ページトップへ戻る

Volume 21, No.3 Pages 210 - 211

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2013A期 採択長期利用課題の事後評価について – 1 –
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2013A -1-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

pdfDownload PDF (600 KB)
SPring-8

 

 2013A期に採択された長期利用課題について、2015B期に3年間の実施期間が終了したことを受け、第56回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(平成28年4月)において、事後評価が行われました。
 事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に対象となる長期利用課題の評価結果を示します。研究内容については本誌181ページの「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
 なお、2013A期に採択された長期利用課題2課題のうち残り1課題の評価結果は「SPring-8/SACLA利用者情報」Vol.21 No.4(2016年11月号)に掲載する予定です。

 

課題名 外場によって誘起される原子・分子ダイナミクスのマルチモード時分割構造計測
実験責任者(所属) 青柳 忍(名古屋市立大学)
採択時課題番号 2013A0100
ビームライン BL02B1
利用期間/配分総シフト 2013A~2015B/231シフト

 

[評価結果]

 本課題においては、外場によって誘起される原子・分子のダイナミクスを計測するための時分割単結晶X線構造解析技術を確立すること、そして様々な機能性材料の機能発現機構を原子・分子ダイナミクスの観点から解明することを目的として、研究が進められた。これらの目的を達成するために、SPring-8の短パルス放射光、高速X線チョッパー、大型湾曲イメージングプレートを組み合わせ、kHzからMHz領域における時分割構造解析が行われた。
 本課題の大きな成果は、交流電場下の原子・分子ダイナミクスをリアルタイムで計測可能な時分割単結晶X線構造解析技術を確立したことにある。この技術を利用して、30 MHzの水晶振動子の共振状態の構造ダイナミクス計測に成功したことは、高く評価できる。また、リラクサー強誘電体の単結晶試料に、3 kHzの交流電場を印加したときに生じる分極反転の構造ダイナミクス計測にも成功しており、この成果は学術的意義が高いだけでなく、応用材料開発の観点からも評価できる。これらの結果から、本実験責任者が広い周波数領域の電場下での時分割構造解析に成功したと判断できる。その他にも、LiTaO3単結晶の静電場下の結晶構造解析、ランガサイトの圧電振動のサブナノ秒時分割構造解析などにも成功している。また、フラーレンに内包された原子・分子のダイナミクス計測を目指し、物質・物性探索を行っている。これらの研究結果は、論文発表および国内外の学会発表という形で、十分に発信が行われている。
 以上のように、本課題の成果として、交流電場下での時分割構造解析という計測技術の大きな進歩が認められ、計測技術開発の目的は達成していると判断できる。ただし、本計測技術を利用した個別の研究課題においては、十分な成果に至っていない部分もあり、今後の研究展開に期待したい。総合的に判断して、長期利用課題としての目的は、ほぼ達成されていると評価できる。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1]SPring-8 publication ID = 27483
H. Ueno et al.: "Kinetic Study of the Diels-Alder Reaction of Li+@C60 with Cyclohexadiene: Greatly Increased Reaction Rate by Encapsulated Li+" Journal of the American Chemical Society 136 (2014) 11162-11167.

[2]SPring-8 publication ID = 29610
S. Aoyagi et al.: "Crystal Structure Analysis of LiTaO3 under Electric Field" Japanese Journal of Applied Physics 54 (2015) 10NB03.

[3]SPring-8 publication ID = 29611
R. Yoshida et al.: "Crystal Structure and Magnetic Properties of the Charge-Transfer Complex (BDTA)2(H3O)2[Fe(II)(CN)6]" Synthetic Metals 208 (2015) 43-48.

[4]SPring-8 publication ID = 30030
S. Aoyagi et al.: "Atomic Motion of Resonantly Vibrating Quartz Crystal Visualized by Time-Resolved X-ray Diffraction" Applied Physics Letters 107 (2015) 201905.

[5]SPring-8 publication ID = 30257
Z. Wang et al.: "Isolation and Structure Determination of a Missing Endohedral Fullerene La@C70 through In Situ Trifluoromethylation" Angewandte Chemie International Edition 55 (2016) 199-202.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794