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Volume 03, No.4 Pages 38 - 39

7. ユーザー便り/A LETTER FROM SPring-8 USERS

SPring-8利用者懇談会会長に就任して
Arriving at the Post of SPring-8 Users Society President

松井 純爾 MATSUI Junji

姫路工業大学 理学部 Faculty of Science, Himeji Institute of Technology

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 このたび期せずしてSPring-8利用者懇談会の二代目会長を仰せつかることになり、全くの「青天の霹靂」を体験いたしております。もともと、幹事という大番頭役としてこの会の発展に寄与された方々が次期会長職を担うのが当然ではありますが、諸般の事情により、若輩者が急遽その任に当たることとなりました。しかし引き継いだ以上は、懇談会のさらなる発展のために誠心誠意尽くす所存でありますので、会員諸氏のご協力ご鞭撻を心よりお願いする次第です。
 顧みれば菊田前会長は、1988年5月初めに「次世代大型X線光源研究会」が発足し、さらに1992年に「SPring-8利用者懇談会」に改組されてからもずっと利用推進の旗頭として頑張ってこられました。その間、この会が関わってきた外部との議論や交渉の経緯は筆舌に尽くし難いほど多岐に亘ります。 昨年10月にリングからの光が供用に呈されて以来、いよいよ実績作りのフェーズに突入したのと期を一にして図らずも会長の職を継ぐことになりましたことには身の引き締まる思いがいたします。1988年発足当時、小職自身が運営WGの一員として参画しましたときは会員数約350名であったものが、懇談会に代わったときには1000名弱、そして現在は約1200名にも達する大きな団体となりました。サブグループ(SG)数も36になりそのうち20程度のSGが実質的にビーム利用可能となっております。そうした背景の中で、懇談会の一層の進展を意識して以下のような重点施策を提示させて頂きます。

(1)第二期ビームライン建設計画推進への協力
 最近のビームライン検討委員会において、今年度も引き続き3本の共用ビームラインと4本の専用ビームラインの建設が進言されることが決定されました。SGからの提案の中にはまだ利用ビームラインが「相乗り型」のまま残っており、そのメンバーの満足度は必ずしも高くないことや、加えて新たな提案が出てくる気配もあります。一方、3月に開かれたSPring-8ワークショップにおいて議論されたように、長尺を除くビームラインの残数は二十数本となり、かつ中尺など特殊なものが多い現状を考えると、今後ビームラインを特定の研究技術分野に特化するという従来の図式が困難になる可能性が出て参りました。「相乗り型」からの独立を夢見るSGも多くあることから、上記委員会等を通じて施設側との議論、調整がさらに必要になろうかと思います。今回、「装置」のみのユーザー提案が認められましたが、これも今後のビーム利用拡大方策の一つとして注目したいと思います。

(2) 利用環境の整備
 ビームラインの利用は、供用開始以来の立ち上げ調整フェーズから本格的な利用フェーズに移行しつつありますが、同時に施設側の利用業務部門の活動も軌道に乗り始めました。これと相俟って、ユーティリティの整備や厚生施設の完備などのユーザー支援体制の拡充がなされつつあることは喜ばしい限りです。しかし先日のワークショップでの質疑にもありましたように、マシンタイム配分の柔軟な運用等、今後の改善に向けて施設側との継続的な交渉事項も多々ありそうです。

(3) 長直線部利用計画の具体化
 30m長直線部の利用については、「大型X線光源研究会」発足の当初からこれに関するワークショップが持たれるなど、第三世代光源に特徴付けられた課題として早くから関係者の意識にありました。昨年夏、SRI’97のアドホック会議として長直線部利用ワークショップが開かれており、国の内外でその利用について検討を始める時期に入ってきました。長直線部に設置された光源からの高輝度ビームの特質を生かしたサイエンスの進展は、施設側のみでなく懇談会にとっても極めて重要なテーマであり、今後できれば関係者が集まってSG的な活動単位を形成した上で施設側と一緒に議論していただきたいと思います。

(4) 共用ビームラインの民間利用率アップ
 現在、共用、専用に関わらず企業からのビームライン利用の課題提出率は必ずしも高くはない状況にあります。当懇談会における民間の会員比率は20%を越えておりますが、施設側でも、共用ビームラインへの民間企業からの課題申請をもっと増加させたいと考えております。懇談会でも、共用ビームラインが企業にとって「敷居が高い」という先入観を排除して、積極的に提出するようバックアップして行きたいと考えます。
 以上、SPring-8の本格的運用に向かうこの時期に、懇談会のリーダー格が複数抜けられたのは懇談会にとって痛手ではありますが、今後は施設側の重鎮として、私ども懇談会の要求を別の立場からご検討頂けると確信いたしております。SPring-8からの高輝度ビームを生かした「我が国科学・技術の華々しい成果」は施設者、利用者に共通のファイナルゴールであり、そのために、会員の皆様を交えた腹蔵のない意見交換とご協力を懇願する次第です。どうぞよろしくお願いします。



松井 純爾 MATSUI  Junji
(Vol.2,No.2,P33)



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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