ページトップへ戻る

Volume 03, No.3 Pages 44 - 45

7. ユーザー便り/A LETTER FROM SPring-8 USERS

失敗談 −SG立ち上げ実験記−
Short Note on Starting of BL39XU Experimental Station

荒川 悦雄 ARAKAWA Etsuo

東京学芸大学 Tokyo Gakugei University

pdfDownload PDF (55 KB)


 「よく考えてから物頼め。システム制作者に敬意をはらわんからそんなことになるんよ。実験終わったらよく考えてみな。」
 立ち上げビームタイム中に受信した電子メールの一部です。所属各位には、不名誉なことで披露され、恐縮しています。しかし、恥をしのび、ペンを執ることにしました。
 昨年9月の中頃、ビームラインの立ち上げ時にいただいた仕事は、暫定的なソフトの用意でした。当初は、最新式のソフトを導入するはずでしたが、納入がビームタイムまでに間に合わないおそれがありました。その間、エレクトロニクスを制御する、つなぎ役を必要としたのです。PFで既に動いているC言語のソフトを一部手直しするだけで出来るはずでした。経験も無いわけではなかったので、軽い気持ちで承諾しました(注1)。すぐに、バックアップフロッピーを預かりました。パソコンやインターフェースボード等のモノは、別な方が用意してくださるため、リストを作って伝えました。会社に問い合わせると、納期はどれも二週間ほどであるとのことでした。
 さて、立ち上げ用のビームタイムまで2ヶ月ありましたので、モノが手元に来るまでに、一台のパソコンで分光器をも制御しようとしていました。あとで話をよくお聞きすると、これはしなくてもよかったことでした(注2)。モノの方はいつになっても納品されません。ついに、立ち上げのビームタイムが始まっても納品されませんでした(注3)。催促し、週末に休日配達されるはずでしたが、それでも納品はありませんでした。事務室が閉まっていたので、業者が持ち帰ったのです(注4)。なんと、ビームタイムが始まってから、ソフトのバグ取りとなったのです。しかしプログラムはモノを揃えたにもかかわらず、コンパイルできないではないですか。オリジナルを持ってしても、メモリが足りないとやらで、ダメ。結構あせりました。この間、立ち上げの仲間たちが、全てを手動で操作し、人海戦術で測定をしてくださいました。一緒に納品されたケーブルはコネクタもついてなく、すぐに使えませんでした(注5)。ところが感激することがおこったのです。ふと気がつくと、無くて困っていたコネクタと同じ型のものを、立ち上げの仲間が私物をバラして目につくところに置いて下さっているではないですか。周りの助言もあり、元のプログラムを材料にして、最小限の機能をもつソフトに作り替えることにしました。しかし、インターフェースボードのジャンパーピンの位置などの細かい設定は、ソフト内のどこでどう定義しているか分かりません。また、プログラムの中身に立ち入るつもりはなかったので、手元にコマンドを知る資料もありませんでした(注6)。手詰まりを感じました。PFのパソコンの中を、近くに住む先輩に、上の先生と相談し、急遽、見に行っていただきました(注7)。一難去ってはまた一難。コンパイラも作業中に不調となりました。ソフトは数日経過しても出来上がっていないのですが、皆、とても紳士的でした(注8)。予定の出張期間を越えてなおSPring-8 に滞在しました。大学に戻って担当の仕事をせねばならぬ日もあったのですが、ソフトはその間更に遅れます。共同実験者が待っているのに、この上、ほっぽり出していなくなるようなことも出来ません。朝一番の新幹線でも大学には間に合わないので、当日の朝、担当の教官と相談して、休講にし、掲示して頂きました(注9)。結局、ソフトはそれぞれのマニュアルを全て取り寄せ、はじめから書く気分で、作り直しました。
 こうして、新しい装置、システムでのデータも半自動で出始めました。間もなく、高性能な第三のソフトを仲間が作ってくれたので、それにつなぎ役は代わりました。
 次回はまともな研究の記事で紹介されたいです。
 
(注1)以前、稼働中のパソコン内に、手を加えたソフトを入れて動かしたことはありました。パソコンやインターフェースボード、周辺機器が別物やバージョン違いであったので同じ手間で済むはずがありません。
(注2)自分の仕事の守備範囲および他の人との境界領域付近を、あらかじめ話し合い、はっきりさせておく。自分のところは分かるけど、あとは知らない、ではうまく行かない。
(注3)関係する他人の仕事が遅れはじめた場合は、上司を通す事も含め適時に督促する。対応できる期間を過ぎても納品が無い場合は、その旨を伝え、できないと明言し、その仕事を降ろさせてもらうこともする。
(注4)休日のPFでは、監視員室や守衛所に納品されるようですが、SPring-8 ではそのような慣習はありませんでした。

(注5)納品される状態をあらかじめ知っておく。
(注6)想定不足。
(注7)冒頭の言葉を後日いただきました。
(注8)「プライドだけでやってるんだから、もうやめなさい。誰もストップなんか、かけてくれないよ。」ガックリ。
(注9)「給料もらっているところの仕事をきちんとしなさい。」 
 
 
 
BL39XU実験ステーションの前で



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794