Volume 18, No.1 Page 35
5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS
平成22年度指定パワーユーザー中間評価報告
Interim Review Report on Power Users Designated in FY2010
パワーユーザー制度は平成15年度より導入され、公募・審査を経て指定(指定期間は最大5年間)されています。パワーユーザー中間評価は、パワーユーザー審査委員会において、開始から3年目となったパワーユーザーを対象とし、あらかじめ提出されたパワーユーザー中間報告書に基づいたパワーユーザーによる発表とヒアリングにより、提案時の目的達成度と得られた成果および4年目以降の計画の妥当性を評価し、4年目以降を実施するかどうかが判断されます。今回は、平成22年度指定のパワーユーザー1名について、中間評価(平成24年10月15日開催)を行いました。
以下にパワーユーザー審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。
1.入舩 徹男(愛媛大学)
(1)実施内容
研究テーマ:マルチアンビル実験技術の高度化と下部マントル条件下でのレオロジー・弾性波速度・相関係の精密決定:地球深部のダイナミクスと進化過程の解明に向けて
装置整備:大型D-DIA型ガイドブロックシステムの導入・開発と周辺装置の高度化
利用研究支援:当該装置を用いた共同利用研究の支援
(2)ビームライン:BL04B1
(3)評価結果:4年目以降を実施する
(4)評価コメント
本PUは、総合評価として(1)優れた研究成果の創出、(2)実験ステーションの整備、高度化、(3)利用研究の拡大・推進、および利用者支援、いずれにおいても満足のいく成果を上げている。以下にそれぞれについてコメントする。
(1):変形実験について、高温高圧下でのレオロジー研究手段が確立され、主要鉱物についての粘性、塑性強度が測定できるようになったことは高く評価できる。特にhcp-Feの選択配向についての知見が得られたことは、今後の発展が期待される。弾性波測定について安定して結果が得られるようになってきている。特にスティショバイトに関する新しい情報は有意義である。さらにヒメダイヤの創製・開発は素晴らしい成果であり、大型プレスによる高圧実験の圧力拡大に多大な貢献をしている。さらなる開発とこの技術を利用した地球科学への応用研究を期待する。
(2):二次元X線回折測定システムの整備、拡大光学系の整備を進めており、整備完成後の測定精度の向上に寄与することが期待される。
(3):地球科学分野だけでなく、材料科学分野にも成果が出るように支援を行っていることが高く評価される。また、海外の研究者に対しても多くの支援を行っていることは、高圧分野のみならず、SPring-8のグローバル化にも寄与しており評価される。
このようにPUの3つのミッションを理解し、それぞれに対して高く評価される成果を出しており、残りの1年半PUとして当初の計画を全うするように研究を続けていただきたい。