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Volume 16, No.2 Pages 174 - 175

5. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM SPring-8 USERS

SPring-8利用者懇談会会長に就任して
Inauguration Address from the President of SPring-8 Users Community

SPring-8 利用者懇談会 会長 雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo

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 この4月から佐々木聡会長の後を受けて会長に就任しました。これからの2年間、その任を果たすべく、精一杯、微力を尽くしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。

 

 早いものでSPring-8は平成9年(1997年)10月に供用が開始されて以来、14年になろうとしています。その間、SPring-8は文字通り世界のトップランナーとして放射光科学を牽引する放射光施設としての役割を果たし、多くの成果を創出してきました。一方、SPring-8利用者懇談会は、SPring-8の供用が開始される以前の平成5年(1993年)に創設されました。その後、本懇談会は、SPring-8ユーザーの研究活動の進展のために、SPring-8の高度化と利用の円滑化・促進に協力することおよびユーザー相互の交流を図ることを目的とし、その活動を鋭意行ってきました。例えば、建設フェーズ(1993年〜2000年)ではサブグループ体制が、その後の利用フェーズ(2001年〜2004年)では、ビームラインサブグループと利用研究会の混成体制が重要な役割を果たしてきました。そして、大型施設での成果が大きく問われる利用の円熟期フェーズ(2005年〜)に突入してからは、利用促進委員会を中心とした新研究会の活動が始まりました。

 

 上記に伴い、本懇談会の会員数も増加しましたが、全ユーザー数がそれ以上に増加したことにより、会員数(約1,300名)と全ユーザー数(約4,500名)に大きな乖離が生じてきました。これに関して、佐々木前会長が就任した2年前の本誌の挨拶文の中に、下記のような記述があります。「(中略)SPring-8のユーザー数と利用懇会員数のギャップが悩ましい問題です。例えば、ESRFでは過去5年間に実験を行ったユーザー全員がESRF User Organizationの会員として自動的に認められます。APSでも、バッチをもっている全ユーザーがAPS User Organizationの会員です。このような形態がとれると、放射光研究コミュニティとして対外的な連携を図ることが容易ですが、日本では実現がなかなか難しいようです。このような状況の中では、利用懇の会員を増やすことが必須です。・・・」また、本年1月の総会でも佐々木前会長からこの点に関してのSP8利用懇の組織のあり方についての問題提起がありました。

 

 私も佐々木前会長のこの問題意識を以前から共有していることもあり、この問題意識を引き継いで、会長としての任にあたりたいと考えています。弁証法でいう「量から質への転換」、また、P. W. Anderson[1][1] P. W. Anderson: Science 177 (1972) 393-396.のいう“More is different”という言葉で表現されるように、建設フェーズ→利用フェーズ→円熟フェーズと移行するに伴い、ユーザー数が増えたことは、ユーザーコミュニティの質、つまり、本懇談会の在り方そのものを再検討する時期に来ているのではないかと感じます。

 

 2009年11月には、行政刷新会議事業仕分けが行われ、国費を用いた研究施設に対して国民目線で納得できる説明責任がこれまで以上に求められるようになりました。多くの成果を創出しているSPring-8に対してさえ、予算削減の激震が走りました。さらに、2011年3月には1000年に一度と言われる大規模の東日本大震災が起こりました。そのような時代状況下、本懇談会の真なる意味でのユーザーコミュニティとしての在り方が求められていると強く感じます。また、SPring-8が今後も世界のトップランナーとしての役割を果たしていくためには、近い将来、SPring-8のアップグレード、所謂、SPring-8 IIを推進していく必要があります。その際、本懇談会がユーザーコミュニティとしての機能を果たし、ユーザーのニードを的確に集約できるような機能を有していることが強く求められます。

 

 そのためには、先ずは、組織化率を抜本的に高め、できれば、それを100%にする方向で本懇談会の改編を検討したいと考えています。もちろん、組織率を高めること自体が目的ではなく、本懇談会が果たすべき本来の役割を果たせるように組織を改編することがその目的です。5月末に予定されている第1回目の評議員会で改編のためのWGを立ち上げ、今年度いっぱいかけて議論を行い、できれば、来年度(2012年度)から新しい形態の利用者懇談会を立ち上げたいと考えています。

 

 皆様のお知恵とご協力を頂きたく、よろしくお願いします。

 

 

[1] P. W. Anderson: Science 177 (1972) 393-396.

 

 

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
〒277-8561 柏市柏の葉5-1-5
基盤棟601
TEL:04-7136-3750
e-mail:amemiya@k.u-tokyo.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794