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Volume 24, No.1 Pages 41 - 42

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2015A期 採択長期利用課題の事後評価について – 3 –
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2015A -3-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 2015A期に採択された長期利用課題について、2017B期に3年間の実施期間が終了したことを受け、SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会による事後評価が行われました。
 事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめますが、同一研究テーマの課題が2018A期からの長期利用課題として新たに申請されたため、その面接審査と同時に最終期(2017B期)終了前に当該課題のヒアリングを第62回長期利用分科会(2017年12月12日および15日開催)において行いました。その後、当該課題の最終期(2017B期)が終了し、実験責任者より改めて提出された、全期間の研究成果をまとめた最終版の「長期利用課題終了報告書」およびヒアリングの結果を踏まえ、長期利用分科会による最終的な評価結果がとりまとめられました。
 以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
 なお、2015A期に採択された長期利用課題7課題のうち3課題の評価結果は、「SPring-8/SACLA利用者情報」Vol.23 No.3(2018年8月号)に、もう1課題の評価結果は、Vol.23 No.4(2018年11月号)に掲載済です。また、残りの2課題の評価結果については次号以降に掲載する予定です。

 

課題名 革新的機能性ゼオライトの設計を目的とした生成メカニズムの時分割原子・ナノスケール解析
実験責任者(所属) 脇原 徹(東京大学)
採択時課題番号 2015A0115
ビームライン BL04B2
利用期間/配分総シフト 2015A~2017B/231シフト

 

[評価結果]
 本長期利用課題は、石油化学触媒、吸着剤、自動車用排ガス処理、抗菌剤などに用いられるゼオライトの革新的機能創成を目指して、高エネルギーX線全散乱法によりゼオライトの生成メカニズムを原子・ナノスケールで解明するものである。具体的には、ゼオライト合成原料の結晶化過程の理解、新規反応を実現するゼオライトや高触媒活性・高耐熱水蒸気性を併せ持つゼオライトの自在設計を可能にする基盤技術の確立を研究目的としている。ゼオライトが結晶化する前の前駆体はネットワーク構造を持つ非晶質であり、新規ゼオライトの合成を可能にするにはこの構造を明らかにする必要がある。本課題では、60 keV以上の高エネルギーX線を用いた二体分布関数(PDF)解析により、従来の手法(NMR、EXAFSなど)では3 Å程度までの構造情報しか得ることができないという欠点を克服し、長年の未解明部分であるナノスケールの非晶質前駆体ネットワーク構造の変化過程を明らかにするものである。
 本課題の研究において、PDF解析を多種類のゼオライトに適用し、合成上重要な知見を得ている。例えば、ゼオライト中のAlを酸やスチーミングで除去する過程をPDF解析することにより、ゼオライト構造を壊すことなく、Si/Al比を向上させる合成条件を決定している。また、d-PDF(differential PDF)法を用いることで、シリカ構造中へのHf導入を確認しながら、原料の状態からヘテロ金属の導入量を増加させることに成功している。そのほか、複数のヘテロ金属の同時導入、炭化モリブデンやZnPt合金クラスターのゼオライト細孔中での調整などに、効果的にPDF解析を応用してきた。さらに、ゼオライトの超高速合成法を開発している。これらの研究をとおして10報以上の論文が発表されており、ゼオライトの製造技術の向上に貢献している。
 以上のように、本長期利用課題は多くの成果を創出しており、所期の目標を達成しているものと判断できる。今後は、これらの多くの研究成果からゼオライト合成の学理が構築されることを期待する。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1] SPring-8 publication ID = 29615
Z. Liu et al.: "A Top-Down Methodology for Ultrafast Tuning of Nanosized Zeolites" Chemical Communications 51 (2015) 12567-12570.

[2] SPring-8 publication ID = 32342
M. Kanezashi et al.: "Tailoring the Subnano Silica Structure via Fluorine Doping for Development of Highly Permeable CO2 Separation Membranes" ChemNanoMat 2 (2016) 264-267.

[3] SPring-8 publication ID = 32343
H. Yamada et al.: "Downsizing AFX Zeolite Crystals to Nanoscale by a Postmilling Recrystallization Method" Crystal Growth & Design 16 (2016) 3389-3394.

[4] SPring-8 publication ID = 32344
T. Ikuno et al.: "Structure-Directing Behaviors of Tetraethylammonium Cations toward Zeolite Beta Revealed by the Evolution of Aluminosilicate Species Formed during the Crystallization Process" Journal of the American Chemical Society 137 (2015) 14533-14544.

[5] SPring-8 publication ID = 34781
Z. Liu et al.: "Continuous Flow Synthesis of ZSM-5 Zeolite on the Order of Seconds" Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 113 (2016) 14267-14271.

[6] SPring-8 publication ID = 34782
J. Zhu et al.: "Ultrafast Synthesis of High-Silica Erionite Zeolites with Improved Hydrothermal Stability" Chemical Communications 53 (2017) 6796-6799.

[7] SPring-8 publication ID = 34783
C. Peng et al.: "Preparation of Nanosized SSZ-13 Zeolite with Enhanced Hydrothermal Stability by a Two-Stage Synthetic Method" Microporous and Mesoporous Materials 255 (2018) 192-199.

[8] SPring-8 publication ID = 34784
M. Kanezashi et al.: "Preparation and Gas Permeation Properties of Fluorine-Silica Membranes with Controlled Amorphous Silica Structures: Effect of Fluorine Source and Calcination Temperature on Network Size" ACS Applied Materials & Interfaces 9 (2017) 24625-24633.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794