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Volume 24, No.1 Pages 82 - 87

4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS

ESRFでの実験を通して見えたもの
The Training Abroad Report

河口 沙織 KAWAGUCHI Saori

(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI

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SPring-8

 

1. はじめに
 若手研究員を対象とした海外研究機関への研修制度を利用し、2018年9月20日~10月3日の間、European Synchrotron Radiation Facility(ESRF)に滞在した。研修に赴いたきっかけは、2017年8月に参加した高圧科学に関する国際会議、26th The International Association for the Advancement of High Pressure Science and Technology(AIRAPT)での口頭発表後、ESRFの高圧グループのグループリーダーであるDr. Sakura Pascarelliにお声掛けいただき、エネルギー分散XAFSビームラインであるID24へのビームタイム申請を勧められたことにある。新たなユーザー獲得に向け、世界における高圧科学業界からのSPring-8に対するニーズに関し情報収集を目指して意気込んで参加したAIRAPTであるが、見事、ユーザーとして獲得されてしまったのであった。申請書が受理された後、改めてDr. Pascarelliにビームタイムを超えた長期滞在について申し出たところ、快く承諾してくださり、研修実施に至った。
 ESRFはフランス南部グルノーブル市に位置する大型放射光施設であり、蓄積リングの電子加速電圧は6 GeVである。加盟国はヨーロッパ13ヵ国、出資国は合わせて21ヵ国であり…といった、ESRFの概要については、ESRFのホームページなどを参照されたい[1][1] https://www.esrf.eu/。本稿を執筆している2018年12月、ESRFはアップグレード、ESRF-EBS(Extremely Brilliant Source)計画に向け、20ヵ月のシャットダウン期に突入している。
 本稿では、ビームライン担当者として勤務4年目の(比較的)若手研究員である筆者が、1ユーザーとしてESRFで実験を行い、実際に見聞し、触り、感じたことを述べる。勉強不足・稚拙に思われる点もあるとは思うがご容赦いただきたい。

 

 

2. ビームタイム申請、受理から出張まで
 本項では、ビームタイム申請から出張までの流れを紹介する。筆者周囲にも、ESRFに出張したことがある先輩は多かったが、ビームタイム申請を、特に近年行ったことがあるという方は少なかったため、一項としてまとめることとした。
 ビームタイム申請時に提出する書類は2種類である。最大A4 2枚のWord形式の申請フォームに、実験の要旨、科学的背景、実験について(手法、必要とするセットアップ、手順、試料の詳細)、何故指定ビームラインを必要とするのか、ビームタイムシフト算出の内訳、期待される成果をまとめる。もう一方は、ユーザーポータルサイトから作成する事務的な書類であり、実験タイトルや要求するビームタイムシフト数、ビームラインの指定、実験・試料条件、共同実験者を入力する。SPring-8と大きくは変わらない。実験・試料条件の項には高圧実験の圧力範囲を記載する欄があり、単位が、“GPa(万気圧)”で、高圧実験に携わる人間としては、高圧実験が特別のものではなく、一般的なものとして受け入れられているようで大変嬉しく感じた。
 このようにして、2018年3月1日の締切(通常、申請書締切は3月1日と9月10日である)に合わせ提出した申請書であるが、無事7月26日に受理通知をメールで受け取ることが出来た。決定されたビームタイムは9月26日8:00~10月2日8:00までの6日間である。受理通知メールを読んでいて、“Local contact”なる人物の存在が目を引いた。ESRFでは各課題に対し1名以上、Local contactが付く。ESRF所属のPD以上の研究員はLocal contactになることが可能であり、責任を持ってユーザー対応を行う。本課題のLocal contactはDr. Silvia Bocatto、2017年末にPh. D.を取得した若手研究者である。その後、彼女にはESRF訪問前のメールでの打ち合わせから、実際の滞在まで、本当にお世話になった。
 ビームタイム決定後、Web上で安全講習とテストを受け、ユーザーポータルサイトより“A form”という、ゲストハウスの予約、Labの使用、試料の安全性再確認のための書類を作成する。ESRFでは、放射線量・放射性物質に対しALARA(合理的に達成可能な限り低く)の原則に則り、ESRFで実験している人皆をnon-exposed workerとすることを保障している。放射線従事者登録や線量計の配布はない。以上で出張準備は完了である。

