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Volume 12, No.2 Pages 95 - 111

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

第19回(2007A)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtime in the 19th Public Use Term 2007A

登録施設利用促進機関(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 A Registered Institution for Promoting Synchrotron Radiation Research, User Administration Division, JASRI

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 財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)では、利用研究課題審査委員会による利用研究課題審査を経て選定委員会で選定した結果を受け、以下のように第19回共同利用期間(2007A)における利用研究課題を採択した。


1.募集及び選定・採択日程

〔募集案内・募集締切〕

(長期利用課題)

 平成18年10月6日 長期利用課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示

     11月8日 長期利用課題募集締切り

(一般課題および重点領域課題)

 平成18年10月11日 一般課題(萌芽的研究支援課題を含む)、成果公開・優先利用型課題、及び重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示

 利用者情報(Vol.11, No.6, 2006.11)に掲載

 なお、2005B期よりWebサイトを利用した電子申請システムとなっている

     11月7日 成果公開・優先利用型課題募集締切り

     11月16日 一般課題及び重点メディカルバイオ・トライアルユース課題募集締切り

          (午前10時利用業務部必着)

〔一般課題、重点領域課題、及び長期利用課題の課題審査および採択・通知〕

 平成18年11月9日~24日 長期利用分科会による長期利用課題の書類審査

     12月8日 長期利用分科会での長期利用課題の面接審査

     12月15日 メディカルバイオ・トライアルユース課題選定委員会による重点領域課題審査

     12月21日~22日 分科会による一般課題審査

     12月22日 第1回利用研究課題審査委員会による課題審査

 平成18年12月25日~平成19年1月9日 選定委員会による課題選定、及びJASRIとして採択決定

 平成19年1月18日 応募者に採択結果を通知


2.公募状況

 今回の公募では、重点ナノテクノロジー支援課題、SPring-8戦略活用プログラム課題、及び重点タンパク500課題が平成18年度で終了し、19年度から重点ナノテクノロジー支援とSPring-8戦略活用プログラムに代わる新規予算となる予定であったので、これらに関係する課題は2007A期の共用利用シフト枠から留保しておき予算の詳細が決定次第追加募集することとした。このため、一部のビームラインでは2007A期の共用利用予定時期(平成19年3月~7月)のうち6月~7月に多くの留保ビームタイムを割くことになった。このため、一般利用研究課題の応募として842件、重点研究課題の応募として16件、これらを合わせた総応募件数として858件の課題応募となりここ2年間で最小の応募数であった。これは、重点研究課題が重点メディカルバイオ・トライアルユース課題のみとなり応募が大幅に減少したことによるが、その分一般利用研究課題のうち成果非専有課題の応募が大幅に増加した。採択件数については、一般利用研究課題の採択として572件、重点研究課題の採択として11件、これらを合わせた総採択件数として583件となった。第1回から今回の公募までの応募課題数、及び採択課題数を表1に示す。表1の応募・採択のデータをグラフ化して図1に示す。



表1 利用研究課題公募履歴





図1 各公募時における応募課題数と採択課題数



 2006B期と2007A期の採択課題数がその前2期(2005B期と2006A期)より大きく減少しているのは、課題募集の時に用意されたシフト数が少ないためと考えられる。

 ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では増加する傾向が続いている。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめてみると、応募課題数採択課題数共に平成17年後半に最大となり平成18年後半はむしろ減少した。最近5年間分を以下のリストに示すが、第18回+第19回は応募課題数、採択課題数とも減少した。これは、課題募集の時に用意されたシフト数が少ないためと考えられる。今後運転時間が増加するか新しい共用ビームラインが増えて一般課題のシフト枠が増えることがなければ、応募課題数、採択課題数ともに頭打ち状態もしくは重点研究課題が増えればむしろ減少する可能性もあると思われる。


