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Volume 29, No.3 Pages 190 - 194

1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH

放射光X線微小血管イメージング法でマウス冠動脈機能を視る
Synchrotron X-ray microvascular imaging to visualize microcoronary artery function in mice

土持 裕胤 TSUCHIMOCHI Hirotsugu[1]、WADDINGHAM Mark[1]、PEARSON James[1]、曽野部 崇 SONOBE Takashi[2]、星野 真人 HOSHINO Masato[3]、上杉 健太朗 UESUGI Kentaro[3]

[1]国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓生理機能部 Department of Cardiac Physiology, National Cerebral and Cardiovascular Center、[2]日本医科大学 医学部 生理学 Department of Bioregulatory Science, Nippon Medical School、[3](公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Research and Utilization Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI

Abstract
 近年、冠動脈循環の大半を占める微小冠循環障害が注目されている。高齢化に伴う心不全患者の増加の裏には微小冠循環障害が潜んでおり、その対策は急務である。微小冠動脈は単離や顕微鏡下でのin vivo観察も困難であり、微小冠循環障害の病態解明は進んでいない。我々は微小冠動脈機能解析を目指し、in vivo放射光X線微小血管イメージング法を開発した。放射光X線を利用することで非常に高い時間・空間分解能、エネルギー分解能が得られ、ラットやマウスの高速に拍動する心臓においても、心臓表面の太い冠動脈から内径20-30 µmの微小冠動脈までを同一視野で観察することが可能となった。現在、様々な生活習慣病モデル動物における冠動脈拡張機能を解析し、微小冠動脈障害の病態解明、心不全との因果関係の解明、そして微小血管機能解析法の更なる発展を目指している。
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SPring-8

 

1. はじめに
 超高齢社会の現在、高齢心不全患者の大幅な増加が医療を逼迫する「心不全パンデミック」が目前に迫っていると言われており、その対策は急務である。現代社会においては過度のストレスや運動不足といった不適切な生活環境および生活習慣、さらに加齢や個々の遺伝的素因が相互作用した結果、生活習慣病を発症し、生命を脅かす疾病へと繋がっていく。高血圧や糖尿病などの生活習慣病の多くは血管障害を引き起こすことで動脈硬化に伴う心筋梗塞や脳梗塞をもたらし、我が国における死亡原因の半分以上を占める。
 近年、循環器疾患領域において微小冠動脈障害に伴う心不全が注目されている[1][1] WJ Paulus and C Tschöpe: J Am Coll Cardiol. 62 (2013) 263-271.。ヒトの場合一般に約500 µm以下の冠動脈で生じる障害を微小冠動脈障害と称している(動物種によって異なる)。臨床で行う冠動脈造影によって可視化される太い冠動脈は全体の10%未満と言われており、冠動脈の大半が可視化されない微小冠動脈となる。動脈疾患の主な原因となる動脈硬化とは、太い血管において内膜へのコレステロール沈着や中膜へのカルシウム沈着などが生じ、血管が硬くなって弾力性を失った状態であり、最終的には動脈が閉塞して狭心症や心筋梗塞、脳梗塞をもたらす。これに対し臓器深部の細い動脈に生じたものを特に細動脈硬化と呼び、前述した微小冠動脈障害の原因である。
 この微小冠動脈の機能を調べる手法はPETやMRI、心筋コントラストエコー法などの間接的手法に限られ、これが微小冠循環障害の病態解明が進まない原因である。動物実験においては蛍光実体顕微鏡を用いることで血管径が約10 µm程度の毛細血管レベルまで可視化できるようになったものの[2][2] AR Pries and B Reglin: Eur Heart J. 38 (2017) 478-488.、心臓表面のごくわずかな領域しか観察できないという問題点がある。そこで我々は微小冠動脈を広範囲に解析するため、SPring-8のBL28B2においてラット冠動脈を対象とした高輝度放射光X線微小血管イメージング法の開発を開始した。その後更なる高精細化を目指し、BL20B2においてカスタムメイドの可視光変換型X線画像検出器にsCMOSカメラを組み合わせたシステムを採用し、大視野での高速かつ高精細な微小冠動脈機能イメージング法開発を行っている。

 

 

