Volume 25, No.1 Pages 81 - 82
5. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)四季報
SPRUC Communications
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/関西学院大学 研究創発センター Center of Research Initiative, Kwansei Gakuin University
2020年最初の四季報です。今年もSPring-8が国際的に注目される成果を創出し、ユーザーにとっても利用しやすい施設となるように様々なSPRUCの活動を計画しています。皆様の積極的なご参加を期待しています。
先程、第33回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムから帰ってきました。今回特に印象に残ったのは、動き出した次世代放射光計画(これまで東北放射光計画(Slit-J)として取り組まれていた)を担当している組織やビームライン検討委員会からの進捗状況に関する発表でした。自らの努力が新しい利用に繋がり、それが実現に近づいてきているというダイナミックな熱気を感じました。ご承知のようにSPring-8-IIに向けたビームライン(BL)の再編やアップグレード(UG)に関する議論が始まっています。我々SPRUC会員もUGに向けた議論に積極的に関わり、SPring-8から様々なイノベーション創出を実現したいと思います。今回の四季報では、日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム期間中に開催された評議員会、特別総会、また2019年12月24日に持ちました3者会合の内容を中心にご報告します。
1. 評議員会
評議員会は、2020年1月10日の11時~12時まで行われました。ここでは2019年12月に行われました評議員選挙の結果、また評議員会での報告事項の中で強調したい事項をご報告し、懇談事項に関しましては、3者会合のところでご報告いたします。
I. 評議員選挙結果
評議員30名の内、15名が改選され、新しく以下の15名の方が評議員に選ばれました(学術研究機関から10名、産業機関から5名)。足立伸一、雨宮健太(高エネルギー加速器研究機構)、内海渉(量子科学技術研究開発機構)、岡島敏浩(あいちシンクロトロン光センター)、尾嶋正治(東京大学)、北川進(京都大学)、坂田修身(物質・材料研究機構)、高田昌樹(東北大学)、田中義人(兵庫県立大学)、水木純一郎(関西学院大学)、北村祐二(ブリヂストン)、黒岡和巳(パナソニック)、鈴木孝尚(豊田中央研究所)、林和志(神戸製鋼所)、宮川篤(DIC)(敬称略)。2020年4月から2年間よろしくお願いいたします。
II. SPring-8シンポジウム2020開催計画
2020年度のSPring-8シンポジウムは、2020年9月18~19日につくば国際会議場で開催されることが決まりました。木村昭夫(広島大学)次期会長の組織委員長の下、具体的な計画が進み出しましたので、皆様におかれましては日程の確保をお願いいたします。
III. 第2回BLsアップグレード検討WSの開催計画
2019年3月に開催しました第1回に引き続き、第2回目を2020年2月21~22日の1.5日間の日程でBLsアップグレード検討WSを開催いたします。趣旨に関しましては、本号の告知板をご覧ください。
本記事の冒頭にも述べましたが、SPring-8が今後とも国際的な競争力、科学技術の牽引力を発揮するためには、ユーザーの要望を施設側にしっかりと伝え、施設側と議論し、それらの結果がUGに反映されることが重要です。すでに施設側もBLの再編、および、硬X線分光BL(XAFSやHAXPES)に対する検討が始まっており、第1回目のWSではそれらについての報告、および討論がありました。第2回目のWSでは、これらBLの具体的なUG案を含め、核共鳴散乱(NRS)、非弾性X線散乱(IXS)のBLについての再編、UGの具体的な検討に向けた討論を中心に議論を進めていく予定です。以降、検討したBLが再編、UGが実行フェーズに入れば、継続的に次のBL再編、UGの具体的な検討、議論を展開するという方法で進めていくことを考えています。
2. 3者会合
今回の会合では、主に(1)第2回BLsアップグレード検討WSの進め方、(2)Science Promotion Board(SPB)、(3)SPring-8シンポジウムでの企業展示、について懇談しました。
(1)については、先に記述しましたようにHAXPES、NRS、IXSについて、BL再編、UGの具体的な検討が始まり、利用者との個別議論も開始されています。今後のWSでは、その次のBL再編、UG対象の洗い出しを行えるようにすると効率よくBL再編、UGの検討、議論が進むであろうことを確認しました。(2)については、設置目的とその意義について前号で述べました。しかし、SPBから有効な助言を得るためには、設置の目的を具体化した方が良い、また、その目的に合った名称を検討してはどうか、SPRUC内の組織としてどのような位置付けにするか明確化するようにSPB内で議論したほうが良い、有意義に且つ持続可能となるような仕組み作りも重要である、などの助言、意見がありました。以上の懇談内容を受け、SPRUC第2回BLsアップグレード検討WS後にキックオフ会議を開催し、組織の意義、目的も含めて議論を開始いたします。以下にSPBメンバーをご紹介いたします。
生命科学分野:栗栖源嗣(大阪大学)
物質科学分野:有馬孝尚(東京大学、利用委員長)、常行真司(東京大学)、水木純一郎(関西学院大学)
産業分野:本間穂高(日本製鉄)、佐野雄二(東芝、JST、分子科学研究所)
J-PARC関係:金谷利治(J-PARC:MLF)
(敬称略)
また、オブザーバーとして施設側から、石川哲也センター長(理化学研究所)、雨宮慶幸理事長(JASRI)にも参加していただきます。さらにできるだけ顧問の先生方にもご出席いただきご意見を伺えればと考えています。
(3)については、以前からSPRUCの財政的な自立の必要性を課題として代表機関会議でも懇談しましたが、数社からSPring-8シンポジウムで企業展示をしたいという申し出がありました。SPRUC内のシンポジウム関係者では試験的導入を検討していることを報告しましたが、懸念事項として展示企業の重複も予想される放射光学会等に迷惑がかからないような配慮が必要、過剰な収入重視にならないような注意が必要、などがあげられました。これらの懇談内容を受け、SPring-8シンポジウムの委員会で検討することにしました。
本号で私が担当する四季報は最後になり、次号からは木村昭夫次期SPRUC会長が担当いたします。
SPring-8をより利便性の高い施設にしていくために、SPRUCを通して多くの会員が声を上げていくことが大切です。そのためにもSPRUCの活動をアップデートしていくことが重要と考え、この四季報を始めました。会員の皆様に役に立つ記事になったかどうか不安なところもありますが、私自身のために非常に役に立ちました。原稿の締め切りは3ヵ月毎ですので筆の遅い私には少し苦痛ではありましたが、会長としてSPRUCの活動を日記のごとく頭を整理し、考えるいい機会を与えてくれるものとなりました。木村次期会長にもこのメリットを伝授してバトンタッチすることにいたします。
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