Volume 28, No.4 Pages 376 - 377
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第9回大型実験施設とスーパーコンピュータとの連携利用シンポジウム報告
Report on the 9th Symposium for Cooperative Use of Quantum Beam Facilities and Super Computer
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
1. はじめに
9月4日に東京・秋葉原のUDXカンファレンスとオンラインのハイブリッドで開催された「大型実験施設とスーパーコンピュータとの連携利用シンポジウム」について報告する。本シンポジウムは、放射光施設であるSPring-8の登録機関であるJASRI、中性子施設であるJ-PARC MLFの登録機関であるCROSSと富岳を始めとする大型計算機に関する登録機関であるRISTが主催者となり、コロナ禍の2020年を除いて毎年開催されてきた。
第9回を迎えた今回のシンポジウムではデータ・サイエンスをテーマに7人の講師の先生方に講演を行っていただいた。当日のプログラムは以下の通りである。
第1セッション:施設と登録機関の現状 | |
座長:野間 敬(CROSS) | |
○開会挨拶 | |
雨宮 慶幸(JASRI) 柴山 充弘(CROSS) 林 周平(文部科学省) |
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○施設と登録機関の紹介 | |
SPring-8 | 木村 滋(JASRI) |
J-PARC | 松浦 直人(CROSS) |
「富岳」、HPCI | 齊藤 哲(RIST) |
第2セッション:データ駆動型研究I | |
座長:吉澤 香奈子(RIST) | |
「大型実験施設を活用したデータ駆動型マテリアルサイエンス」 | 小野 寛太(大阪大学) |
「第一原理計算データを活用したデータ駆動型 物質・材料研究」 | 安藤 康伸(産業技術総合研究所) |
第3セッション:自動測定と自動計算 | |
座長:岡崎 伸生(CROSS) | |
「大型実験施設×スパコン×デジタルが切り拓く新しい研究開発環境」 | 一杉 太郎(東京大学) |
「SPring-8構造生物学ビームライン 自動測定システム(ZOO)の現状」 | 平田 邦生(RIKEN/SPring-8) |
「高分子物性自動計算システムRadonPyの開発と産学連携によるデータプラットフォームの共創」 | 林 慶浩(統計数理研究所) |
第4セッション:データ駆動型研究II | |
座長:筒井 智嗣(JASRI) | |
「富岳におけるベイズ推定を用いた全反射高速陽電子回折(TRHEPD)のデータ解析」 | 星 健夫(核融合科学研究所) |
「大型実験施設とスーパーコンピュータをハブとしたビッグデータ駆動型高分子材料設計」 | 沼田 圭司(京都大学) |
○講演終了時の挨拶 | 田島 保英(RIST) |
(オンライン参加者はここで終了) | |
第5セッション:講演者との意見交換・利用相談・情報交換・ポスター展示 | |
ポスター発表(会場のみ) ・JASRI ・CROSS ・RIST ・DxMT ・NanoTerasu |
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○閉会挨拶 | 社本 真一(CROSS) |
2. 会議報告
本シンポジウムは初めてハイブリッドで開催された。施設及び登録機関の紹介で構成された第1セッションに引き続いて、3つのセッションで構成された学術講演(写真1)、現地会場のみで開催された最後の第5セッションで、ポスター発表や講演者と参加者の意見交換の場(写真2)を設けるという構成で開催した。
写真1 講演会場の様子
写真2 ポスター会場の様子
第2セッションでは、データ駆動型研究Iと題するセッションで、基調講演2件が行われた。まず、大阪大学の小野先生よりデータ科学を積極的に利用した大型実験施設での実験における新たな計測法の提案と実情が紹介され、限られたマシンタイムの中で如何に大事なデータを見落とさずに計測を実施するかについての講演が行われた。次に、産業技術総合研究所の安藤先生から機械学習ポテンシャルを用いた第一原理計算による物性理論研究の現状が紹介され、機械学習が不向きとする従来の結晶構造表記に関する問題克服の現状と精度の良い理論計算に基づく物性値の計算に関する講演が行われた。
第3セッションでは、自動計測と自動計算と題するセッションで、1件の基調講演と2件の招待講演が行われた。東京大学の一杉先生の基調講演では今後の大型共用施設、理論家、研究者に関する提言がなされ、研究室で実施されている試料作成から一連の評価を行うシステムに関する紹介があった。理化学研究所の平田先生からはSPring-8でのタンパク結晶構造解析に実装されているZooシステムの紹介、統計数理研究所の林先生からは高分子物性自動計算システムRandonPyの紹介があった。
第4セッションでは、データ駆動型研究IIと題するセッションで、基調講演及び招待講演が1件ずつ行われた。基調講演の京都大学の沼田先生からはクモの糸の研究を例示し、大型実験施設とスーパーコンピュータを利用した研究の現状と将来展望に関する講演が行われた。招待講演の核融合科学研究所の星先生からは陽電子線回折のデータ解析に関する講演が行われた。
3. おわりに
本シンポジウムは、参加者189名(現地参加:65名、オンライン参加:124名、事務局を除く)であり、完全オンラインで実施した第7回に匹敵する方々に参加していただいた。可能な限り多くの方に現地参加していただくことに加えて、講演者との活発な質疑応答を期待して、質問は現地参加者に限って実施した。期待通りの講演者の先生方と現地参加者の間での活発な質疑応答、その後の講演者同士や現地参加者との情報交換が行われた。開催日1日を通して、データ駆動型研究に関する関心の高さを示すシンポジウムとなった。また、本シンポジウムを開催するにあたって、実行委員の下に設けた各登録機関の研究者で構成されるプログラム委員メンバーに対して本紙面を通じて感謝を申し上げたい。特に、専任のプログラム委員メンバーは、講演者の選定に加えて、当日の講演に向けて講演者との粘り強い交渉をしていただいた。このことが、今回のシンポジウムの盛会に結び付いていると思う。最後に、プログラム委員のメンバーを記して本報告を結びたいと思う。
(プログラム委員)
漆原 良昌(JASRI)、岡崎 伸生(CROSS)、桑本 滋生(JASRI)、社本 真一(CROSS)、杉山 純(CROSS)、筒井 智嗣(JASRI)、吉澤 加奈子(RIST)
(社本氏、吉澤氏、筒井は実行委員を兼ねる)
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター
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