 

 

3. 高圧XRDビームラインID27
 滞在初日、主担当のDr. Mohamed Mezouarの案内で、ID27を見学させていただいた。ID27は高圧in-situ XRD計測のためのビームラインである。挿入光源から出た光を液体窒素冷却の二結晶分光器(Si 111、Si 311)により20−90 keVのエネルギー範囲で単色化している。実験ハッチ(EH)は2つあり、EH1ではParis-Edinburgh大容量プレスを用いた15 GPa、2,200 K程度まで、もしくはヒーターを用いた抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルによる1,800 K程度までの高温高圧実験、またクライオスタットとダイヤモンドアンビルセルを組み合わせた低温高圧実験を対象としている。EH2にはレーザー加熱システムが整備されており、ダイヤモンドアンビルセルと合わせることで6,000 Kまでの高温発生条件における高圧実験が行われている。どちらのハッチにもKBミラーが設置されており、HxV:~3 × 2 µmまで集光したX線を利用することが可能である。
 ESRFでは一般に、二結晶分光器からエンドステーションまでビームライン担当者が管理することになっている。SPring-8のBL10XUでは、エネルギーを変更するとどうしても二結晶分光器が熱平衡に達していないことに起因するビーム強度の減衰やゆれが生じてしまい、落ち着くのに数時間以上(出来れば一晩置きたい)要する。しかし、ID27ではそのようなことはないらしく、帰国後JASRIの先輩に教えていただいたところによると、ESRFの加速電圧が6 GeVであり、二結晶分光器への熱負荷が小さいためであるらしい。
 その他、振動が1 µmより小さいクライオスタット、ポータブルラマン分光システム、マルチチャンネルコリメータ、レーザー加熱光学系・測定系を見学させていただいた。
 Dectris社ホームページの2018年7月のニューストピックとして、EIGER2X CdTeの試験機をID27に設置し、測定を行ったとの記事があった[2][2] https://www.dectris.com/company/news/newsroom/news-details/first-results-with-eiger2-x-cdte。実際の検出器を見られるのではと期待していたのだが、試験機は既にDectris社に返却されており、見ることが出来ず残念であった。Dr. Mezouarによると、ESRF-EBSに向け全ビームラインで計4台のEIGER2 X CdTe 9Mを購入、ID27に1台導入予定であるらしい。
 ESRF-EBSでは、ID27の実験ハッチは約50 m遠くに設置され、最小5 nmまで集光された微小径X線の提供を目指す。また、挿入光源から出射されたままのピンクビーム利用により、low Z結晶やアモルファスの測定を精力的に実施するべく計画が進められている。

 

 

4. エネルギー分散XAFSビームラインID24
 ビームタイム申請を行ったID24は2本のBranch L・Sを持つ、エネルギー分散XAFS計測のためのビームラインである。光源としてテーパードアンジュレータを用い、ポリクロメータをラウエ配置しているBranch Lでは10−28 keV、ブラッグ配置にしているBranch Sでは5−13 keVのX線を用いたXAFS測定が可能である。1組のKBミラー、ポリクロメータ、縦集光ミラーを組み合わせることで、Branch Lでは30−200 µm、Branch Sでは~3 µmまで集光されたX線を用いることが出来る。そのため、Branch Lでは比較的広い分野において利用がなされ、高出力レーザーによる衝撃圧縮実験や、XMCD、XMLD、DRIFTSとXAFSの同時測定が行われており、Branch Sではダイヤモンドアンビルセルに封入された試料のような微小試料を測定対象としている[3][3] S. Pascarelli et al.: Journal of Synchrotron Radiation 23 (2016) 353-368.。実験当時、ESRFでは大体のバンチモードでTop-up運転がなされていなかったため(EBSではTop-up運転になるようだ)、X線入射強度は徐々に減衰してしまう。ID24ではX線強度とポリクロメータなど光学素子の熱負荷をコントロールするため、全光学素子の温度をモニターし、素子の温度に応じてFEシャッター(SPring-8で言うところのMBS)直下の1st slitの開口を自動制御していたことに感服した。
 今回私はBranch Sを利用した。エネルギー(散乱角)に応じて、2θアームを動かす必要があり、床は滑らかに研磨された御影石で出来ている。土足禁止である。レーザー架台、ならびにディテクターは着脱式で、装置の入れ替えは容易である(図1)。ビームタイム2日前、Dr. Bocattoによるレーザー加熱システム、およびアライメント作業を見学した。ESRFではID24・ID27に限らず、高圧グループが力を合わせ、レーザー加熱における“正確な温度測定”を目指し、高性能化に努めている(例えば、色収差をなくす、レーザー加熱スポットとX線の位置を一致させるなど、詳細は[4,5]などを参照のこと)。ESRFからはレーザー加熱光学系に関して何本もの装置論文が出版されており、前知識を付けて臨んだつもりであったが、論文を読むだけではイメージ出来ない“生の光学系”を見ることが出来、大変勉強になった。少しずつ光学系を変え、テストし比較する。時間もお金も掛かる作業である。どのようにレーザー光学系の開発をしているのか質問したところ、シニア研究員はもちろんのこと、学生までが装置の高性能化に携わっており、それを修士論文のテーマなどにしているそうだ。また、100万円程度の内部ファンドがあり、失敗しても「何故失敗したのか」、「どのように改善すべきであったのか」を示すことが出来れば良いらしい。「例え失敗しても得るものがあれば良い」という、日本ではあまり見られない形式の研究費があることにとても驚いた。

