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Volume 29, No.1 Page 1

理事長室から 今後に向けてJASRIの成すべきこと-JASRI Vision 2030-
Message from President What JASRI should do for the future – JASRI Vision 2030 –

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

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 近年、私達を取り巻く科学技術、社会、世界の変化は大きく、それに伴い新たに取り組むべき課題が現れた。脱炭素社会に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)、AI等の情報技術の急速な進展によるDX(デジタルトランスフォーメーション)、エネルギー・半導体などのサプライチェーンのリスクに対応する「経済安全保障」、少子高齢化によって必要性が高まる「若手研究人材の育成」等々である。
 第4世代放射光施設に関しては、欧米ではアップグレードが、アジアでは新建設が進み、我が国ではNanoTerasuが本年4月から稼働が始まる。SPring-8においては、第4世代化(SPring-8-II)に向けた高度化開発費が2024年度に認められた。いずれにおいても、JASRIに対する期待は大きい。放射光科学の人材宝庫であるJASRIの強みを更に強化して、研究成果の最大化に向けて、役職員が一体となって取り組んで行きたい。以下に年頭挨拶で紹介したJASRI Vision 2030の要点を記し、皆さんと共有したい。

I. 安全で安心な研究環境と職場環境を創る。
 研究・技術・事務の職員の総合力でその安全を確保することが大前提。まずは、放射線、高圧ガス、電気機器、化学薬品、交通安全等の物理的安全性。次には、DX化に伴い大切な情報や技術を守る情報的安全性(情報セキュリティ)。更には、共通の目標に向け、お互いに忌憚なく議論し、相互協力の精神で仕事に取り組むための土台である心理的安全性[1][1] 「理事長室から 心理的安全性―安心・安全なJASRIを目指して」
https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=41052
。相互信頼・相互尊重の姿勢を持って、役職員間のコミュニケーションを活性化し、個人力とチーム力を発揮できる安全で安心な研究環境と職場環境を創る。

II. 施設者と密な情報共有と信頼関係を構築し、第4世代放射光施設(SPring-8-II・NanoTerasu)を核とした放射光研究をバランスよくリードする機関となる。
 来年度末に共用を開始するNanoTerasuの登録機関に申請し、その審査が進行中。その採択を前提にして、必要な事柄を計画的に進め、研究・安全管理・事務の組織化など仙台での運営体制の構築を最重要事項の一つとして取り組み、NanoTerasuの登録機関としての業務運営の基盤を作る。研究開発力を磨きながら、両研究施設の安定運用と持続的な高度化の両方に確実に貢献し、加速器・ビームラインの研究開発と利用系の研究開発をバランスよく一体となって進める。

III. 多様化する利用者ニーズに的確に応える利用者支援とそれに向けた仕組みつくり。
 利用者ニーズが多様化・高度化するなかで、利用者目線で的確に利用者ニーズを捉える利用者支援を、技術相談から成果創出まで見届けるという視点を持って、迅速・確実に行う。職員一人ひとりの主体的、自律的、積極的な取り組み、チーム力を発揮した支援を行う。更に、利用成果の価値の最大化につながる積極的な提案を含めた利用支援の高度化・総合化を目指す。第4世代放射光施設で可能になる新規研究テーマに関して、継続的に積極的な提案を行う。施設・設備の高度利用や利用者開拓のため、利用者コミュニティ(SPRUC、利用推進協など)と一体となった活動を行う。第4世代放射光施設の有する性能・能力に関して、ターゲットを明確にして分かり易く伝え、かつ、潜在的利用者の開拓にも繋がる戦略的広報を行う。

 

 

[1] 「理事長室から 心理的安全性―安心・安全なJASRIを目指して」
https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=41052

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794