                   応募課題数 採択課題数

第18回+第19回(平成18年9月~19年7月) 1,725     1,138

第16回+第17回(平成17年9月~18年7月) 1,889     1,323

第14回+第15回(平成16年9月~17年8月) 1,764     1,109

第12回+第13回(平成15年9月~16年7月) 1,710     1,216

第10回+第11回(平成14年9月~15年7月) 1,484     1,035


3.利用期間と利用対象ビームライン

 これまで、年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが大きくなることを緩和することに努めてきたが、平成18年度は年間の運転予算の関係で2006A期は通常より長く2006B期は通常より短くなり両利用期における利用時間のアンバランスが大きくなった。平成20年度以降はA期を4月から開始し、B期を2月に終了することで各利用期が年度を跨がないように運用して利用期間の長短をなくす予定であるが、平成19年度は過渡期として2007A期が平成19年3月から平成19年7月までと年度を跨いでいる。2007B期は平成19年9月から平成20年2月までを予定しており2007A期と同程度の利用時間としている。今回(2007A期)は平成19年3月の第1サイクルから第3サイクルまで(平成19年3月から平成19年7月まで)とし、この間の放射光利用時間は共用ビームライン1本あたり309シフト(1シフトは8時間)となっている(前回(2006B期)は201シフト)。このうち、共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり249シフトとなる(前回(2006B期)は162シフト)。2007A期の追加募集枠はビームライン毎に大きく異なるが、平均値で追加募集枠を差し引きすると本募集で共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり207シフトとなる。

 今回の募集で対象としたビームラインは一般課題とこれまでの重点課題に対しては総計36本で、その内訳は、共用ビームライン25本(R&Dビームライン1本を含む)とその他のビームライン11本(理研ビームライン6本、日本原子力研究開発機構ビームライン44本、及び物質・材料研究機構ビームライン1本)であった。


4.採択結果

 今回の採択結果は、一般利用研究課題と重点研究課題を合わせた総件数では応募858件に対し採択583件であり、一般利用研究課題と重点研究課題別の課題数を表2に示す。採択された全課題の配分シフト数は表3に示すように合計で4,522シフトであった。



表2 第19回公募(2007A)の一般利用研究課題と重点研究課題の内訳




 また、採択された課題の平均シフト数は7.8であり前回の6.7より多くなった。今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の配分シフト数、平均シフト数を表3にまとめて示す。



表3 2007A期におけるビームラインごとの採択状況




 重点研究課題は今回の公募では「重点メディカルバイオ・トライアルユース課題」のみで、応募課題数16件に対して採択課題数が11件で採択率69%となり、一般利用研究課題の成果非専有課題における平均採択率66%と同程度であった。

 今回の一般利用研究課題、及び重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4に示す。



表4 2007A期応募課題数と選定課題数:研究分野と機関分類


(一般課題、重点メディカルバイオTU課題)




 長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では1年課題もある)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で2件の応募があり2件が採択された。なお、審査は長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われた。

 成果専有利用としては、産業界から24件、国公立研究機関等から4件、及び大学等教育機関から3件の合計で31件の応募があった(表2)。前回の成果専有利用は27件で今回は前回より少し増加した。なお、これらの課題については公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。

 萌芽的研究支援は、将来の放射光研究を担う人材の育成を図ることを目的として、萌芽的・独創的な研究テーマ・アイデアを有する大学院学生を支援するものである。平成17年度の2005A期から放射光を利用する萌芽的研究支援による利用研究課題を一般利用研究課題の成果非専有課題に含めて募集・採択している。大学院学生が実験責任者として応募できる初めての試みであるが、課題の選定はあくまで他の一般利用研究課題と同じ扱いで選定されている。今回(2007A期)は応募46件に対して採択は25件で採択率が54%となり前回の採択率(41%)より高くなった。なお、今回(2007A期)の成果非専有課題の採択率は63%であり萌芽的研究支援課題の方が厳しい採択率となっている。


5.産業界の利用

 表4に示すように今回の公募で、産業界からは各研究分野に合わせて128件の応募があり、83件が採択された(採択率65%)。これは、産業界以外の機関における採択率とそれほど違わないものである。前回の産業界利用は重点領域課題であるSPring-8戦略活用プログラムも含めた全体として応募152件、採択108件であり採択率は71%となっており、今回SPring-8戦略活用プログラムがなくなり一般課題のみとなり応募・採択件数が減少し採択率も落ちた。


6.課題選定審査における留意点

(1)これまでと同じく、平和目的の確保、公募課題の占める割合が全放射光利用時間の50%以上となること、選定した課題について高いシフト充足率を確保すること、及び挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。

(2)生命科学分野の留保ビームタイムは、2本のビームラインを合わせて32シフト確保した。

(3)成果の審査へのフィードバックについては、2005A期からの試行に引き続き今回も同様の方法で試行した。今回も産業利用分科は見送りとしたが、他分科の実施結果はdV値がマイナスの課題は審査課題数の0.6%(前回は1.1%)で、dV値がプラスの課題は審査課題数の3.1%(前回は3.3%)であった。


7.採択課題

 表5-1と表5-2に今回採択された利用研究課題の一覧を示す。表5-1は一般利用研究課題の分であり、表5-2は重点メディカルバイオ・トライアルユース課題の分である。


詳しくは、PDFファイルをご参照下さい。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794