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Volume 28, No.3 Pages 331 - 333

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

BL28B2における自動CT計測装置の導入および測定代行の実施について
Installation of Automated CT Measurement System and its Measurement Service at BL28B2

上杉 健太朗 UESUGI Kentaro、星野 真人 HOSHINO Masato

(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室 Scattering and Imaging Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI

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SPring-8

 

1. はじめに
 SPring-8 BL28B2では2023年2月から同ビームラインに設置された自動X線CT計測装置を利用して高エネルギーX線CT計測を行う測定代行を開始しました。測定代行は、成果専有時期指定課題の一形態として取り扱われ、いつでも利用申請が可能です。SPring-8では原則として、利用者が当該ビームラインまで赴き、自らが装置を操作しデータを取得する必要があります。しかし、測定代行では、利用者は事前打ち合わせの上、測定試料をSPring-8へ送付することで、専門スタッフのオペレーションを通じて測定データ(本測定代行においては試料のX線CT像)を得ることが可能となります。以下の内容をご確認の上、是非ご利用ください。

 

 

2. 装置概要
 BL28B2では星野らにより高エネルギーX線を利用したCT計測手法が開発されてきました[1, 2][1] M. Hoshino, K. Uesugi, R. Shikaku and N. Yagi, AIP Advances 7 (2017) 105122.
[2] M. Hoshino, K. Uesugi and N. Yagi, J. Synchrotron Rad. 27 (2020) 934-940.
。この手法では200 keV(半値幅±50 keV)という高いエネルギーのX線を照射し、高精細型のX線画像検出器を用いて画像取得することで、「従来の放射光X線CTにはない高い透過性」・「ラボ用装置では実現できない高いコントラスト画像」・「広い視野幅かつ高い空間分解能」を実現しています(図1に計測事例を示しています)。

 

図1 高エネルギーX線CT装置測定事例。18650電池の縦断層像(表示領域サイズ:18.5 mm × 12.5 mm)と黄色四角部の拡大像(表示領域サイズ:2.0 mm × 2.2 mm)。計測時間は約2時間。画素サイズは3.44 µm/pixel。

 

 

 最近、放射光施設の利用経験がない方々でも、本手法が簡便に利用できるように「自動X線CT計測装置」の開発を行いました(図2)。この装置は、試料の自動交換・指定範囲のCT計測・画像再構成の機能を有し、その工程をほぼ自動で進めることができます。測定代行の利用者は専用ホルダー(図3)に固定した試料を送付し計測位置を指定するだけで、一定期間ののちに試料返却およびそのCT画像が得られます(試料は宅配便などでの送付、CT画像はダウンロードサイトの通知となります)。

 

図2 自動X線CT計測装置概略図。

 

図3 専用ホルダー写真。試料サイズごとに使い分ける。底部にはアクリル樹脂の円板が取り付けられているが、これを利用者独自のアタッチメントに変更することも可能。

 

 

 一度に撮影できる視野はビームサイズで決まり、最大で幅48 mm、高さ1.2 mm程度です。高さ方向に試料をシフトさせ撮影を繰り返し行うことで、必要な範囲を撮影できます。撮影条件にもよりますが、幅48 mm、高さ10 mm分を、およそ1.5時間で撮影することができます。画素サイズは最小で3.44 µm/pixelですが、2 × 2や3 × 3ビニングでの撮影も可能です(それぞれ画素サイズは6.88 µm/pixelと10.32 µm/pixelとなります)。最小画素サイズで最大視野の撮影も可能ですが、その場合は1枚のCT像が13600 × 13600 pixelsとなり、8 bitデータであっても176 MBのサイズとなり、ボリュームデータの画像処理を行うことが難しくなるため注意が必要です。また、ダウンロードサイトでは撮影時の画素サイズを維持したCTデータだけでなく、2 × 2 × 2ビニングと4 × 4 × 4ビニングしたデータも生成しています。それぞれオリジナルデータの1/8もしくは1/64の量になりますので、まずは8 bitに規格化した4 × 4 × 4ビニングのデータで概略をつかみ、その後大きなサイズのデータを処理するなどの工夫をすることもできます。
 手に取れるサイズの電子デバイスや岩石などの比較的大きな試料の超高精細3Dデータ化ができるという点で、様々な分野において高エネルギーX線CT装置の有効活用が期待できます。

 

 

3. 「高エネルギーX線CT計測」における測定試料
(1)試料形態
 利用者には試料を専用ホルダーに固定した状態で送付して頂きます。輸送時に脱落しないような工夫が必要です。試料の種類は特に定めませんが、200 keVのX線が十分透過する必要があります。鉄インゴットでは直径20 mm以下であることが目安です。
(2)試料準備
 測定試料の準備は専用ホルダーをSPring-8から借り受け、固定及び測定位置の決定を利用者自身が行う必要があります。手順や方法は事前相談時にスタッフが説明を行います。
(3)測定試料環境
 大気中室温環境下での測定のみを対象とします。専用ホルダー内で完結するようなシステムを使用することは可能ですが、詳細はスタッフにお問い合わせください。

 

 

4. 申込方法
 下記サイトの測定代行の申込概要を熟読の上、同ページにリンクのある相談フォームよりお申し込みください。質問等は同ページ内にある相談窓口あてに電子メールにてお送りください。
 https://user.spring8.or.jp/?p=42152

 

 

5. 利用料金
 測定代行は「成果専有時期指定課題」の一形態として取り扱いますので、測定代行に掛かるビーム使用料及び消耗品実費負担については、それに準じた金額となります。測定条件・試料数・測定点数について、ビームラインスタッフとの打合せを行い、実施時期・必要なビームタイムおよび利用料金を決定します(単価は下記(1)及び(2)のように定められ、その合計が利用料金となります)。
(1)ビーム使用料

9万円/1時間(成果専有時期指定課題と同額)。

(2)消耗品実費負担

定額分(1,340円/1時間)と従量分(測定代行中に実際に使用した消耗品費等の金額)の合計額。ただし、「高エネルギーX線CT計測」においては当面は従量分を0円とします。

 

 

 

参考文献
[1] M. Hoshino, K. Uesugi, R. Shikaku and N. Yagi, AIP Advances 7 (2017) 105122.
[2] M. Hoshino, K. Uesugi and N. Yagi, J. Synchrotron Rad. 27 (2020) 934-940.

 

 

 

上杉 健太朗 UESUGI Kentaro
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0833
e-mail : ueken@spring8.or.jp

 

星野 真人 HOSHINO Masato
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター 散乱・イメージング推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0833
e-mail : hoshino@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794