2. 微小冠動脈機能イメージングの実際
 冠動脈機能は大きく収縮機能と拡張機能に分けられる。冠動脈機能障害においては主に過剰収縮や拡張障害によって心筋の灌流障害が生じるが、局所的に一過性の冠攣縮(異常収縮)が生じることもある。血管拡張には様々なメカニズムが知られているが、先行研究において比較的太い動脈では一酸化窒素(nitric oxide; NO)が、φ 100 µm辺りの血管径を境により細い動脈では血管内皮依存性過分極(endothelium-dependent hyperpolarization: EDH)と呼ばれる機構が血管内皮細胞依存性血管平滑筋弛緩の主体であると言われている。そこで我々は特にNO依存性およびEDH依存性血管拡張機能に着目して研究を行っている。
 微小冠動脈を可視化するためには、冠動脈へX線吸収作用を持つ血管造影剤を注入し、そこへX線を照射し、X線が吸収された部位(血管内)とされていない部位(血管外)のX線強度の差を画像化する必要がある。臨床においてはX線による透視下でカテーテルの先端を冠動脈内まで進め、そこで造影剤を注入することで冠動脈内に高濃度の造影剤を流すことができる。しかしながらラットやマウスのような小動物の心臓はとても小さく、カテーテル先端を冠動脈内へ入れることができない。小動物であっても冠動脈の起始部は大動脈基部のバルサルバ洞に開口していることから、麻酔・人工呼吸下の動物(ラット、マウス)の右総頸動脈からカテーテルを挿入し、その先端をバルサルバ洞へ留置する。バルサルバ洞へ血管造影剤を注入することで血液とともに造影剤を冠動脈へ流入させることができるが、カテーテル先端と冠動脈起始部の位置関係により描出される血管のコントラスが大きく影響を受けるため、1 mm以下の精度でカテーテル先端の位置決めを行っている。ちなみに習熟度が上がると、挿入した距離や抵抗、そしてカテーテル内の血液の動きなどからカテーテル先端がバルサルバ洞のどのあたりにあるのかがわかるようになってくる。その他、輸液・薬物投与用に頸静脈へもカテーテルを挿入する。
 計測は主に中尺ビームライン実験施設にあるBL20B2で行っている。BL20B2は2021年より40 keV用の多層膜分光器が導入され、光束密度が数百倍以上に飛躍的に向上したため、より高速度撮影が可能となった[3][3] 上杉健太朗、星野真人: SPring-8/SACLA Information 26 (2021) 448-449.。これにより心臓の拍動に伴う画像のブレを最小限に抑えるとともに、より細い血管までコントラスト良く観察できるようになった。また、偏向電磁石光源のX線はある程度の広がりを持っているため、光源から200 m以上離れた実験ハッチ3では、ラットの心臓全体を描出するのに適した安定した大面積ビームが利用できる。より細い微小冠動脈を見たい場合には、視野は狭くなるが上流の実験ハッチ1を用いることも可能である。また、蓄積リング棟内の実験ハッチ1(光源から約43 m地点)にビームディフューザー(材質:木材)を設置することで、多層膜分光器由来のビームの強度ムラ(縞模様)を低減させ、可能な限り強度プロファイルがフラットなX線を作っている。さらに画像検出器としてシンチレータに高感度で残光時間が短いLuAG単結晶蛍光面を用いた可視光変換型X線画像検出器とsCMOSカメラORCA Flash4.0(浜松ホトニクス製)を組み合わせている。これらにより、視野サイズ9.3 mm(H) × 9.3 mm(V)、露光時間1 ms、撮影速度100 Hz、実効画素サイズ4.53 µm/pixelの撮影条件を達成している。なお、動物への過度のX線照射を防ぐために、画像取得時以外はシャッターを閉じている。その他、気道内圧を制御できる人工呼吸器を用いてX線照射直前に吸気位で数秒間呼吸停止させることにより、呼吸運動に伴う心臓の上下動を抑制している。冠動脈イメージングの際、血液による造影剤の希釈をできる限り抑えるために、必要量の造影剤を短時間に注入する必要がある。造影剤は粘性が高いため、極力太いカテーテルを留置し、さらに高圧対応のシリンジポンプを用いることで十分な吐出量を確保している。これらの小さな工夫を重ねることで、生理的条件下で再現性良くデータを取得できるようになった。
 麻酔下・人工呼吸下でのベースラインの血管造影データ取得後、インドメタシン投与によりシクロオキシゲナーゼ代謝産物による血管収縮・弛緩反応を抑制したうえで、EDHの候補とされるカリウムイオンチャネル阻害剤であるアパミンおよびカリブドトキシンを投与後、血管造影を行う。これら一連の実験により、血管拡張反応がNO依存性かEDH依存性かを調べ、どのレベル(太さ)の血管でどのような血管拡張障害が生じているのかのデータを得る。
 冠動脈はバルサルバ洞に始まり分枝を繰り返して細くなりながら心臓全体を栄養する。そこで、取得した画像に対して必要に応じて画像処理を行い、血管が分岐する毎に1st、2nd、3rdと分類し、分枝ごとの血管内径を求めるとともに、視野内の解析可能な血管数を計測し、血管内径50または100 µm毎の度数分布を求めている。血管内皮細胞依存性血管拡張反応を惹起するアセチルコリン(Ach)や、NO放出作用を有し血管内皮非依存性に血管平滑筋を直接弛緩させるニトロプルシドなどの血管作動薬を静注した際の血管径や血管数の変化を解析することで、どのサイズの血管機能が影響を受けているのかを調べる。

