Volume 29, No.3
Summer issue 2024
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1]東北大学 理学研究科 Graduate School of Science, Tohoku University、[2]立命館大学 総合科学技術研究機構 Research Organization of Science and Technology, Ritumeikan University、[3](公財)高輝度光科学研究センター 散乱・イメージング推進室 Research and Utilization Division, JASRI
- Abstract
- 本長期課題では先行長期課題を引き継いで小惑星探査機はやぶさ2が持ち帰った小惑星リュウグウサンプルの放射光X線CT分析を実施した。空間分解能の異なるCTシステムを組み合わせてサンプル分析を実施することでリュウグウサンプルの岩石鉱物学的特徴をマルチスケールで明らかにすると共に、リュウグウ母天体内で起こった水質変成プロセス(水–岩石化学反応による二次鉱物の生成プロセス)や宇宙塵衝突による小惑星リュウグウ表面物質の変化のプロセスを詳細に明らかにした。また本課題のX線CT分析はリュウグウサンプルの初期分析および後発の国際公募分析課題において一連のサンプル分析の序盤に実施され、後続の顕微分析を補助する役割を担い成果の創出に貢献した。
大阪大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 固体物理化学領域 Division of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Osaka University
- Abstract
- 本研究は、数十年に渡り酢酸ビニルモノマー合成の工業触媒として使用されている、KOAc添加Pd–Au/SiO2触媒(Pd/Au = 4)において、PdにAuおよびKOAcを添加すると活性・選択性が飛躍的に向上する要因を解明することを目的とした。XRDおよびXAFS測定を軸とし、反応前後における触媒の構造解析を徹底的に行うことで(1)反応中に炭素原子がPd–Au合金ナノ粒子の格子間隙に自発的に取り込まれること、(2)KOAc添加により取り込まれる炭素原子が増加することを初めて見出した。さらに、速度論的検討および理論計算を行うことで高い活性・選択性の発現に対するAuおよび格子間炭素の役割を明らかとすることに成功した。
徳島大学 大学院社会産業理工学研究部 理工学域応用化学系 Department of Applied Chemistry, Tokushima University
- Abstract
- 赤外放射光の利用研究では、放射光の高輝度性に起因する高い空間分解能や指向性を活用した、赤外顕微分光やマッピング、あるいは高圧発生セルや超伝導磁石など制限された試料環境での実験が行われている。ここでは、数万気圧の高圧力下の試料に対する赤外分光研究の最近の例として、励起子絶縁体候補物質であるTa2NiSe5の研究結果を紹介する。
[1]国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓生理機能部 Department of Cardiac Physiology, National Cerebral and Cardiovascular Center、[2]日本医科大学 医学部 生理学 Department of Bioregulatory Science, Nippon Medical School、[3](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Research and Utilization Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
- Abstract
- 近年、冠動脈循環の大半を占める微小冠循環障害が注目されている。高齢化に伴う心不全患者の増加の裏には微小冠循環障害が潜んでおり、その対策は急務である。微小冠動脈は単離や顕微鏡下でのin vivo観察も困難であり、微小冠循環障害の病態解明は進んでいない。我々は微小冠動脈機能解析を目指し、in vivo放射光X線微小血管イメージング法を開発した。放射光X線を利用することで非常に高い時間・空間分解能、エネルギー分解能が得られ、ラットやマウスの高速に拍動する心臓においても、心臓表面の太い冠動脈から内径20-30 µmの微小冠動脈までを同一視野で観察することが可能となった。現在、様々な生活習慣病モデル動物における冠動脈拡張機能を解析し、微小冠動脈障害の病態解明、心不全との因果関係の解明、そして微小血管機能解析法の更なる発展を目指している。
東京大学 大学院農学生命科学研究科 Department of Biotechnology, The University of Tokyo
- Abstract
- シャペロニンは細胞内のタンパク質の恒常性に重要な役割を果たすタンパク質複合体である。大腸菌のシャペロニンGroELの構造と機能はよく研究されているが、蓋状分子GroESの結合とATP加水分解による大きな構造変化などの理由で、シャペロニン複合体の構造解析には制約があり、複合体形成段階およびその動きに関する理解は限られている。本研究では、クライオ電子顕微鏡により、ATPおよびAMP-PNP存在下で、2種類の好熱性水素酸化細菌由来のシャペロニン複合体の立体構造を解析した。高分解能のフットボール型複合体の構造に加えて、今まで報告されていなかった非対称フットボール型複合体も捕捉することに成功した。それらの構造をもとに、弾丸型複合体からフットボール型複合体への移行における重要なステップであるtrans-GroESの結合のメカニズムを解釈した。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research JASRI
SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 Chair of SPring-8 Summer School Executive Committee
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 構造生物学推進室 Structural Biology Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 精密分光推進室 Precision Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI