Volume 26, No.3
Summer issue 2021
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1]東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター International Center for Synchrotron Radiation Innovation Smart, Tohoku University、[2]Sigma Division, Los Alamos National Labolatory、[3](国)産業技術総合研究所 ナノ材料研究部門 Nanomaterials Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology、[4](国)日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター Materials Sciences Research Center, Japan Atomic Energy Agency、[5]東北大学 マイクロシステム融合研究開発センター Micro System Integration Center, Tohoku University
- Abstract
- グラフェンは優れたガスバリア性能を持っており、この性質は科学的にも産業的にも大変興味深い。本研究では、Cu基板上にCVD成長させた単層グラフェンに対し、大きな並進運動エネルギーを持つO2分子は単層グラフェンを非破壊で透過するが、小さな並進運動エネルギーを持つO2分子は透過できないことをX線光電子分光法で実証した。分子動力学に基づくシミュレーションにより透過現象の物理的描像の解明を試みた。その結果、グラフェンの原子空孔欠陥にて高エネルギーO2分子の解離が発生し、解離したO原子が非破壊で単層グラフェンを透過することが示唆された。この解離はグラフェンに対して非破壊であり、低エネルギーO2分子に対しては引き続きガスバリア性能を維持していることも分かった。
[1]東京大学 大学院工学系研究科 Department of Chemical System Engineering, The University of Tokyo、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- 工業的に重要な材料であるゼオライトはその生成メカニズムが未だ完全には明らかになっていない。本研究ではゼオライトの生成過程を原子・ナノスケールで調べることにより、構造規定剤や構成元素の役割を明確にすることを目指した。様々な系におけるゼオライト前駆体構造の形成過程を解明することに成功した。本稿では得られた最新の結果に関して報告する。
2. ビームライン/BEAMLINES
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](国)理化学研究所 放射光科学研究センター RIKEN SPring-8 Center
- Abstract
- 2022年度からの供用が予定されている回折・散乱を中心とした共用ビームラインの再編の現状を報告する。基盤的な分析を行うProduction装置群について、最新技術による計測の高性能化に加え、試料準備から解析に至る自動化や遠隔利用に取り組んでいる。既存および将来の潜在的な利用者の研究や開発のアクティビティの向上や産業利用・学術利用の融合を進めた産学連携の促進も目指している。また、ex-situ構造解析の重要性を認識した上で、材料・製品開発というアウトプットにつながる、オペランド構造解析のニーズへの対応を進めている。新規整備、またはBLの移設を伴う大幅な高性能化を実施する装置について概要を紹介する。
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター タンパク質結晶解析推進室 Protein Crystal Analysis Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- SPring-8構造生物ビームラインの遠隔測定システムを更新し、運用を開始した。ビームラインの機器やその制御系の高性能化が進む中で、更新が難しくなっていた従来の専用ソフトに代わり、リモートデスクトップを用いて、来所時と同等の測定環境が利用できるように開発を行った。本システムは、従来通り放射線安全、一般労働安全、第3者による不正アクセスの防止を担保した安全性を重視しており、ユーザーに対しインターネットを介した安全な測定環境を提供する。本稿ではその内容を紹介する。
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 SPring-8 Summer School Executive Committee, Chair
4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 精密分光推進室 Precision Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
5. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/広島大学 大学院先進理工系科学研究科 Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University