 

 

3. 放射光X線微小血管イメージングの進歩
 臨床において太い冠動脈に生じるような狭窄や閉塞の有無を調べるような場合には、比較的太い冠動脈が見えればよいことになる。それに対して我々は冠動脈血管床の大半を占める深部の微小冠動脈の収縮および拡張機能の可視化に焦点を当てている。詳細な血管機能解析を行うには摘出血管を用いてin vitroで血管作動薬に対する血管応答を調べる方法が用いられるが、冠動脈のように心筋組織内に網目状に張り巡らされている場合は摘出自体が難しい。実体顕微鏡による直接観察は可能だが心臓表面の局所に限られる。それに対し本法は麻酔下の動物を用い、心臓が拍動している状態で、太い血管から微小血管までを同一視野で機能解析を行うことで、摘出血管ではわからない、生理的条件下での血管機能解析を行えることが強みである。
 我々は以前より、独自開発した実験室設置型のマイクロフォーカスX線血管造影装置(MFX-80HK、HITEX社製)を用いてネコやウサギ等の中動物の肺や骨格筋の血管造影を行い、臨床での血管造影の検出限界を超える精度での血管機能解析を行ってきた。しかしながら基礎研究で多用されるマウスやラットといった小動物の血管、特に絶えず高速に拍動している小動物の冠動脈造影では、モーションブラー(画像のボケ)が生じ、実験室においては血管径を計測できるほどの鮮明な描出が困難であった。そこで我々はより強力なX線を求め、2001年よりSPring-8のBL28B2においてラット冠動脈を対象とした高輝度放射光X線微小血管イメージング法の開発を開始した。当時はまだCMOSイメージセンサーが発展途上であり、我々は1インチX線直接変換型撮像管サチコンを用い、画素サイズ10 µm/pixel、撮影速度30 frames/sでの冠動脈イメージングを行った。ここで大きな問題となるのが先に述べた、心臓の拍動に伴うモーションブラーであった。ブレの無い画像を取得するには露光時間を極力短くする必要があるが、このサチコンカメラ自体は露光時間が固定(33.3 ms)であり、この露光時間では心臓の拍動によるモーションブラーは避けられない。しかしながらSPring-8放射光の高輝度性を生かし回転円盤型X線シャッターを用いてX線を約1 msにパルス化することで、画像のブレを抑えることに成功した[4, 5][4] 白井 幹康、八木 直人、梅谷 啓二: 日本薬理学雑誌 148 (2016) 92-99.
[5] JT Pearson, MJ Jenkins, AJ Edgley, T Sonobe, M Joshi et al: Cardiovasc Diabetol. 12 (2013) 111.
。その他、放射光の高指向性による半影の低減や、X線エネルギーをヨード造影剤に最適化(33.2 keV)することによる高コントラスト化も相まって、ラットにおいて内径100 µmを下回る微小冠動脈機能を心臓の広範囲に渡って同一視野内で解析可能になったことは画期的であった[4-6][4] 白井 幹康、八木 直人、梅谷 啓二: 日本薬理学雑誌 148 (2016) 92-99.
[5] JT Pearson, MJ Jenkins, AJ Edgley, T Sonobe, M Joshi et al: Cardiovasc Diabetol. 12 (2013) 111.
[6] M Shirai, DO Schwenke, H Tsuchimochi, K Umetani, N Yagi et al.: Circ Res. 112 (2013) 209-221.