 

図1 ID24 Branch Sのハッチ内

 

 

 ここで、私がID24でどのような測定を行ったのか簡単に説明させていただく。モチベーションはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下における液体鉄合金の構造が知りたい、ということにある。地球外核は液体鉄合金で構成されており、外核を構成している液体の構造は地球深部ダイナミクスに強い影響を与えていると考えられる。そのため、SPring-8のBL10XUで現在進めている液体鉄合金のXRD・PDFデータと相補的にある、EXAFSの元素選択的な結果を求めて、ビームタイム申請を行った。測定手順は次の通りである。(1)DACを設置、(2)ルビー蛍光により圧力を測定しながらガス駆動式メンブレンにより加圧、(3)X線位置、フォーカス位置にDACを合わせる、(4)サンプルデータ(図2:AやA’位置)とリファレンスデータ(図2:B位置)を取得し確認、(5)試料上に加熱レーザーを実際に当てながら位置アライメント、(6)レーザー加熱をしながら測定(0.5秒露光、3回積算)+クエンチデータの取得(0.5秒露光、3回積算)。レーザー出力を変えながら試料が融解するまで何回も繰り返す、(7)試料の2次元マッピング、(8)減圧。以上、(1)から(8)まで5−8時間程度要する。今回のビームタイムでは15 runの加熱実験を実施し、最高3,500 K程度の高温発生下、145 GPaまでのデータを取得することができた(図3)。通常、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧発生実験には、天然の単結晶ダイヤモンドを使用するのであるが、EXAFS測定の場合、単結晶アンビルからのグリッチによるEXAFSデータの汚染を生じてしまう。本研究では、愛媛大学先進超高圧科学研究拠点(PRIUS)へ共同研究を申請・受理していただき、ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)をアンビルとして用い実験を行った。

 

図2 DAC試料写真(A, A’)試料、(B)バックグラウンド位置

 

図3 76 GPaにおける試料融解前後のEXAFSデータ

 

 

 ビームタイム後半はトラブル続きであった。ビームタイム4日目、深夜に加熱用レーザーの出射タイミングとX線の露光スタートのタイミングを合わせるためのトリガー装置の電源をrunボタンと間違えて(うっかり)落としてしまい、再起動の方法が分からず実験がストップしてしまった。また、最終日前夜はインターロック系のトラブルにより光学ハッチの制御が出来なくなってしまい、フロントエンドシャッターすら開かなくなってしまった。後者のトラブルは中々重大で、結局翌日の朝、シニアスタッフと技術スタッフの方が対処してくださるまで測定は再開出来なかったのだが、二晩連続で深夜にDr. Bocattoを起こさざるを得ず、我々の担当するビームラインでトラブルがあった場合、泣く泣く我々に電話をしてくださるユーザーさんの居た堪れない気持ちが分かったのであった。更に同日夜、蓄積リングにおいてRFが1台壊れてしまい、その後最大電流値7割での運転が再開された。疲れている土日や夜にトラブルが起こりやすい(起こしやすい)のはESRFでもSPring-8でも同じなのだと思った。

