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Volume 21, No.1 Page 41

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

平成22年度指定パワーユーザー事後評価報告
Post-Project Review of Power Users Designated in FY2010

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 パワーユーザー制度は平成15年度より導入され、公募・審査を経て指定(指定期間は最大5年間)されました。なお平成25年度からは、これまでの「パワーユーザー」の名称および一部運用を変更し、「パートナーユーザー」(以下「PU」という。)として公募しています。
 パワーユーザーの事後評価は、PU審査委員会において、あらかじめ提出されたパワーユーザー終了報告書に基づいたパワーユーザーによる発表と質疑応答により行われます。事後評価の着目点は、パワーユーザーとしての(1)目標達成度、(2)支援研究成果(科学技術的価値、科学技術的波及効果、ユーザー開拓および支援、測定技術開発、情報発信)です。今回は、平成22年度指定のパワーユーザー1名(指定期間:平成22年4月1日から平成27年3月31日まで)について、事後評価(平成27年10月7日開催)を行いました。
 以下にPU審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。

 

 

1. 入舩 徹男(愛媛大学)
(1)実施内容

研究テーマ:マルチアンビル実験技術の高度化と下部マントル条件下でのレオロジー・弾性波速度・相関係の精密決定:地球深部のダイナミクスと進化過程の解明に向けて

装置設備:大型D-DIA型ガイドブロックシステムの導入・開発と周辺装置の高度化

利用研究支援:当該装置を用いた共同利用研究の支援

(2)ビームライン:BL04B1
(3)評価コメント
 本課題は、下部マントルの物性・化学組成を明らかにし、地球深部の動的挙動および進化過程について知見を得ることを目的としている。そのため、
 ① 高温高圧変形実験におけるレオロジーの解明
 ② 超音波技術を応用した弾性波速度精密決定
 ③ 焼結ダイヤによる相転移・融点・状態方程式の精密決定
 ④ ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)を用いた新技術開発
という4つの目的を設定して研究を進めてきた。その結果、各目的に対応して、下記のような顕著な成果が挙がっている。

 〇マントル遷移層上部において、マントルの粘性率が主要鉱物の含水量に大きく依存していることが明らかになった。内核の地震波速度異方性形成メカニズムに関連した重要な情報を得た。

 〇マントル遷移層の化学組成の検討により、この領域が主にパイロライト組成でできていることが明らかになった。

 〇下部マントル条件下で、新しい含水高圧相(Phase H)を発見した。

 〇マルチアンビル装置を用いた圧力として世界最高の125 GPaの発生に成功した。ヒメダイヤを用いた高圧下X線吸収実験において、単結晶ダイヤモンドを用いた実験では避けられないブラッグ反射に起因するノイズの除去に成功した。

 これらの成果は、地球惑星科学において大きな意義を持っており、本課題の当初目標はほぼ達成できたと考えられる。これらの研究成果は、論文や国際会議において十二分に情報発信が行われており、当該研究分野に多大なインパクトを与え、大きな波及効果があったと判断することができる。
 一方、本課題のグループメンバーは、課題の遂行において開発された実験装置や技術を、高圧科学分野の他グループに提供することにより、新たな研究の推進において重要な貢献を行っている。また、材料科学分野など関連分野の研究者への技術指導なども行い、広く物質科学の進展に貢献すると共に、外国人利用者への実験支援も行っている。これらの活動は、パワーユーザー課題の成果として、研究成果と共に高く評価できる。今後とも継続して、実験装置や技術を高圧科学分野以外の分野や他施設等への技術展開、また情報発信の一層の強化を期待する。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794