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Volume 29, No.3 Pages 218 - 219

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2022A期 採択大学院生提案型課題(長期型)の事後評価について
Post-Project Review of Long-Term Graduate Student Proposal Starting in 2022A

登録施設利用促進機関 (公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 Registered Institution for Facilities Use Promotion, User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 2022A期に採択された大学院生提案型課題(長期型)のうち、1課題が2023B期に2年間の実施期間を終了したことを受け、第9回大学院生利用審査委員会(2024年3月12日開催)による事後評価が行われました。
 事後評価は、大学院生利用審査委員会において実験責任者が発表を行い、質疑応答を行った後、評価を行うという形式で実施しました。以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
 なお、事後評価において、「独創的、挑戦的、意欲的な研究成果であること」「実験責任者として、研究立案、遂行を主体的に行ったこと」「優れた成果/取り組みと認められること」と評価され、実験責任者の中谷勇希 氏には、公益財団法人高輝度光科学研究センターよりSPring-8大学院生課題優秀研究賞が授与されました。

 

課題名 In-situ XAFS測定を用いた高性能アルカン脱水素合金触媒の局所構造解析
実験責任者(所属) 中谷 勇希(北海道大学)
採択時課題番号 2022A0302
ビームライン BL01B1
利用期間/配分総シフト 2022A~2023B/48シフト

 

[評価結果]
 アルカン脱水素反応用の高性能合金触媒開発における問題を、独創的な触媒合成技術によって解決することを目的として設定した4つのテーマについて、XAFSによる局所構造解析から開発した触媒の有効性、材料設計の方向性に関する知見を得る成果を達成されました。XAFS測定技術としては一般的な使い方をしている研究ですが、材料(触媒)合成の技術開発を軸に、物性評価、数値計算技術による理論的検証とXAFSによる構造検証を有効に組み合わせて取り組み、本材料開発の進歩に資する有益かつ新規の成果を上げていると評価します。
 申請時の審査において審査員から示された、4つのテーマの量的な多さから消化不良になるのではないかという懸念も、その精力的な研究への取り組みの姿勢で克服されました。一部、当初期待された成果を上げられなかったテーマもありますが、その結果を踏まえて研究の方向を変更して当初予定していなかった新たなテーマを設定し、研究成果をあげる臨機応変さも示されています。
 以上の点から本課題の実験責任者である中谷氏には研究者としての資質が感じられ、今後のさらなる活躍が期待されます。長期課題の定期的にSPring-8利用機会を確実に確保できる利点を有効に活用した成果と言えるかと思います。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1] SPring-8 publication ID = 47263
中谷 勇希: “アルカン脱水素に有効な多元素合金触媒の開発” 北海道大学大学院博士論文

[2] SPring-8 publication ID = 44907
Y. Nakaya et al.: "Interstitial Carbon Dopant in Palladium‒Gold Alloy Boosting the Catalytic Performance in Vinyl Acetate Monomer Synthesis" J. Am. Chem. Soc. 145 (2023) 2985-2998.

[3] SPring-8 publication ID = 44156
Y. Nakaya et al.: "High-Entropy Intermetallics Serve Ultrastable Single-Atom Pt for Propane Dehydrogenation" J. Am. Chem. Soc. 144 (2022) 15944-15953.

[4] SPring-8 publication ID = 47264
Y. Nakaya, and S. Furukawa: "Subnanometric Platinum‒Germanium Clusters Break the Activity‒Stability Tradeoff in Propane Dehydrogenation" ChemRxiv (2023).

 


写真1 左から、JASRI 山口章 常務理事、中谷勇希 氏、JASRI 木村滋 利用推進部長、JASRI 加藤和男 主幹研究員(BL01B1担当)

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794