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Volume 26, No.4 Pages 456 - 457

4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS

SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)四季報
SPRUC Communications

木村 昭夫 KIMURA Akio

SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/広島大学 大学院先進理工系科学研究科 Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University

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SPring-8

 

1. はじめに
 つい先日、ノーベル物理学賞が眞鍋淑郎氏(プリンストン大学)とKlaus Hasselmann氏(マックスプランク研究所)、Giorgio Parisi氏(ローマ・ラ・サピエンツァ大学)の3名に授与されるとのニュースが入りました。眞鍋氏とHasselmann氏は「地球気候を物理的にモデル化し、変動を定量化して地球温暖化の高信頼予測を可能にした業績」で、Parisi氏は「原子スケールから天体スケールまでの物理系における無秩序と揺らぎの関連の発見」により受賞されました[1][1] 日本物理学会 祝 2021年ノーベル物理学賞受賞
https://www.jps.or.jp/information/2021/10/2021nobelprize.php
。眞鍋氏は大気海洋結合モデルを開発し、地球温暖化シミュレーションモデルの原型を作り大きな貢献をされたとのことです[2][2] 日本物理学会 2021年ノーベル賞解説
https://www.jps.or.jp/public/2021nobel2.php
。眞鍋氏のインタビューでもありましたように、この受賞はご本人も意外だったそうです。おそらく多くの方々が同じように思われたことでしょう。いわゆる分野横断的な研究とも捉えることができるかと思います。大関真之氏(東北大学)がParisi氏の貢献について分かりやすく解説されております。同氏が提案したレプリカ対称性の破れは、スピングラスのような複雑系において様々なパターンが混在しており、そのパターンを系統的に崩していくことにより無数のパターンが現れますが、この概念が情報科学や生物学や機械学習にも波及しているとのことでした[3][3] 日本物理学会 2021年ノーベル賞解説
https://www.jps.or.jp/public/2021nobel1.php
。すなわち、Parisi氏は様々な分野における複雑な現象を説明する基本的な概念を提唱したということです。このような話をお聞きすると、もはや先述の「意外」という感覚は取り除かれ、今回も然るべき方々が受賞されたことを認識できた次第です。

 

 

2. SPring-8シンポジウム2021を終えて
 さて、去る9月17、18日の2日間、SPring-8シンポジウム2021を無事開催することができました。詳細は、西堀SPRUC幹事(筑波大学)による報告記事に書かれておりますのでぜひご覧いただければと思います[4][4] SPring-8/SACLA利用者情報
https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=39742
。昨年に引き続きコロナ禍が収まらず、今回もオンライン開催を強いられました。昨年は初めてのオンライン参加を基本としたハイブリッド形式による1日だけの開催で、「ポスト・コロナ時代のSPring-8利用」として進めました。今回は、通常形式に戻って、利用トピックスも聞きたいという強い要望に応えることにもなりました。また今回のテーマは「SPring-8将来像からのバックキャスティング」でした。それも30年以上後の将来像を掲げ、その将来像に我々がどのように向かっていけば良いのかを議論しようということになったのです。このような壮大なテーマを立てたものは良いものの、どのようにシンポジウムが進んでいくのかが不安でもありましたが、将来像を語るセッションが始まった途端その不安が消え、ご講演者の方々の積極的なご発言に勇気づけられました。将来像の設定では「ラボ単独では太刀打ちができないオンリーワンの研究開発の場の創成」「データサイエンスの利用促進」が講演者から掲げられました。また、人材育成も重要で「多くの博士課程修了者が輩出される施設となるべき」との提言がありました。それらのバックキャスティングとして「空間・時間軸での可視化技術、高分解能な技術開発」「データの体系化」について強調されました。2日目は、利用トピックスとして数々の貴重な話題をいただきました。はやぶさ2、地球科学、電池材料、COVID-19の最先端の研究、そして、実用スピントロニクス、実用界面、新分野創成課題についてレビューをしていただきました。後のアンケートでも分かりましたが、利用トピックスはやはり参加者に好評で、2日間かけて行った甲斐がありました。

 

 

 

参考文献
[1] 日本物理学会 祝 2021年ノーベル物理学賞受賞
https://www.jps.or.jp/information/2021/10/2021nobelprize.php
[2] 日本物理学会 2021年ノーベル賞解説
https://www.jps.or.jp/public/2021nobel2.php
[3] 日本物理学会 2021年ノーベル賞解説
https://www.jps.or.jp/public/2021nobel1.php
[4] SPring-8/SACLA利用者情報
https://user.spring8.or.jp/sp8info/?p=39742

 

 

 

木村 昭夫 KIMURA Akio
広島大学 大学院先進理工系科学研究科
〒739-8526 広島県東広島市鏡山1-3-1
TEL : 082-424-7400
e-mail : akiok@hiroshima-u.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794