 

 

5. ビームライン運営
 ESRFもビームラインでのユーザー支援体制はほぼSPring-8と同じで、研究員は土日、夜も交代でユーザー支援をしている。しかし、ビームラインに携わるスタッフの人数は大きく異なる。ESRFでは大抵のビームラインの壁に、問題が生じた場合に連絡をする人物のリストが掲載されている。ID24においてその数なんと17名である。シニアスタッフはそれぞれ、例えば加熱レーザーと周辺光学系担当、レーザーショック用レーザー担当、オペレーション担当というように各種装置ごとに担当が分かれている。また、技術スタッフも同様にマシン担当、電気周辺担当、ソフトウェア担当と専門分野ごとに分かれている。PDもX線調整やユーザー支援を行う。加えて、修士課程・博士課程の学生4−5名が常時所属しており、彼らはユーザーのためにX線の調整は行うことが出来ないが、周辺機器の調整は許可されている。高圧発生装置については、高圧実験を行うビームラインを跨いで、高圧ラボのラボマネージャーであるDr. Jeroen Jacobsが責任を負う。私も滞在中、高圧ラボでダイヤモンドアンビルセルをお借りし、サンプリングを行ったが、高圧ラボは必要なものが全て揃っていて快適であった。実験中も、試料加圧のためのガス圧コントロール装置にトラブルが生じた際、Dr. Jacobsが駆けつけて修理してくださった。ちなみに、SPring-8のBL10XUの壁には3名の担当者の名前が書かれた紙が貼られている。

 

 

6. ESRF-EBS前のシャットダウン期を間近に
 ESRFは現在、ESRF-EBSに向けた準備を行っている。アップグレードに向け実験ホールに増築された建屋には電磁石がいくつも置いてあり、ここでアライメント作業をしているようだ(図4)。滞在中、ESRF所属の研究員だけではなく、多くのユーザーとも触れ合うことが出来たので、ESRF-EBSに向けたシャットダウン期に実験はどうするのか質問してみた。すると、DiamondやPETRA、APSに行くと思うという返答が多く少し悲しくなった。彼らにとって日本は遠く感じるようだ。また、ヨーロッパ圏内の放射光施設には、旅費・食事費を軽減するシステムがあるなど足を運びやすいらしい。しかし、SPring-8に行く機会があれば是非使用したいとも仰っていた。今後、国際会議に参加した際など積極的にお誘いしようと思う。

 

図4 増築された実験ホールに置かれているEBSリングに用いる電磁石

 

 

7. ESRFの女性の働く環境
 ESRFに滞在して特に驚いたことは、職員も学生もユーザーにも女性がとても多いことである(図5)。それを踏まえてDr. Bocattoに聞いてみた。
 「女性、特に妊娠した女性や子供が居るお母さんの働く環境はどうですか?」(勿論、お父さんもだが)、彼女の答えは、「女性が働く環境は少しずつ良くなっている」とのことである。ESRFの産休育休は3ヵ月であるらしく意外と短く感じた。しかし、託児所などはないが、ヨーロッパの文化としてベビーシッターが普及している。何より、両親が共に子育てをすることが当たり前という考え方が一般化しつつあり、私の滞在中にもDr. Paskarelliが新米パパになるPDに、「奥さんが妊娠中や赤ちゃんが小さいうちはお父さんが家事の8割はしなくては駄目よ」と指導(?)されていた。実際、ID24のメンバーにお母さん研究者が多いことが、ESRFの女性の働く環境が良いことを示しているのであろう。

 

図5 ID24のスタッフと共に

 

 

8. おわりに -ESRFで見えたもの-
 以上のように、装置論文から飛び出した生の装置に触れ、ビームライン担当者、ポスドク、学生、ユーザーの生の声を聞くことが出来たESRFでの経験は本当に貴重なものであった。何より、沢山の若手研究者と交流出来たことがとても嬉しかった。食事を共にしながら研究に関する議論を行い、また日本やヨーロッパの国々の文化の違いについて意見を交わす。同じ年頃の若手研究員が少ないSPring-8ではあまり出来ないことで心高鳴った。ビームタイムが終了して暫く経つが、未だデータについて、また近況について気にかけてくれる友人も出来た。ああ、本当に良い経験だった…で終わらせてしまうと、皆様に、「結局研修を通してESRFで何が見えたのか」とご指摘を受けてしまうであろう。そこで改めて、「ESRFで研修をして何が見えたのか」私の考えをまとめてみる。
 滞在中、一番心に刺さったことがある。それが、「SPring-8では1−2名でビームラインを運営しているが、“thinking”する時間は十分にあるのか」と幾人もの研究者に質問されたことである。経験豊かな先輩方なら自信を持ってYesと即答されるだろう。しかし、恥ずかしながら私にはうまく答えることが出来なかった。ESRFでは上で紹介したように、1つのビームラインに多くの研究者、技術スタッフが携わっている。学生もビームラインの高性能化に携わり、そこで得られた結果を卒論化・論文化する。筆者と同じ年頃の若いPDがユーザー支援など責任ある仕事を任されている。テクニカルスタッフなしでビームライン運営は成り立たず、彼らは大変尊敬されている(もちろん、これはSPring-8でも同じである)。そして、シニアスタッフの仕事は、“thinking, developing and upgrading”、そして後継者の育成である。お互いが信頼し、切磋琢磨し、より良い高性能化に向け仕事が循環している。世代が循環している。
 しかし、私は日本の、SPring-8の研究員である。まずヨーロッパと母集団が異なる。「人員が少ない」ことを口実にしてはいけない。困難なことがあっても、解決策を見出し、道を開拓するのが我々研究者の仕事であろう。しかし、どうしたら良いのだろうか。筆者なりに出した答えは、“thinking”する時間を作るよう努力すれば良い、ということである。オペレーションに時間を取られているというのであれば、より扱いの簡便な制御システムを構築すれば良い。それはユーザーフレンドリー化にも繋がるであろう。また、自身が得意な分野を尖らせ、最先端にすることがまずは最重要である。更に、新たな装置や手法を導入する必要がある場合、分野・ビームラインの垣根を越えて協力しあうことが大切である。測定系の要になるものは経験でしか知りえないことが多々有り、それは机上の勉強のみでは得られない場合が多いのである。これまで以上に、積極的に他ビームラインの担当者達と意見交換をしたいと思う。
 以上のまとめは、しごく当たり前で言うまでもないことと思われるかもしれない。しかし、筆者にとってはようやく出せた解決策・考えなので、ご容赦いただきたい。研修に行かせていただき、私なりに必死で何が問題なのかを思い悩み、そしてそれに対する解決策を考えついた。後は実践あるのみである。これから一生懸命頑張って、再度あの素敵なESRFの研究者の皆様に会いに行き、SPring-8はこんなにも素晴らしい、と胸を張って議論を交わしたいというのが私の目下の目標である。

 

 

謝辞
 ESRFにおける研修滞在をご快諾いただきましたDr. Pascarelli、実験・滞在中サポートいただきましたDr. Bocattoに深く感謝申し上げます。お忙しい中ビームラインを丁寧にご案内くださったID27のDr. Mezourをはじめ様々なビームラインで見学対応いただいたESRFスタッフ・ユーザーの皆様、出張手続きから帰国後まで全面的にサポートいただいたJASRI事務の皆様、本研修・研究についてご助言いただいた所内外の研究者の皆様にこの場をお借りし厚く御礼申し上げます。

 

 

 

参考文献
[1] https://www.esrf.eu/
[2] https://www.dectris.com/company/news/newsroom/news-details/first-results-with-eiger2-x-cdte
[3] S. Pascarelli et al.: Journal of Synchrotron Radiation 23 (2016) 353-368.
[4] M. Mezouar et al.: High Pressure Research 37 (2017) 170-180.
[5] I. Kantor et al.: Review of Scientific Instruments 89 (2018) 013111.

 

 

 

河口 沙織 KAWAGUCHI Saori
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0919
e-mail : sao.kawaguchi@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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