Volume 25, No.1
Winter issue 2020
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1]大阪大学 大学院医学系研究科 神経内科学 Department of Neurology, Graduate School of Medicine, Osaka University、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター タンパク質結晶解析推進室 Protein Crystal Analysis Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり、その発症機序はいまだ不明であり、進行を抑制する根本的治療も存在しない。古くからパーキンソン病患者の脳内にはレビー小体という特徴的な異常凝集体が見られることがわかっており、病態解明の重要な手がかりであると考えられてきた。近年、この凝集体がプリオンのように脳内を伝播するという報告が次々となされた。しかしながら、それらの報告は人工的に作成したアミロイド線維の断片を細胞や動物に接種した実験であり、患者の脳内でそのような現象が実際に起こっているという十分な証拠はない。そこで、我々は顕微赤外分光やX線マイクロビームを用いて、パーキンソン病患者剖検脳内のレビー小体に対する微細構造解析を行い、患者の脳内でも異常凝集体が伝播していることを支持する重要な証拠を得るとともにパーキンソン病の新たな疾患概念を提唱するに至った。
[1]新学術領域研究「3D活性サイト科学」領域代表/(公財)豊田理化学研究所 Toyota Physical and Chemical Research Institute、[2]名古屋工業大学 大学院工学研究科 Department of Physical Science and Engineering, Nagoya Institute of Technology、[3]奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学領域 Division of Materials Science, Nara Institute of Science and Technology (NAIST)
- Abstract
- 科研費新学術領域「3D活性サイト科学」は、孤立原子周辺の立体原子配列をホログラフィーの手法で解明して局所物性科学の創出と応用を目指したプロジェクトである。平成26年度(2014年度)に開始され、5年後の2019年3月に多くの成果を得て無事に終了した。SPring-8、PF、J-PARCという大型施設を利用するという特徴的な新学術領域であった。5年間の領域メンバーの努力により、無機物質から触媒、有機物質、タンパク質まで、300近い試料の活性サイトの測定を行い、当初の目的は達成された。予想できないような構造も実験的に得られ、その表記法も確立し、新しい機能を生み出す活性サイトも提案されるなど、領域の目指す新しい学理「局所機能構造科学」が生まれつつある。領域終了後も領域内で培われた共同研究が続いており、本領域の分野は今後も益々発展していくと思われる。
[1](国)量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 Quantum Beam Science Research Directorate, National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology、[2](国)理化学研究所 東原子分子物理研究室 Atomic, Molecular and Optical Physics Laboratory, RIKEN、[3]自然科学研究機構 分子科学研究所 極端紫外光研究施設 UVSOR Synchrotron Facility, Institute for Molecular Science, National Institutes of Natural Sciences
- Abstract
- SACLAの軟X線ビームラインBL1を用いて、世界で初めて極端紫外領域(EUV, extreme ultra-violet)における「超蛍光」の観測に成功した[1][1] J. R. Harries et al.: Phys. Rev. Lett. 121 (2018) 263201.。励起状態にある複数の原子(又は分子等)が協調し発光をする現象「超蛍光」は、基礎的な量子光学現象として注目を浴びる一方、コヒーレンス性の高い光源としての利用や、感度の高い検出法として期待されている。可視光領域では多くの実用例はあるが、今回初めて短波長領域への展開に成功した。ここでは今回の観測の詳細について紹介し、今後の期待を簡単に述べる。
2. ビームライン/BEAMLINES
[1](公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI、[2](国)理化学研究所 放射光科学研究センター RIKEN SPring-8 Center
- Abstract
- X線自由電子レーザー(x-ray free electron laser; XFEL)の特性を利用した代表的な研究手法の一つに、短パルス光学レーザーをポンプとしたポンプ・プローブ計測がある。本報告で紹介する大出力レーザーも短パルスレーザーの一種であるが、その出力は数百TW(~1014 W)級と非常に大きい。このような大出力レーザーのパルスを微小な空間領域に集光して試料に照射することで、非常に高いエネルギー密度状態を作り出すことができる。高エネルギー密度状態下での物質状態や物理現象をXFELにより超高速に診断することを主な利用目的として、SACLAに大出力レーザー(最大出力500 TW)を備えた実験基盤(BL2 EH6)が整備され、そのユーザー供用が2018年度に開始された。本報告では、この実験基盤の整備・開発状況と今後の展望について紹介する。
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光・イメージング推進室 Spectroscopy and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
[1](公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部/放射光利用研究基盤センター 分光・イメージング推進室 User Administration Division / Spectroscopy and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[3](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光・イメージング推進室 Spectroscopy and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
5. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光・イメージング推進室 Spectroscopy and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/関西学院大学 研究創発センター Center of Research Initiative, Kwansei Gakuin University