Volume 12, No.5 Pages 350 - 366
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
第20回(2007B)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtime in the 20th Public Use Term 2007B
財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)では、利用研究課題審査委員会において利用研究課題を審査した結果を受け、以下のように第20回共同利用期間(2007B)における利用研究課題を採択した。
1.募集及び選定・採択日程
〔募集案内・募集締切〕
(長期利用課題および成果公開・優先利用課題)
平成19年4月23日 長期利用課題および成果公開・優先利用課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
5月23日 成果公開・優先利用課題募集締切り
5月24日 長期利用課題募集締切り
5月31日 成果公開・優先利用課題の応募者に選定結果を通知
(一般課題および重点領域課題)
平成19年4月26日 一般課題(萌芽的研究支援課題を含む)および重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
5月7日 重点ナノテクノロジー支援課題および重点産業利用課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
5月中旬 利用者情報(Vol.12,No.3,2007.5)に全部の公募情報を掲載なお、2005B期よりWebサイトを利用した電子申請システムとなっている
6月7日 一般課題(萌芽的研究支援課題を含む)、重点メディカルバイオ・トライアルユース課題、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点産業利用課題募集締切り(提出完了時刻:午前10時)
〔一般課題、重点領域課題、及び長期利用課題の課題審査および採択・通知〕
平成19年5月28日~6月5日 長期利用分科会による長期利用課題の書類審査
6月28日 長期利用分科会での長期利用課題の面接審査
7月10日 重点ナノテクノロジー分科会による重点ナノテクノロジー支援課題審査
7月10日~11日 分科会による課題審査
7月11日 第3回利用研究課題審査委員会による課題審査
7月13日 JASRIとして採択決定
7月26日 応募者に採択結果を通知
表1 利用研究課題公募履歴
図1 各公募時における応募課題数と採択課題数
2.公募状況
今回の公募では、重点研究課題として、重点メディカルバイオ・トライアルユース課題、重点ナノテクノロジー支援課題、及び重点産業利用課題が募集対象となった。このため、一般利用研究課題の応募として701件、重点研究課題の応募として171件、これらを合わせた総応募件数として872件の課題応募となった。採択件数については、一般利用研究課題の採択として490件、重点研究課題の採択として114件、これらを合わせた総採択件数として604件となった。第1回から今回の公募までの応募課題数及び採択課題数を表1に示す。表1の応募・採択のデータをグラフ化して図1に示す。2006B期と2007A期の採択課題数がその前2期(2005B期と2006A期)より大きく減少しているのは、課題募集の時に用意されたシフト数が少ないためと考えられる。
以前より、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では増加する傾向が続いている。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめて最近5年間分を以下のリストに示すが、応募課題数はやや増減があるが採択課題数はほぼ頭打ちとなっている。今後運転時間が増加するか新しい共用ビームラインが増えて一般課題のシフト枠が増えることがなければ、応募課題数、採択課題数ともに頭打ち状態もしくは重点研究課題が増えればむしろ減少する可能性もあると思われる。
応募課題数 採択課題数
第19回+第20回(平成19年3月~20年2月) 1,730 1,187
第17回+第18回(平成18年3月~18年12月) 1,783 1,254
第15回+第16回(平成17年4月~17年12月) 1,851 1,171
第13回+第14回(平成16年2月~16年12月) 1,658 1,157
第11回+第12回(平成15年2月~16年2月) 1,671 1,184
3.利用期間と利用対象ビームライン
これまで、年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが大きくなることを緩和することに努めてきたが、平成18年度は年間の運転予算の関係で2006A期は通常より長く2006B期は通常より短く、2007A期はまた通常より長くなり、各利用期における利用時間のアンバランスが大きくなった。平成20年度以降はA期を4月から開始し、B期を2月に終了することで各利用期が年度を跨がないように運用して利用期間の長短をなくす予定であるが、平成19年度は過渡期として2007A期が平成19年3月から平成19年7月までと年度を跨いでいる。2007B期は平成19年9月から平成20年2月までを予定しており2007A期と同程度の利用時間としている。今回(2007B期)は平成19年9月の第4サイクルから第6サイクルまで(平成19年9月から平成20年2月まで)とし、この間の放射光利用時間は共用ビームライン1本あたり270シフト(1シフトは8時間)となっている(前回(2007A期)は309シフト)。このうち、共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり216シフトとなる(前回(2007A期)は249シフト)。
今回の募集で対象としたビームラインは一般課題とこれまでの重点課題に対しては総計31本で、その内訳は、共用ビームライン26本、理研ビームライン5本であった。2007A期と比較して共用ビームラインが1本(BL14B2:産業利用Ⅱ)増えている。
4.採択結果
今回の採択結果は、一般利用研究課題と重点研究課題を合わせた総件数では応募872件に対し採択604件であり、一般利用研究課題と重点研究課題別の課題数を表2に示す。採択された全課題の配分シフト数は表3に示すように合計で4,640シフトであった。また、採択された課題の平均シフト数は7.7であり前回の7.8と同程度となった。今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の配分シフト数、平均シフト数を表3にまとめて示す。
重点研究課題は今回の公募では「重点メディカルバイオ・トライアルユース課題」、「重点ナノテクノロジー支援課題」、および「重点産業利用課題」の3種類が用意され、応募課題数171件に対して採択課題数が114件で採択率67%となった。個別の採択率としては、重点メディカルバイオ・トライアルユース課題が64%、重点ナノテクノロジー支援課題が63%、重点産業利用課題が71%であり、重点メディカルバイオ・トライアルユース課題と重点ナノテクノロジー支援課題が一般利用研究課題の成果非専有課題における実質採択率71%より厳しい結果であった。今回は、重点ナノテクノロジー支援課題が一般利用研究課題との「重複申請」を認められて43課題が重複申請され、その内の27件が重点ナノテクノロジー支援課題として採択され、残りの16件が一般利用研究課題の審査にまわされた。
表2 第20回公募(2007B)の一般利用研究課題と重点研究課題の内訳
表3 2007B期におけるビームラインごとの採択状況
今回の一般利用研究課題および重点研究課題の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4に示す。
長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では1年課題もある)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で1件の応募があり採択されなかった。なお、審査は長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われた。
成果専有利用としては、産業界から28件および国公立研究機関等から7件の合計で35件の応募があった(表2)。前回の成果専有利用は31件で今回は前回より少し増加した。なお、これらの課題については公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。
萌芽的研究支援は、将来の放射光研究を担う人材の育成を図ることを目的として、萌芽的・独創的な研究テーマ・アイデアを有する大学院学生を支援するものである。平成17年度の2005A期から放射光を利用する萌芽的研究支援による利用研究課題を一般利用研究課題の成果非専有課題に含めて募集・採択している。大学院学生が実験責任者として応募できる初めての試みであるが、課題の選定はあくまで他の一般利用研究課題と同じ扱いで選定されている。今回(2007B期)は応募49件に対して採択は30件で採択率が61%となり前回の採択率(54%)より高くなった。なお、今回(2007B期)の一般利用研究課題における成果非専有課題の実質採択率は71%であり萌芽的研究支援課題より高い採択率となっている。
表4 2007B期応募課題数と採択課題数:研究分野と機関分類
(一般利用研究課題、重点メディカルバイオTU課題、重点ナノテクノロジー支援課題、重点産業利用課題)
5.産業界の利用
表4に示すように今回の公募で、産業界からは各研究分野に合わせて133件の応募があり、98件が採択された(採択率74%)。これは、産業界以外の機関における採択率とそれほど違わないものである。前回の産業界利用は応募128件、採択83件であり採択率は65%となっており応募件数はそれほど違わず採択率は高くなった。
6.課題選定審査における留意点
(1)これまでと同じく、平和目的の確保、公募課題の占める割合が全放射光利用時間の50%以上となること、選定した課題について高いシフト充足率を確保すること、及び挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。
(2)生命科学分野の留保ビームタイムは、2本のビームライン(BL38B1,BL41XU)を合わせて45シフト確保した。
(3)重点産業利用分科会の第2期募集用留保ビームタイムは、3本のビームライン(BL14B2,BL19B2,BL46XU)を合わせて252シフト確保した。
(4)BL20B2(医学・イメージングⅠ)ビームラインでは、今回の募集において42シフト分課題が選定されない結果となったので、追加募集することとした。
(5)成果の審査へのフィードバックについては、2005A期からの試行に引き続き今回も同様の方法で試行した。今回も産業利用分科は見送りとしたが、他分科の実施結果はdV値がマイナスの課題は審査課題数の1.1%(前回は0.6%)で、dV値がプラスの課題は審査課題数の4.3%(前回は3.1%)であった。
7.採択課題
表5-1~表5-4に今回採択された利用研究課題の一覧を示す。表5-1は一般利用研究課題(萌芽的研究支援課題、及び成果公開・優先利用課題を含む)の分、表5-2から表5-4は重点研究課題の分である。
詳しくは、PDFファイルをご参照下さい。