Volume 29, No.2
Spring issue 2024
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 Department of Earth and Planetary Science, The University of Tokyo
- Abstract
- 本研究は、ダイヤモンドアンビルセルを用いた超高圧高温実験により、「地球コアの化学組成(軽元素組成)」を制約することを大きな目的とした。1952年にF. Birchによって、コアには鉄とニッケルに加え、多量の「軽元素」を含むことが明らかにされたものの、70年近く経過した今でもその正体は不明とされ、地球科学の第一級の問題として残されている。この目的に沿った長期利用課題を遂行した結果、特に地球コア中の有力な軽元素である水素に着目した鉄–水素合金の研究(状態図、分配係数)が大きく進んだ。鉄–水素合金の状態図はこれまで実質存在しておらず、その新規性、コア組成解明に向けた貢献度は大きい。これらの新しい実験データに加え、既に明らかになっている他の軽元素に関するデータや始原的な隕石の組成も総合的に考えると、内核境界の温度が5400 Kである場合、コア組成はFe + 5 wt% Ni + 1.7 wt% S + 1.0–1.6 wt% Si + 2.9–4.4 wt% O + 0.20–0.44 wt% C + 0.19–0.32 wt% H (Fe0.69–0.70Ni0.04S0.02Si0.02–0.03O0.08–0.12C0.01–0.02H0.08–0.14)の狭い範囲に制約され、地球コア中では水素と酸素が主要な軽元素であることがわかった。この結果は、地球の形成、進化、そして現在のコアの状態に関して、重要な意味を持っている。加えて、当初計画していなかった成果として、地球下部マントルにおけるSiO2相への水の溶解度が、コア直上(マントルの底)の高温下でも極めて大きいことがわかった。このことは、深部マントルでの水のリサイクルを理解する上で重要な発見である。
北海道大学 大学院理学研究院化学部門 分子生命化学研究室 Department of Chemistry, Faculty of Science, Hokkaido University
- Abstract
- 胃プロトンポンプを標的とした胃酸抑制剤は、胃潰瘍や逆流性食道炎の治療、胃がんの主原因とされるピロリ菌の除菌時の胃酸抑制を目的として用いられる。その世界市場規模は2兆円とも言われ、巨大なマーケットを持つ薬剤である。我が国でも、これまでに複数の薬剤が上市され治療に用いられているが、これらはすべてフェノタイプスクリーニングによって開発されたものであり、その結合構造は未知であった。我々は2018年に胃酸抑制剤の結合構造解析に初めて成功して以来、これまで7つの異なる薬剤/阻害剤の結合構造を明らかにしてきた。本稿では、これら結合構造の情報を、AIを利用することで阻害剤のデザインへと応用した例を紹介する。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室/(国)理化学研究所 放射光科学研究センター 利用システム開発研究部門 SACLAビームライン基盤グループ XFEL Utilization Division JASRI / RIKEN, SPring-8 Center
フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)
[1](公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI、[2](国)理化学研究所 利用システム開発研究部門 Advanced Photon Technology Division, RIKEN SPring-8 Center
[1]SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)/近畿大学 理工学部 Faculty of Science and Engineering, Kindai University、[2]東京大学 大学院工学系研究科 Graduate School of Engineering, The University of Tokyo、[3]奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology、[4]兵庫県立大学 大学院理学研究科 Graduate School of Science, University of Hyogo、[5]東京大学 物性研究所 The Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/関西学院大学 工学部 School of Engineering, Kwansei Gakuin University