 図1(左)はBL28B2で行っていた際のラット冠微小動脈イメージングである。解析できた1st、2nd、3rd分枝、内径約80-220 µmの冠動脈において、糖尿病モデルラットではBaselineで描出される血管自体が少ないこと、AChによる血管内皮依存性血管拡張応答が減弱していることが確かめられた。当時、血管内径が精度よく測定できたのは3rd分枝までであり、血管拡張反応が起こることによってようやく血管内径が50-80 µm程度の4th分枝がかろうじて見える状況であり、血管径の定量評価を行うには空間分解能が足りていなかった。ちなみに、このことは4th分枝の血管が普段閉じていることを表しているのではなく、造影剤は流れているものの血管の細さのために血流量が少ないため、十分なX線の吸収が起こらず、血管として描出されなかったことが原因である。

 

図1 開発初期のラット微小冠動脈造影と最近のマウス微小冠動脈造影
BL28B2における技術開発初期、ブレの無い画像が取得でき、病態モデルラットにおいてACh等血管作動薬に対する応答を解析可能となった(左上)。しかしながら視野はラットの心臓全体をカバーできず、ラット冠動脈の3rd分枝の血管径測定が限界であった(左下)。その後BL20B2での改良の積み重ねにより、マウス冠動脈においても4th分枝まで血管径を解析可能となり(右)、視野はラットの心臓全体をカバーできるようになった。
*はAChによる血管拡張応答

 

 

 基礎医学研究においては遺伝子操作を含めマウスを対象とする研究が多く、必然的にマウスの冠動脈機能解析の必要に迫られた。ヒトの毛細血管の太さは5-20 µmとされており、赤血球がぎりぎり通過できる太さである。したがってヒトの心臓ほどの大きな心臓であれば50 µm前後の細動脈が可視化できれば微小冠動脈の研究としては十分であるのかもしれない。しかしながらラットやマウスの赤血球はヒトのものよりも小さく、それに伴い毛細血管もヒトのそれよりもさらに細い(φ 5 µm前後)と言われている。したがってこれまでの計測限界である50 µm程度の空間分解能ではマウスやラットの冠微小動脈全体を見渡すには不十分であり、毛細血管に至る手前の細動脈(φ 20-30 µm程度)までの微小冠動脈イメージングが必要であると考えた。
 先ほど述べたようにX線による血管造影画像は血管における造影剤によるX線吸収量と血管外組織でのX線吸収量の差で構築されるため、細い血管ほどX線の吸収が弱くなり、コントラストが付きにくい。BL20B2において分光器がシリコン二結晶分光器から40 keV出力の多層膜分光器へ変わったことにより、エネルギーがヨウ素のK吸収端(33.2 keV)から外れたことは画像コントラストの面ではデメリットかもしれない。しかしながら多層膜分光器の使用による光束密度増加の恩恵の方が大きく、現在はマウスの冠動脈を対象として、BL20B2上流の実験ハッチ1を用いることでベースラインにおいても4th分枝以上(φ 20-30 µm)まで可視化されるようになった(図1右)。また、大視野であるBL20B2実験ハッチ3を使うことで、これまで不可能であった、心臓全体に渡るラット冠動脈の可視化が可能となった。

 

 

4. 微小冠動脈障害の病態解明を目指して
 微小冠動脈障害を含む微小循環障害の原因として生活習慣病、特に糖尿病による高血糖状態がもたらす血管へのダメージが指摘されている。糖尿病罹患率の増加とともに、腎臓における糖尿病性糸球体硬化症、網膜に生じる糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害などの罹患率上昇は避けられない。一刻も早い病態解明および予防策の開発が必要である。我々は遺伝的に糖尿病を発症するdb/dbマウスや、生活習慣によってインスリン抵抗性および糖尿病予備軍状態を呈する高脂肪・高糖負荷モデルマウスを用い、糖尿病性微小冠動脈障害の成因や運動等による発症予防効果の検証をおこなっている。図2はマウスに長期間高脂肪餌(HFD32、日本クレア製)とブドウ糖果糖液糖を与えてインスリン抵抗性を惹起させた糖尿病予備軍モデルの冠動脈機能を調べた例である。

 

