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Volume 24, No.3 Pages 301 - 304

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第19回SPring-8夏の学校を終えて
The 19th SPring-8 Summer School

八木 直人 YAGI Naoto

SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 SPring-8 Summer School Executive Committee, Chair

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SPring-8

 

夏の学校の概要
 「第19回SPring-8夏の学校」は、2019年7月7日(日)~7月10日(水)の4日間の日程で、全国31校から90名の学生の参加を得て、放射光普及棟およびSPring-8蓄積リング棟、SACLA実験研究棟を会場として開校されました。この夏の学校は、SPring-8サイトに施設を持つ各機関((公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所・放射光科学研究センター、日本原子力研究開発機構・物質科学研究センター、量子科学技術研究開発機構・放射光科学研究センター)と、これらの機関と連携大学院協定を持つ大学(兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科、関西学院大学大学院理工学研究科、岡山大学大学院自然科学研究科)およびSPring-8サイトにビームラインを持ち、そこで教育を行っている大学(東京大学放射光分野融合国際卓越拠点、大阪大学・未来戦略光科学連携センター・蛋白質研究所・核物理研究センター)が主催して、ビームタイムや教官を供出し合って行ったものです。校長はJASRI理事長で東京大学名誉教授の雨宮慶幸先生にお願いしました。実行委員会は主催団体のスタッフで構成され、事務局はJASRI利用推進部が行いました。なお、主催大学の中には夏の学校への参加を講義として単位認定しているところもあります。

 

図1 講義風景

 

 

カリキュラムについて
 夏の学校では通例として、初日に3講座、2日目に4講座の講義を行い、その後の2日間に2テーマの実習を行っています。また、SACLAとSPring-8実験ホールの見学、さらにはSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学が行われました。参加者間の交流を深めるため、自己紹介や懇親会も行っています。今年のスケジュールは以下の通りでした。

 

第19回SPring-8夏の学校 日程表 − 2019年7月7日(日)~10日(水)

 

ビームライン実習について
 実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。

BL01B1 “その場”XAFS計測
(加藤和男・伊奈稔哲・宇留賀朋哉(JASRI))
BL02B1 単結晶構造解析の入門
(野上由夫(岡山大学)、安田伸広(JASRI))
BL04B1 大容量高圧プレスと白色X線を用いたX線回折実験
(肥後祐司(JASRI))
BL04B2 高エネルギーX線を用いたガラス・液体の構造解析
(尾原幸治(JASRI)、廣井慧(NIMS))
BL07LSU 推理の放射光元素分析
(松田巌・原田慈久(東京大学))
BL13XU サブミクロン集光放射光ビームによる局所領域回折実験
(木村滋(JASRI/岡山大学)、隅谷和嗣(JASRI))
BL14B1 放射光を利用した高温高圧合成
(齋藤寛之(QST))
BL14B2 XAFS分析の基礎
(渡辺剛・大渕博宣(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))
BL19B2 粉末X線回折
(大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))
BL20B2 放射光X線画像計測の基礎
(星野真人・上杉健太朗(JASRI))
BL22XU XAFSによる溶液内イオンの光酸化還元挙動解明
(小林徹・藤森伸一(JAEA))
BL24XU X線“レンズ”による結像の基礎とソフトマテリアルの顕微CT
(高山裕貴・篭島靖(兵庫県立大学)、漆原良昌(放射光ナノテクセンター))
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光
(横谷尚睦(岡山大学)、室隆桂之・小谷佳範(JASRI))
BL26B1 単結晶回折(タンパク質)
(熊坂崇(JASRI/関西学院大学)、馬場清喜・河村高志(JASRI))
BL29XU 走査型蛍光X線分析
(香村芳樹(理化学研究所)、志村まり(国立国際医療研究センター))
BL33LEP GeV光ビームの生成と粒子・反粒子対の測定
(村松憲仁・宮部学・時安敦史(東北大学)、與曽井優(大阪大学))
BL39XU 硬X線磁気円二色性分光による磁性体試料の解析
(鈴木基寛・河村直己・水牧仁一朗・大沢仁志(JASRI))
BL40B2 X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析
(八木直人・関口博史(JASRI))
BL43IR 顕微赤外分光による種々の組成分布解析
(森脇太郎・池本夕佳(JASRI))
BL44XU 単結晶回折(タンパク質)
(中川敦史・櫻井啓介(大阪大学)、山下栄樹(JASRI))
BL46XU X線反射率
(小金澤智之・安野聡(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))

 

図2 実習風景

 

 

 昨年は、それまで100名以上あった参加申込みが70名程度しかなく、原因が分からず大いに悩みました。しかし今回は茨城大学からの10名以上の参加もあって、97名の参加申込みの中から90名での開催となりました。参加大学数も昨年の21から31に増えています。今年度は昨年参加のなかった大学にポスターを送付するなど広報に力を入れており、その効果があったのかも知れません。
 また、昨年は豪雨の影響で参加キャンセルもありましたが、今年はバーベキューが雨に見舞われた以外は天候にも恵まれ、事故もなく終了することができました。参加者のアンケートでも回答者全員が「夏の学校に参加して良かった」と回答しており、充実した4日間だったようです。

 

 

謝辞
 熱意のこもった講義をしていただいた講師の先生方、2日間にわたる実習を熱心に指導していただいた実習担当の皆様、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、特に大人数の参加者にSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学を可能にしていただいたJASRI光源基盤部門の方々、SACLA収納部の見学にご尽力いただいた理研およびJASRI関係者の方々に感謝致します。また、事務局としてウェブ作成から懇親会・バーベキューの世話まで努力されたJASRI事務局担当者の方々にも感謝したいと思います。特にバーベキューにおいては、量子科学技術研究開発機構・放射光科学研究センターの皆様にお世話になりました。ここで御礼申し上げます。

 

 

八木 直人 YAGI Naoto
(公財)高輝度光科学研究センター
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : yagi@spring8.or.jp

 

 

 

 

第19回SPring-8夏の学校に参加して

 

 

山形大学 大学院有機材料システム研究科
間瀬 元太

 

 

 今回SPring-8夏の学校に参加して、とても楽しく充実した4日間を過ごすことができました。私は、今まで大型放射光施設はPhoton Factoryしか利用したことがなく、参加前の気持ちとしては不安ではあるものの日本一大きな放射光施設を見て回れる機会に胸を躍らせていました。1日目、2日目は放射光発生の原理や検出器など基礎的なものから、X線イメージングや構造解析への応用までと色々な講義を聞きました。実際に講義を受けてみて、自分の知っている基礎の復習になり、少し応用した専門性の高い内容をそれぞれ分野の異なる多くの参加者にも分かりやすく教えていただきました。分からなかった部分もありましたが、質問すると丁寧に教えていただけました。また、論文でしか目にすることのできなかった方々の講義を受け、質問できる機会はとても有意義な時間になりました。中でも自分の専門に近い講義は、自分の研究にどう結びつくのかを考えながら聞くことでよりためになると感じました。一方、利用したことのない装置の原理も知識として知ることができたので大変勉強になりました。また、講義ばかりではなく2日目の朝にはXFEL(SACLA)、夜にはSPring-8蓄積リング棟実験ホール、3日目夕方にはSPring-8リング棟加速器収納部の見学もさせていただきました。講義で教わったばかりの放射光発生に関わる装置を実際に見て回り細かな説明をしてもらうことでより理解も深まりました。日頃立ち入ることのできない場所なので、とても良い経験になりました。
 実習は、BL33LEP(GeV光ビームの生成と粒子・反粒子対の測定)とBL13XU(サブミクロン集光放射光ビームによる局所領域回折)を選択しました。私はX線によるプラスチックの構造解析を行っております。しかし、折角夏の学校に来たのでSPring-8でしかできない新しいことを学んでみたいと思いγ線のことを学ぶことができるBL33LEPの実習を選択しました。本実習では低エネルギー光子を高エネルギー電子で180度後方散乱させるレーザー逆コンプトン散乱を用いることでγ線を発生させていました。γ線は原子核を研究するのに用いることができ、日ごろ結晶ラメラ領域での電子密度の粗密から構造解析をする私には新鮮に感じられました。丁寧にγ線の基礎から教えていただき、初めての実験に対して考察をしながら測定を行いました。将来的に直接γ線を利用するかは未定ですが、初めての場所で、新しいことを学び、そこからどのような結果になるのか考察する経験は今後の実験にもとても役立つと思いました。
 夏の学校の醍醐味である同世代の違う分野の方との交流は、非常に楽しく刺激的なものになりました。1日目の懇親会で仲良くなった友達とは懇親会のない2日目の夜も集まって研究の話やたわいのない話をして楽しい時間を過ごしました。3日目のバーベキューでは、みんなの仲も深まり、美味しいお肉を食べながらの夏の学校最後の夜は大いに盛り上がりました。交流の中でも、同世代の頑張っている研究の話や、学校生活に関して多くの人と話したことはとても刺激になりました。またこのような仲間と楽しく学び、過ごしたこの4日間は今の研究のモチベーションに繋がっています。

 

図3 懇親会風景

 

 

 最後に、第19回SPring-8夏の学校の期間中は実行委員の方々や講師の先生、ビームライン担当者の方々に大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。

 

図4 記念写真

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794