Volume 28, No.3
Summer issue 2023
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
兵庫県立大学 大学院理学研究科 物質科学専攻 Graduate School of Science, University of Hyogo
- Abstract
- 量子物質での量子臨界点近傍で生じる異常金属状態の特徴的挙動を理解するためには、根底にある電子の電荷ダイナミクスを詳細に調べる必要がある。最近開発された放射光メスバウアー分光法を最適化し、価数揺動量子物質β-YbAlB4の異常金属相でのYbイオンの価数揺動現象の温度と圧力依存性について研究を行ってきた。その結果、フェルミ液体領域でスペクトルに観測される単一吸収ピークが、異常金属相の量子臨界領域に入ると2つのピークに分割することを見出した。この結果は、異常金属相ではYbイオン価数がナノ秒の超低速でゆらいでいることを示している。さらに、このナノ秒と長い時間スケールのゆらぎは、格子振動のソフト化によるポーラロンの形成が原因であることを明らかにした。価数揺動現象の研究により、初めて観測された超低速臨界電子電荷ゆらぎが、量子物質における異常金属状態の特性であることが示唆されている。
[1]マツダ株式会社 技術研究所 Technical Research Center, Mazda Motor Corporation、[2]慶應義塾大学 理工学部 化学科 Department of Chemistry, Faculty of Science and Technology, Keio University、[3]兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 Advanced Science and Technology for Industry, University of Hyogo
- Abstract
- 地球温暖化抑制の観点から、内燃機関を有する自動車において排ガス浄化用触媒は不可欠な存在であるが、レアメタルの環境リスクを低減する省資源利用との両立を目指すために、活性種として使用する貴金属を最少量で最大限の機能を発現させる必要がある。それを早期実現するには、材料モデルベースリサーチが有効であり、実働に近い条件下での挙動をとらえメカニズム解明することがキーとなる。我々は、準大気圧放射光光電子分光を用い、始動直後の低温過渡域および減速域から再加速域への過渡反応域における触媒反応下での貴金属表面の電子状態変化および反応ガスの挙動の見える化と計算科学的アプローチでNO浄化特性向上指針を示した。
[1]名古屋大学 未来材料・システム研究所 Institute of Materials and Systems for Sustainability, Nagoya University、[2]東京大学 物性研究所 Institute for Solid State Physics, University of Tokyo、[3]日本製鉄株式会社 先端技術研究所 Advanced Technology Research Laboratories, Nippon Steel Corporation、[4](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
東京大学 定量生命科学研究所 Institute for Quantitative Biosciences, The University of Tokyo
- Abstract
- 一連の長期利用課題は「イオンポンプ蛋白質(P型ATPase)の作動機構を原子構造に基づいて完全に理解すること」を目標とし、すべての可能な中間体の構造決定を進めている。その反応サイクルではATPによるポンプ蛋白質の自己燐酸化が起こるが、その構造変化は大規模且つ複雑すぎて因果関係は良く分からなかった。そこで最重要の中間体(ポンプ蛋白質+ATP+Ca2+の三者複合体)に到達する複数の経路を追及することでその解明を目指した。本課題ではCa2+非存在下(E2)でATPを結合した状態(E2·ATP)のCa2+ポンプの結晶構造解析を行い、「何故ATPによる燐酸化のためにはCa2+の結合が必須なのか」「何故E2状態では無機燐酸による燐酸化が可能であるのに、Ca2+結合状態では不可能なのか」という根本的問題にアプローチした。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(国)理化学研究所 放射光科学研究センター 利用システム開発研究部門 Advanced Photon Technology Division, RIKEN SPring-8 Center
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター ビームライン技術推進室 Beamline Division, JASRI、[3]島根大学 材料エネルギー学部 Faculty of Materials for Energy, Shimane University
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI