Volume 29, No.4 Pages 293 - 297
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
(13th SPRUC Young Scientist Award 受賞 研究報告)
放射光を駆使した負熱膨張物質の多角的評価・物質設計
Multifaceted Evaluation and Material Design of Negative Thermal Expansion Materials Using Synchrotron Radiation
神奈川県立産業技術総合研究所 次世代半導体用エコマテリアルグループ Eco-materials for next-generation semiconductors group, Kanagawa Institute of Industrial Science and Technology
- Abstract
- 近年、熱膨張を制御する技術として負熱膨張物質が広く研究されている。本研究では圧力下で不連続な巨大体積減少が起こる物質に着目し、放射光を活用した結晶構造・電子状態・ドメイン変化といった多角的な視点から負熱膨張物性の評価を行った。このようなミクロスケールからマクロスケールまでの多角的な視点からの負熱膨張物性の評価はメカニズムの理解のみならず材料設計にも有効であると示した。
1. はじめに
航空宇宙分野など温度幅の広い環境下で用いられる材料や、半導体製造など小さな変位でも致命的となるような分野では、熱膨張による位置決めのずれや、異種接合界面の剥離が大きな問題となる。そのため、熱膨張を制御する技術が求められており、多くの研究がなされている。この熱膨張抑制技術の一つとして、負熱膨張物質の利用がある。構造材料と混合することで熱膨張の抑制・制御ができる負熱膨張材料は様々な産業分野での応用が期待されている[1][1] K. Takenaka : Sci. Technol. Adv. Mater. 13 (2012) 013001.。負熱膨張という物性は実は身近なものである。例えば、水の固相である氷が水面に浮くことは、液相よりも固相の密度が低く、固相から液相に相転移する際に負熱膨張を伴うことを表している。既に応用されている負熱膨張物質としては、ガラスの熱膨張を補償しているβ-ユークリプタイトなどが挙げられる[2][2] H. Schulz : J. Am. Ceram. Soc. 57 (1974) 313-318.。この数十年で多くの負熱膨張材料が報告されており、特にペロブスカイト構造とその関連構造(逆ペロブスカイト、ルドルスデン・ポッパー型層状ペロブスカイト、ReO3型構造など)を持つ化合物では多くの負熱膨張物質が報告されており、これらは強誘電体から常誘電体への転移、金属間電荷移動、磁気体積効果、軌道秩序転移、フレキシブルネットワークなど、多種多様な起源を有している[3-7][3] M. Azuma, W. Chen, H. Seki, M. Czapski, S. Olga, K. Oka, M. Mizumaki, T. Watanuki, N. Ishimatsu, N. Kawamura : Nat. Commun. 2 (2011) 347.
[4] K. Takenaka, H. Takagi : Appl. Phys. Lett. 87 (2005) 261902.
[5] Y.W. Long, N. Hayashi, T. Saito, M. Azuma, S. Muranaka, Y. Shimakawa : Nature 485 (2009) 60.
[6] B.K. Greve, K.L. Martin, P.L. Lee, P.J. Chupas, K.W. Chapman, A.P. Wilkinson : J. Am. Chem. Soc. 132 (2010) 15496-15498.
[7] K. Takenaka, Y. Okamoto, T. Shinoda, N. Katayama, Y. Sakai : Nat. Commun. 8 (2017) 14102.。中でも近年注目されているのは、相転移による大きな体積変化を利用した材料である。相転移型負熱膨張では、低温相と高温相の体積変化量は物質によって決まっているため、転移温度幅と熱膨張係数はトレードオフの関係となる。そこで、体積変化量が大きい母物質を選んで、化学置換で相転移温度を調整することになるが、この際、一般に体積変化量の減少を伴ってしまう。また、一次相転移に起因する物質では体積の大きい低温相と体積の小さい高温相がその分率を温度の関数として変化することでなだらかな体積収縮として利用できるが、どのようにこの2相共存状態が安定化されるかは理解されていない。そこで本研究では、電荷移動と極性-非極性転移の2つのメカニズムが同時に発現することで負熱膨張が増強されるBiNi1-xFexO3のデザインと、圧力下で極性-非極性相転移によって体積の減少を示すペロブスカイト酸化物PbVO3に着目し、最適なドープを施すことで巨大な体積変化量を持つ負熱膨張物質を設計、その際の2相共存状態を観察することでドメイン境界に大きな歪みが生じていることを見出した。
2. 2つのメカニズムが共存した負熱膨張物質の設計
6 GPaの高圧下で合成されるペロブスカイト型BiNiO3は常圧でBi3+0.5Bi5+0.5Ni2+O3という特徴的な電荷分布を持ち、Bi3+とBi5+が柱状に秩序した2つのBiサイトが存在する三斜晶(P-1)をとる[3][3] M. Azuma, W. Chen, H. Seki, M. Czapski, S. Olga, K. Oka, M. Mizumaki, T. Watanuki, N. Ishimatsu, N. Kawamura : Nat. Commun. 2 (2011) 347.。圧力下ではBi5+とNi2+の間で電荷移動が起き、Bi3+Ni3+O3の価数状態へと変化し、Bi3+とBi5+の電荷秩序が融けることでBiサイトが1つの斜方晶(Pbnm)への構造相転移を伴う。さらに、Niが2+から3+となることで、ペロブスカイト構造の骨格をなすNiO6八面体が収縮し、およそ3%もの巨大な体積の収縮が起きる。Biの一部を3価のランタノイド[8][8] K. Oka, K. Nabetani, C. Sakaguchi, H. Seki, M. Czapski, Y. Shimakawa and M. Azuma : Appl. Phys. Lett. 103 (2013) 061909.、またはNiの一部をFe3+で置換すると[9][9] K. Nabetani, Y. Muramatsu, K. Oka, K. Nakano, H. Hojo, M. Mizumaki, A. Agui, Y. Higo, N. Hayashi, M. Takano and M. Azuma : Appl. Phys. Lett. 106 (2015) 061912.、Bi3+Ni3+O3の価数状態が安定化されるため、昇温によってBi-Ni間電荷移動が生じるようになる。この体積収縮を伴う三斜晶から斜方晶への相転移が、温度によって相分率を変えながら、なだらかに起きるため、両相の分率の重みを付けた平均格子体積が連続的に収縮する負熱膨張が発現する。一方、代表的な強誘電体であるPbTiO3では、極性の構造を持つ強誘電相から非極性の常誘電相への転移に伴い、電気分極による構造歪みが解消することで、およそ1%の体積収縮がおこることが知られている。我々の研究グループはすでにBiNi1-xFexO3がx < 0.25の領域でサイト間電荷移動によって巨大な負熱膨張を示すことを明らかにしてきた。しかしながら、Fe3+の置換量増加に伴い電荷移動に寄与するBi5+やNi3+の、本研究では、この固溶体について、Feの置換量を増やすことでBiFeO3由来の自発分極の誘発を目的とし、結晶構造と電子状態の変化、熱膨張特性をさらに詳細に解析した。
