非破壊分析である複数のX線CT手法を、サンプルサイズを考慮して効率的に用いることにより、はやぶさ2サンプル粒子の初期分析とそれに先立つ準備を行い、当初想定した成果をあげることができた。これにより、小惑星リュウグウの物質は、観測から予想されていた炭素質コンドライトの中でもCIグループあるいはその類似物質であることが明らかとなった。また、水(正確にはCO2–H2O流体)が小惑星に存在することを初めて示すとともに、リュウグウ母天体の形成領域(太陽系外側の低温領域)を特定し、このような流体による水質変成プロセスの具体的なモデルを作業仮説として提唱した。さらに、最も重要な物理量のひとつである密度を、X線CTを用いて正確に求めることができた。本分析は、破壊分析に先駆けて実施され、その後の様々な分析が効率的に行われた。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 SPring-8 Summer School Executive Committee, Chair
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
[1](国)理化学研究所 放射光科学研究センター RIKEN SPring-8 Center、[2](公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室/(国)理化学研究所 放射光科学研究センター XFEL Utilization Division, JASRI / RIKEN SPring-8 Center
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 構造生物学推進室 Structural Biology Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/筑波大学 数理物質系物理学域 エネルギー物質科学研究センター Faculty of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba