Volume 28, No.3 Page 231
理事長室から 「ナノテラス対応検討タスクフォース」の設置
Message from President Establishment of a Task Force to Study the Response to NanoTerasu
本年5月に共用法1)が改正され、東北大学青葉山キャンパスに建設中のナノテラス(NanoTerasu、3GeV高輝度放射光施設)が新たに共用法対象施設として位置づけられることになりました。これまでの共用法対象施設は、SPring-8、SACLA、J-PARC、富岳でしたが、これにナノテラスが加わることになったわけです。ナノテラスの設置者は量子科学技術研究開発機構(QST)で、官民地域パートナー機関2)と共に、現在その建設が進められており、本年中にはファーストビームが得られる予定です。共用法の下、2024年4月の施行に向けて種々の準備が行われる予定で、SPring-8と同様に、ナノテラスも登録施設利用促進機関(登録機関)が定められ、今秋頃には国による公募が行われる見込みです。
JASRIのこれまでのSPring-8/SACLAにおける共用推進の実績等に鑑み、JASRIが登録機関になることに対する期待があるだけでなく、JASRIとしても、ナノテラスが共用により高い研究成果をあげられるように、どのような貢献ができるか考える必要があります。この登録機関の公募への対応については、必要とされる技術力、人的・物的なリソースの計画的な用意など、様々な事項について多面的な検討が必要となり、仙台という遠隔地において、職員の採用や配置はもとより、運営上の重要事項をできるだけ現地で判断し、ナノテラス関係のステークホルダーとの連携・調整を円滑に進めることも含めて対応のあり方について、詳細な検討が求められます。そこで、この検討作業を集中的かつ計画的に進めるために、8月1日付けでJASRIに「ナノテラス対応検討タスクフォース」を設置することにしました。本タスクフォースの検討作業は段階的に行うこととし、文科省(国)やQSTの関係の予算要求の内容が明らかになる9月頃を目途に、登録機関の申請の是非について結論を出す予定です。申請を行うこととした場合には、人的・物的側面、財政的観点を含めて具体的に検討の上、取り組みや解決すべき課題を明らかにしつつ、公募の提案書を纏める予定です。
また、最近は、共用法対象施設であるSPring-8の高度化(SPring-8-II)の検討が活発化しています。去る8月2日には、「SPring-8-IIシンポジウム3)」が200名以上の参加者を得て開催され、活発な議論がなされました。SACLAを含めて世界に誇る優れた研究施設における、より大きな研究成果の創出への期待に応えるために、JASRIとしてより一層の使命感と責任感をもって、そのミッションを果たしていきたいと考えています。
なお、本年6月には、JASRIの田中良太郎常務理事と安部元泰常務理事が任期を終え退職され、各々、坂田修身常務理事と安藤慶明常務理事にそのバトンが引き継がれました。引き続き、JASRIの役員と職員が一丸となり、新しい取り組みに向かって進んでいきたいと考えています。
1)「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成6年法律第78号)
2)(一財)光科学イノベーションセンター(代表)、宮城県、仙台市、国立大学法人東北大学、(一社)東北経済連合会から成る。
3)http://rsc.riken.jp/SPring-8-II/