ページトップへ戻る

Volume 29, No.2 Page 90

理事長室から NanoTerasuの登録施設利用促進機関として―ナノテラス事業推進室の開設―
Message from President JASRI as a registered institute for NanoTerasu Usage Promotion – Establishment of NanoTerasu Promotion Division –

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

Download PDF (344.65 KB)

 

 東北大学青葉山新キャンパスに建設された3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)が本年4月から施設運用を開始しました。NanoTerasuは我が国初の第4世代放射光施設で、軟X線・テンダーX線のエネルギー領域の光がこれまでに比べて約100倍の輝度で得られるようになったことが大きな特徴です。NanoTerasuは、国の主体である量子科学技術研究開発機構(QST)と地域パートナー(光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とした宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会の5者)による官民地域パートナーシップにより整備されました。
 これまで理化学研究所放射光科学研究センター(RSC)と共に、JASRIはNanoTerasuの整備に協力してきました。また、昨年8月にはJASRI内にナノテラス対応検討タスクフォースを立上げ[1][1] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=42156、登録機関の申請に向けて準備を行ってきました。その結果、本年4月1日をもってNanoTerasuの登録施設利用促進機関に登録されました。それに伴い仙台にナノテラス事業推進室を開設し、播磨の関係部門と連携をとり登録機関の業務を推進するための組織改編を実施しました。現在、NanoTerasu選定委員会の設置等、課題選定に向けての準備を開始したところです。当初は、共用ビームライン整備のPhase-IとしてQSTが設置した3本の共用ビームラインにおける共用業務(利用者選定と利用支援)を実施します。本年10月には共用ビームライン利用研究課題の募集を開始し、2025年3月に共用を開始する予定です。
 今後、共用ビームラインにおける研究成果創出の最大化を目指して、QSTとの協力体制を構築していく所存です。また、共用ビームライン整備のPhase-IIは議論が始まったばかりですが、QSTと共同の高度化研究体制を構築して、その整備に積極的に参加して行きたいと考えています。
 SPring-8/SACLA及びNanoTerasuは、世界の放射光研究の中核となるべき研究基盤施設であり、更に、SPring-8-IIの実現に向けた準備も進んでいます。JASRIとしては、これら先端的研究施設の中核として、他の施設ではできない役割を果たせるように、各光源の特徴を最大限に活かす運営を目指したいと考えています。SPring-8とNanoTerasuのワンストップ体制の構築、研究成果創出に必要とされる各種人材(研究者、技術者、コーディネーター等)の育成等を行い、利用者本位で研究開発による価値創出を「先導する」、「つなぐ」役割を果たしたいと思います。
 前回の本稿[2][2] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=42738では、「JASRI Vision 2030」を紹介しました。その骨子は下記です。

I. 安全で安心な研究環境と職場環境を創る。

II. 施設者と密な情報共有と信頼関係を構築し、第4世代放射光施設(SPring-8-II・NanoTerasu)を核とした放射光研究をバランスよくリードする機関となる。

III. 利用者本位で、そのニーズに的確に応える利用者支援のための適切な仕組みを創る。

 改めて、上記を確実に進めて行きたいと考えています。
 今後とも、皆様のご協力とご支援をお願い致します。

 

 

 

参考文献
[1] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=42156
[2] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=42738

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794