図2 長期の高脂肪+高糖餌による血管内皮機能障害に対する食餌と運動の併用介入による内皮機能改善効果
32週間の高脂肪餌+高糖水負荷群はEDH阻害により微小冠動脈が収縮(減少)したが、17週目から標準餌+水への切り替えと週5回の有酸素運動を行わせた群はEDH阻害後も微小冠動脈循環が保たれていた。
*:収縮応答 矢印:拡張応答

 

 

 32週間の高脂肪+高糖水負荷群は、EDH阻害により微小冠循環の低下(検出可能な微小冠動脈数の減少)が認められた(図2左)。正常な冠動脈においてはEDH阻害後もNO系等による血管拡張応答が冠循環を維持しているが、このモデルにおいてはEDH阻害時にNO系等による補完が不十分である、つまり血管内皮機能障害が生じていることを示唆する。これに対し、17週目から標準餌・水へと戻し、さらに週5日の有酸素運動を16週間行わせた食習慣改善+運動介入群は、EDH阻害後も微小冠循環が保たれていた(図2右)。食習慣改善のみまたは有酸素運動のみの介入ではそのような改善は認められなかったことから、食習慣改善と有酸素運動の併用介入は糖尿病性微小冠動脈障害、および他の臓器・組織内の微小動脈障害においても機能改善効果が期待される。今後、これら併用介入による微小循環障害予防効果についても検証を行う計画である。

 

 

5. 放射光X線微小血管イメージングの課題と今後
 本法の最大の問題点は、放射光施設を用いる点であり、実験の頻度が限られてしまうことである。今後、他のモダリティによる微小冠動脈機能解析法を開発し、本法はその結果の妥当性を担保する手段として用いることができれば、研究の効率を上げる事が可能である。その他、放射光X線微小血管機能イメージング技術が進歩するにつれ、データ解析に関する問題点が生じている。すなわち、より細い血管が描出されるほど、解析対象が指数関数的に増えることである。近年の人工知能(AI)技術の目覚ましい進歩により、AIによる画像処理や画像解析技術も飛躍的に向上している。我々も実際にAIによる画像処理を試み画像の鮮鋭化、低ノイズ化については手ごたえを感じてはいるものの、定量解析については未だ手つかずの状態である。血管とそれ以外を区別するためにコントラストを調整しても、細い血管については血管の認識が上手く行かないことが多く、人の眼に頼っているのが現状である。今後は深層学習による微小血管検出技術の開発も進める必要がある。

 

 

 

参考文献
[1] WJ Paulus and C Tschöpe: J Am Coll Cardiol. 62 (2013) 263-271.
[2] AR Pries and B Reglin: Eur Heart J. 38 (2017) 478-488.
[3] 上杉健太朗、星野真人: SPring-8/SACLA Information 26 (2021) 448-449.
[4] 白井 幹康、八木 直人、梅谷 啓二: 日本薬理学雑誌 148 (2016) 92-99.
[5] JT Pearson, MJ Jenkins, AJ Edgley, T Sonobe, M Joshi et al: Cardiovasc Diabetol. 12 (2013) 111.
[6] M Shirai, DO Schwenke, H Tsuchimochi, K Umetani, N Yagi et al.: Circ Res. 112 (2013) 209-221.

 

 

 

土持 裕胤 TSUCHIMOCHI Hirotsugu
(国研)国立循環器病研究センター
心臓生理機能部
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6-1
TEL : 06-6170-1069(内線40365)
e-mail : tsuchimo@ncvc.go.jp

 

曽野部 崇 SONOBE Takashi
日本医科大学 医学部 生理学
〒113-8602東京都文京区千駄木1-1-5
TEL : 03-3822-2131
e-mail : t-sonobe@nms.ac.jp

 

WADDINGHAM Mark
(国研)国立循環器病研究センター
心臓生理機能部
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6-1
TEL : 06-6170-1069(内線40365)
e-mail : mtwaddingham@ncvc.go.jp

 

PEARSON James
(国研)国立循環器病研究センター
心臓生理機能部
〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6-1
TEL : 06-6170-1069(内線40365)
e-mail : jpearson@ncvc.go.jp

 

星野 真人 HOSHINO Masato
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0833
e-mail : hoshino@spring8.or.jp

 

上杉 健太朗 UESUGI Kentaro
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0833
e-mail : ueken@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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