図1にX線回折パターンと硬X線光電子分光スペクトルを示す。x = 0での、Bi3+とBi5+が柱状に秩序した、2つのBiサイトを持つ三斜晶相が、x = 0.15ではBiが1サイトの斜方晶構造へと変化し、x = 0.3では最終的にBiFeO3と同様の極性構造の菱面体晶相へと転移することが明らかとなった。昇温すると、x < 0.25までは、三斜晶から斜方晶への負熱膨張を伴う相転移が観測され、x > 0.25では菱面体晶から斜方晶への相転移を伴う相転移が観測された。硬X線光電子分光とPDF解析の結果、x < 0.15でのメスバウアー分光の結果から、菱面体晶相はBi3+0.5(1+x)Bi5+0.5(1-x)Ni2+1-xFe3+xO3の電荷分布を取り、局所的にはBi3+とBi5+が電荷秩序した構造であることが明らかとなった。
図1 各組成のXRDパターン(左)とBi4fのHAXPESスペクトル
図2に菱面体晶相(緑)と斜方晶(赤)の擬立方格子体積とその相分率から求めた平均体積(黒)の温度依存(a)、相転移の際の体積変化量(b)、点電荷モデルから計算した自発分極値(c)を示す。x < 0.2では電荷移動に関与するBi5+とNi2+の量が減少するため体積変化量が0に向かって減少していくが、0.20 ≤ x ≤ 0.40では自発分極値の増大に伴いその減少を打ち消すことができている。すなわち、0.20 ≤ x ≤ 0.50では、PbTiO3と同様の、極性から非極性の結晶構造転移が電荷移動と同時に起こっており、そのために負熱膨張が増強されている。
図2 (a)各相の擬立方格子体積と相分率で重みづけした平均格子体積の温度変化、(b)負熱膨張における体積減少量の組成依存、(c)点電荷モデルから求めた菱面晶の自発分極値
3. 巨大負熱膨張の設計とドメイン構造観察
高圧高温下で合成されるペロブスカイト型化合物PbVO3は、Pb2+の6s2孤立電子対の立体障害効果およびd1電子配置を持つV4+によるJahn-Teller効果によりc/a~1.23という巨大な正方晶歪みをもち、高圧下で-10.6%という非常に大きな体積減少を伴う極性正方晶(P4mm)から非極性立方晶(Pm-3m)への構造相転移を示す[10-12][10] A.A. Belik, M. Azuma, T. Saito, Y. Shimakawa, M. Takano : Chem. Mater. 17 (2005) 269-273.
[11] R.V. Shpanchenko, V.V. Chernaya, A.A. Tsirlin, P.S. Chizhov, D.E. Sklovsky, E.V.Antipov, E.P. Khlybov, V. Pomjakushin, A.M. Balagurov, J.E. Medvedeva, et al. : Chem. Mater. 16 (2004) 3267-3273.
[12] K. Oka, T. Yamauchi, S. Kanungo, T. Shimazu, K. Oh-ishi, Y. Uwatoko, M. Azuma, T. Saha-Dasgupta : J. Phys. Soc. Jpn. 87 (2018) 024801.。Pb2+サイトへのBi3+置換によりV4+への電子ドープを行うことで、常圧下での昇温での負熱膨張を伴う構造相転移が観測され、さらにBi3+、La3+の両置換により、負熱膨張の動作温度を室温域まで低減可能であることが報告されている[13][13] H. Yamamoto, T. Imai, Y. Sakai, M. Azuma : Angew. Chem. Int. Ed. 57 (2018) 8170-8173.。しかしながら、この電子ドープはc/aの低下を招くことから体積変化量の減少を伴うものである。そこで、Pb2+やBi3+の持つ6s2孤立電子対の量を調節することで大きなc/aを保ちつつ温度誘起相転移を狙い、巨大な体積変化を伴う負熱膨張物質の設計を図るとともに低温相と高温相の2相のドメインを観察した。
Pb1-xMxVO3(M = Bi, Sr, La)を合成したところ、電子ドープしたBi、La置換試料ではc/a比が減少していることを示している。Sr2+置換の場合、c/aはほとんど変わらず、x = 0.18でPbVO3の高圧安定相である立方相への相転移が急激に起こることが確認された。これらのことから、PbVO3のc/aは電子ドープ量によって支配され、6s2孤立電子対の量は相転移温度を低下させると考えられる。c/a比が小さいと正味の体積収縮率(ΔV/V)が小さくなるため、大きな負熱膨張を実現するには大きなc/a比が必要である。大きな体積収縮率を保ちつつ負熱膨張を実現するために、c/aが大きく、温度誘起相転移のないPb0.9Bi0.1VO3とPb0.875Bi0.125VO3を選択し、PbのSr置換により正方晶相の不安定化を図った。このように設計されたPb0.8Bi0.1Sr0.1VO3 とPb0.775Bi0.125Sr0.1VO3は図3(a)、(b)に示すように低温で青で示す正方晶だったものが加熱により2相が共存して赤で示す立方晶相へ一次相転移し、相分割率で重み付けした平均単位胞体積は大きな体積収縮を示している。Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3とPb0.775Bi0.125Sr0.1VO3では、同じ温度での低温相と高温相の体積差はそれぞれ11.1%と10.8%と非常に大きく、PbVO3の圧力誘起体積収縮の10.6%に匹敵する値となった。結晶学的な体積変化量は9.3%と8.4%に達し、相転移型負熱膨張材料の中で最も大きいものである。Pb0.775Bi0.125Sr0.1VO3について、5回の加熱-冷却サイクルのXRDパターンの温度変化を測定した。大きな体積収縮は維持され、温度ヒステリシスは5回目の温度サイクルで200 Kから150 Kに減少することがわかった(図3(d))。加熱/冷却サイクルを繰り返すことでドメイン構造が変化し、温度ヒステリシスが抑制されると考えられる。そのため、温度変化で2相の分率が変化しないPb0.82S0.18VO3を用いて、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)で観察したところ、相境界のような構造が確認できた(図4(a))。領域bおよびcのフーリエ変換像から、領域dはa = 0.37 nm、c = 0.45 nmの正方晶相、領域eはa = c = 0.38 nmの立方晶相であり、これらの格子定数は、放射光X線回折データのリートベルト解析の結果とよく一致する。観察された立方体状の相は001方向から見た正方晶相である可能性もあるが、正方晶-正方晶ドメインは前述のように90°ドメインを形成した方が安定なので、正方晶-立方晶の境界が観察されたと結論づけられる。(d)に示すドメイン境界の拡大図から、正方晶相と立方晶相は{110}面を共有して境界を接しているが、{101}T面と{110}C面の間隔はそれぞれ0.291 nmと0.262 nmで10%の差があり、10間隔ごとに欠陥が導入されてミスマッチが緩和されていると推測される。(d)の緑破線で示した刃状転移の余剰半面は11セルに1個の周期で見られる。
図3 (a、c)Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3と(b、d)Pb0.775Bi0.125Sr0.1VO3の各温度でのXRDパターンと負熱膨張特性
図4 STEMによるドメイン観察(a)広視野での像、(b、c)各領域でのFFT像、(d)分域付近の拡大像、黄色の点は正方晶、赤色の点は立方晶を示す
このように電子顕微鏡像から見られる視野は非常に狭く、粒子全体のドメインを観察することはできないが、BraggコヒーレントX線回折イメージング(BCDI)では1粒子に着目してドメイン構造と歪みを3次元的に可視化することができる[14, 15][14] K. Ohwada, K. Sugawara, T. Abe, T. Ueno, A. Machida, T. Watanuki, S. Ueno, I. Fujii, S. Wada, Y. Kuroiwa : Jap. J. Appl. Phys. 58 (2019) SLLA05.
[15] N. Oshime, K. Ohwada, K. Sugawara, T. Abe, R. Yamauchi, T. Ueno, A. Machida, T. Watanuki, S. Ueno, I. Fujii, S. Wada, R. Sato, T. Teranishi, M. Yamauchi, K. Ishii, H. Toyokawa, K. Momma, Y. Kuroiwa : Jap. J. Appl. Phys. 60 (2021) SFFA07.。図5(a)は、立方晶200の3次元ブラッグ回折パターンを観察したものである(スペックル)。ブラッグ位置から散乱ベクトルQ200に垂直に伸びる筋状のテールは、Q200に垂直な法線ベクトルを持つ界面の存在を、ストリーク状のスポットの間隔0.0045 nm-1は、粒子外径が220 nmであることを示している。これは(d)に示した位相回復像のサイズと一致する。(b)は、(a)の断面の高速フーリエ変換(FFT)像である。FFT像は粒子画像の自己相関関数に相当するため、(c)に模式的に示すように、縦縞は複数の界面が平行に存在していることを示している。前述のHAADF-STEM像は、Q200方向に対応している。(d)は、(a)のデータを用いて位相差計算を行い、粒子の三次元像を再構成したものである。内部の等密度面は、立方晶200の反射密度が高い領域を示している。(e)、(f)に示すBragg-CDI像の断面図は、(c)に示すように、011-接続界面と平行でQ200方向と垂直な方向から見たものである。(d)の水平面における立方晶200の反射密度をプロットしたものが(e)である。立方晶と正方晶が滑らかに接続するためには、弾性エネルギーが最小となる{110}接続となると考えられる[16][16] W. Cao, L. E.Cross : Phys. Rev. B 44 (1991) 5-12.。また、立方晶密度の高い領域に挟まれた立方晶密度の低い領域は、他の相、すなわち正方晶で満たされていると考えるのが妥当である。図5(f)は断面位相像を示しており、位相変化が大きいことが境界部にひずみがあることを示している。相変化の縞模様は垂直であり、(e)の点線で囲った立方晶密度の高い部分と重ね合わせると位相差の大きい部分が2相の境界に対応することから、この位相差は正方晶-立方晶間のひずみによるものであるとわかる。このことから、前述のPb0.775Bi0.125Sr0.1VO3では加熱/冷却サイクルによりこのドメイン構造が変化し、温度ヒステリシスが抑制されたと示唆される。
図5 BCDIによる粒子内のドメイン構造の観察(a)スペックル、(b)スペックルのFFT像、(c)TEMで観察した方向との相関図、(d)立方晶200密度分布、(e)断面での立方晶密度、(f)断面での位相像
4. まとめと今後の展開
本研究では圧力下で不連続な巨大体積減少が起こる物質に着目し、放射光を活用した負熱膨張物質の詳細な結晶構造・電子状態・ドメイン変化といった多角的な視点からそのメカニズムを解明から物質のデザインまで行った。物質デザインとしては、電荷移動相転移により圧力下で3%もの体積収縮を示すBiNiO3と、圧力下で1%の体積収縮を示す強誘電体BiFeO3との固溶体を合成し、その評価をBL02B2を用いた放射光X線回折、BL22XUを用いた放射光X線全散乱データから得た原子二対相関関数(PDF)解析、さらにはBL09XUおよびBL47XUを用いた硬X線光電子分光実験により行うことで、2つのメカニズムを併せ持つ負熱膨張物質を設計した。また、強誘電相から常誘電相への相転移による負熱膨張に着目し、一軸加圧による強弾性ドメインの大きな変化を、BL02B2を用いた放射光X線回折による観察を行い、さらには最大の体積変化量を持つ負熱膨張物質のデザインとBL22XUでのブラッグコヒーレントX線回折イメージングと電子顕微鏡像によるドメイン観察を行った。BL10XUでの高圧下X線回折実験から求めた圧縮曲線から、相転移により引き起こされる負熱膨張の2相共存状態がドメイン境界に働く応力により安定化されることを明らかにした。このように放射光を駆使して結晶構造・局所構造・電子状態といったミクロなものからドメイン構造といったマクロなものまで多角的な視点から負熱膨張物性とメカニズムを評価し物質デザインが有効であると示した。今回得られた物質はいずれも高圧下で合成されるものであるが、メカニズムを詳細に調査し、生成過程を観察することで、より簡便な手法で合成できる物質の探索や産業化可能なプロセスの開発を進めていきたい。
謝辞
共同研究者である東京科学大学の東正樹 教授、QSTの綿貫徹 博士、大和田謙二 博士、町田晃彦 博士、押目典宏 博士、熊本大学の水牧仁一朗 教授、早稲田大学の溝川貴司 教授に多大な協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
参考文献
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