Volume 28, No.1
Winter issue 2023
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
(株)豊田中央研究所 分析研究領域 Materials Analysis & Evaluation Research-Domain, Toyota Central R&D Labs., Inc.
- Abstract
- 世界的な自動車保有台数の増加と環境保護意識の高まりを受け、地球環境への負荷が低い高効率ガソリンエンジン車の展開が加速している。自動車排ガスに含まれる窒素酸化物などの有害物質は、排ガス浄化用触媒の細孔内部を拡散しながら反応して浄化される。触媒層の深部には有害物質が届きにくいため、触媒の利用効率向上が難しいという問題があった。我々は、触媒層の細孔の繋がり(連通性)に着目し、放射光を用いたX線CT撮影により、触媒層の三次元構造データを取得し、得られた連通孔パラメータから細孔内ガス流れを予測するモデルを構築した。このモデルを用いた解析により、触媒層を有効に利用するためには空隙率(触媒層における細孔の割合)を単純に増大させるのではなく、拡散への寄与の小さい孤立細孔を減らして、代わりに連通孔の数を増やすという細孔制御指針を示し、これにより連通孔を増大させる細孔制御技術の実現に繋げた。
[1](株)日立製作所 研究開発グループ Research and Development Group, Hitachi, Ltd.、[2]九州シンクロトロン光研究センター ビームライングループ Beamline Group, SAGA Light Source
- Abstract
- カーボンニュートラルの実現に向けて、高効率なパワーエレクトロニクス機器の利用拡大がより重要となる。現在、パワーデバイスの材料にはSiが広く使われているが、更なる省エネルギー化に向けてSiCを使ったパワーデバイスの実用化が開始されている。SiCパワーデバイスは、高耐圧・大電流が求められる電力やモビリティ分野での活躍が特に期待されているが、SiCに含まれる結晶欠陥がその普及を妨げている。具体的には、SiC MOSFETでは、デバイスの動作中に積層欠陥が拡張することで、抵抗が増加する信頼性の問題が課題となる。この課題を解決するために、オペランドX線トポグラフィー法を開発し、世界で初めて動作中SiC MOSFETにおける積層欠陥の拡張を直接観察することに成功した。加えて、デバイスの実動作条件下での積層欠陥の拡張機構を解明することで、高信頼なSiC MOSFETの実現に大きく貢献した。
[1]大阪公立大学 大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Osaka Metropolitan University、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[3](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[4](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[5]名古屋大学 未来材料・システム研究所 Institute of Materials and Systems for Sustainability, Nagoya University、[6]広島大学 放射光科学研究センター Hiroshima Synchrotron Radiation Center, Hiroshima University、[7]九州大学 理学研究院 Graduate School of Science, Kyushu University、[8]名古屋工業大学 大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology
東京工業大学 地球生命研究所/東京大学 理学系研究科地球惑星科学専攻 Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology / Dept. Earth and Planetary Science, The University of Tokyo
愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター Geodynamics Research Center, Ehime University
2. ビームライン/BEAMLINES
[1](公財)高輝度光科学研究センター ビームライン技術推進室 Beamline Division, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 情報技術推進室 Information-technology Promotion Division, JASRI、[3](国)理化学研究所 放射光科学研究センター 先端放射光施設開発研究部門 Innovative Synchrotron Radiation Facility Division, RIKEN SPring-8 Center
- Abstract
- ビームラインフロントエンドの準白色X線ビームの光軸を正確に捉えるモニターシステムの実証に成功した。本手法は、単結晶ダイヤモンド薄膜にビームを透過させて生じる散乱X線を、ピンホール光学系を通じて直接検出型CMOS二次元検出器で撮像するものである。得られる画像情報に光子エネルギー弁別を施すことで、アンジュレータ放射の各エネルギー成分の空間分布が可視化できる。この結果は、SPECTRAを用いた理論計算結果とよく一致した。本手法により得られた光軸情報は、従来のX線ビーム位置モニターで問題となっていた偏向電磁石放射の混入の問題を回避できる。この新しいエネルギー分解型ビームモニターは、光源の超安定性を要求する回折限界リングの強力なビーム診断ツールとして期待できる。
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2]広島大学 放射光科学研究センター/分子科学研究所 極端紫外光研究施設 光源加速器開発研究部門 Hiroshima Synchrotron Radiation Center, Hiroshima University / UVSOR Synchrotron Facility, Institute for Molecular Science
フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)
4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI