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Volume 20, No.2 Pages 167 - 168

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告6 -スマートイノベーション分科会-
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – SR Smart Innovation –

高尾 正敏 TAKAO Masatoshi

SPring-8利用研究課題審査委員会 スマートイノベーション分科会主査/大阪大学 大型教育研究プロジェクト支援室 Support Office for Large-Scale Education and Research Projects, Osaka University

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SPring-8

 

 スマートイノベーション分科会は、国家的な要請である、イノベーションに繋がる課題を重点推進課題「スマート放射光活用イノベーション戦略推進課題」として審査いたしました。内容は2013A期まで実施された重点グリーン/ライフ・イノベーション推進課題を引き継ぎ、イノベーションというキーワードに基づき国家的課題で、大型放射光施設SPring-8の利活用が、効果があると分科会で判断したものを採択候補として推薦いたしました。開始は2013B期からで、2015A期まで4回募集されました。イノベーションは日本再興戦略、および科学技術イノベーション総合戦略 第四期科学技術基本計画の根幹となるコンセプトであり、その内訳は再興をスマートに加速するための、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション、および防災・減災、震災からの復興への科学技術の貢献であります。この方針を受けて、本重点推進の考え方は、少し長くなりますが募集要項から一部引用いたします。『科学・技術分野で世界を牽引してきた日本は、科学技術立国として先端産業の発展に取り組み、国の経済も支えてきました。近年では、持続可能な社会の実現にむけたイノベーションを世界に先駆けて実践しており、その中でも大型放射光施設SPring-8は、その研究開発の世界一強力なツールとして、重要な役割を担っております。我が国が直面する人口減少や少子高齢化の急速な進行、地球環境問題等の山積する難題の中で、現下の最大かつ喫緊の課題である経済再生を達成するため、総合科学技術会議が策定した「科学技術イノベーション総合戦略 ~新次元日本創造への挑戦~」が、平成25年6月7日に閣議決定されました。世界一安定な光源で、放射光のナノアプリケーションを先導するSPring-8は、この総合戦略に掲げられた5つの課題の解決を、インテリジェントでスピードのあるソリューション実現のためのスマートツールとして、重点的に支援することとなりました。』そこで、2013B期より重点領域として、スマート放射光活用イノベーション戦略推進領域が設定され、イノベーション加速の研究開発の利用申請を広く公募いたしました。詳細な内訳小領域は、I. クリーンエネルギーシステム、II. 健康長寿、III. 次世代インフラ整備、IV. 地域再生、V. 復興再生加速であり、それぞれ対応するBLが設定されました。
 スマート放射光活用イノベーション戦略推進課題では、上記の関連テーマ群について、研究加速による所謂「死の谷」「ダーウィンの海」克服を目指す、多様で積極的なアピールと応募を期待しましたが、残念ながら、必ずしも趣旨が大方に理解されていたとは言えないところがあります。特に上記の国家プロジェクトに参画されているアカデミアの研究者・あるいは企業の現場の技術者にまだまだSPring-8の実力が周知されていない可能性があります。今後も本重点分野設定のような取り組みが継続されることが期待されますが、ユーザー層を広げるさらなる取り組みが重要と思われます。

 

 2015A期の例では、対象ビームラインとシフト割合は以下のとおりです。

 

BL01B1 BL02B1 BL02B2 BL04B1 BL04B2 BL08W BL09XU BL10XU
BL13XU BL17SU BL19LXU BL20B2 BL20XU BL25SU BL26B1 BL26B2
BL27SU BL28B2 BL29XU BL32XU BL35XU BL37XU BL38B1 BL39XU
BL40B2 BL40XU BL41XU BL43IR BL44B2 BL45XU BL47XU BL05SS

 

 これら32本のビームライン合計で、共用/理研ビームラインが供出する全ユーザータイムの4%に相当するシフトを目安とし、各ビームラインでの配分上限シフト数は8%を限度としました。ほとんどのビームラインが対象ですので、通常の分科会の審査に先行して、本重点課題として審査することとしました。
 本重点課題採択審査では、上記を踏まえ趣旨に沿ったものを採択いたしました。即ちSPring-8を用いた計測が研究開発を加速し、スマートイノベーションに繋がるかという観点で審査いたしました。従って、分野的には上記の5小領域であっても、純粋に基礎研究であって、応用展開にはさらなる研究の深耕が必要と思われる課題提案は通常の課題審査での評価の中で行っていただきました。また、イノベーション加速のために、必要なデータが要求されていると判断できる課題については、科学的な評価が多少低くても、敢えてSPring-8での利用によって、信頼性の科学的基盤の担保が確実になると期待される場合は、本重点課題として採択いたしました。さらに、基礎的な研究であっても、新奇な測定治具の開発を行うなど、関連領域の発展に繋がるチャレンジングな課題提案も積極的に採択しました。シフト数に関しては、各ビームラインの上限一杯に課題採択するのではなく、趣旨に合致した応募課題のみを採択することを徹底しましたので、上限に満たないビームラインでは、余裕分を通常の審査枠に移管しています。

 

 本重点課題で採択した件数は以下の通りです。本分科会で不採択となった応募課題は、通常の各分科で審査され、採択されたものもあります。

 

2013B期: 応募58件 採択24件
2014A期: 応募28件 採択12件
2014B期: 応募27件 採択17件
2015A期: 応募35件 採択18件

 

 

 

高尾 正敏 TAKAO Masatoshi
大阪大学 大型教育研究プロジェクト支援室
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
TEL : 06-6879-4345
e-mail : takaoma@lserp.osaka-u.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794