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Volume 11, No.6 Pages 389 - 390

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第3回産業利用報告会
Symposium Report on the Industrial Applications

廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro

(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, JASRI

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 昨年、一昨年とも台風に見舞われたため、台風シーズンを避けた時期での開催も検討されたが、結局は昨年と同じく、今年も9月5、6日の2日間の日程で第3回産業利用報告会が、SPring-8放射光普及棟で開催された。産業利用報告会は、産業界専用ビームライン(サンビーム BL16XU、BL16B2)成果報告会、BL19B2を中心に複数の共用ビームラインで実施されたトライアルユース課題の報告会、及び兵庫県ビームライン(BL24XU、BL08B2)の成果報告会が同時期開催の形式で一昨年より始まり、昨年はサンビーム、ひょうご科学技術協会、高輝度光科学研究センターが共催する合同報告会となった。今回は、サンビーム、ひょうご科学技術協会、高輝度光科学研究センターが主催する第3回産業利用報告会に、SPring-8利用推進協議会と創薬産業ビームライン(BL32B2)を運営している蛋白質構造解析コンソーシアムが新たに共催者として加わった。蛋白質構造解析コンソーシアムの参加で、SPring-8を利用しているほとんど全ての産業界が何らかのかたちで、第3回産業利用報告会にかかわるかたちになった。
 報告会は昨年と同様に普及棟大講堂で5日の12時30分に高輝度光科学研究センターの吉良爽理事長、西江光昭産業用専用ビームライン建設利用共同体運営委員長(住友電気工業)、松井純爾兵庫県放射光ナノテクセンター長の挨拶で開会した。これに引き続いて13時より14時40分に関西電力の出口氏を座長として行われたサンビームの口頭発表では、“斜入射面内X線回折法によるイオンビーム照射ダメージの深さ分布評価”(日立製作所、上田氏)“LSIパッケージ封止後のSiチップの非破壊応力評価”(富士通研究所、野村氏)、“エアロゾルデポジション法による強誘電体膜構造”(日本電気、中田氏)、“増幅用光ファイバ中の添加元素の局所構造解析”(住友電気工業、飯原氏)、“自動車用排ガス浄化触媒のin situ XAFS分析”(豊田中央研究所、堂前氏)といった5件の研究成果が発表された。以上のように口頭発表のテーマも自動車用排ガス触媒から光ファイバ、LSIと多岐にわたり、さまざまな産業分野の企業13社で構成された産業用専用ビームライン建設利用共同体らしく、研究対象も多岐にわたっていることを印象づける発表であった。富士通研究所の野村氏と住友電気工業の飯原氏は昨年も、それぞれ電子部品のクロムの評価や、超伝導線材に関する研究を発表されていた。しかし、両者とも今回の成果発表テーマは前回と大きく異なり、産業界での放射光利用分野と利用技術が拡大していることを感じさせる発表であった。また、一部の口頭発表には、共用ビームラインでの利用成果も含まれており、サンビームへの参加企業の研究者が、これまで以上に放射光利用を積極的に行っていることが感じとられた。
 14時50分からの共用ビームラインでの口頭発表では、産業利用推進室の梅咲コーディネータが座長を務め、1時間40分にわたって5件の利用成果の報告があった。口頭発表が行われた5件は、カネボウ化粧品の井上氏による“水溶液中でのヒト毛髪構造のX線回折法を用いた解析”、三原産業の関川氏による“電気亜鉛めっき部品におけるRoSH及びELVの現状(主にCr6+に関する評価方法)”、ジーエス・ユアサコーポレーションの尾崎氏による“La-Mg-Ni系水素吸蔵合金の結晶構造解析”、住友金属工業の山本氏による“XMCD-PEEMによるネオジウム磁石合金の磁区観察と高保磁力化のための組織制御に関する研究”、豊田中央研究所の森氏による“有機トランジスタに適した自己組織化グラフェンの分子配列解析”である。