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Volume 25, No.4 Pages 363 - 365

4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS

SPring-8利用推進協議会と研究会活動について
Introduction of Industrial Users Society of SPring-8

山口 章 YAMAGUCHI Akira[1]、冨松 亮介 TOMIMATSU Ryosuke[2]

[1]SPring-8利用推進協議会事務局/(公財)高輝度光科学研究センター 常務理事 Executive Managing Director of JASRI、[2](公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 先進的な解析技術を活用して新材料や新製品の開発を進める産業利用が重要視されています。SPring-8利用推進協議会(以下、「推進協」)は、SPring-8の施設および利用者双方が発展し続けることを目指して設立されましたが、その成り立ちや役割のいずれもあまり知られていないと思われます。そこでこの度、推進協の活動を紹介する機会を設けさせていただきました。

 

 

概要
 推進協は、会員企業の要望を取りまとめて国や施設管理者へ提言すると共に、新しい測定技術や利用成果の紹介による産業界の利用拡大や、国内外の放射光施設・各種機関との連携などによる産業利用動向の調査研究などを行い、広くSPring-8産業利用成果を示し、施設および利用者双方が発展し続けることを目指した団体です。2020年9月現在、59社2団体9機関が参画しています。SPring-8の利用者団体としては、SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)がありますが、推進協がSPRUCと異なるのは、SPRUCでは個人単位で参加しているのに対し、推進協は企業・団体単位であることです。これは経済界が、「SPring-8を最大限に活用し効果を十二分に上げる」には、「産業界全体として大学や研究法人と連携を図りながら利用者がSPring-8を容易に利用できる体制」が不可欠と考えて設立した団体だからです。もちろん推進協にも研究会や研修会などが設置されており、企業研究者や技術者が参加する場が設けられています。

 

 

「SPring-8利用推進協議会」の歴史
 SPring-8着工前の1988年、経済団体連合会と関西経済連合会の両会長による推進協設立の呼び掛けが始まりました。1990年、SPring-8の建設に向け国が約1,100億円を投じ、兵庫県も約141 haの土地を提供する見込みになりました。当初からSPring-8は産学官に広く使われることを目指していましたので、産業界が大学や研究法人と連携を図りながら、「利用者がこの施設を容易に利用できる体制」を整備することが不可欠と考えられ、同年9月にSPring-8利用推進協議会を設立しました。9月27日には50社7団体の58名が参加した第1回協議会を開催して組織や事業計画を決定し、12月には施設の管理運営と利用研究や利用者の支援を行う財団として高輝度光科学研究センター(JASRI)を設立するという驚くべきスピードで体制整備が開始しました。JASRI設立後は活動の多くをJASRIに移管しました。一方で、1991年には産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム)の設立にも寄与し、1996年には産業界がSPring-8を利用できる環境を国に求めるため、「大型放射光施設SPring-8の産業利用の促進に関する要望書」を科学技術庁長官に提出するなど、産業利用に対する支援の要請なども行いました。また、2010年の行政刷新会議の事業仕分け時には、SPring-8を含めた日本の科学技術への支援を求める要望書を関係学会などと共に提出しました。その後も時代の要望に則し組織や研究会活動も変遷を遂げ、最近の活動は産業界の利用に関する検討や企業に対する普及活動などに重きが置かれていますが、推進協はJASRIの生みの親として産業界を始めとする利用者のニーズを反映させ、利用者がSPring-8を容易に利用できる体制を作るために施設側や国に働きかけるという発足時の精神は現在も受け継がれています。
 現在、「施設運営に関する体制整備」、「産業界のSPring-8利用に関する検討」および「企業に対するSPring-8の普及活動」をスローガンとし、「総会」で年間および中長期方針を決定し、会員から15名程度選出した「運営委員会」で活動内容の詳細な議論や企業利用者の国や施設に対する要望をまとめる作業もしています。「研究会」ではそれぞれの分野で講演会などを通じて産学官の情報交換も実施しています。また企業利用者が円滑に施設を利用できるよう、分析方法の基礎的知識や実験データから得られる情報を最大限に活用する技術を学べる「測定実習」も実施しています。さらにはSPring-8の産業利用の成果報告会である「SPring-8産業利用報告会」に共主催者として参画しています。

