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Volume 28, No.1 Pages 56 - 57

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2019年度指定パートナーユーザー事後評価報告 – 2 –
Post-Project Review of Partner Users Designated in FY2019 -2-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 パートナーユーザー制度は、SPring-8の共同利用ビームラインの更なる高度化および優れた成果の創出を推進するために、2014A期から2021A期まで運用され、パートナーユーザー(以下「PU」という)は、公募・審査を経て指定されました。
 PUの事後評価は、PU審査委員会において、あらかじめ提出されたPU活動終了報告書に基づいたPUによる発表と質疑応答により行われました。事後評価の着目点は、PUとしての(1)目標達成度、(2)活動成果(装置整備・高度化への協力、科学技術的価値および波及効果、ユーザー開拓および支援、情報発信)です。今回は、2019年度指定のPU4名(指定期間:2019年4月1日から2021年7月31日まで)について、事後評価(2022年6月21日および29日開催)を行いました。
 なお、2019A期に採択された4名のうち、2名の評価結果は2022秋号に掲載、もう1名の評価結果は次号以降に掲載する予定です。
 以下にPU審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」にPUによる紹介記事を掲載しています。

 

 

1. 河野 義生(愛媛大学)
(1)実施内容
研究テーマ:大容量プレスを活用した動的地球深部科学の開拓
高度化:高圧下ダイナミクス測定に向けた時分割測定基盤の整備
利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL04B1

(3)評価コメント
 本PU課題は、大容量プレスを備えるBL04B1において、回折とイメージング、AE等を組み合わせた複合測定の高度化、高圧変形・破壊実験の高度化、高圧下液体実験の高度化などの装置高度化を行い、高圧化時分割測定による「動的」高圧測定という高圧地球科学の最先端研究の展開を狙ったものである。
 装置の高度化については、回折/イメージング切り替え高速化に係る改造、および、新たな検出器とカメラの導入等による高い時間分解能での時分割複合測定等を可能にし、圧力範囲の拡大や粘弾性測定の精度向上など、一部においては当初計画の範囲を超えて、目標を達成した。全体に装置整備の質が高かったこともあり、装置の高度化が期待以上に達成されている。装置を用いた利用実験についても、計画に掲げた高圧変形・破壊実験による地震発生メカニズム研究、高圧下液体実験による地球内部のマグマの挙動研究の両者において新たな知見を得ている。一方は論文化されており、もう一方も準備中であることに加えて、金属ガラスの研究など地球科学以外の分野でも論文化される成果を得ている。論文数自体は今の時点では少数だが、重要な先駆的成果自体は挙がっており、期待以上に成果を得たと言える。本課題により、世界水準の価値のある高度化を成し遂げ、利用実験への成果につなげている。
 ユーザー支援においても、国内外の地球科学の分野を超えたユーザーも取り込んだうえで、成果も出しており、評価できる。コロナ禍の状況下でよく支援を行い、ユーザーも拡大し、論文成果も得ている。なお、ユーザー開拓については、高圧X線実験を行わない地質科学ユーザーなどについてその原因を分析するなどして利用範囲を拡大することも検討してもらいたいという意見もあった。
 装置の高度化や研究成果の情報発信については、一定の貢献が認められるが、地震学を中心とした地球科学分野は、社会的にも関心が高い分野であり、今回の高度化も極めてレベルが高いので、より一層積極的に行われることを期待する。
 全体として、本PU課題は、十分な基盤整備を行いSPring-8における測定能力を向上させると共に、自身のグループの研究を発展させ、コロナ禍の中でユーザー支援、ユーザー拡大にも尽力し、成果を得ており、高く評価される。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794