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Volume 18, No.1 Pages 32 - 34

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体第2回研究発表会報告
The Report of the 2nd Symposium of Advanced Softmaterial BL Consortium (FSBL 03XU)

山本 勝宏 YAMAMOTO Katsuhiro

フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 研究連絡協議会世話役/名古屋工業大学大学院 工学研究科 Facilitator of FSBL User Group, Advanced Softmaterial Beamline Consortium / Graduate School of Engineering, Nagoya Insititute of Technology

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1.はじめに
 フロンティアソフトマター開発専用ビームライン(BL03XU)産学連合体(以下FSBL)は第2回研究発表会を平成25年1月9日九州大学医学部百年講堂にて開催した。FSBL [1, 2] [1] H. Masunaga, H. Ogawa, T. Takano, S. Sasaki, K. Sakurai et al.: Polym. J. 43 (2011) 471-477.
[2] H. Ogawa, H. Masunaga, S. Sasaki, S. Goto, T. Tanaka et al.: Polym. J. 45 (2013) 109-115.
はSPring-8初の産学連携によるソフトマター研究開発専用ビームラインとして2010年2月に竣工し、2年余りが経過した。その間FSBLメンバーによる活発な研究活動が行われてきた。本報告会は2011年度の成果を発表する場として開催された。



2.開会の挨拶
 FSBL運営委員会委員長 高原淳教授(九州大学)の司会の下、FSBL代表 竹田敏郎氏(住友ベークライト (株) 先進技術開発研究所所長)の挨拶に始まり、高分子学会副会長 君塚信夫教授(九州大学)、FSBL学術諮問委員長 梶山千里先生(福岡女子大学理事長兼学長)からもご挨拶を頂いた。梶山先生より、竣工から2年余り、関わってきた方々への感謝の意を伝えられるとともに、これまで一定の成果を上げていることを認めて頂いた。ただし、理研やJASRIの支援の下(国の支援)であり、SPring-8やスーパーコンピューター「京」は国の科学インフラとしての位置づけであることを意識し、成果を“オープン”にしなければならないことを忘れてはならないとご指摘された。さらに、サマースクールのような教育訓練の場を通した若手研究者の人材育成も重要な課題であり、ソフトマターの構造解析、動的な構造解析ができる人材育成が欠かせないとのお言葉を頂いた。



竹田代表より開会の挨拶


3.講演会第一部
 FSBL産学連携将来高度化委員会委員 雨宮慶幸教授(東京大学)の座長の下、FSBL参加企業グループから、クラレグループ 浅田光則氏( (株) クラレ)より「温度ジャンプ装置の開発と高耐熱性樹脂開発への適応」、東洋紡グループ 村瀬浩貴氏(東洋紡 (株) )より「高分子フィルムの延伸過程での構造形成の直接観察」と題して研究発表がなされた。続いて、高度計測技術開発プロジェクトの成果として、プロジェクトリーダー 高田昌樹先生(理化学研究所(RIKEN)/高輝度光科学研究センター(JASRI))から高度化プロジェクトの概要についての説明がなされ、プロジェクトチームリーダーの櫻井和朗教授(北九州市立大学)からは第二ハッチにおける「異常分散を利用した小角X線散乱技術の確立と動的測定の応用」課題、山本勝宏准教授(名古屋工業大学)からは第一ハッチにおける「斜入射小角、小角・広角X線散乱法を用いた高性能薄膜デバイスの階層構造の解明」課題の研究成果報告がなされた。
 特別講演には「巨大ナノ膜 ~ナノとマクロを結ぶソフトマター~」と題し國武豊喜先生(北九州産業学術推進機構 理事長)にご講演頂いた。一般に高密度ネットワーク構造を持つ材料は機械的強度が大きいが、その加工性が低く、高分子特有のソフトな性質が失われてしまう。しかしナノメートルの厚みとなると柔軟性を示すことを見出された。ご研究は、厚み20〜30 nmで数センチ角以上の自立性の膜(ナノ膜)の創製とその応用に関するものであり、有機・無機ハイブリッド膜や金属酸化物でも適応できることを述べられた。無機ハイブリッド膜でも厚みが極度に小さくなると自立性を示し、丈夫かつ極めて柔軟な薄膜となる。引っ張り強度試験では、ナノ膜が100メガパスカルという十分の強度を備えていることを明らかにされた。これらの材料が物質透過膜(プロトン伝導膜、イオン伝導膜など)、燃料電池用の電解質膜としてのポテンシャルを有することを示され、非常に興味深い講演であった。



