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Volume 26, No.2 Page 174

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告4 −分光分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Spectroscopy –

松田 巌 MATSUDA Iwao

SPring-8利用研究課題審査委員会 分光分科会主査/東京大学 物性研究所 Institute for Solid State Physics, University of Tokyo

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SPring-8

 

 2019-2020年度のSPring-8利用研究課題審査委員会(PRC)の分光分科会のS1小分科会の主査を務め、本施設における申請課題の審査に携わらせていただきました。伝統的な委員会ではございますが、今回は任期中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に拡がり、我々の暮らしが一変させられる事態と重なりました。日本でも政府が緊急事態宣言を発令し、SPring-8を含めた研究機関や大学への来所および出張が制限され、多くのビームタイムがキャンセルあるいは延期されました。分科会の審査はオンラインで実施され、分科会では申請時と採択時で状況が変化することも想定して検討がなされ、申請課題の評価だけでなく、「キャンセル対応」、「追加募集」、「補欠課題」、「リモート実験」などビームタイムに対する様々なテーマについても議論が行われました。
 さて、S1小分科会では光電子分光、光電子回折、発光分光、赤外分光などの申請課題について審査を実施しました。そして例年通り、審査はS1とS3小分科会と合同で行われました。これは磁気分光などを取り扱うS3小分科会の課題および実験責任者の分野が近く、ビームラインも共通することが多かったためです。そのため、分科会では多角的な意見を集約することができ、効率良く進めることができました。S1小分科会の委員は私の他に齋藤智彦先生(東京理科大学)と池本夕佳氏(JASRI)が務められ、S3小分科会では横山利彦先生(分子科学研究所)が主査で関山明先生(大阪大学)と鈴木基寛氏(JASRI)が委員をご担当されました。
 SPring-8のビームタイムでは長期利用課題や重点課題等が優先的にシフト配分され、その残りが一般課題のシフト枠となります。本分科会ではこの限られた枠の中で配分できる課題を決定しました。各課題はレフェリーによる評価点とコメントが付けられており、点数の高いものから資料をもとに審査が進められました。また各ビームライン担当者による安全審査と技術審査も行われ、装置の状況に合わせて各課題の実験が確実かつ安全に実施できるかも検討しました。レフェリーの評点の高い申請課題は研究内容の質が高く、採否は基本的に評点順で決定されました。課題によってはレフェリーの評点が分かれていることもありましたが、各課題に対してレフェリーが専門的なコメントを丁寧に記していただいていたので、委員の間で適切な議論ができました。多くの優れた申請書を読ませていただいたのですが、シフト数が限られていたことから残念ながら多くの課題に対してビームタイムを配分することができませんでした。そこで分光分科会として、各課題の研究を少しでも支援したくレフェリーと委員のコメントをまとめて課題申請者へ通知させていただきました。また採択課題についても、分科会の議論の中で役立ちそうなものをビームライン担当者へ伝えました。課題審査委員会として申請された研究課題を篩に掛けるだけでなく、専門家としてポジティブなフィードバックができるよう頑張らせていただきました。
 このたび、SPring-8の課題審査という重要な役目を担わせていただきました。コロナ禍において難しい局面もございましたが、無事終えることができたのは多大なご協力をいただいた分科会委員の皆様、丁寧に査読をしていただいたレフェリーの方々、そして献身的にご尽力いただいたJASRI関係職員のおかげです。この場をお借りして厚く感謝申し上げます。
 私の任期が満了した後でもコロナ禍は続いています。委員会ではこのような状況下でのビームタイム利用に対する議論もさせていただきました。事態の収束を切に祈りつつ、我々の検討がSPring-8ユーザーの皆様に少しでもお役に立てれば、と願っております。

 

 

 

松田 巌 MATSUDA Iwao
東京大学 物性研究所(播磨分室)
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0802 ext 4111/PHS 3619
e-mail : imatsuda@issp.u-tokyo.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794