Volume 24, No.1
February issue 2019
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1](株)豊田中央研究所 分析部 量子ビーム解析研究室 Quantum Beam Analysis Lab., Materials Analysis & Evaluation Dept., Toyota Central R&D Labs., Inc.、[2](株)豊田中央研究所 要素研究企画室 Core Technology Planning Office, Toyota Central R&D Labs., Inc.、[3]トヨタ自動車(株) FC基盤開発部 Fuel Cell System Fundamental Development Div., Toyota Motor Corporation、[4]トヨタ自動車(株) パワートレーン統括部 PT管理室 Powertrain Administration Dept., Powertrain Management Div., Toyota Motor Corporation、[5](株)SOKEN SP-SES室 SP-SES Div., SOKEN, INC.、[6](株)SOKEN 研究3部 34研究室 Research Dept.34, Research & Development Div.3, SOKEN, INC.
- Abstract
- 固体高分子形燃料電池の高出力化の妨げとなっているフラッディング(多孔電極の細孔内に凝縮した水によって酸素拡散が阻害されることに起因する出力低下現象)を観察するために、BL33XUにオペランドX線ラジオグラフィー装置を開発した。この装置により、酸素還元反応により水が生成するカソードで、電極最表層であるガス拡散層の断面方向にわたる凝縮水分布を、ピクセル解像度1.3 µm、時間分解能1.6秒(露光時間1秒)で観察した。カソードガス拡散層の違いによる出力差を、観察された水分布の違いから電極面直方向および面内方向の酸素拡散阻害を推定することで説明した。
東京大学 物性研究所 Institute for Solid State Physics, University of Tokyo
- Abstract
- 東大物性研ビームラインSPring-8のBL07LSUの放射光軟X線光源において、偏光を高速な周期(10−30 Hz)で変化させる偏光スイッチングを利用し、ロックイン検出によってX線磁気光学測定を行った。偏光スイッチングを用いると、多層膜ミラーと軟X線検出器を真空チャンバー内で回転させることなく、X線磁気カー回転角を得ることができ、鉄の薄膜で得られた結果は第一原理計算により再現されている。このように偏光スイッチングによるX線磁気光学カー効果とX線磁気円二色性の測定に成功し、従来では測定が困難であった微弱な信号を持つ磁性体に対してもX線磁気光学測定によってその磁気的性質を明らかにできるようになった。さらには時間分解X線磁気円二色性測定にも成功し、今後の系統的な磁性体のスピンダイナミクス研究につながる結果が得られた。
東京大学 大学院工学系研究科 Department of Chemical System Engineering, The University of Tokyo
- Abstract
- 工業的に重要な材料であるゼオライトはその生成メカニズムが未だ完全には明らかになっていない。本研究ではゼオライトの生成過程を原子・ナノスケールで調べることにより、構造規定剤や構成元素の役割を明確にすることを目指した。その結果、ゼオライト細孔内の金属クラスターや様々な系におけるゼオライト前駆体構造の形成過程を解明することに成功した。さらに、時分割測定も実現し、非晶質ゼオライト前駆体中の構造形成に関する知見が得られるようになった。
(国)物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点/統合型材料開発・情報基盤部門(MaDIS)情報統合型物質・材料研究拠点(CMI2)/JSTさきがけ Research Center for Advanced Measurement and Characterization, NIMS
- Abstract
- 物質は、合成条件により様々なふるまいを見せる。たとえば、高温液体からのガラス合成時における容器の有無、圧力、重力など、様々な外的要因の影響を受ける。こういった物質の構造を捉える上での最大の問題点は、結晶以外の材料の構造は長距離秩序を有さないがための解析の難しさ故に「不規則」という言葉で一括りにされ、構造を表現できる結晶の空間群のような記述子が存在せず、実空間上での原子対に着目した二体相関のみで議論されてきたことである。本長期利用課題では、様々な非晶質物質の構造を量子ビーム実験・計算機シミュレーションに加えて、逆モンテカルロモデリング、最先端の数学理論を導入したホモロジー解析を援用することにより、非晶質物質の量子ビーム実験データおよび3次元構造データを系統的に理解することを試みた。さらに、ガラスの構造と物性の相関についても検討を行った。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 情報処理推進室 Information-technology Promotion Division, JASRI
[1](公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター タンパク質結晶解析推進室 Protein Crystal Analysis Division, JASRI
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
(公財)高輝度光科学研究センター タンパク質結晶解析推進室 Protein Crystal Analysis Division, JASRI
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/関西学院大学 理工学部 School of Science and Technology, Kwansei Gakuin University