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Volume 26, No.1 Pages 48 - 50

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

フロンティアソフトマター開発専用ビームライン第10回研究発表会
The 10th Conference on Consortium of Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)

松野 信也 MATSUNO Shinya、岩田 忠久 IWATA Tadahisa

フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体 Advanced Softmaterial Beamline (FSBL)

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SPring-8

 

1. はじめに
 フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体(FSBL)は第10回研究発表会を2021年1月12日に開催した。
 FSBLは、ソフトマターの分野で日本を代表する企業と大学によって、放射光利用によるソフトマターの研究開発の発展を目指して結成された連合体である。FSBLは(国研)理化学研究所と(公財)高輝度光科学研究センターの多大なご協力のもと大型放射光施設SPring-8のBL03XUに、日本で初めてのソフトマター研究開発専用ビームラインを設置した。2010年4月より供用を開始し、2019年9月に第1期の活動を終了した。現在、FSBLは2019年10月より第2期となり、活動を継続させている。FSBLはビームラインにおいて創出された研究成果を、広く一般に発表するとともに、参加メンバー間での情報を共有し、さらに効果的かつ高度な成果を輩出するため、年に1回研究発表会を開催している。今回の第10回研究発表会は第1期FSBLとして最後の研究発表会となった。当初、この第10回研究発表会は名古屋工業大学での開催を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、オンラインでの開催となった。以下にその概要を示す。

 

 

2. 開会の挨拶
 FSBL代表 松野信也(旭化成株式会社)より、研究発表会の開会が宣言され、4名の来賓よりご挨拶を頂戴した。
 まず、文部科学省 科学技術・学術政策局 量子研究推進室 河原卓室長より、産学連携での新たな取り組みでこれまでの10年間で多くの成果が創出されており、今後の活動にもさらなる期待が寄せられていることなど、挨拶のお言葉をいただいた。続いて(国研)理化学研究所 放射光科学研究センター 石川哲也センター長より、10年間特徴のある有意義な成果が多く創出されてきたが、今後は更なる飛躍のためにも、これまでの体制を見直し新たな形への変革が必要であり、FSBLに期待が寄せられていることなど、挨拶のお言葉をいただいた。
 さらに、(公財)高輝度光科学研究センター 雨宮慶幸理事長より第1期の10年で多くの成果が得られたが、今後は新たな取り組みを行うことが必要であることなど、挨拶のお言葉をいただいた。最後に、FSBL企画戦略アドバイザーで(一社)光科学イノベーションセンター理事長でもある高田昌樹先生(東北大学教授)より、さまざまな困難を乗り越えて設立したFSBLの更なる発展を期待しているとの挨拶のお言葉をいただいた。
 引き続きFSBL運営委員会委員長 岩田忠久(東京大学教授)より、FSBLの概要、沿革、最近の活動についての紹介を行った。

 

 

3. 講演会第1部
 FSBL副代表 小島優子(三菱ケミカル株式会社)を座長とし、研究発表会講演会第1部を開始した。
 「高輝度軟X線を利用した先端計測法の現状~ソフトマテリアル研究の新展開に向けて~」と題して、(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 分光・イメージング推進室 為則雄祐室長に特別講演をしていただいた。ご講演では、SPring-8にて展開されている最先端の軟X線計測法をご紹介いただき、ソフトマテリアル分野での利用法についていくつかの事例をご提案いただいた。
 次にFSBLメンバーのDICグループより「USAXSによる粒子分散体のチキソ挙動時の構造解析」と題して発表が行われた。印刷や塗布といった剪断がかかる状態で使用されるインキやコーティング剤など分散体でみられる剪断で低下した粘度が時間経過で回復する現象、チキソ挙動について、粒子分散体の階層構造の動的評価という面から明らかにするための研究結果である。研究ではチキソ挙動における粘度回復過程において、分散構造の変化をUSAXSプロファイルから確認することに成功し、分散製品開発での階層構造制御の重要性と粘度特性理解に有用な結果を得ることができたことが報告された。
 続いてFSBLメンバーの帝人グループより「In situ X線散乱解析に用いる各種ステージの開発」と題して市販の延伸装置では達成できない延伸条件下でのX線散乱測定についての発表が行われた。帝人グループは、1200°Cでの延伸下でのX線散乱測定が可能な高速高温引張ステージを開発して、実際の炭素繊維の焼成プロセスを模した条件で生成された炭素の配向度や結晶サイズの変化の様子をWAXSにより明らかにした結果、ならびに圧縮アクセサリーを装備したリンカム社製の延伸ステージを用いて圧縮応力下での超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の結晶相転移(hexagonal→orthorhombic)をWAXSで捉えることができたことを報告した。
 講演会第1部の最後には、アドバンスチャレンジ課題の成果報告がなされた。FSBLでは2017年度より、参画グループ各社からビームタイムを出し合い、全参画グループにとって重要かつBL03XUで着手される機会のなかった斬新な課題を募集し、産学連携将来高度化委員会で審査の上、アドバンスチャレンジ課題として採択し、その実施をしている。
 2019年度に実施されたアドバンスチャレンジ課題のうち、名古屋工業大学 山本勝宏准教授より、「異常分散効果を利用した斜入射小角X線散乱法による多成分系高分子薄膜の構造解析」と題して、発表が行われた。この研究においては、ポリスチレン(PS)-b-ポリヒドロキシスチレン(PHS)に臭素化ポリヒドロキシスチレン(Br-PHS)をブレンドした高分子薄膜において、Brの吸収端近傍でX線エネルギーを変化させながら斜入射小角X線散乱(GISAXS)測定を行い、Br-PHSの空間分布およびミクロドメイン構造の配向の深さ依存性を明らかにしており、山本准教授は異常分散効果を利用した斜入射小角X線散乱法を用いることによりサブμm~数μmスケールでの深さ分解構構造造解析と特定成分の空間分布解析が可能であることを示した。

