Volume 15, No.4 Pages 267 - 269
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第3回SUNBEAMビームライン見学会報告
The Report of the 3rd Tour of SUNBEAM Beamlines
1.はじめに
SUNBEAMビームライン(BL16XU、BL16B2)は13企業グループ[脚注1][注1] 川崎重工業、神戸製鋼所、住友電気工業、ソニー、電力グループ(関西電力、電力中央研究所)、東芝、豊田中央研究所、日亜化学工業、日産自動車、パナソニック、日立製作所、富士通研究所、三菱電機(2010年9月現在、50音順)からなる産業用専用ビームライン建設利用共同体(SUNBEAM共同体)が管理・運営するビームラインであり、1998年8月の専用ビームライン据付工事着工申請書承認をもって設置利用を開始、2008年8月に契約更新を終え、第二期の利用を進めている。また契約更新に際し、今後10年の利用に対応できるようにBL16XUおよびBL16B2の光学系および測定装置の大幅な入れ替え・更新を行った。更新作業は2008年夏季でほぼ完了し、2008B期より各社利用に供されている。SUNBEAMビームラインの見学会は、ビームライ ン建設終了後の2001年に第1回SUNBEAM見学会、 契約更新終了後の2008年に第2回SUNBEAM見学会を行っている。そこで今回、ビームラインの測定装置の更新・立ち上げ作業が終了し、そろそろ各社の利用が本格化して来ているタイミングを捉え、2010年9月3日に3回目の見学会を開催した。また今回はビームライン成果をより多くの人に知って貰うことを目指し、見学対象者をSUNBEAMビームライン関係者以外にも広げるとともに、展示内容をビームラインの各装置だけではなくSUNBEAMを利用した各社の成果まで拡大した。また見学のオプションとして、今年10月から稼働を開始するX線自由電子レーザー実験施設(XFEL)を、理化学研究所・播磨研究所殿のご厚意により見学させていただいた。
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[注1] 川崎重工業、神戸製鋼所、住友電気工業、ソニー、電力グループ(関西電力、電力中央研究所)、東芝、豊田中央研究所、日亜化学工業、日産自動車、パナソニック、日立製作所、富士通研究所、三菱電機(2010年9月現在、50音順)
2.見学会概要
SUNBEAM見学会には約90名(実行委員を含む)が参加した。最初にXFEL実験棟大会議室で開会式を行い、SUNBEAM共同体・向井委員長の挨拶の後、JASRI・白川理事長および理研・播磨研究所・石川所長の挨拶をいただき、その後2班に分かれてSUNBEAMビームラインとXFEL実験施設を見学した。
SUNBEAM・向井運営委員長による開会挨拶
JASRI・白川理事長による来賓挨拶
理研播磨研究所・石川所長による来賓挨拶
各社放射光利用成果展示の一例
SUNBEAMビームラインでは、ビームライン装置のパネルおよび各社の放射光利用成果を示すパネルを展示し、見学者に企業における放射光利用について紹介を行った。表1に各社成果の発表タイトルを示す。また併せてSUNBEAMビームラインの各測定装置の維持・性能向上等を担当している共同体内部の各サブグループによる測定装置のパネルの展示も行った。また見学会終了後、姫路・日航ホテルにおいて懇親会を実施したが、こちらについても約60人の参加をいただいた。
今回の見学会では、スケジュールの関係でビームライン装置や各社の放射光利用成果等の見学時間は必ずしも十分ではなかったかもしれないが、企業におけるSPring-8放射光の利用状況の一端についての理解をいただけたのではないかと思われる。また、各社の展示ポスターから企業における放射光利用の形態は各社それぞれであること、各社とも自社の先 端材料や製品開発につながる材料評価に放射光を積極的に活用していることを感じ取っていただいたと考えている。
表1 各社の成果タイトル一覧
会社名 | 発表タイトル |
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川崎重工業(株) | 放射光利用による、触媒・電池・ガスタービンの開発支援 |
(株)神戸製鋼所 | 神戸製鋼所におけるSPring-8利用分析事例 |
住友電気工業(株) | ビスマス系超電導線材開発における放射光分析の活用 |
ソニー(株) | ソニーにおけるサンビーム利用とその成果 |
関西電力(株) | 関西電力(株)におけるSPring-8を活用した研究事例 |
(財)電力中央研究所 | 放射光を利用した化学形態特定技術 |
(株)東芝 | 先端LSI開発のための高感度XAFS・HX-PES分析技術 |
(株)豊田中央研究所 | GIXSを用いたDLC-Si被覆膜の解析 |
日亜化学工業(株) | 放射光によるグリーンテクノロジー材料の評価 |
日産自動車(株) | 高容量Li-ion電池用正極のIn-situ技術を適用した局所構造解析 |
パナソニック(株) | パナソニックのサンビーム利用 ー微量、超微小の状態分析を目指してー |
(株)日立製作所 | X線磁気顕微鏡の開発 |
(株)富士通研究所 | X-ray Fourier Transform Holography with a Separated illumination Mask |
三菱電機(株) | 第六周期元素化合物の状態分析法の開発 |
SUNBEAM共同体サブグループメンバーによるビームライン・測定装置の説明
以上のように、第3回SUNBEAM見学会を専用ビームラインの1つであるSUNBEAMビームラインにおいて開催した。今回は、前述のように見学対象者をビームライン関係者以外にも拡大した形で行ったのが特徴である。現在のSPring-8では、専用ビームラインの数が共用ビームラインとほぼ同数となって来ており、昨今の事業仕分け等にもあったように、各ビームラインの成果公開は今後ますます重要 になると思われる。専用ビームラインについてどのような形でビームラインの成果を公開するかについては、現在のところ特に定まった形がないが、今回のSUNBEAM見学会が今後の専用ビームライン成果公開の際の検討の一端となれば幸いである。
謝 辞
本見学会を開催するに当たりましていろいろお世話になりましたJASRI・利用業務部および広報室の方々に感謝するとともに、XFEL見学に際しまして、 いろいろ便宜を図っていただいた理研・播磨研究所の方々に感謝致します。また本見学会の実施に際しまして、準備委員・実行委員等をお願いしました各社担当メンバーに感謝致します。
川村 朋晃 KAWAMURA Tomoaki
日亜化学工業(株)横浜技術研究所
〒221-0022 神奈川県横浜市神奈川区守屋3-13-19
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