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Volume 25, No.1 Page 1

理事長室から -新年の抱負と健康長寿の心身の生活習慣-
Message from President – Let’s Share New Year Resolutions having Lifestyle for Mentally- and Physically-Healthy Longevity –

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

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 令和初の正月、オリンピックイヤーの正月、皆さんはどのような抱負を立てられたでしょうか。辞書を引くと、「抱負」とは、願望、決意、計画と記されています。しかし、漢字は、(腹に)抱きかかえ(背に)負う、です。このことに正月に気が付き、新たな発見をした気持ちになりました。抱負を立てることは、自分の願望を念じることではなく、負荷を腹に抱きかかえ、かつ、背にも荷を負うことを覚悟すること、であると。と同時に、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し。…」という徳川家康の有名な言葉を思い出しました。結論として、正月の私の発見は、抱負=主体的に自分の荷のみならず他の荷を背負う覚悟とその志、という等式が成り立つのではないか、ということでした。
 私達が負うべき荷とは何か。それは、世界最先端のSPring-8/SACLAの研究支援とそのための研究開発を行うという、JASRIに与えられたMissionです。この荷の重さを私達の腹で、そして、背でしっかりと受け止めることが、私達の誇りであり、仕事のやり甲斐の源泉であることを、新年にあたって、皆さんと共有したいと思います。
 抱負を持って歩むには、すなわち、荷を腹に抱きかかえ背に負って歩むには、体力・元気・健康が必要です。医学の進歩で平均寿命が延び、日本では、男性81.2歳、女性87.3歳です。しかし、平均寿命以上に大切なのが健康寿命。年末のラジオ番組で、健康長寿のための三つの秘訣が紹介されていました。それは、1. 動くこと、2. 楽しむこと、3.(他を)喜ばせること。私はこの三つの秘訣に大変共感したので、これを今年の抱負を実現するための心身の生活習慣にすることに決めました。この三秘訣は健康長寿のため、と紹介されていたのですが、私が共感したのは、これは仕事の流儀、プロフェッショナルの極意に通じると思ったからです。1. 動くこと、2. 楽しむこと、3.(他を)喜ばせること。これは、イチローを始め、プロで活躍している人々に共通する心身の生活習慣だと思うからです。このことは、昨年盛り上がったラグビーにおける日本チームの活躍にも通じます。3.(他を)喜ばせることは、働く=端楽=端を楽にさせる、という日本の天職(calling)観に通じます。この三つの生活習慣を、皆さんと是非、共有したいと願っています。そして、各自が健康で、各自のパフォーマンスを、仕事面でもプライベート面でも遺憾なく発揮して頂きたいと願っています。働き方改革、SDGsという視点でも、最先端のJASRIを目指しましょう!
 補足ですが、昨年のラグビーでは、“One for All, All for One”という言葉が有名になりました。この意は、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」と誤解されがちですが、本当の意味は、「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」です。一人ひとりの果たすべき役割は異なっていること、その異なっている各自の役割を楽しみながら責任を持って果たし、他者の役割を尊重して、一つの目的に向かっていくことがチームプレーの極意です。JASRI、理研を始めとする、このサイトで研究活動に携わる全ての人々は、同じ目的を共有する一つのチームです。
 1. 動くこと、の私自身の実践として、今年は可能な限り実験ホールを歩き回りたいと思っています。そこで皆さんとの会話を楽しみ(←邪魔をしないように気を付けます)、皆さんの抱負と近況を共有したいと思っています。理事長室の扉は開けてありますので、是非、気軽に立ち寄って下さい。皆さんとの会話を楽しみたいと思っています。
 参考までに、上記で引用した徳川家康の言葉の続きを付記します。
 「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。こころに望み起こらば、困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば、害その身に至る。己を責めて人を攻むるな。及ばざるは過ぎたるより勝されり。」

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794