Volume 18, No.1
February issue 2013
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
[1]東京工業大学 応用セラミックス研究所 Materials and Structures Laboratory, Tokyo Institute of Technology、[2]Department of Energy Science, Sungkyunkwan University
- Abstract
- LaFeAsO1−x Fxはホール面と電子面から構成される二次元フェルミ面を持っており、それらの形状がよく似ているため、これらのポケット間に働く強いネスティング;ある波数に対するフェルミ面の重なり具合、が母相の構造および磁気相転移を誘起する。O2−サイトをF−に置換することにより電子ドーピングすると、これらの相転移が抑制され0.05 < x < 0.2において最高でTC = 26 Kの超伝導が発現する。しかし、フッ素の酸素サイトへの固溶量がLaOFの生成によって制限されるために、電子ドーピングによって超伝導が完全に消失する過剰ドーピング領域をこれまで観察できていなかった。そこで我々は新しい電子ドーパントとして水素を用い、この問題の解決を試みた。フッ素の代替として水素を用いることによりx〜0.5まで電子をドープすることに成功し、LaFeAsO1−x Fxに見られていた超伝導ドーム(0.05 < x < 0.20)に加えて0.2 < x < 0.5に最高でTC = 36 Kを示す二つ目のドームを見出した。電子構造計算によれば、xの増加に従いフェルミ面のネスティングは単調に弱くなるが、鉄の三つの3d軌道、dxy、dyz、dzxから成るバンドがx = 0.36において縮退することが分かった。これらの結果から高いTCの発現にはバンド縮退が重要な寄与を果たしていると考えられる。
国立遺伝学研究所 分子遺伝研究部門 Department of Molecular Genetics, National Institute of Genetics
- Abstract
- 細胞分裂の過程において、紡錘体微小管は染色体上の特殊領域に結合して染色体を娘細胞へと均等に分配する。紡錘体微小管が結合する染色体上の特殊構造はキネトコアと呼ばれ、キネトコアが形成される染色体領域はセントロメアと定義されている。通常、染色体上にセントロメア領域は一カ所だけであるが、その領域はDNA配列の特異性によって規定されていない。しかし、いったん決まったセントロメア領域は、次世代細胞においてもセントロメアとなるので、DNA配列以外のエピジェネティックな機構により、セントロメア領域は規定されていると考えられる。エピジェネティックマーカーとしては、セントロメアに特異的なヒストンであるCENP-Aが注目されている。筆者らは、CENP-Aに加えてセントロメアに特異的なクロマチン構造の構築には、CENP-T-W-S-Xと名付けた複合体が重要であると提唱している。最近、CENP-T-W-S-Xの構造解析に成功し、その構造からセントロメア形成に重要である特異的なクロマチン構造の実体が見えてきた。
2. ビームライン/BEAMLINES
[1]電気通信大学 燃料電池イノベーション研究センター Innovation Research Center for Fuel Cells, The University of Electro-Communications、[2]自然科学研究機構 分子科学研究所 Institute for Molecular Science, Department of Materials Molecular Science
(公財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, JASRI
3. SACLA通信/SACLA COMMUNICATIONS
[1](独)理化学研究所 放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門 XFEL Research and Development Division, RIKEN SPring-8 Center、[2](公財)高輝度光科学研究センター XFEL研究推進室 XFEL Division, JASRI
- Abstract
- X線自由電子レーザー施設SACLAでは、大強度のフェムト秒X線レーザーが生成される。SACLAの利用実験では試料をパルス毎に取り換えながら実験を行うこと・X線レーザーのSASEに由来するパルス特性の揺らぎを考慮した実験データ解析を行うことを目的とし、パルスと同期して実験データを取得できるX線2次元検出器システムを開発した。このシステムは現在SACLAの利用実験で供用中であり、最大で4 Mpixelのイメージ領域を持つ検出器が利用可能である。
4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
SPring‐8 萌芽的研究アワード審査委員会 委員長 Chair of The SPring-8 Budding Researchers Award Committee
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI
フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 研究連絡協議会世話役/名古屋工業大学大学院 工学研究科 Facilitator of FSBL User Group, Advanced Softmaterial Beamline Consortium / Graduate School of Engineering, Nagoya Insititute of Technology