Volume 28, No.4
Autumn issue 2023
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 Faculty of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama University
- Abstract
- 味覚は、日々の食事で食物に含まれる化学物質を感知する生理反応である。味覚の生理反応は、食物中の味物質を味覚受容体タンパク質が結合し、生体内にシグナル伝達するところから始まる。一方、これらの仕組みの理解に欠かせない味覚受容体の構造は、近年まで明らかになっていなかった。筆者らは以前、SPring-8を用いて、ヒトの甘味受容体やうま味受容体に該当するメダカT1r2a/T1r3の味物質結合領域の構造を、味覚受容体として初めて明らかにした。さらに最近、メダカの受容体に限らず、我々ヒトも含めた幅広い動物が持つT1r3に、塩化物イオン結合部位が存在することを、SPring-8を用いた実験で見出し、実際に塩化物イオンがT1rを介して味覚で感知されることを解明した。本稿では、我々にとって身近な現象である甘味やうま味の受容について、SPring-8での放射光実験から見えてきたことを報告する。
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo
- Abstract
- 科学技術の発展において「観測」は最も強力な実験手法であり、新しい観測技術が新たなサイエンスの扉を切り拓いてきた。物質科学においては、原子は最小の構成単位であり、物性は原子を構成する電子の空間分布(軌道)状態によって支配されている。従って、「電子軌道の観測」は物性を理解する最も直接的な実験手法と言える。我々は電子軌道の観測手法として、内殻電子と価電子のX線散乱能の違いに着目することで、単結晶X線回折データから物性を担う価電子の情報のみを効率的に抽出できるコア差フーリエ合成(core differential Fourier synthesis; CDFS)法による電子密度解析手法を提案した。特に、SPring-8で得られる高強度・高エネルギーX線を用いることで、サブオングストロームの空間分解能で価電子密度分布を可視化することに成功した。本稿ではCDFS解析によって得られた価電子密度観測に関する最近の成果について紹介する。
京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) Institute for Integrated Cell-Material Sciences, Kyoto University
- Abstract
- 活性炭やゼオライト、多孔性配位高分子(PCP)などは、一般に硬く剛直な物質として知られている。しかし、一部のPCPはその格子の可逆的な変形や、構成要素となる有機配位子の振動や回転などを通じて、構造に柔軟性を設計することが可能である。このような構造に柔軟性を持つ“フレキシブルPCP”は、外部環境への応答を示し、様々な動的な現象やプロセスによって多様な機能を発現している。我々は、フレキシブルPCPの応用開拓を目指し、系統的な材料開発及びその機能発現に関する機構解明に従事してきた。フレキシブルPCPの動的なふるまいを視覚化するために、SPring-8の放射光を利用したin situ X線回折測定を用いてゲスト分子の吸着プロセスの観測を行った。本稿では、in situ測定を通じてフレキシブルPCPの動的な挙動の解明に取り組んだ、我々の最近の成果について紹介する。
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 構造生物学推進室 Structural Biology Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 精密分光推進室 Precision Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)行事幹事(秋の学校担当)/(国)日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター Materials Sciences Research Center, Japan Atomic Energy Agency
[1]SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)/近畿大学 理工学部 理学科 化学コース Department of Science, Faculty of Science and Engineering, Kindai University、[2]大阪大学 大学院基礎工学研究科 Graduate School of Engineering Science, Osaka University、[3](公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI、[4](国)物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター Center for Basic Research on Materials, National Institute for Materials Science、[5]東京大学 大学院工学系研究科 Graduate School of Engineering, University of Tokyo、[6](国)理化学研究所 放射光科学研究センター SPring-8 Center, RIKEN
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
[1](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 産業利用・産学連携推進室 Industrial Application and Partnership Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光推進室 Spectroscopy Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/筑波大学 数理物質系物理学域 エネルギー物質科学研究センター Faculty of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba