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Volume 20, No.2 Pages 165 - 166

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告5 -産業利用分科会-
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Industrial Application –

平井 康晴 HIRAI Yasuharu

SPring-8利用研究課題審査委員会 産業利用分科会主査/(公財)佐賀県地域産業支援センター 九州シンクロトロン光研究センター Saga Prefectural Regional Industry Support Center, Kyushu Synchrotron Light Research Center

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SPring-8

 

 SPring-8利用研究課題審査委員会産業利用分科会は、2013A第2期から2015A第1期までの2年間、主査:平井康晴、委員:津坂佳幸、野村昌治、松井純爾、山田昇(2014A第1期まで)、佐野則道により産業利用分野の課題審査を行いました。以下に、当分科会の活動経過と気付いた点を報告します。
 当分科会は、成果非専有を前提とする産業利用分野の一般課題、萌芽的研究支援課題、および領域指定型の重点研究課題の審査を行い、また、産業利用に特化した共用ビームラインBL14B2、BL19B2、BL46XUを利用する課題は、他の分科会の課題と異なり年4回の申請が可能です(他分科は、A期とB期の年2回)。この仕組みは、当分科会の範疇外ですが所謂「測定代行」の高い利便性と併せて、大変有効に機能していると思います。一般課題等で測定方法を確立した利用者は、例えば試料の濃度や組成を微妙に変化させた大量の試料の測定に迫られますが「測定代行」でカバー出来るからです。
 ところで、2014A期以前の統計によりますと、産業利用分野の成果非専有課題のうち、学官の課題数は横這いである一方、産業界の課題数は毎年減少しています。これは成果専有課題への移行によるものと思われますが、しかしエレクトロニクスや素材分野を含む成果非専有課題の減少は、今後の我が国の産業競争力アップに逆行する傾向とも考えられますので何らかのテコ入れが必要かと思われます。
 さて、2015A期より、一般課題(産業利用分野)への応募には民間企業または産業界に準ずる機関の方の参加が必須条件となり、この条件を満たさない場合は申請を受理しないことになりました。このように応募条件が厳しくなったことにより、BL14B2とBL19B2への申請は減少し、ほぼ全ての課題が採択されましたが、今後の推移をウォッチすることが必要かと思います。
 次に、領域指定型の重点研究課題として「重点産業化促進課題」が2012A期から2013B期の2年間実施されました。これは産業利用に特化した共用ビームラインBL14B2、BL19B2、BL46XUを利用し、新しい産業の創生をもたらす課題を支援するものですが、燃料電池、リチウムイオン電池、高性能構造材料等の分析課題が採択され、その役割を果たしました。その後、「産業新分野支援課題」が2014A期から2015B期までの2年間実施されることになりました。これはSPring-8において新しい産業分野の利用支援を目指す仕組みであり、例えば食品・食品加工、農林水産物、建設資材、鉱物資源等の分野を対象としています。このような取り組みは時代の変化に即応し、利用の裾野を拡げるために極めて重要です。2014A、B各期の採択件数はそれぞれ10課題、14課題で、これまで殆どなかった食品分野等での応募があり新たな展開が期待されます。
 ところで、かねてより考古学的試料等に関して、例えば地域や年代の推定を目的とする課題が産業利用分科で審査される場合があり、レフェリー評価がばらついたり、産業利用としての評価は難しいとするコメントがありました。そこで、当分科会ではそのような見解を課題審査委員会にお伝えし検討をお願いしました。その結果、2015A期から新たに重点領域として「社会・文化利用課題」の募集がスタートしました。この課題には美術・芸術、文化財、考古学、古生物学(化石)等に関する内容が含まれており、今後、社会的、文化的な分野への大きなインパクトが期待されます。
 最後にレフェリーによる課題への評価についてお願いを記します。全てのレフェリーが高い評点を付けた課題やその反対の課題について審査結果を出すことは比較的容易ですが、意見の分かれる課題につきましては慎重な審査が必要です。それは(全てではありませんが)将来大きなインパクトを与える課題が含まれている確率が高いと考えるからです。実際には、そのような課題は採否の境界上にある場合が多いため、我々審査委員には一層の考慮が求められるところですが、それにはレフェリーの率直な見解が大変重要になります。是非、レフェリーの皆様には評価点に加えて見解をお示しいただければと思います。
 この2年間、課題審査にご尽力いただきました審査委員ならびにサポートいただきました産業利用推進室を含む事務局スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

 

 

 

平井 康晴 HIRAI Yasuharu
(公財)佐賀県地域産業支援センター
九州シンクロトロン研究センター
〒841-0005 佐賀県鳥栖市弥生が丘8-7
TEL : 0942-83-5017
e-mail : hirai@saga-ls.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794