Volume 29, No.4 Pages 393 - 394
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)四季報
SPRUC Communications
1. はじめに(夏号以降の動向)
SPring-8/SACLA利用者情報夏号(前号)のSPring-8ユーザー協同体(SPRUC)四季報[1][1] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43254以降、SPRUCでは重要な行事が数多く開催されました。9月1日(日)から4日(水)の期間にSPring-8サイトで第8回SPring-8秋の学校、9月5日(木)から6日(金)の期間に九州大学でSPring-8シンポジウム2024が開催されました。そして、SPring-8シンポジウム期間中には、13th SPRUC Young Scientist Awardの授賞式、受賞講演も行われました。また、SPRUCの現状報告と今後について議論するための評議員会、総会、代表機関会議も滞りなく開催されました。SPring-8秋の学校、SPring-8シンポジウムでは実行委員、事務局の方々のご尽力で成功裏に終了しました。関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。詳細は、本号の報告記事[2, 3][2] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43593
[3] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43594をご参照ください。
今年度は、上記の恒例行事に加え、SPring-8-IIの利用提案と新設されたNanoTerasuのユーザー共同体との連携に向けた懇談を会員の皆様にお願いしました。これら2つの取り組みについて、状況をご説明したいと思います。
2. SPring-8-IIの利用提案
SPring-8は放射光利用研究で世界を牽引し続けていきます。このアクティビティを継続するためには、SPring-8-IIへのアップグレードは必須です。SPRUC内ではこれまで時間をかけて議論してきておりましたが、外部への働きかけの取り組みとして5月初旬にSPring-8-IIの利用提案を募らせていただきました。幅広い分野からの数多くのご提案をいただき、その必要性を改めて認識しました。これらのご提案は、専門的な視点から非常に重要ですので、今後、SPRUC研究会や関連学協会等で議論を深化させていくことが大切になってきます。一方、SPring-8が我が国の科学技術を担っていくためには社会や関係機関への発信も必要です。そこで、「SPring-8-II計画によって拓かれる豊かで持続可能な社会」という表題で、科学技術白書に示された2040年社会のイメージ「人間性の再興・再考による柔軟な社会」への貢献としてご提案いただいた利用研究内容をまとめました。この提案書は、所掌省庁である文部科学省、施設者である国立研究開発法人理化学研究所、登録施設利用促進機関である公益財団法人高輝度光科学研究センターに提出するとともにSPRUCホームページでも公開しました[4][4] http://www.spring8.or.jp/ext/ja/spruc/pdf/SP8-II_spruc2024.pdf。
文部科学省は、令和7年度(2025年度)概算要求[5][5] https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00010.htmlにおいて、新規「SPring-8の高度化(SPring-8-II)」として132億円を要求しました[6][6] https://www.mext.go.jp/content/20240827-ope_dev02-000037780_9.pdf。今後、この提案が、「SPring-8の高度化(SPring-8-II)」は利用者のみならず国民全体へ還元される取り組みであることの根拠となり、高度化推進の一助となることを期待しております。
3. NanoTerasuのユーザー共同体との連携
NanoTerasuは、昨年12月にファーストビームを達成し[7][7] https://nanoterasu.jp/2023/12/nanoterasu整備新たな局面へ、歴史的瞬間の到来-ファ/、本年5月に共用ビームラインの試験的共用を開始しました[8][8] https://nanoterasu.jp/2024/05/nanoterasu共用ビームラインの試験的共用を開始!!/。そして、いよいよ来年2025年3月からの共用ビームラインでの利用研究開始に向けた課題募集が行われました[9][9] https://user.nanoterasu.jp/project-apply/618/。特定放射光施設として世界を牽引してきた第3世代放射光施設SPring-8が第4世代化「SPring-8の高度化(SPring-8-II)」を目指している状況で、リング型の特定放射光施設が2施設になったこと、我が国初の第4世代放射光施設ができたことは意義深く、またSPRUCの活動とは無関係ではありません。軟X線ビームラインの役割分担や「SPring-8の高度化(SPring-8-II)」にむけた停止中の補完のためのNanoTerasuの利用の点からもSPRUC内での議論は重要です。
これまでSPRUCでは、NanoTerasuとの密接な連携について検討してきました。具体的には、8月中旬にSPRUC研究会の代表や有志との間で、連携の在り方についての懇談をしてまいりました。約2/3の研究会と懇談の機会をもちましたが、全ての研究会がNanoTerasuとの強い連携、具体的には、利用者組織の融合に賛成でありました。これを受けて、SPring-8シンポジウム期間中に開催された評議員会、総会で、NanoTerasuユーザー共同体との融合に向けた取り組み開始をご承認いただきました。これと並行して、SPRUCとして、NanoTerasuとの連携の必要性についてNanoTerasu側への意思表示をするために、第3回、第4回のNanoTerasu利用説明会で、SPRUC側から発信や期待を述べてまいりました[10-13][10] https://nanoterasu.jp/第3回nanoterasu利用説明会/
[11] https://nanoterasu.jp/2024/09/第3回nanoterasu利用説明会を開催しました/#NanoTerasu
[12] https://nanoterasu.jp/第4回nanoterasu利用説明会/
[13] https://nanoterasu.jp/2024/10/第4回nanoterasu利用説明会を開催しました/#NanoTerasu。各研究会においては、具体的な議論を進めていただけることと期待しております。今後、NanoTerasuユーザー共同体と具体的な検討を開始し、NanoTerasuの供用開始時期を目途にアクションを起こすことができたらと考えております。会員の皆様のご理解とご協力をお願いします。
4. おわりに
今回、SPring-8-II実現に向けた利用提案とNanoTerasuユーザー共同体との融合についての最近の動向と展望を紹介しました。今後、冬から春に向けて開催されるワークショップや特別総会で、より一層、具体的かつ踏み込んだ議論をすすめていきたいと考えております。現在、大きな変革時期にあります。この機会に適切なアクションを起こすことで、放射光利用研究環境はより良いものに進化していくものと信じております。会員の皆様におかれましては、より良い放射光利用研究の環境整備に向け、ご意見、ご要望等ございましたら、ご連絡をいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
参考文献
[1] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43254
[2] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43593
[3] https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=43594
[4] http://www.spring8.or.jp/ext/ja/spruc/pdf/SP8-II_spruc2024.pdf
[5] https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00010.html
[6] https://www.mext.go.jp/content/20240827-ope_dev02-000037780_9.pdf
[7] https://nanoterasu.jp/2023/12/nanoterasu整備新たな局面へ、歴史的瞬間の到来-ファ/
[8] https://nanoterasu.jp/2024/05/nanoterasu共用ビームラインの試験的共用を開始!!/
[9] https://user.nanoterasu.jp/project-apply/618/
[10] https://nanoterasu.jp/第3回nanoterasu利用説明会/
[11] https://nanoterasu.jp/2024/09/第3回nanoterasu利用説明会を開催しました/#NanoTerasu
[12] https://nanoterasu.jp/第4回nanoterasu利用説明会/
[13] https://nanoterasu.jp/2024/10/第4回nanoterasu利用説明会を開催しました/#NanoTerasu
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