 

 

「研究会」活動について
 現在、表1に示す7つの研究会を開催しています。これらの研究会は企業の参加者が約半数を占めますが、半数は大学や施設の研究者が参加しての活発な議論が行われており、産官学の良い交流の場になっています。今年から新たに「SPring-8放射光利用技術研究会」を開始しましたのでその内容を説明します。
 近年、企業の事業活動の中で放射光が重要なツールとして不可欠な存在となり、SPring-8のみならず国内外の放射光施設が活用されています。日本では複数の放射光施設が活用できる恵まれた環境がありますが、これを有効に活用するには、各施設、各ビームラインの特徴を活かした実施が重要であり、それぞれの特徴を把握することが必要です。このため、産業分野で活用されている放射光手法について、国内の各施設や測定機器の特徴を推進協会員と施設が共有するための研究会を開始しました。具体的には、産業界の利用が多い国内の複数施設もしくは複数の実験ステーションで実施されているXAFS、小角散乱、光電子分光などの技術について、ラウンドロビン実験による同一試料のデータの取得と比較、および知見の共有を行うもので、文科省の共用促進事業「光ビームプラットフォーム」の測定標準化活動で取得・公開されたデータを積極的に活用していく予定です。実施期間は当面、2021年3月までとしていますが、今年度の状況を見た上で来年度の継続を判断する予定です。
 さらに今後は、産・学・施設間でそれぞれのベクトルを合わせ、我が国の産業技術とそれを支えるサイエンスを発展させ、国際競争力を高めるための議論の場を設けるなど、産学官が一体となった成果の最大化を目指していきます。

 

表1 SPring-8利用推進協議会の「研究会」概要
研究会名 活動内容
SPring-8産業利用研究会 放射光の産業利用に関するトピックスを取り上げた研究会を開催。産業利用報告会を他機関と共同で開催。
SPring-8データ科学研究会 計測インフォマティクスやマテリアルズ・インフォマティクスの先端研究成果の紹介と活用の推進。
SPring-8先端放射光技術による化学イノベーション研究会 SPring-8先端放射光技術を活用し、化学イノベーションの実現を加速させるための情報交換、人材交流、研究環境の提供。
SPring-8金属材料評価研究会 鉄鋼を始めとする金属材料全般を対象に、SPring-8硬X線の新技術の情報発信により、更なる利用拡大と利用技術の向上を図る。
SPring-8グリーンサスティナブルケミストリー研究会 環境負荷の少ない高効率な次世代触媒など、環境にやさしく持続成長可能な循環型社会を実現するための化学技術分野に関する情報の交換。
SPring-8次世代先端デバイス研究会 次世代先端デバイスとしてX線散乱・回折、X線分光技術に関する研究事例紹介や次世代デバイス開発の展望についての議論。
SPring-8放射光利用技術研究会 国内の放射光施設や測定機器の特徴を実際の測定実施において把握し、産業分野での活用を促進。

 

 

今後のSPring-8利用推進協議会に向けて
 SPring-8における産業利用も約20年が経過しました。SPring-8を含む放射光技術は企業活動における必須のツールとして企業にも経験豊富な方々が見受けられるようになりました。また今年はコロナ禍でSPring-8の新たな利用方法も必要になってきています。推進協もこのような環境の変化に対応して企業利用者がより大きな成果を創出し、今後のSPring-8の発展にも寄与できるよう努めたいと考えています。このような趣旨に賛同いただき、活動に参画いただける企業様を随時募集しています。詳細については事務局(iuss@spring8.or.jp)までお問い合わせください。また推進協の活動内容につきましてはホームページ(http://www.jasri.jp/iuss/)もご参照ください。

 

 

 

山口 章 YAMAGUCHI Akira
(公財)高輝度光科学研究センター 常務理事
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0954
e-mail : yamaguchi-akira@spring8.or.jp

 

冨松 亮介 TOMIMATSU Ryosuke
(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2785
e-mail : tomimatsu@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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