特別講演 國武豊喜先生


4.ポスター発表
 講演会第一部終了後、FSBL参画19グループのポスター発表を行い、参加者、企業グループ関係者らが活発な議論を交わした。



ポスター発表


5.講演会第二部
 FSBL運営委員会副委員長 櫻井和朗教授の座長の下、FSBL参加企業グループから、住友ベークライトグループ 妹尾政宣氏(住友ベークライト (株) )より「医療用超高引裂きシリコーンゴムの開発」、三菱化学グループ 小島優子氏( (株) 三菱化学科学技術研究センター)より「塗布乾燥における有機太陽電池用薄膜のナノ構造形成過程」と題して研究発表がなされた。続いて、BL03XUの2012年度の新規整備状況について、ビームライン担当 増永啓康博士(JASR)(第二ハッチ)、小川紘樹博士(JASR)(第一ハッチ)から報告がなされた。
 講演会の最後は、FSBL今後の展望として、FSBL運営委員会委員長 高原淳教授から、FSBLにおける実験の実績として、Polymer Journal特集号 [3] [3] 特集号“Application of Quantum Beams to Polymer Science and Engineering” Polym. J. 45 (2013)の発刊、受賞者リストやPR活動について紹介があった。今後は、どのような構造を評価したいのか、そのための新規概念の装置を含めた高度化を目指すこととし、形態学的観察、散乱・回折の同時測定、マイクロビームを用いた局所構造解析におけるさらに小さな領域への挑戦、元素特有の吸収を用いたASAXSの開発、高エネルギーX線を用いた水界面、X線光子相関分光法(XPCS)の開発、斜入射X線散乱(GI)における解析手法やソフトウエア開発を進めることを明らかにした。またトップサイエンス成果を国際的な学術雑誌へ積極的に投稿すること、設備向上のための予算獲得、基礎力(散乱・回折の原理、高分子構造・物性)のある若手の育成、横断的な研究会の発足(熱硬化性分科会、GI分科会)による相互交流を進めることを強調した。GIの分野で米田先生(当時九州大学)がPhysical Review [4] [4] Y. Yoneda: Phys. Rev. 131 (1963) 2010-2013.にAnomalous Surface Reflection(いわゆるYoneda Wing)について発表してから今年がちょうど50年目であることが紹介され、その歴史を認識させられた。



6.総括
 最後に研究発表会の総括をFSBL学術諮問委員 安部明廣先生(東京工業大学名誉教授)から頂いた。初めに、FSBLの立ち上げからご尽力頂き、初代FSBL学術諮問委員長を務めて頂いた故堀江一之先生(JASRI/東京大学名誉教授)への哀悼の意を表された。FSBL発足当初から1年程度はまだコミュニティーとは呼べない状況であったが、ようやくデータベースを超えたコミュニティーとして形を成してきた。これは故堀江先生が最も気にされていたことで、その心配がなくなる方向へ進んでいると前向きなお言葉を頂いた。研究発表の内容にも物理や化学のサイエンスや物の本質に深く迫った議論、哲学的になるかもしれないが、見ているものを超えた議論を期待したいと締めくくられた。
 閉会の挨拶として、FSBL運営委員会副委員長 金谷利治教授(京都大学)から、FSBLが国の予算で始まっている以上、どのように成果を見せていくか?産学連携の形をどうやって行っているのか?そのことをどう見せるか?若手研究者が育ってきていることをどのようにアピールしていくか?を考えながら進める必要があることを述べられた。



7.懇親会
 続く懇親会には、研究会参加者のほとんどが出席し、情報交換および懇親を深めることができた。金谷利治教授の開会の挨拶に始まり、来賓からの挨拶として、九州シンクロトロン光研究センター所長 上坪宏道先生より、ユーザーのニーズに対応した装置アップグレードや産学連携が新しい活動であるとのお言葉を頂いた。乾杯のご発声は、学術諮問委員 橋本竹治先生(京都大学名誉教授)に頂いた。中ほどで、JASRI 熊谷教孝専務理事よりFSBLのコンセプト、ユーザーニーズ対応の装置開発にお褒めのお言葉を頂き、若手実験者(学生、企業人)が多いことなど今後のFSBLの活動にエールを頂いた。続いて学術諮問委員 西敏夫先生(東京大学・東京工業大学名誉教授)にも挨拶を頂き、ご自身の古い研究テーマであったX線による動的構造解析に途方もない時間を費やし実験を行ったことを振り返られ、昨今のX線解析の進歩に感銘を受けられたことを述べられた。また、企業にとってはSPring-8の利用による製品開発・技術開発においてトラブルシューティングも重要であることをご指摘された。最後のご挨拶として高田昌樹先生から、FSBLが海外からも注目され、産学連携でのイノベーションに取り組む協力は一般に難しいと言えるが、ものづくりの国である日本は欧米に比べまだまだ製造業は強く、さらにそれを強くすべく、そのきっかけとなるようお手伝いをしたいとお言葉を頂いた。閉会の挨拶として、FSBL運営員会副委員長 櫻井和朗先生より、研究はマニアックでよいが、可視化やモデリングにより一般にわかりやすく見せることも重要であると締められた。



8.最後に
 全体として、各企業グループの研究成果が着実に積み重ねられてきていることが確認できた。また、企業利益、学術的研究の発展の追求のみならず、国の科学インフラとしてのSPring-8利用を通して、社会に還元していくこともFSBLの重要な使命であることが共通の認識となった。
 本研究発表会は(独)理化学研究所、(公財)高輝度光科学研究センター、九州大学シンクロトロン光利用研究センター、(社)高分子学会、(社)繊維学会、(社)日本ゴム協会、日本化学会、日本中性子科学会、日本放射光学会、産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム)、京都大学革新型電池先端基礎科学ビームライン、東京大学放射光連携研究機構(東大ビームライン)、(株)豊田中央研究所(豊田ビームライン)の協賛の下で開催されたことに感謝の意を表します。



[1] H. Masunaga, H. Ogawa, T. Takano, S. Sasaki, K. Sakurai et al.: Polym. J. 43 (2011) 471-477.
[2] H. Ogawa, H. Masunaga, S. Sasaki, S. Goto, T. Tanaka et al.: Polym. J. 45 (2013) 109-115.
[3] 特集号“Application of Quantum Beams to Polymer Science and Engineering” Polym. J. 45 (2013)
[4] Y. Yoneda: Phys. Rev. 131 (1963) 2010-2013.



山本 勝宏 YAMAMOTO Katsuhiro
名古屋工業大学 大学院工学研究科
〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町
TEL:052-735-5277
e-mail:yamamoto.katsuhiro@nitech.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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