Volume 06, No.4 Pages 293 - 294
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
理論研究会ワークショップ「放射光物性理論の現状と展望」報告
SPring-8理論研究会ワークショップ「放射光物性理論の現状と展望」は本年6月5日(火)、6日(水)の両日、SPring-8普及棟大講義室において開催され、約50名の参加者による熱心な研究発表と討論が行われた。
「理論研究会グループ」は、今回の利用者懇談会会則(細則)の改定により、従来の「理論サブグループ」を継承したもので、代表者・小谷章雄、副代表者・馬越健次、グループメンバー43名で構成されている。理論サブグループは、SPring-8における実験研究を支援することを目的として、菅野暁先生らのご尽力により、1998年に結成された。サブグループ発足の経緯の詳細については(小谷章雄:利用者懇談会新発足「理論サブグループ」の紹介、利用者情報Vol.3, No.4, p.39)を参照されたい。それ以来、1998年12月の「第1回理論サブグループワークショップ」に始まり、1999年10月と2000年5月には、サブグループ横断ワークショップとして、「磁性研究ワークショップ」と「放射光と表面・界面の研究ワークショップ」を開催し、放射光物性研究における理論の役割を追求し、理論・実験間の協力を推進してきた。幸いにも、その間、理論研究の重要さは広く認められるところとなり、また実験家と理論家の間の共同研究も徐々に盛んになり、その成果が実をむすびつつあるとともに、今後ますます発展することが期待されている。
今回のワークショップでは、このような状況を踏まえ、SPring-8における実験との協力を軸とし、放射光物性理論の現状を見据えて今後の発展を展望することを中心テーマとした。ワークショップには、SPring-8で活躍している実験家として、水木、小林、大門、水牧、河村の5氏を招いて最近の研究成果を講演していただいた。われわれの招待に快く応じて、有意義な講演をしてくださった5氏に厚くお礼を申し上げたい。
その他の理論の研究発表も殆どが具体的な実験との関係を意識したものであり、また、講演の中に今後の展望を必ず含めることなど、ワークショップの意図が汲み取られていて、極めて有意義であった。
ワークショップのプログラムは以下に示す通りである。
6月5日(火)
Session 1
はじめに
小谷 章雄(東大物性研)
半導体及び半導体量子閉じこめ構造におけるSRを利用した時間分解分光実験:内殻励起時間分解フォトルミネセンス、コインシデンス分光、SR-レーザ同時照射
小林 啓介(JASRI)
光分散ギャップ中の光学活性準位:有限系vs.無限系
井川 智恵(阪大基礎工)
ペロブスカイト酸化物における電荷不均化、軌道励起の研究
水木 純一郎(原研)
Session 2
YTiO3とYVO3における共鳴X線散乱への結晶構造の影響
高橋 学(群馬大工)
硬X線吸収・発光分光の磁気円二色性に関する最近の研究
河村 直己(JASRI)
希土類化合物のL吸収端における磁気円二色性
原田 勲(岡山大理)
共鳴X線発光における垂直配置磁気円二色性
福井 啓二(東大物性研)
Session 3
SX領域におけるスピネルフェライトの2p-MCD
水牧 仁一朗(JASRI)
Ce化合物における共鳴X線発光スペクトル
中沢 誠(JASRI)
CeB6の四重極秩序相での共鳴X線散乱
五十嵐 潤一(群馬大工)
銅酸化物の酸素サイトにおける共鳴X線発光スペクトル
岡田 耕三(岡山大理)
6月6日(水)
Session 4
層状マンガナイトの磁気コンプトンプロファイル
宮木 智(姫工大理)
第一原理計算による新機能性半導体のマテリアルデザインと物質創製
吉田 博(阪大産研)
α相固体酸素のスピンと結晶構造
野澤 和生(姫工大理/JASRI)
擬一次元Ni−Br錯体の可視光吸収と角度分解光電子スペクトルへの統一的理論
富田 憲一(物構研)
Session 5
円偏光光電子回折と立体原子顕微鏡
大門 寛(奈良先端大)
金属表面局在電子状態の時間分解二光子光電子スペクトル
坂上 護(理研)
内殻励起による半導体の電子励起原子移動の量子シミュレーション
中山 博幸(JASRI)
おわりに
馬越 健次(姫工大理/JASRI)
小谷 章雄 KOTANI Akio
東京大学 物性研究所
〒277-8581 千葉県柏市柏の葉5-1-5
TEL・FAX:0471-36-3260
e-mail:kotani@issp.u-tokyo.ac.jp