これらの発表すべてが、2005Bより全共用ビームラインを対象に実施されている先端大型研究施設戦略活用プログラムへの参加によって得られた成果の報告である。この中で、関川氏は“この結果は御社の事業に貢献できたのか?”との質問に対して、“鍍金の分野では大きな成果であり、会社の事業にとって大変大きな成果であった”との趣旨で回答していた。関川氏をはじめ尾崎氏、森氏は先端大型研究施設戦略活用プログラムの狙いのひとつである新規ユーザーであり、SPring-8での初回の利用成果を中心とした報告であった。新規ユーザーが短い期間の限られたビームタイムの中である程度まとまった成果が得られたのは、先端大型研究施設戦略活用プログラムの実施に積極的にご協力いただいたビームライン担当者をはじめとしたJASRI職員のご支援の賜物と考えている。
 兵庫県の口頭発表は“兵庫県ビームライン次期計画報告会”として兵庫県立大学の津坂先生を座長に、“兵庫県BL第I期計画の終了にあたって”(ひょうご科学技術協会、松井氏)、“BL24XUの第II期計画案について”(兵庫県立大学 篭島先生)、“BL08B2の整備状況について”(ひょうご科学技術協会、桑本氏)、“ナノコンポジット研究プロジェクトの進展について”(ひょうご科学技術協会、中前氏)の4件の発表が行われた。
 ポスター発表は6日の午前をコアタイムとして普及棟中講堂で行われた。サンビームは全参加企業13社から合計22件、共用ビームラインは、昨年終了したトライアルユースや現在も実施されている先端大型研究施設戦略活用プログラムの課題の成果を中心に16件、兵庫県は兵庫県立大学の研究成果と兵庫県地域結集型共同研究事業に関する合計11件のポスター発表が行われた。また、共催で参加したSPring-8利用推進協議会と蛋白質構造解析コンソーシアムより“米国放射光施設調査報告”など3件、及び“創薬産業BL概要紹介”など3件のポスター発表が行われた。発表者と参加者とが議論しやすくするために、ポスター発表の件数を昨年よりも大幅に少なくしたにもかかわらず、あちらこちらで活発な議論が行われたため、一時は人の行き来ができないほどの混雑になった。
 報告会の最後に6日の午後は、本報告会を主催した兵庫県、サンビームが運営するBL08B2、BL16XU、BL16B2、BL24XUにBL19B2を加えた5本のビームライン見学を行った。昨年のビームライン見学の反省(見学時間が短い、見学参加者が多く説明がよく聞き取れない等)にもとづき、参加者を10人以下の班に分けた上、1ビームラインあたり15分の説明時間を設定した。このため見学時間が2時間に及んだにもかかわらず、40人程度の参加があった。
 参加者に記入していただいたアンケートでは、サンビーム、兵庫県、JASRIの三者による共催や開催場所、開催期間、口頭発表とポスター発表の実施については評価するとの意見が大多数で、多くの参加者にある程度満足していただける報告会になったと考えている。昨年は、あまりの慌しさのため評判が悪かったビームライン見学に対する意見も、今年は大変好意的であった。一方、サンビーム、兵庫県、JASRIがそれぞれに準備している予稿集の統一や、ポスターの配置や会場の照明の改善など、多くの具体的提案も寄せられたが、すぐには実施できない提案も多く、来年以降できるものから改善して行きたいと考えている。
 台風こそ来なかったが、やはり2日目の午後は豪雨になってしまった(サンビームのユーザーさんのひとりから、“報告会が毎回雨になるのは、廣沢が雨男だからだ”とのありがたいご指摘をいただきました)。第3回産業利用報告会は、例年並の178名の参加者を迎え無事終了することができた。報告会の準備・運営にご尽力いただいた皆さん、及びご参加いただいた皆さんに深く感謝しています。どうもありがとうございました。

廣沢 一郎 HIROSAWA  Ichiro
(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0924 FAX:0791-58-0988
e-mail : hirosawa@spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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