Volume 30, No.1
March issue 2025
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1]大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学領域 Division of Advanced Electronics and Optical Science, Graduate School of Engineering Science, Osaka University、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- シリコン半導体を凌駕する特性を有する化合物半導体として、窒化物半導体の研究開発が精力的に行われている。その結晶には未だ多くの転位欠陥が残存しており、デバイス特性に影響を与える転位とそれに伴う歪場の分布や性質を的確に把握し制御することが重要な課題となっている。本研究では、結晶の局所的な歪みを高い歪分解能と空間分解能で計測することができるナノビームX線回折(nanoXRD)法を用いて、GaN結晶基板中の単独転位周辺の歪場を定量的に解析する手法を開発した。本方法により、従来手法では識別が困難であり電気特性に大きく影響するらせん成分を含めた全ての転位歪場成分を非破壊で検出することができ、転位の制御を起点とした次世代半導体材料・パワーデバイスの開発・高性能化に貢献できると期待される。
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター International Center for Synchrotron Radiation Innovation Smart, Tohoku University
- Abstract
- 金属酸化物ナノ粒子におけるサイズ効果は、多くの興味深い現象を引き起こす。我々は、超臨界水熱法で合成したCeO2ナノ粒子を対象として、化学状態が粒径によりどのように変化するのかを、SPring-8の様々な放射光分光法を駆使して議論してきた。その結果、粒径6 nm以下の極微小なCeO2では、酸素原子の位置が乱れ、構造に歪みが生じていることがわかった。さらに、この構造変化によってCe 4fと酸素の電子的相互作用が弱まり、電子がCe 4f軌道上に局在することを突き止めた。これは、酸素欠陥がない状況でもナノ粒子内の電子状態が実際にCe3+になりうることを示唆しており、超微小なCeO2は、酸化還元能を超える新たな機能を有しえることを示す。
[1]岡山大学 学術研究院自然科学学域 理学研究科 Guraduate School of Natural Science and technology, Okayama University、[2]岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域 Graduate School of Environmental, Life, Natural Science and Technology, Okayama University、[3]名古屋大学大学院 工学研究科 Guraduate School of Engineering, Nagoya University、[4](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- 産業革命以来今日までエネルギーや化学物質合成の供給源として主に化石燃料が使用されてきた。その結果増加した大気中のCO2、CH4、N2Oなどが地球規模での気候変動の一因であるとされ、大気中のこれらのガスの削減は人類にとって解決すべき喫緊の課題となっている。しかし、室温・低圧[大気中のCO2分圧400 ppm(約0.3 Torr)から人体に害があるとされる5000 ppm(3.9 Torr)程度の領域]でCO2を吸着し、しかも再生が容易であるという真逆の性質を有する物質開発は化学の領域における重要な課題の一つである。我々は高い交換率でNaA型ゼオライト中のナトリウムイオンをカルシウムイオンにイオン交換したゼオライト(NaCaA-85試料:NaA型ゼオライト試料をCa2+イオンで85%イオン交換した試料)が室温、且つ低圧力のCO2やN2Oガスを高効率、且つ選択的に吸着する現象を見出した。この試料が示す特異性は特筆すべきものであり、この過程で生じている吸着形態をSPring-8放射光を利用した遠赤外線領域の振動スペクトル(far-IR)測定法(BL-43)と計算化学的手法を組み合わせることによって検討した。この特徴的な吸着特性はA型ゼオライト中に存在するSi–O(or Al–O)から形成される8員環と6員環上にイオン交換された二種類のCa2+の間に橋架けされたCO2およびN2Oとして存在するモデルで説明できることを明らかにした[1, 2][1] A. Oda et al.: J. Mater. Chem. A 9 (2021) 7531-7545. This paper was adopted as a cover paper.
[2] S. Hiraki et al.: Chem. Commun. 60 (2024) 4597-4600.。得られた結果は今後の吸着物質デザインに重要な情報を与えるものと期待する。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部(兼)放射光利用研究基盤センター User Administration Division/Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 研究プロジェクト推進室 生命科学・創薬研究支援基盤グループ Life Science and Drug Discovery Group, Research Project Division, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
[1]フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 代表 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)、[2]同 運営委員長 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)、[3]同 運営副委員長・広報委員 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)