 

 

4. 講演会第2部
 講演会第2部においては、FSBL運営副委員長 秋葉勇(北九州市立大学教授)を座長とし、北九州市立大学国際環境工学部 櫻井和朗教授の特別講演および3つのFSBLからの講演が行われた。
 特別講演「レギュラトリーサイエンスから見た溶液中のナノ粒子の特性評価」においては、櫻井教授らが基礎から開発を始めて、現在臨床試験を行っている多糖核酸複合体、また精密な構造解析をした高分子ミセルなどの例を用いて、溶液散乱法が明らかにできる水溶液液中のナノメディシンの構造やその分布に関して講演いただいた。
 次にFSBLメンバーの住友ゴムグループより「X線光子相関分光法による伸長下でのゴム中のフィラーの運動解析」と題して発表が行われた。同グループは、XPCSデータからTwo-time correlationを計算し、伸長時でのゴム中のフィラーの運動の時間変化と運動の異方性について検討を行った結果についての報告を行った。報告において、伸長に対して平行方向にはシリカの運動性は時間とともに変化するのに対して、伸長に垂直方向ではシリカの運動性は変化しにくいことを明らかにし、その要因が伸長により生じる垂直方向の圧縮の力であるということが報告された。
 続いてFSBLメンバーであったが、2019年9月のFSBL第1期満了時に脱退された昭和電工グループより「アイソタクチックポリプロピレンシートの高透明化と構造」と題して発表が行われた。発表では、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)と溶融型透明核剤からなる系を伸長結晶化すると“ナノ配向結晶(nano oriented crystal, NOC)”生成による高透明化と高性能化が小さな伸長ひずみ速度で容易に実現できること、およびそのメカニズムを解明するための検証を行った結果についての報告がなされた。
 最後に、ビームライン担当者よりハイスループット化についての報告がなされた。FSBLでは、BL03XU建設より10年が経過し、より測定性能や安全性を向上させるため、実験設備のハイスループット化を2020年度に実施した。報告では、小角カメラ距離変更システムの全自動化及び省力化の実施により、これまで実験装置の変更には数時間から1日弱の時間を有していたが、数分から1~2時間程度に機器調整時間を削減し、実測定時間を増加させたことが報告された。さらに、より高精度のマイクロビーム測定システム、USAXS測定システムを導入することにより、アンジュレータ光源をフル活用したより高度な小角X線散乱測定が可能となったこと、また遮蔽ハッチの開閉部への安全装置の追加や、光源・光学系基幹チャンネル及び制御・インターロック部品の入れ替えにより、安全性能や設備の安定性の向上も実現できたことが報告された。

 

 

5. 総括
 FSBL学術諮問委員会 橋本竹治委員長(京都大学名誉教授)ならびにFSBL堀江賞選定委員会・産学連携将来高度化委員会 田代孝二委員長(豊田工業大学教授)より、引き続き活発な活動がFSBLで実施されるとともに、多くの成果が創出されることを祈念する言葉をいただき、閉会となった。

 

 

6. まとめ
 今回初のオンライン開催となり、発表者のプレゼンテーション資料の画面共有がスムーズでなかったり、質疑応答や発表内容への議論を行う場がないなど、運営側で多くの反省点があったが、参加登録者数156名、最大同時接続者数118名となり、FSBLの活動を広く多くの方々に報告することができた。

 

 

謝辞
 FSBL第10回研究発表会は、下記の13団体より協賛をいただいた。深く感謝申し上げる次第である。
・(国研)理化学研究所 放射光科学研究センター
・(公財)高輝度光科学研究センター
・(公社)高分子学会
・(一社)繊維学会
・(一社)日本ゴム協会
・(公社)日本化学会
・日本中性子科学会
・日本放射光学会
・産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム)
・京都大学産官学連携本部革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発拠点(京大ビームライン)
・東京大学放射光連携研究機構(東大ビームライン)
・(株)豊田中央研究所(豊田ビームライン)
・(公財)ひょうご科学技術協会(兵庫県ビームライン)

 

 

 

松野 信也 MATSUNO Shinya
岩田 忠久 IWATA Tadahisa
フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体
〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-1911
e-mail : fsbl@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794